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Absolute Zero  作者: DoubleS
第三章
9/30

それは正しいのか 1

(……くそ! 何でこんなことに巻き込まれなきゃならないんだ!)

 霧矢は駅の構内を走っていた。怪しい女は人ごみの中を悠々と追いかけてくる。そこに人などいないかのごとく、霧矢と女の距離は縮まっていく。

(こんなことになるくらいなら、こんなカードはしまっておくべきだった!)

 心の中で自分の浅はかさを責めながら、霧矢はとにかく走り続ける。しかし、逃げているだけで精一杯で、他の策を練る時間がなかった。

 全力で駅を走り、改札の近くにある男子トイレに逃げ込んだ。相手は女だ。人目もあるのでそう簡単に入ってこれないはずだ。携帯電話を取り出し、晴代の電話番号を選択する。

(……頼む! 出てくれ!)

 念じながらかかるのを待ったが、スピーカーから聞こえてきた音声は霧矢にとって非情なものだった。

(畜生! 病院にいるせいだな。電源が切られてる!)

 電源を切り忘れていることを祈って雨野と有島にもかけたが、晴代だって切っているのだ。あの二人が切り忘れているはずがなかった。

 仕方がないので、早めに誰かがメールをチェックしてくれることを期待して、晴代、雨野、有島の三人にメールを一斉送信する。しかし、この調子では助けに来るのはいつになるのか、わかったものではない。今すぐメールをチェックしたとしても、タクシーもろもろの時間を考慮して、少なくとも二十分ほどは持ちこたえる必要がある。

 入り口から外を覗いていると、確実に女はこちらに近づいている。

「……すみません、ここらへんに高校生くらいの短髪の男の子がいませんでしたか?」

「……ここのトイレに入っていきましたよ。よほど慌てていたんでしょうなあ。ものすごい勢いで駆け込んでいきましたよ」

 女は聞き込み調査を成功させてしまう。霧矢は心の中で答えた男性を憎んだ。

 それなりに人の出入りの多いトイレではあるが、今は霧矢一人しかいない。下手をしたら、人目を気にせず入ってくるかもしれない。そうすれば、まさに袋の鼠。逃げ場はない。

 いや、それ以前に相手が女一人だという保証はどこにもない。仲間に男がいるかもしれない。今更になって、ここに逃げ込んだ自分を霧矢は責めた。

「ねえ、お姉さんの話を聞いてくれないかなあ?」

 霧矢の視界に最初に入ってきたのは、トイレにある窓だった。霧矢の体格ならギリギリ通り抜けられるかどうかの大きさだ。しかし、ここは駅ビルの二階である。いくら雪が積もっているからと言っても、このまま飛び降りたらただでは済まない。

「そこにいるのはわかってるわよ。別に、危害を加えようとかそういうつもりはないんだけど、君が出てこないのなら、お姉さんもいろいろ覚悟を決めなきゃいけないんだけどなあ」

 脅しをかけてくる。もはや一刻の猶予はない。どう考えても、霧矢は雨野と同等の体力の持ち主ではないから、魔族と正面で戦っても勝てるとは思えない。しかし、相手の手に落ちれば何をされるかわからない。

(ならば! 答えは一つ!)

 清掃道具のロッカーを開け、長さ五メートルほどの水撒き用のホースを取り出す。しっかりと固定し、窓から垂らす。地面までの長さが二メートルほど足りないが、そこからは飛び降りるしかない。

 そろそろと降りはじめると、しびれを切らした女が男子トイレに入ってきた。

「ちょっと! 何やってるの!」

 女が発した大声にびっくりして、霧矢のホースを握っていた手が滑った。霧矢の体を重力がとらえ、そのまま加速しながら落ちていく。


「がはっ……!」

 猛烈な衝撃が霧矢の体を襲う。数コマ遅れて、全身に激痛が走った。幸い背中から着地したので、頭にダメージは一切ない。しかし、今まで経験したことのない痛みに、霧矢はのたうちまわっていた。

「大丈夫?」

 女が窓から霧矢を見下ろしている。しかし、明確な意志を持って攻撃しようとしてきた割には本気で霧矢のことを心配している表情だ。

「まあ、いいわ。今すぐそっちに行くから、待ってなさい」

 数十秒経って少しだけ痛みは引いてきたが、腰にダメージを負ってしまったらしく、立ち上がることができない。仰向けになって涙で霞んだ鉛色の空を見ることしかできなかった。

(……くそ…ここで終わるのか?)

 無理やり体勢をうつぶせに変え、這ってでも逃げようとしてもがいていたが、女はもう霧矢の前に現れていた。

「場所的にちょうどいいわ。まあ、お話だけでも聞いてくれるかしら?」

 落ちた先は裏路地だった。通行人は皆無。いるのはゴミ箱を漁る野良犬だけだった。

 女は屈みこむと、うつぶせになっている霧矢の目を覗き込んだ。

「自己紹介から始めましょうか。私はリリアン・ポーン。君の名前は何というのかしら?」

「……三条霧矢だ。それがどうした」

「霧矢君か。ねえ、君はマジックカードを持ってるみたいだけど、契約はしてないみたいね。魔族と契約しないなんてもったいないわねえ。せっかく異能の力も手に入るっていうのに」

「契約で異能だと……?」

「あら、知らなかったの。まったく、言わないなんてどんな魔族なのか…」

 リリアンは首を振った。

「人間は魔族と契約すると、ちょっとした異能が使えるようになるのよ。どんな能力が目覚めるかは人それぞれだけど」

 リリアンが話し終わると、霧矢は顔を上げた。

「今度はこっちが質問させてもらう。何が目的だ」

「あらあら、いきなりその質問かあ。お姉さん困っちゃったな」

 わざとらしく明るく困ったふりをしている。しかし、霧矢としてはそれがリリアンの一番言いたいことであろうことを理解していた。

「こんな真似をしてまで、人材を集めてるんだ。それ相応の理由があるはずだろう」

「なかなか、鋭いのね。嫌いじゃないわよ、そういう人」

 骨にひびが入ったらしく、少し腰に力を入れるだけで激痛が走る。

「そうね……とりあえず、目的だけど、簡単に言えば、魔族を使って足のつかないように誰かを殺そうってやつね。そのため魔族か契約者が欲しいのよ」

「絶対に断る。僕は人殺しにはならない」

 間髪入れずに霧矢は拒絶の意志を示した。

「そう言うと思ったわ。でも大切なのはこれからよ」

 向きを変えると、リリアンはゴミバケツの上に腰を下ろし、足を組んだ。

「霧矢君、君は誰かを殺してやりたいと思うほど憎んだことはない?」

「…生憎だが、僕はそんな軽々しく人を殺めたいと思うほど、短気な人間じゃない。そんなことを考えるやつは…ろくな…」

 腰の痛みで話は途切れてしまう。見かねたように、リリアンは霧矢にアドバイスする。

「ポケットに入ってるのを使ったらどうかしら。それくらいのダメージだったら簡単に治ると思うけど」

(…霜華のマジックカードのことか…)

 リリアンの言うことを素直に聞くのも癪だったが、痛みが霧矢の限界に達していたのも事実だった。ためらったが、ポケットから赤い紋様の刻まれたカードを取り出した。

「ケガを負った場所にかざしてみるといいわよ」

 うつぶせの体勢で腰にカードを持っていき、念じてみると、カードが光り輝いて消えたかと思うと、痛みがなくなっていた。

(……治ってる…のか…?)

 ねじってみても痛みは全く感じず、霧矢は普通に立ち上がることができた。コートにまとわりついた雪を払い、霧矢はリリアンを直視した。

「さて、痛みも消えたところで話を続けましょうか」

「……僕は殺人者になるつもりはない。殺人者の協力者にもだ」

「殺人者の殺人者にも?」

 挑発的な笑みを浮かべてリリアンは霧矢を見る。霧矢はまだ使っていないカードを持って身構えた。

「この国の司法は腐ってる。誰かに大切な人を殺されても、どうせ犯人はそのうち刑務所から出てくる。犯人が死刑になるなんてめったにない。さらにひどいときは、精神異常ってことで無罪になって病院に入院して終わり。それを狙って、わざと演じている汚い犯罪者もいる」

 少し悲しそうな目をしながら、リリアンは続けた。

「大切な人を殺されても、復讐する機会すら与えられない。個人的な復讐もまた犯罪。殺人者と同列扱いされるの」

「…だから、魔族の力を使って復讐をするって言うのか?」

「そう。魔族の魔法や契約主の異能で人を殺しても証拠は残らない。残っても立件できない。私は、天罰の代行者」

 ゴミバケツから立ち上がると、リリアンは霧矢の前に立った。

「霧矢君。君は誰かの無念を晴らしてあげたいとは思わない?」

 霧矢は構えていたカードを下ろした。しばらく、目を閉じて考えた。

 もし、家に帰ってみて母親が無残にも殺されていたとしたら?

 もし、父親がバラバラにされていたという連絡を受けたら?

 もし、山中のどこかで友人の血まみれの肉片が見つかったら?

(…そんなことになったら、僕はどう思うだろうか…)

 あまりにも非現実的な話で、想像できなかった。しかし、犯罪の被害者はその想像すらする前に現実になるのだ。そして、多くの場合、咎人は相応の罰を受けることはない。数年だけ塀の中で過ごし、また社会に戻ってくる。

 大切な人は殺されたのに、憎き仇敵はのうのうと生きながらえている。残された人にとってはさぞかし悔しいだろう。

 だが、いくら復讐とはいえ殺人は許されるのか。たとえ相手が殺人者であっても人間を殺してよいのか。相手と同じ殺人者という存在になってもよいのだろうか。

(…わからない。実際に誰かが殺されなければ…判断なんてできるわけがない)

さらに霧矢は質問する。自分の意見をはっきりさせたかった。

「…仮に復讐したとして、何が残るんですか。空虚な満足だけじゃないんですか?」

 自然と霧矢の口調は年上に向けるものになっていた。リリアンに対する警戒が解けたわけではなかったが、彼女の信念は本物であるということが感じ取れたからかもしれない。

「そうかもしれないわ。でも、大切な人を奪われた上に、その空虚な満足さえ得ることを禁じられているとしたら君はどう思うかしら?」

「……残された者へせめてもの救いを、ですか?」

 リリアンはうなずいた。霧矢としてもわからなくもなかった。しかし、そのために自らの手を赤く染めることはできないのも確かだった。

「あなたも、誰か大切な人を?」

「まあ……ね」

 霧矢から目をそむけ、横を向いて息を吐いた。

 寂しそうな横顔だった。霧矢が言葉に詰まっていると、ポケットが振動した。二階から落ちても無事だったとは少し意外だった。

「…はい、もしもし」

「霧君! 魔族に襲われたって本当なの?」

 焦った声の霜華の声が聞こえてきた。

「ああ。でも、まあ何とかなった。逃げようとして大ケガを負ったが、お前のカードのおかげで助かった。ありがとな」

「で、どうなったの?」

「捕まったけど、一応、友好的に接してくれてる。捕まえてどうこうしようというつもりはないらしいが、ちょっとした勧誘を受けてる」

「無事だったんだ……よかった…本当によかった…」

 受話器の向こうで安心してため息をつくのが聞こえた。

「霧矢君の知り合いの魔族かしら?」

「はい。水の魔族のハーフで、半雪女です。まあ光のハーフ、半天使もいるんですけど、純血の知り合いはいませんよ」

「二人も知り合いがいたなんてね…」

 感心した様子でリリアンはため息をついた。

「…とりあえず、今は駅にいて問題ない。そっちはどうだったんだ?」

「はいはい。まあ、契約異能の暴走と呪いの両方が混ざってると言った方がいいかな。つまり、私の推測と有島さんの推測は両方とも合ってたってわけ」

「よくわからんが、原因はわかったんだな?」

「うん…でも、原因と対処法はわかっても、それを実行不可能……という最悪な結末になっちゃった…」

 落胆した声で霜華は言葉をひねり出した。

「呪いの属性は、やっぱり火と闇以外だったのか?」

「うん…氷の呪いで意識を一時的に凍結させる魔術。でも、これ自体ならカードでも解呪できるよ。ただ、契約異能のせいでややこしいことになってる」

「契約異能って、契約主が使えるようになる異能の力のことだよな?」

 霧矢の言葉に、霜華は戸惑う。

「あれ、私、霧君に契約異能について話したことあったっけ?」

「よくも黙っててくれたな。おかげで何も知らないままサイキックにされるところだったぞ」

 冗談交じりでさりげなく不満を伝えた。

「そのうち話そうと思ってたけど、今回の魔族の人から聞いたのかな?」

 霧矢がそうだと答えると、霜華は話を続けた。

「私が見た限り、護君に発現した異能は、自分のある状態を半永久的に持続させるもの。つまり、魔のシンクロを起こしちゃってるわけ」

「自分の意識凍結を本来は一時的なものなのに、半永久的なものにしちまったってわけか?」

「そう。持続を解除しようと思っても、そもそもその意識がないから解除できない。それにこういう風に継続している状態はカードじゃ解呪できない。火の魔族で相当な使い手じゃないとダメ」

「相当な使い手の火の魔族が必要か……わかった。とりあえず、また後でかけ直す」

 息を吐くと、霧矢は携帯電話をポケットにしまった。リリアンは興味を持ったようだ。

「契約異能でトラブルでも起きたのかしら?」

「そんなところです。解呪に火の魔族が必要らしい」

「私に協力してくれるなら、火の魔族を紹介してあげてもいいけど。もちろん腕は折り紙つきよ。どうする?」

 ギブ・アンド・テイクを持ちかけてきた。しかし、霧矢の答えは決まっていた。

「彼女がどう言うかはわかりませんけど、僕はお断りします」

 霧矢としては、リリアンの信条を否定することはできなかった。かといって肯定する気にもならない。ただ、自分だったら、自分のために誰かが殺人を犯したらいい気は絶対にしないということは確信していた。

 正直な話、昨日会ったばかりの知り合いの知り合いのために、殺人の片棒を担がされるのは嫌だった。人助けは嫌いではない。しかし、そのために人の道を踏み外すのは絶対に嫌だった。結局、霧矢は考えた末に、応じられないという結論になった。

「…残念ね。その子を助けるチャンスだったのに」

「僕としては、どっちでもいいんですよ。呪いにかかった人は知り合いの弟に過ぎませんから、僕が誰かを手にかけてまで助けるいわれはありません。そもそも昨日まで存在すら知らなかったですしね。僕が彼のためにあなたたちを手伝う理由なんてありませんから」

 薄ら笑いを浮かべて、霧矢は言い放った。

「もし、あなたがどうしてもギブ・アンド・テイクを要求するなら、それば僕でなくて、彼の姉に提案したらどうです? 少なくとも僕よりはあなたの申し出に応じる可能性は高いと思いますけど」

 できるなら護を助けてやりたい。でも、誰も手に掛けたくない。少なくとも自分は。

 所詮人間はエゴイストなのだ。特に親しいわけでもない人を助けるために、誰かを殺す理由などない。リリアンの言葉を借りれば、その後、自分はずっと暗い思いにとらわれたまま過ごすことになるかもしれないのだ。秤にかければどちらに傾くかなどいちいち語る必要すらない。

「君は思っていたより、冷たい人間なのね」

「それはどうも。でも、程度の差こそあれ、人間はみな冷たいんですよ。そうでなければ、あなたみたいな思いをする人は今頃この世界にはいませんから」

 霧矢の台詞をリリアンは否定できなかった。仕方なく彼女は話題を変えた。

「そのお姉さんはどんな人なの?」

 腕力が滅茶苦茶強い。怒らせたら命はない。ただ、面倒見はよく、結構みんなから慕われている。強情な面もあるが、悪人ではない。

 しかし、彼女はリリアンの誘いを受けて、どう答えるだろうか? 極悪人は殺されて当然。その手伝いをして、護が目を覚ますのならこれほど安い取引もない。そう思うのだろうか。

 そして、彼女と霧矢の決定的な違いは、助けたい人が大切な存在であるということだ。

「でも、そのお姉さんは契約主ではないし、契約相手もいないんじゃないの? それで仕事をしてもらっても、足がついちゃって捕まっちゃうわよ。さっきも言った通り、魔法か、契約異能か、どちらかじゃないと意味がないのよ」

 雨野に契約相手ならいないわけではない。属性は一致しないが、対属性ではないので契約は可能だ。しかし、性格的にも信条的にもその相手がそんな目的のために雨野と契約するとは思い難い。二人はお互いに無二の親友だが、その点での合意はきっと得られまい。

「…ね。だから、お姉さんは霧矢君にお願いしてるの。君はそのうち契約するんでしょ? さっき電話で話してた子と」

 霜華も霧矢と契約するつもりはあるようだが、果たして霧矢が契約異能を用いて正義の実現の名の下に殺人を行ったと知ったら、どう思うだろうか。

 ただの殺人なら間違いなく失望するだろう。しかし、裁かれない罪人への天誅という理由ならどうか。霜華は自分の行いを認めてくれるだろうか?

 認めてくれたとしても、霧矢は復讐であっても殺人を犯したくはない。なぜなら霧矢は極悪人は殺されて当然と割り切ることはできないからだ。それによって妙な罪悪感を背負うのはごめんだし、下手をすれば、護もその罪悪感に襲われることになるかもしれない。

 この究極の取引は、応じるには代価が不明確だ。霧矢が冷血漢であるならそれはそれで全く問題はなかった。断ればよい。しかし、三条霧矢という人間は中途半端なエゴイストだった。人助けは嫌いではないが、それによって自分が重すぎる代償を背負うならやろうとしない。そういう人間だ。

「……まあ、いきなりこんなことを言われて納得するなら、それはそれでちょっと問題かもね」

 リリアンはポケットを探る。メモ帳を取り出し、ペンでいろいろ書き込んでいる。

「これ、私の携帯番号。回答期限はクリスマス・イブの三日前の金曜日」

 霧矢はためらったが、結局紙片を受け取った。

「じゃあ、霧矢君。私は君が私たちの考えを理解してくれることを期待するわ」

 背を向けると、リリアンは姿を消した。

「……殺人者の殺人者、天罰の代行者…か」

 しばらく、霧矢はその場に立ち尽くしていた。確かに、魔族の力や契約異能で人を殺しても科学的に証明できず、立件は不可能だろう。

 簡単にまとめてしまえば、護を助けたければ、必殺仕事人になれと。そういうことだ。

(ああ! もうイライラする!)

 中途半端なエゴイストは煮え切らない気持ちで、駅の入り口に向かって歩き出した。

 駅前のバスターミナルには病院行きのバスが停まっていた。晴代にこれから向かうとメールを送り、霧矢はバスに乗り込んだ。

 ゆっくりとバスが発車し、白銀の道路を走っていく。

「次は、小林記念病院前です。お降りの際はお忘れ物の無いようお願いいたします」

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