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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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勇者PTは隠れオタク、厨二病、学級崩壊。 まず訓練しろ!

作者: しの玲音
掲載日:2025/09/28

※暴言にご注意ください

 

「うるっせぇよ。

 知らないったら、知らないんだから。


 お前こそ、剣の訓練しっかりやんなよ!

 人のこと、ウダウダいってないでさ!!」



 可愛らしい顔に似合わない迫力で、女の子が叫んだ。


 目はつぶらな茶色で、髪の毛は明るめの茶色、見た目はゆるふわなのに。



「おまえが、変な魔法になったのがいけないんだろ!!

 みんな、お前のこと、弓キャラだとおもってんぞ!


 弓もろくに引けねえのに、何言ってんだよ。ドクズがあ!」




 仲裁しようと、一番年長者のような、どうにも制服の似合わない男が止めに入った。


「ドクズは、いいすぎでしょうが…

 あずさちゃんも、女の子なんだから、もう少し言葉遣いに…ね。


 一応、うちのスパンクが、防音結界張ってくれてるけどね…」



「うるせぇよ。おじさんっ、

 こないだ色素薄い系の可愛い若い女の子にポーっとなってたくせに!


 この身の程知らずが!

(いつも思うけど、スピリットウルフに、スパンクってつけるのどうよ?!)」



 隣にいた影の薄い少年が、イライラと間に入る。


「いや、だいたい、おまえが、遊〇王もヴァ○ガ〇ドも、知らないのに

 そんな魔法になったのが、悪いんだろう……


 ちゃんと、決まったセリフぐらいいいなよ!

 ……なんで……なんで……」



「方向性が、違うんだよっ。

 方向性が。


 やったことないんだから、知らなくても仕方ないだろうが。


 それに、向こうのとも違うから、

 今一生懸命調べてるんだよ! こっちは!!」




「カードゲームを、……馬鹿にすんなよ」



「ちげーよ。ち・が・うだろ!

 おまえにだよ!

 オタクの癖に、オタクなの隠して、カッコつけてんの、わかったんだよぅ、こっちは!


 隠すなよ! 堂々としろよ、堂々と!


 従魔に影豹(かげひょう)選んで、厨二病すぎんだろうが。隠れてないんだよぅ、クソがあ」



「はは、おもしれー

 あずあず、すげー切れ散らかしてるー(∩´∀`)∩」



「なあにが、あずあずだよ。ぶりっこか!!

 さっさと、てめえのデッキくらい覚えておけよ」


 また、初めの少年が言った。彼も結構、詳しそうだ。



「こっちが、言えなんて一言も言ってねえだろうが!

 とっととサボってないで、


 訓練しろや!このカス」



「そもそも、おめえが、回復魔法も運(・)しだいって、


 なめてんのか、この野郎」


「野郎《やろう》じゃ、ねえよ。

 おまえが、すぐに怪我すんのが、悪いんだろうが。


 おねえちゃん、侍(はべ)らしてないで、ちゃんと剣でも振っとけよ!」



「なにい、やきもちかあ?

 ロベリアちゃんの方が美人で貴族で、

 雷魔法に加えて回復魔法まであるし、

 おまえより何倍も役に立ってるもんなあ。


 まあ、こ(・)の(・)オ(・)レ(・)サ(・)マ(・)は、

 勇者の中でリーダーだからな。モテるのは当然。


 カッコイイに決まってるだろう」



「キッショ! 話通じねー」



「あずあず(^_-)-☆ 毒舌すぎる~!」



 後ろに侍らせている女子たちには、もちろんこの会話は聞こえていない。

 ただ、少年、田上(たのうえ)を見てニコニコしてるだけだ。



(ふん、ちゃんと私だって、魔法カードの研究してるんだから……


  ……もっと、真面目にやってよ)




 肩に風を切って去って行くあずさを見送りながら、山田は飄々(*''▽'')とした態度を崩さないまま、大輝に向かって言った。


「まあ、あずあずが切れちゃうの、珍しいよね。

 やっぱり、タノが訓練なのに女の子連れてきたのが、悪いよね。


 それにしても、こっちの女の子がかわいいのは本当。

 もちろん、あずあずも可愛い。

 超絶☆美少女系だよね。(´ε`;)ウーン…王道系?

 すっごい毒舌だけど。


 ダイキんは、この間見かけた色素薄いってか、

 儚げ系のほうが好き?

 俺、こないだ、( *´艸`)めっちゃキレーなナイスバディのおねーさん見つけた

 背もめっちゃ高くて。

 俺、ああいう迫力ある美人系が好みなんだなあ」


「あのねぇ……

 はー、それに、そのあだ名は……

 なんというか某優良メーカーさんと同じだから……申し訳ないから、やめて……

 それに、そんな目で見てないよー


 ……ただ、きれいな子がいるなーとは、思ったけど」



(あー男子、うざい。女の子の話ばっかり。

 ふん、どうせ毒舌よ。

 は~こっちは、いつの間にか王子様の婚約者になんかなってるし、わけわかんないよ)




 鮎川あずさは、日本でも珍しい全寮制高校の1年生だった。


 あずさの両親が数年前に揃って亡くなった。

 しばらく親戚にたらい回しにあったが、親が残してくれたお金で、全寮制の学校に進学することができた。


 あの、両親が亡くなった日のことは、忘れられない。


 あずさには、第六感というか、霊的なものが見える。

 それは、小さな時からだった。

 親は優しく理解があったが、本当にあずさの言うことを信じていた訳ではなかったのだろう。



「おかあさああん、おとおさああん!

 行かないで!

 今、行っちゃ、絶対だめなんだよう!!!」


 ワンワン泣いてすがったが、両親は困った顔で宥めるように笑って車に乗って出て行った。


 冷たい霙(みぞれ)の降る日だった。

 あずさの小さい手が霙にあたって真っ赤になって、赤い顔は涙でぐちょぐちょになっても、両親は行ってしまった。


 そんな両親が帰って来たのは、数日後の葬式でのことだった。


 周囲の大人たちが勝手に仕切って人が右に左にせわしなく動く姿だけが幼い目に映っていた。

 あずさは涙を流し、じっと空中を見つめていた。


 方々親戚の間を行き来するうちに、あずさは自分の存在をなるべく目立たぬように……屋根の裏にいる鼠のように身を潜めて生きて来た。

 やっとのこと全寮制の学校に入学して「もう面倒を見なくていい」と親戚は胸を撫で下ろしたが、あずさの方がもっとすっとしたものだ。


 そんなあずさが、少ない小遣いで、タロットデッキを買ったのは中学に上がってすぐだった。

 タロットに興味を持ったのは、もっと小さい時。

 親戚の年上の女の子の持っていたのだが、ちょっと使って飽きてしまった。

 その捨てられていた占い系雑誌の付録のカードが初めてだった。


 従姉は二十二枚中二枚なくしていた。


 でも――枚数は足らなかったが、全く気にならない。


 楽しかった。


 元からのあずさの直感ゆえ、非常に正確に当たった。

 中学の同級生も、面白がって初めは占ってもらいたがった。

 が、余りに当たりすぎるため、気味悪がってあずさは次第に遠巻きにされてしまった。


 そうこうしているうちに、そこの学校はまた家が変わるため、転校となった。

 もし、あのままいたら、いじめに発展していたかもしれないのでよかったのかもしれない。

 そう軽く前向きに考えていた。


 あずさは、顔が整っていたから、大概初対面では反応がいい。

 初めから嫉妬全開で、という女子もいたが、ごく少数だ。


 やっと掴んだ自由だが、高校の校則が厳しかった。

 ちょとした反抗心から髪を染めたが、酷く注意された。

 染めなおすよう追い出されたような形で寮を出されて来た。



 ――そんな時に、


 この異世界召喚にあったのだ。



 あずさが転移した場所は、異世界のホノリア王国というところだった。


 いきなり宮殿のような場所に、転移させられ、慌てふためいているうちに、やれ訓練だ、やれ保護者として婚約者が必要だとか、あれよあれよと決められて、見上げると横にキラキラしい王子様が婚約者だと言って並んでいる。

 まあ、金髪碧眼のちょっと線は細いがハンサムな青年だったので、自己肯定感の低さもあって、これでいいかと軽く思っていた。


 国務大臣といわれるおじさんに、自分が勇者だと説明され、魔王を倒すために隣国の学園というところに通うよう言われた。

 勇者になって、魔王を倒すなんて寝耳に水だ。

 いくらなんでも十五歳のもうじき十六歳の女の子には無理だろう。


 とりあえず、学園に行くまでは、教師について、ホノリア城で訓練するようにとのことだった。

 まだ、実技の講師は来ないため、この世界の常識を勉強させられた。


 ここまで持ってきたタロットカードを引いてみても、自身の混乱が酷いせいかうまくまとまらな状態だった――



 数日して神聖国の神殿から転勤で来ていた王国担当だった神官が派遣され、神聖力の練り方や回復魔法の方法を教授された。


 しかし、一向に能力が目覚めない。



 それを神官や大臣に言うと、


「おかしいですね。勇者召喚で女性なら、

 聖女に決まってるでしょうに!」


と、しかめっ面をされてしまった。


 

 神聖国は勇者を統括する立場で、他の勇者の能力を開花させるノウハウも持っている。


 あずさの担当神官は、回復魔法の訓練は一度やめて、どの能力があるかを試すことにした。


 剣、槍、弓、火魔法、水、雷……


 いろいろ試してみたが、全く反応がない。学園入学までもう時間もない。



 しびれを切らした神官は、


「自分が一番得意なことを、集中して!

 具現化するように集中してみてください」と、汗をかきながら言った。


 自分の得意なことならただ一つ――そう、遠読(とおよ)み、予知?


 ……カードだ!



 その瞬間、胸がかっと熱くなり、目の前が光で真っ白になった。



「やりました! せ、成功です!!」


 神官の声も



 その時のあずさには届かない。


 胸がどきどきと熱くなり、高揚する。


 光の中に黄金の三角形の枠が現れ、中には青い惑星のような目が現れた。


 そして、目が消えそのうちのこの異世界のさまざまな場所も――映し出された。


 自然が、

 動物が、

 木や花々、人々が、

 すべてが瑞々しく映っているようだった。


 なんて、美しいのだろう。


 あずさは、衝撃と深い感動を覚えた。


 それらが金の霧のようになって、

 輪を描き出すと――

 見覚えのあるカードの姿になっていった。


 そして、あずさの手の上に、

 真新しいカードが残って、


 また、光りとなって霧散した。



「あずささまの能力は、恐らく千里眼のようなものでしょう」

「それは、旅が終わった後、より我が国のためになりますなあ」

「しかし、やっと聖女さまが出現すると期待していた多くの国民は、がっかりですなあ」

「確かに。聖女のほうが、なんというかありがたみがありますなあ」

「まったくもって、残念」


 そんな声を聞き、呆れながらも、あずさは自分なりに自身の能力を鍛錬していこうと思ったのであった。


 自分のできることをしよう、ただ、それだけだ。



 学園に入学する前に、神聖国に勇者が一堂に会すこととなり、一度そちらへ向かうこととなった。


 最短距離だったそうだが、長旅で、酷く時間がかかった。

 馬車の移動なんて思いもしなかった。

 馬は急ぎのため魔獣で倍以上の速さだというが、あずさは乗り物酔いでおかしくなりそうだった。



 そして、神聖国の大神殿で、勇者のほかのメンバーと会った。


 同年代三人と、一人は大人で、自分以外みんな男。


 正直不安でがっかりした。


 ほとんど勇者メンバーはこの神聖国で召喚されたという。



 剣を扱うという田上(たのうえ)圭(けい)という少年は、


「ふん、女なのに、聖女じゃないのかよ!つっかえねーな、どーすんだよ」


 いきなり暴言を吐くし、



「へ~、王道系美少女か! あゆあず?

 あずあずだね。オレ、山田晴兎(はると)。


 天気ピカピカ・ハレうさぴょんだよ!


 よろしく(*^▽^*)ノ~~~」


と、勝手に綽名(あだな)をつけて呼ぶし、



「………………」挨拶もしない。


 こいつは藤川(ふじかわ)悠人(ゆーじーん)、ユージーンと読む。

 この挨拶なしと暴言男はあずさと同じ年で、綽名は一つ上だという。



「やあ、鮎川あずささんだね。ぼくは、尾野(おの)大輝(だいき)っていうんだ。

 盾役、タンクだよ。  

 ……二十三歳なんだ。年上だけど、よろしくね」


 大人の人だけは、まともそうだった。



 神聖国では、神獣のパートナーが持てたことだけが、よいことだった。


 神獣とは、大神殿の奥殿にある『ステアの庭』で、神聖力によって生まれる神聖な動物で、類(たぐい)い稀な能力で勇者をサポートするらしい。


 世話役以外ほとんどのものが入れないステアの庭は、柔らかい光にあふれ、全てが何か立体映像かのような現実かどうかわかりにくい雰囲気があった。


 紹介された神獣の中から、自分にあったものと契約を交わす。


 勇者のみなはそれぞれ直ぐに気の合う相手を見つけたようだった。


 ただ、タノこと田上は、獅子タイプの神獣に余り乗り気でない様子をとられているのにもかかわらず、執拗に迫っていたが。獅子は露骨に嫌な顔をしていた。


 あずさは、見渡しても屈強そうな獣ばかりで、悩んでしまっていた。


 するとその時、耳の後ろでさわやかな水の音と共に何かが羽ばたく音がして――

 いざなわれるように後ろを見上げた。


 そこには、

 水色の…水そのもののような鳥が浮かんでいた。


 理知的な美しい目は吸い込まれそうだった。



『ワタシに、興味があるの?』


 不思議な声が、口が動いているか分からない、その鳥から聞こえた。



 あずさは、おずおずと、その鳥に聞いた。


「あなたも、神獣?」



『そう、清流のスピリットバード。

 水を操り、

 遠くまで行ける』


 スピリットバードとは、精霊鳥という意味だろうか、スピリットバードの目を見つめていると、あずさの目に急なヴィジョンが現れた。


「あなたがいいわ! あなたは、わたしでいい?」


『ええ、いいわ。

 あなたは粗野じゃなさそうだしね』



「貴女の名前は、桜久來(さくら)」


『わたしは、桜久來』………




 桜久來(さくら)は、梓の木が別名を水目桜《みずめざくら》というところからきている。


 あずさと水のスピリットバードである桜久來と、自身の能力、未来久しく来るという意味を込めて名付けた。

 彼女のお陰でステータスやイベントリを開くことができるようになり、ステータス内で自分がどんなスキルと持っているか正確にわかり、自分の戦い方も分かるようになった。


 本来のあずさの能力は、

 やはり遠見、

 極めると千里眼になるようだ。


 戦闘も決して出来ない訳ではなく特殊なだけで、ポジションは後方も後方だった。



 あずさの戦闘スタイルは、魔法でタロットカードを出して、その出たカードの能力で攻撃する。


 出してみないと分からないというものだった。


 桜久來が、優秀で戦闘力も高いので助かったが、咄嗟に攻撃されたら直ぐに負けてしまうだろう。呪文詠唱より時間がかかる。


 それでも、護身に弓を習ったり、カードの勉強をしたり、学園にいる間は頑張った。


 学園は一年間と聞いていたのに、前回の勇者の失敗のせいで二年伸びた。


 それでもなんとか学園で技術を身に着けて、急いで勇者の旅に出たが――


 なかなかの混戦状態で始まってしまった。



「おら、おまえなにしてんだよ、早くしろよ!!」


『スプレッド!ドロー』


「おい、そっちの熊、おさえてよ」



『カップのⅦ〈正位置(アップライト)〉を召喚!


 誘(いざなえ)え!己(おの)が恋(こ)ふる桃源郷(とうげんきょう)の夢!」



 周囲のモンスターがばたばたと眠りだした。



 ――あずさのスキルはこのように使うのだった。




「くっ! なんで、お前だけ、

 ターン制なんだよっ」



 戦闘後、剣を握りしめていたタノが、イライラと吐き捨てた。


 残念ながらあずさの現在でのレベルでは、自由に好きなカードを引くまでには至らないでいたのだ。



 そんな風に陰険な感じで旅は続いた。



 そんなこんなで、十年、

 なんちゃら十悪鬼や、

 ほにゃらら四天王だのを倒して、


 こうして魔王の面前までやって来た。


 勇者のレベルも80を優に超えた。

 


 目前の魔王は身体が四倍ほどもありそうだ。


 真っ黒で如何にも強そうな強者のオーラで、王座から恐ろしい眼光で睨みつけていた。



 リーダー(自称)のタノが、号令をかける。


「よし、お前ら、準備はいいか?!」

『スプレッド。ドロー!!』

「おう!」

「('◇')ゞ」

「頑張って、皆を守るよ」



『!(ナンバー)ⅩⅩ(トウェンティ)Ⅰ(ワーン)ザ・ワールド!!〈正位置(アップライト)〉!!永劫(えいごう)の焔(ほむら)に燃えよ、最大隕石をその頭上に落とせ!メテオ!!!!』

(キターー!!急に一番強いカードが来たーーーーイッケー)



 広いホールを全てをつぶすほど、

 大きな燃え盛る隕石が、頭上から落ちて来た。


 勇者一行は大慌てで、一斉に後ろへ下がった。

 タンクの大輝は、最大の防御シールドを展開した。



「『ターンエンド』!

 ワタシが強えワケじゃねぇ……お前が弱すぎるんだよ!

 この弱昆虫野郎!


 と、……これでいいかな?」



「……よくないよ!

 なんでこんな時にそんなセリフを言うんだよ。


 よりによって、城之〇かよ!

 ニワカが!!


 ……そもそもなんで知ってんだよ。その台詞(セリフ)?!」


 急に語気も荒くしながら、いつも影の薄い藤川が言った。



「あんたの頭の中からだよ!

 しょっちゅう考えてたじゃん。


 今も見てやろうか?


 —―ヴィジョーン・アーーーイ!」


 両手の親指と人差し指で円を作って、

 他の指をピンと開いて眼鏡のポーズをとってあずさが言うと、


 藤川が、いやあ、だめっ、なにすんだようとか言っていたが、


「ん?

 おーぞらよ~~~、

 ほにゃらららららーー

 スターちるどれ……


 なんで、歌なんだ??」



「ぎゃああああーやめろー、

 お前に分からないように、頭ん中で歌ってんだよう!」



 大輝は目を瞬かせて、ぽつりと呟いた。


「んん? 懐かしいな……

 父さんがガン〇ム好きでさ、

 カラオケでよく歌ってた曲だ。た〇じんだよな」



「わああぁぁ……」



「……うん、なんかごめんね。

 ニワカで……(やっぱり大輝さん、おじさんじゃね?)」



「……おいっ、そこは、BEY〇ND THE T〇ME (メビ〇スの〇〇…)じゃないんかいっ」


 タノにまでツッコミを入れられた。


 藤川は、かなりのダメージを受けたようで、もうサン値は0でうがうが言って震えながらしゃがんでいた。



 勇者一行は収拾のつかない、


メビウスの環のような完結しない空気に包まれた。



 結局、そのあずさのカード一発で魔王を倒すことができたのだった。


 魔王城は半壊し、残ったモンスターは蜘蛛の子を散らすように逃げ惑っていった。


 もし、尾野大輝が防御シールドを展開するのが遅れたら、勇者一行も皆、巻き込まれて、ここにいないかもしれなかった。(……うん、ごめんね)



「……なんで、そんな隠し玉みたいなの、

 なんで今頃だすんだよっ。この、クソが」


 ぼそっと、タノが言った。



 そうして、皆で別々におのおのの国へと帰って行った。


 そうして、10年にも及ぶ勇者の旅は終わったのだった。



 ホノリア王国に帰ると、アホの婚約者による断罪が待っていた。

 

 よく考えてほしい。


 ――アホからである。



 慌てずとも、あずさは遠見、今や千里眼持ち。


 ずっと前から分かっていたので準備は万端だった。


「元勇者の鮎川あずさよ! お前は、

 十年という長い年月を怠惰に過ごし、

 王太子であるボクをないがしろにした。


 しかも、今ここにいる愛らしい男爵令嬢のロベリア嬢を、ずっといじめていただろう!


 万死にあたいするっ」



(どうやったらいじめられるんだ?

 ……ま、いっか。


 粛々と……)


『スプレッド・ドロー』


 空中に派手な演出の様にキラキラしたカードが舞う。


 肝心の回答面は、因みに引くまで光っていて後ろからも見えない親切設定だ。


 バンケットホールの貴族の皆は、好奇心に満ちた眼差しでそれを見ていた。



『ソードのⅡ〈逆位置(リバース)〉警戒 をサクリファイス!』



 レイピア剣が二本召喚されて、


 王太子の足元をぶすぶすと突き刺す。カードのた(・)だ(・)の(・)効果だ。



『Ⅷ(ナンバーエイト)ジャッジメント!

 〈正位置(アップライト)〉!

 正義の剣と秤を翳せ、真なる罪人(つみびと)を暴き、断罪せよ!』



 あずさはこの期に及んで状況ぴったりの強カードを、魔王を倒して更に上がったレベルのせいか、また引いた。


 本番に強い。


 これも千里眼の効果か。


 サクリファイスの効果で、弱体しているはずの剣にまで弄ばれている王太子は


 「ぼ、ボクは王太子だぞう…こんなことして、キサマなんか…」


 そう言いながらも涙と鼻水でひどい状態だ。


 レイピアが消えると、そんな情けない顔のまま立ちあがって、それでも気取ったポーズを取った。



 あずさはスウっと息を吸うと、機関銃のような速さで言い放った。


「さっき帰ったばかりで、いついじめる暇(ひま)があるっていうんだ!



 それよりお前の腹がそんなに出たことが驚きだよ!


 一生懸命隠してるつもりだろうが、

  ………こっちは、まるっと、お見通しだ!


 ほら、息吸って腹を引っこめるな、往生際が悪いな!


 むしろ、長年浮気してたおまえの方が、断罪を受けるべきなんだよ!!」



「……だにぃ?!」


 あずさはジャッジメントの効果で皆に見えるように、ヴィジョンスクリーンを多方面に展開して、王太子とロゼリアちゃんが浮気しているラブラブ映像、破廉恥なシーンまで映した。


 そう、このためにホノリア城に来たのだ。


 二人は情けなく、ぎゃ~~とか言って、

 飛び跳ねて消そうとしているが、


 無駄である。


 ホール全体に、しらーとした空気が流れていた。

 もう十年もこんな王太子に我慢していたのだ。

 反応としては、流石上流階級お優しい、そうその時は思っていた。


 この騒動の結果、王太子には優しいどころか非常に厳しい罰が下された。

 継承権と王子の位剥奪と男爵家への婿入りだ。

 もちろん持参金も援助もないものだった。



「桜久來(さくら)、ありがとうね」


 そう、桜久來の能力は水を操ること。

 水さえあればどこでも出歯亀(でばがめ)ができるのだ。


 それを自身の能力と合わせて、この日の断罪のために撮り貯めておき、ヴィジョンスクリーンに映して見せた。


 ちなみに、ホノリア全土に生中継したのだ。


 きっと、二人はホノリアにいる限り、針の筵(むしろ)の生活が待っている。



 そうしてあずさは――

 ホノリア城からさっさと出てゆき、また戦場近くまで戻って別の国に行く。


 すっきりと晴れた気持ちになるかと思ったが、

 案外、無感動だった。


 妙に凪(な)いだアンニュイな気持ちで、元の道を黙々と歩いて行った。




「よう」


 ついこの間まで良く聞いていた声だ。



 振り向くとやはり、背が高くこの長い旅で体格が一層大きくなった大輝が立っていた。


 出会いの初めは、いきなり学級崩壊のクラス担任を新卒でさせられたみたいな人だと思った。


 でも彼が居なかったら、この勇者の旅も皆我慢できなかっただろう。



「どうしたの? まだこの辺りに居たりして」


「ああ、モンスター狩りを手伝ってたんだ。

 ほら、魔王城があんなになっちゃって、沢山モンスターが逃げただろう」


「世話焼きだね、先輩」


「あれ、おじさんって呼ばないの?」


「本物のおじさんじ(・)ゃ(・)な(・)い(・)から、呼ぶんですよ。おじさんって」



「え、じゃあ、二年位前からおじさんって、呼ばなくなったのは……」



 あずさはふいっと顔を背けて前を進んだ。


 顔が少し柄にもなく赤くなっていた。








[勇者一行]

鮎川あずさ:超絶☆美少女、毒舌、なのに真面目、ツンデレ?

尾野大輝:苦労人のタンク、会社を退職後すぐに召喚され…

田上圭:生意気、実はこいつも隠しオタク

藤川悠人:趣味がプラモデルとカード収集、動画好き

山田晴兎:(*´з`)(*´▽`*)←の人


ネタが古くて申し訳ありません<(_ _)>

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