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楔の花嫁  作者: 如月皇夜
第一章 華物語
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第1話 記憶と謎02

部屋に戻った瑠花は、管狐を肩からベッドの上にそっと降ろした。

管狐は「キュゥ」と可愛らしく鳴いて瑠花を見上げた。

管狐の可愛らしい目に映る不愉快そうな顔の自分に、瑠花は小さく苦笑した。


「――今日ね、とても懐かしい夢を見たの」


『キュゥ?』


「私が、まだ小さかった頃の夢なんだけど…『彼』が出てきたの」


『彼』にピクッと管狐は耳を揺らした。

それを見た瑠花は、そう言えばと管狐の頭を優しく撫でた。


「あなたは、彼が私にくれた…だったね」


『キュー』


返事を返すかのように鳴く管狐を、じっと見つめる。

今の今まで忘れてたが、この管狐は『彼』がくれたものだった。

瑠花を護ると約束した彼が彼女の傍にいられなくなって、彼の代わりに彼女を護る為に。

管狐には強い霊力が宿っているから君を護る事が出来る、と『彼』が言っていたのを思い出した。


「何で…今まで忘れてたんだろう……」


彼との絆でもある管狐ずっと傍にいたのに、何故忘れていたんだろう。

瑠花は首を傾げ眉を寄せた。


――何か、おかしい。


彼女の中の小さな疑問はだんだん大きく膨らんでいく。

何故、忘れていたのか。何故、思い出せなかったのか。

普通なら、有り得もしない。彼との絆が、傍にいたとなると尚更…。


「――意図的に、忘却されていた……?」


それなら辻褄は合う。

しかし、そうだとしても何故故意に忘れさせる必要があったのか。

おそらく、故意に忘却させられていたとしたら、彼女の祖母の仕業だろう。


「何故、記憶を忘れさせる必要があったの…?あの記憶に、何の意味があるの?」


考えれば考えるほど泥沼に嵌っていく。

これ以上考えても無駄だと感じた瑠花は、一旦考えるのを止めた。


「……あなたは、『彼』のことを覚えてる?私が忘れてしまってる彼の事――」


『キュ?』


「――もしかして、彼も“人ならざる者”なのかな?だから、記憶を忘却させられてたのかな……」


ツンと管狐をつついて、小さく呟いた。

あの時出会った彼は、もしかしたら妖の類だったのかもしれない。

だから、瑠花を護ってくれたのかも知れない。妖達は、瑠花の価値を知ってるから。

それに、人にしては強烈な気の持ち主だったし、何より“管狐”の持ち主だ。

普通の人間が、『管狐』なんて“霊獣”を持てる筈がない、つまり『彼』は普通じゃない。


「――考えても仕方ないし、私には関係ないか。…『彼』が何者であったとしても、私の恩人には違いないもん。ねぇ『瑠衣』もそう思うでしょ?」


瑠衣と呼ばれた管狐は、答えるように『キュー』と一鳴きした。


――コンコンッ、と扉を叩く音が部屋に小さく響いた。


「瑠花様、いるか?」


「瑠花様~、奈都よ。入っていい?」


鳥原の向こうから聞こえてきた二つの声に、瑠花は視線をそちらに向けた。

シュルルル......と瑠衣は瑠花の首に緩く巻きついて、顔を瑠花同様扉の方へ向けた。


「遠矢?奈都?今日は学校じゃぁ…」


不思議に思いながらもカチャリと部屋の扉を開けた。

扉の向こうには黒髪青眼の青年と蜂蜜色の髪で金眼の少女が立っていた。

彼らの服装が、いつもとは違い私服であるのに気付き、どういう事だと言いたげに、瑠花は視線を二人に向けた。

青年と少女は彼女の疑わしげな視線に、苦笑を零した。


「瑠璃様の言いつけでな、急遽学校を休む事になったんだ」


「心配しなくても、学校にはもう連絡も入れてるわよ?」


そう告げる二人に、瑠花は顔を思いっきり顰めた。


「お祖母様が……。私を本格的にここから出さない気なんだね」


お目付け役の彼らがいたのではこっそり抜け出すことさえ困難になる。

つまり、祖母には瑠花が密かに抜け出そうとしてることもお見通しだったと言う事だ。

用意周到だな…と瑠花は心中で舌打ちをして悔しがった。



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