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終わらない物語  作者: 華百合
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一途な男

 俺の名前は阪本雅春。社会人3年目の24歳。彼女いない暦1年半…。

大学時代からつきあっていた彼女と別れ、あるタイミングから急に気になりだした(いや、それまでもかなりいいとは思ってたんだけど)会社の同期・皿池凛にアタックするも、撃沈。しかもフラれるどころか、あいつは俺たちの上司・吉川課長と婚約までしてしまった。でも『吉川』なんて呼べなくて、俺はあいつが結婚した後も旧姓で呼ぶつもりだ。そして、意外に俺のような男性社員は多かった。

吉川課長は、同性の俺も認める男っぷり。基本的には優男のくせに仕事は妥協しないし、部下の面倒見もいいからみんなに慕われている。最初は憎き恋敵だったけど、次第に憧れの存在に変わっていったんだ。

あいつが課長とのことで悩んでいたとき、強引に奪ってやろうかとも思った。けれど、あいつが悩んでいたのは『どうすれば課長を嫌いになれるか、別れられるか』ではなく…、『どうすれば課長と一緒にいられるか』だった。それに気づいたとき、もう俺の出る幕はないと悟ったんだ。そして、いつか課長と同等か、それ以上の男になると決意した。

 皿池が結婚を機に総務部へ異動になって3か月。今は違う社員が使っている隣のデスク。俺はまだ、同じオフィスに皿池の姿を探してしまう日々を送っていた。


 「阪本は最近どうなの?」

「まあまあかなー。あ、先月から新人の教育担当になったよ」

金曜日で多少疲れていても、同期飲み会は気兼ねなく参加できる。今年度から関東に転勤になったやつも何人か参加していて、昨年度とは少し顔ぶれが変わっていた。

「そっか。企画部に新人3人も入ったらしいな」

「うん。先輩とか皿池が異動になってから人手足りなくて、その分今年は多めに入ったらしい」

営業部の西島が早くも赤い顔をしている。やつはすぐ顔に出るのだ。

俺はあんまり酒を飲む気にはなれなくて、料理を少しつつく程度にとどめている。

この店のメニューで俺が一番好きな、ささみチーズはまだ頼まれていない。

「皿池じゃなくて、吉川だろ」

西島に言われなくても、わかってるって。

「吉川課長の手前、なんか呼びづらくて」

なんて、指摘されたらいつも適当にごまかしてはいるんだけど。

俺が皿池を好きだったことは、本人以外には誰にも話していない。

「あー、そっか。それにしても、あの吉川さんと結婚ってやっぱすごいよなあ。あいつも美人で仕事できるし、ほんとお似合いだよ」

「…まあな」

「あ、うわさをすれば」

西島の視線を追うと、皿池が店に入ってきたところだった。薄い黄色のブラウスに、白いパンツという爽やかないでたち。しかし俺はそれ以上に、アップスタイルで露になったうなじに目がいった。

…こんな未練たらたらの目で見てたら、皿池だって困るよな。

皿池は女子にすすめられた、上座よりの席に座って、酒が弱いくせにさっそくビールを頼んだ。そういう飾らないところがまた、好感を呼ぶんだろうな。

そして、誰にでも分け隔てなく明るく接する彼女。それは、俺に対しても同じで。

目が合うと笑顔で手を振ってくれる、優しい彼女への思いに…、俺はまだ、未練を断ち切れないでいた。

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