第6話 生まれ変わったら頑張りや!
第6話です!
今回はハルキがシロに振り回されながら、ちょっと深いことを突きつけられる回。
お笑いと説教のバランスが絶妙な(?)二人の掛け合いを楽しんでください。
生きる屍とか、ゾンビとか……ハルキの迷走が止まりません。
第6話 生まれ変わったら頑張りや!
「ハルキ、お前な? もう死んでるんやで?」
「……は?」
シロは、ハルキを神妙な眼差しで見つめていた。
ハルキもまたシロを見つめ返す。金色の三白眼に映る自分は意外にも怯えた様子がうかがえた。
「なぁ、シロ……あんまり笑えないぞそれ?」
しまった! 不意にハルキは思い出す。この猫神シロはお笑い好きだったことを、
これはシロの振りだったのだ。以前にも同じようにボケに気付けず返答した時『最近の若いもんは……』とめんどくさいことをネチネチと話される。それだけは阻止しなくてわ。
「ってなんでやねん!」
夜勤明けの声は、余韻を残して風邪を切った。静寂が残る。
「いや、ハルキ……恥ずかしくないんか?」
「お前にだけは言われたくねぇ!」
シロは、あからさまに『なんのこっちゃ?』と言わんばかりに首を傾げている。
なんだよ、ボケじゃなかったのかよこのクソ猫。俺が恥かいただけじゃないか。他に人がいなかったのが幸い、
「ねぇ、あのひと……」
「びっくりしたね……」
後ろに二人組の女子高生がいたらしい。静かに行ったようだが、しっかりと一語一句聞き取れた。
二人の女子高生は、何食わぬ顔でハルキを追い越して行った。
……帰ろう。
「そのまま帰っても、また同じことの繰り返しやで?」
シロの声に体が反応したように止まった。
「暇なのはわかるがシロ、俺はたった今、心が折れかけたんだぞ? 家でゆっくりと癒したい。あと夜勤明けなんだ」
「それや。なんでまた我慢すんねん」
「別に我慢なんてしてないさ。ただ休みたいだけ」
「解決しとらんやん」
「別にいいだろ。さっきからなんなんだよ。そういえば忘れかけてたけど、俺は生きてる。死んでーーー」
と言い終えようとした時、またシロが神妙な顔になる。ふと考えた『ワイは神様や』と脳裏に浮かんだ。
「え……」
「もう生まれ変わってもええんやないか?」
「おいおい、俺って……え、ほんとに?」
ハルキは自分の身体をくまなく触れてみた。俺って幽霊!? でもいつ、いつ俺は死んだんだよ!?
「ハルキ……」
「お……おいシロ」
静寂が流れる。
「いや、なんでやねん!」
「…… は?」
「何をとんちんかんなこと言うてるん?」
「いや、俺死んでるって」
シロは『あれま』と小首をかくんとさせた。
「比喩や比喩! どこにそんなSFみたいなことがあんねん。現実的におかしいやろ!」
お前が言うかそれを、とツッコミを入れたくなるが……。
「なんだよもう……マジかと思ったじゃんか」
ハルキはへたり込んだ。
「アホやなぁ。ワイが言いたかったんは、そこやない。お前は自分の主軸を持つべきや言うてんねん」
「主軸?」
「そうや。ハルキはもっと選ぶ側の生き方をせなあかん」
「もっと簡単に言ってくれるか?」
「ハルキは仕事に合わせてんねん。この前の失恋時もそうや。相手の行動で動いてたやろ?」
「まぁ、そうだな」
シロがうんうんと頷き、話を進める。
「これが逆ならええやん。仕事でも自分の考えで動いて、恋愛かて自分から動いとったらダメでも納得できるやろ?」
「つまりあれか? もっと行動しろって?」
「正解や! 半分な」
「半分間違ってるて?」
「間違ってるのは今のまま行動しても同じことの繰り返しやってことや。意識せなあかん!」
「意識ねぇ。俺結構やってると思うぞ? 周りの理不尽とか、あとは……先輩のこととかも」
シロはひょいっと階段を飛びおりた。体に似合わず軽やかだ。
「今のお前は生きる屍。時間と回りに身を任せているってこと。つまり死んでるんや。それじゃあ楽しくないに決まってるやんけ。また薄暗い部屋でボーっとする毎日やで!」
なんでそこまで知ってんだよと言いたくなったが『神様やもん!』と言われるのが脳裏によぎった。でも、
二、三言いたいことはあるが、ハルキの中で納得できることもあった。確かに俺は仕事を休んだり、受け答えも丁寧だと自負している。注意されたくないしな。でも、客観的に見れば、ただの指示待ち人間だ。自分の意思ほとんどない。仮にあったとしても、頭の中で完結してしまう。これは俺が動かなくてもいいなって。
「俺はゾンビか。確かにな」
ハルキは再び歩みを進めた。
シロは追従して言葉を発した。
「そう、前のお前はもう死んでんねん。せやから、生まれ変わって頑張りや
読んでくださりありがとうございました!
今回はシロの「お前はもう死んでる」から始まる、ハルキの価値観ゆさぶり回でした。
笑わせに来てるのか真面目なのか、猫神シロのスタンスがぶれないのが良いところ。
次回はハルキが生まれ変わった自分に一歩踏み出せるのか、そこを丁寧に描いていきます。
引き続き応援していただけると嬉しいです!




