可能性
2056年。1月15日。
今日で俺、五十嵐龍太郎は成人となった。
「あぁー龍太郎。俺らの青春も終わったな…」
こいつは高永浩太。俺の昔からの友達で同い年だ。
「青春って…俺ら青春っぽいことしてなかっただろ…?」
自分の過去を振り返えば残念なことしか残ってない…。
yootubeで人気を取ろうとしたり、彼女をつくるために部活を転々としたり…。
「まぁそう言うな龍太郎!そのくだらない日々の積み重ねが青春なんだ!」
あまりの説得力の無さに逆の意味で笑ってしまった。
「あぁー。そういえば龍太郎。仕事の方はうまくいってんのかー?」
何故か上からの口調で浩太が言った。
「仕事なぁーー。」
振り返ること2年前。
俺は高校卒業後すぐに職に就き真っ当な生活を送っていた。
だがそれは突如にして失われた。
それは仕事が終わり帰っている日のこと。
「あぁー疲れたぁー」
コンビニのベンチに座りコーヒーを飲みながら
そのセリフをいうのが俺の日課だった。
その時だった。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」
「悲鳴…!」
考えると同時に足は声のした方へと向かって行った。
声のした所につくと背筋が凍りついた。
「何故日本にイーバがいるんだ…。」
直径3m級。イーバの中では小型の方だがそんなの関係ない。
逃げろ…。逃げて助けを…!
声の主であろう女性は血まみれになって倒れていた。
逃げろ…!動け足!頼む動いてくれ!
足に力を入れた瞬間。
「カランカランカラーン」
持っていたコーヒーの缶を落としてしまった…。
「おわった」
頭にはその4文字とイーバが近づいて来る事しか頭になかった。
その時俺の頭に可能性がよぎった。
5年前父が乱戦へ行く時に渡してくれたもの…。
「死にそうになった時はこれを使え。いいな龍太郎?」
「変な石ころだなー。」
「これは必ずお前を救い強くする。俺はお前のすぐそばにいるからな…。」
それが父の最期の言葉だった。
「やってみるしかない…な。」
父がくれた石。
「キュュュイィーン…。」
近い。殺られる…。
「頼むっっっ!」