クリスマス企画☆偶然の贈り物
『もし、クリスマスまでにリア充になれてなかったらさ、3人でサビシマス会しようね』
それは、半年ほど前に同期3人組で交わした約束だった。それからたった数日しか経たないうちに、皿池に恋人ができてしまうなんて…。俺は全く、予想もしていなかったんだ。
正直、クリスマスなんて、中学のときぐらいから特に気にしてない。もちろん、その時につきあってる人がいた年は、ちゃんとプレゼントをあげたり、ちょっと特別感のあるデートを演出してあげたりはした。あとから文句言われても嫌だからね。
社会人になってからは尚更、意識しなくなった。だいたい平日だし。大学のときからつきあってる彼女は、そのへんの理解がきちんとできている人で、プレゼントを渡すのが多少前後しても喜んで受け取ってくれた。今年はその彼女も、もうそばにはいないんだけどね。
だから今年のクリスマスイブの予定は、仕事だけ。そう思っていた。
*
クリスマスイブ当日の午後のこと。
「阪本くん、先週の会議で営業さんが言ってた資料って、いま持ってる?」
隣の席の皿池が、パーテーションからひょっこりと顔を覗かせた。仕事の後はデートの約束でもしてるのか、いつもよりお洒落してる。ぴったりとしたタートルネックに胸が強調されていて、良からぬ想像をしてしまいそうになるのを必死にセーブしながら、俺は皿池に渡すファイルを探した。
「ほい。これだよ」
「ありがと~!あ、ついでにちょっと聞いてもいい?」
「ん、なにー?」
皿池の質問にあれこれと答えていたら、部長が課長に何やら話しかけているのが聞こえてきた。
どうやら、課長を飲みに誘っているらしかった。クリスマスイブなんだから、勘弁してあげればいいのに…と思ってしまう。イブに上司とサシで飲みに行くなんて…。その話し声は皿池の耳にも入っていたようで、一瞬、彼女は『えっ』という顔をする。
しかし、そこですかさず神谷さんが助っ人に入り、予定のない人みんなで飲みにということになった。神谷さんが参加者を募ると、なんと皿池がすっと手をあげた。それを見て、数名の社員たちがつられて手をあげ始める…。よし、俺も。
「じゃあ、参加者は部長と課長含めて9人ってことで!」
いつもの店、あとで予約しときますね~なんて言いながら、神谷さんは課長に笑いかけていた。
2人きりではないけど、偶然にも、皿池と一緒にクリスマスイブの夜を過ごせることになった。彼女のことは諦めるべきだって、わかってはいるけど、でも。
神様。頼むから今夜だけ、見逃してよ。
~Fin~