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第4書 念願の初スキル使用!!

「聡殿、そちらはまだ終わっておりませんか? 魔法が使えない訳ですし、時間がかかるのは仕方ないことですが、夕方頃には夕食の時間もありますのでそれまでには終わらせといてくださいね······!」

 ウェルターが佇む先は塵1つ無く、乱雑に置かれていた物が綺麗に整頓されていた。

 5年もほったらかしにされていた物置をほんの2、3時間で完璧に綺麗にしてしまうことに驚いてしまうが、それほどまでの技術を持ちながらなぜ5年もほったらかしたのか、疑問を抱いてしまう。

 物置部屋の扉を開こうとドアノブに手を掛けたウェルターは何かを言い忘れた様子で視線をこちらへ向けた。

「ちなみに夕方までに終わっていなかったら野山に置いていきますからね······」

 ━━━ガチャ! ············。

 俺の体中は冷や汗まみれで手の震えが止まらなくなってしまった。

 このまま掃除が終わらなければ野山に放り出される! そんなことされてしまえば確実に明日には土の糧になってしまうじゃないか〜!

 そうだ!! 俺のユニークスキルに良いものがあったような。

 俺はステータス画面を開き、ユニークスキル欄に記載されていた1日祈願を押した。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

・1日祈願

 :1日1回願ったものを手元に生み出すことが出来る。しかし、盛大すぎる願いをすると高い確率で失敗する。さらにこれまでこのスキルで得たスキルを使えなくなる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ふむふむ。これならここの掃除をすぐに終わらせられるかもしれない!

「早速、使ってみる!」

 俺はステータス画面に記載されている1日祈願の表示を押す。その時だった。 目の前に音声入力画面が出現し出した。

 これに声をあてるのか?

 俺は目の前に出た画面に声をのせる。

「我にこの空間を清くする能力を与えたまえ!」

 ━━━ポワァ〜ン。

 俺の音声を読み取った音声入力画面は俺の身体に纏い付いた。もう一度ステータス画面を開くとスキル欄に新たな欄とスキルが加えられていた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    名前 : 意志紙 聡


Lv     1


HP   106   防御力   41


MP    35   俊敏    31


攻撃力   66


スキル


・ステータス偽装

 :自分と従魔以外の者には自身のステータスを偽装した状態で見せることが出来る。

・アイテム収納

 :異空間にものを収納したり取り出したりすることが出来る。

【祈願スキル】

[空間洗浄]

ユニークスキル


・経営好調

 :行っている経営が常に好調になる。

・1日祈願

 :1日1回願ったものを手元に生み出すことが出来る。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「空間洗浄? これが今の俺を救う能力······! とりあえず、使ってみるか」

 俺はその能力を使うために指の先にスキルを灯す。指先でホコリや汚れをなぞるとするすると消えていく。

「オォー! これなら夕方までに間に合うかも! よし、早速この能力で掃除していこう。おりゃ~!!」

 この後、俺は死に物狂いでホコリだらけの物置部屋を1日祈願で手に入れたスキル・空間洗浄で隅々まで綺麗にするのであった······。


「意志紙さ〜ん、そろそろ夕食の······!? ど······どうしたんですかその汚れた服は?」

 物置部屋を掃除し終えた俺の汚れた服装を見て柊は驚いているようだ。

「意志紙さん······、先にお風呂に入った方が良いかと······」

「あぁ、そうするよ······」

 俺は疲れた身体を無理矢理起こし、湯が沸いているだろう浴室へ向かった。

「······お風呂ってどこだ?」

 柊に浴室の場所を聞くのを忘れてた。しかし、この屋敷は外見よりも広く感じるが気のせいか?

 俺はなんとなく足を進め、廊下を歩いていく。

「聡殿、こちらで何をしているのでしょうか?」

 今夜の夕食を運ぶメイドと出くわした。

「お風呂に入りたいんですが、浴室が何処にあるのか分からなくて······」

 髪を軽く掻き、困った様子を顔に浮かばせる。

「浴室はこの道を真っ直ぐ行った突き当たりにあります。先ほどお湯を淹れたばかりなのでごゆっくりと寛ぎ下さいませ」

 メイドはささやかな微笑みを残してダイニングへと食事を持って行ってしまった。

 とりあえず、お風呂に入るか。

 浴室に着いた俺は脱衣所で掃除で汚れた服を脱ぎ、自室に備えられていたタオルを巻き、浴室へと入った。

 内装は磨かれた石の壁と床に豪華な銀色の湯船が部屋の大半を牛耳っていた。

「わぁ〜! これは凄いな~······」

 俺は身体をお湯で流し、風呂に浸かった。

「クハァ〜! 気持ちぃ〜!! 労働後の風呂は身体に沁みる~!」

 これからは毎日、こんなに良い環境で暮らせられると考えるとこの世界も嫌じゃないな〜。確かこの後、夕食だよな······、そろそろ行かないと心配されるかもしれないし上がるか······。

 俺は濡れた身体をタオルで拭き、用意されていた服を着て、ダイニングへと向かう。

 ダイニングには料理を用意している執事たちと用意を手伝う高橋さんと比久見さんの姿が見えた。

「高橋さんと比久見さん······? 何をしているんだ?」

 俺の声に気付いた二人は返答を返す。

「メイドさんたちのお手伝いをしているの。············んん〜? あなたは······石井さん?」

「違うわよ楓。この人は石崎さんよ!」

 ことごとく間違えられる俺の名前に少し沁々してしまう。

「意志紙です。頭の隅にでも覚えといてください······」

「······。とりあえず、もう少々夕食まで時間がかかりそうだから部屋で休んでいてください!」

「あ、あぁ······」

 俺は二人に言われた通りに部屋で少々休もうとダイニングを出ようとした時だった。

「やっと来たのか聡!!」

 あっ!!

 俺は思わず背後を振り直した。するとそこには先ほどまでともに物置部屋を掃除していたウェルターの姿があった。

「ウェルターさん?」

「聡、早速仕事だ厨房まで来い!!」

「えっ······?」

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