第1書 グラスを掲げた時は、天井に注意しよう!!
空は暗く、周辺は住宅に囲まれた道を千鳥足でゆっくりと歩く。
━━━今日の飲み会、いつもよりも飲み過ぎた。飲み会の後半の記憶が曖昧なんだが······。ハァー······、寒くなってきたな~。早く家に帰ってお風呂に入りてぇ。
自宅へ向かう入ったばかりの新入社員。仕事用のバックを背中に背負いながら、家へ帰る。
━━━何だろう······?歩いて行くほどに家が遠くなっていく。酒の飲み過ぎで幻覚が見え始めたのか?気を失う前に···家に······か······え······ろう·········。
男は道端の真ん中で気を失い倒れこんだ。
男が目を覚ますと見慣れた部屋の玄関に倒れこんでいた。
「ん〜···、ハァ〜!!ムニャムニャ······」
━━━俺、いつ家に帰ったんだろ···?頭、痛ったー!!とりあえず水飲も······。
男は靴を脱ぎ、頭を抱えながら壁づたいで台所へ向かった。
「ジャーー!······ポタッ······ポタッ」
男は水を飲み終えると汚れきった服を脱ぎ、お風呂へ入った。
「ハァ〜!気持ちぃ〜!!たまには朝風呂も良いな~」
男はお風呂から上がると毎朝のルーティーンであるコーヒーを淹れ始める。
「ふ〜ん、ふふふ〜ん。今日は久しぶりに散歩でもするか······」
男は散歩をするために外へ出る準備をする。
「プルル、プルルル~」
男はテーブルに置いておいたスマホを取り、電話に出た。
「意志紙先輩〜!!やっと出た。意志紙先輩、今日の合コンに来てくれませんか?」
今、電話をしているのは半年前まで同じ大学に通っていた後輩の幸次だ。
「何で俺が行かなきゃいけないんだ!」
「頼みますよ意志紙先輩〜!!合コン今日なんですよ。このまま1人足りないまま行ったら即解散になっちゃっておひらきになっちゃいますから!!頼みますよ。ご飯代は僕が奢りますし、何もしなくて良いので!!」
必死そうにする幸次を電話ごしでも感じたため、なくなく頼みを聞いた。
「じゃあ、全員揃った訳だし、始めようか。俺の名前は佐々木幸次、◯▲大学の2年生です!」
「俺は柊まさお、幸次と同じ大学の4年生」
「俺は社会人してる意志紙です···」
「私は比久見楓、◎◇大学の2年生です!」
「私は高橋沙里子、私も◎◇大学の2年生です!」
「·········」
「ごめんなさいね。先輩はあまり前に出るような人じゃないので緊張しちゃって、この先輩は立花瞳、そっちの意志紙さん?と同じ社会人ですよ」
「やめてよ楓ちゃん!」
「まぁ、気を取り直して乾杯しましょうか!」
幸次たちは頼んでおいた飲み物を持って乾杯をする。
「じゃあ、いきますよ。せーの、乾杯~!!」
「カーン!」
グラスをぶつけ合うと突然、謎の魔法陣が天井に現れた。とてつもなく輝く魔法陣は彼らを包み込み、消失するのであった。
━━━ん~、あれ·········?ここはどこだ?
意志紙の目の前には日本で見たことのない神殿に複数の神官が魔法陣を囲むように立っている。
「ここは何処なの?」
「何で俺たちはここにいるんだ?」
合コンを共にした幸次たちも突然、呼び出されて困惑しているらしい。
意志紙たちが周りの様子を窺っていると神殿にいる者の中で最も偉いであろう者が話しかけてきた。
「我が言葉に応じてくれてありがとう勇者殿!おそらく勇者殿たちは何故呼ばれたのか分からず、困惑しているだろう。だから、まずは説明をさせてくれないか」
事情を知るために俺たちは王様から話を聞くことにした。
「メルシア!すまぬが我はこれから出かけなければならない用事がある。勇者殿たちに話しといてくれ!!」
「ハッ!承りました······。勇者様方、続きは客間にてお話しましょう」




