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第5話 お前もう……

なんか今回、シロがちょっとだけシリアス寄りです。

……いやいつも通りかもしれない。

軽い気持ちで読んでください。


第5話 実は……。。。

思えば、この白くて丸っこいやつ。昔、親に内緒で育ててた猫に似てる……ような気がする。記憶がうる覚えだけど、お腹以外はそっくりだ。特にこの金色の目なんてまんまだ。多分。

そのせいだろうか『シロ』と呼ぶようになったのは。

ただ、呼んでいたのが自分だったのか、それとも誰かだったのか、それはもう思い出せない。

けれど、その呼び名だけが、やけにしっくりきた。


「いやぁ、朝から食う唐揚げって最高やなぁ」

ほんと、声だけならおっさんのそれ、あるいは聞く人によってはハードボイルドのそれだ。

この不思議な猫、もとい猫神の名前をシロと呼ぶだけじゃなく、前にも似たような人に会ったことがあるような口ぶりにも思える。

でも、やっぱり記憶がはっきりしない。

時々、初めての土地や人と会った時の『この映像、見たことあるような?』といった錯覚に近いだろう。流石に疲れてるな。


「なぁ、猫って唐揚げ食べても問題ないのか? 買った手前、よくわからないんだが」

「かまへんかまへん! ワイ長いこと生きてるけどな? 病気知らずやねん! 最強やろ? なぁぜぇなぁらぁ?」

「神様だから?」

「せやねん」

ビシッと肉球を前に出すシロ。よく見れば指の一本だけプルプルと伸びている。グッドっサインだろうか。

ハルキは黙ってうつむいた。正確にはシロのドヤ顔についツボってしまったからだ。シロは大柄な印象を受けるが、少しでも笑うと『ワイ、そんな太ってるか?』と卑屈になってしまうことが多い。顔を見せないのは俺のせいいっぱいの気遣いだ。口角が釣り上がってる猫なんてアニメのキャラクター以外で初めて見た。


「なぁかみ……シロ? お前一体なんなんだ?」

「だから神様やて。おうコラ? なに言い直してんねん」

「いや神様って毎回言うけどさ? やっぱり信じられないんだよな。あ、でも喋ってる猫ってのは事実か……」

「もええやんけ。神様が猫でも。つかまあまあ失礼なこと言ってるで自分」

「そうか? まあそうか」

ハルキは言葉を詰まらせた。

考えすぎだろう。記憶のどこかで、もしかしたら昔飼っていた猫の生まれ変わりなんじゃ! と思ったせいだろう。

俺だってそうだ。お前はなんだ? と言われれば『ただの介護士』としか言えない。言うことがない。


自分の中で解決したハルキの脳内では、別の考えが浮かんでくる。


「? なんや?」

不意にシロを見ると、羨ましさすら感じてしまう。

介護士の資格を摂って以降、誰かの世話を焼きながら自分のことをいつまでも置き去りにして、誰かの人生にくっついてばかりで、自分がどこにもいない。


「……誰かのためになることでしか、自分を保てない気がするんだ」

「唐突やな。萎えとんのか?」

「まあ暇だろ? ちょっと聞いてくれよ神様!」

「ほんま失礼やな。まあええ。神様がなんでも来たるわ! あの美希って女の話か?」

俺は咽せた。この猫は……。


「話聞いてたか? てかシロ、お前こそ失礼だそれ!」

「いやぁ、ごっつ悩んでるからてっきりな! すまんすまん、堪忍やでぇ」

そう言いながら、シロは片手を上下させる。謝ってるどころか『かまへんかまへん』としか見えない。


「やっぱもういい。疲れたからとっとと帰る」

「まちぃや! ワイが悪かった! なんや自分の人生に疲れたんか? んん?」

「わかってたなら言えよ最初に!」

「はいはい、ほんまきもったまの小さいやっちゃで」

俺はシロを睨め付ける。


「わかったほんまにごめんやで。にしても、今時の人間は自分に厳しいなぁ? 前に話した女覚えとるか?」

「……あぁ、なんか風船を売ってたって女の人の話だろ? それがなんだよ」

「似てるって話や」

「どこが似てるんだよ、商売人じゃなく介護士なんだよ俺は!」

「せやけど、あの子も言ってたで? たまにくるおっちゃんの臭いとか、関わっただけで自分にも臭いつくんやで? ハルキの仕事やてそうやろ? 爺さん婆さんの体ゴシゴシするんやろ? もろやん! 臭いどころやないやん! 似とるやん!」


いまいちシロの言ってることの本質が掴めない。


「似てるって、まぁ、臭いだけだろ?」

「話は最後まで聞きぃや。前置きや前置き。似とるんは考え方や! お前さんたち二人はどこか似とるんや。共通しとるんは自分を蔑むとこやな」

うんうんと腕組みするシロにふざけた様子は見られなかった。いたって真面目に言っているみたいだった。

ハルキはそんなシロの話に耳を傾けてみた。

正直、確信はつかれていないし、心には響いてこない。でも、なんだか突っかかりが外れそうで外れない。それがなくなるような気がしたんだ。


「確かに、ミスしたり疲れてたりする時はネガティブになりやすいけどさ? 俺はその女の人みたいに立派じゃないぞ? そこまで自分を責められないよ。いたって普通。無理に急がなくてもいいことは後回しにするし、それこそ人に任せたりもするし」

「せやな。せやけど自分、さっき言ったよな? 『誰かのためになることしかーー』なんちゃらかんちゃらって。誰かのために生きるってことは『自分のことをほっといてええ』ってことやないで」

「いや、だから別に無理してないって。サボれるところはサボってるって話だよ」

「アホやなぁ、だから言うてもうてるやん。それやて」

「はい?」

どうしてもシロの言ってることがわからない。というか噛み合っていない。


「シロ、言ってることがわかんないぞ? 結論言ってくれよ。何が言いたいんだよ」

「わからんかなぁ」

シロは神妙な顔つきと金の三白眼をハルキに向けた。

「ハルキ、お前な? もう死んでるんやで?」

ここまで読んでくれてありがとうございます!

最後の一言で全部持っていく猫神シロ。どうなんだろうな……。

次回もゆるっと更新しますので、また覗きに来てもらえると嬉しいです。


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