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新約:特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。  作者: 黄玉八重
第01章 -王都アスペラルダ城下町編-
4/8

Ep:003[只人、冒険者ギルドに顔を出す]

 時は少し遡り。

 宗八(そうはち)が異世界へやって来てから一ヵ月が経つ頃、仕事をせずに剣の扱いを教導してもらっているだけなのに給料がもらえるという話が耳に入って来た。

 今でさえ、衣食住の世話になっている。

 それに加えて給料まで貰ってしまえば、自分が甘えてしまいそうだ――そう宗八は教導官に伝えた。


「給料と言っても新兵の給料から見てもお小遣いみたいな金額の1000Mölln(メルン)だぞ。冒険者ならダンジョンに潜れば二日あれば確実に稼げる金を宗八(そうはち)は一ヵ月掛けて稼いだと考えれば情けない金額だろ? その程度なら貰っとけ。いずれ城を出て冒険者になるんだろ?」

 勇者と違い異世界でやらなきゃいけない事もない宗八(そうはち)は世界を見て回りたいと考えている旨を伝えていた。

「二ヵ月は訓練して城下町に降りるって予定通りなら2000Mölln(メルン)だ。まぁ宿で一週間は泊まれるからその間にダンジョンアタックを頑張れば泊まっている間に数倍になる可能性もあるぞ。今日はこの後、冒険者ギルドに行ってギルドカードを作ってもらうんだろ?詳しい説明は聞いておいた方が良い」

「ありがとうございます。とりあえず行ってきますね」

 朝の訓練を終えて宗八(そうはち)は汗を流し朝食を食べてから私服に着替えた。これも支給された物だ。ギルドカードは財布の機能も持っているらしいので発行してもらったら給料が入るので私服の一枚や二枚は買っておこうと頭にメモした。


 城から出る際に門番の方々に挨拶をして城下町に出た。

 客人でもあるが新兵の扱いでもある宗八(そうはち)は名簿に名前を記入して外出を管理される。休日扱いになると教導官から聞いていても戻りは夕暮れ前にしておきたいので宗八(そうはち)は気持ち急ぎ足で冒険者ギルドへと向かう。

 色んな露店が賑わう道を進み見えて来た立派な建物には冒険者ギルドの看板が立っていた。


「ここが冒険者ギルド!おぉ~!」

 テンションの上がる宗八(そうはち)は出入りする人々を軽く見回した。事前に確認して通りこのアスペラルダは魔族領から一番離れた国であり、王都にあるダンジョンもランク1という事もあって駆け出しが多いとの事だ。それに加えてアスペラルダはお国柄穏やかな者が多い事も影響してガラの悪い冒険者はパッと見た限りでは確認することは出来なかった。

 まずはインフォメーションへ向かえと教導官から忠告されていたのでギルドに入るとまっすぐ向かう。


「ギルドアスペラルダ支店インフォメーション窓口へようこそ!本日のご用件は?」

 流石ギルドの受付嬢。綺麗な女性に問われ宗八(そうはち)は答える。

「ギルドカードの発行と資料の閲覧をお願いします」

「かしこまりました。発行という事は初めてのご利用でしょうか? よろしければ冒険者ギルドに関する説明もさせていただきますが如何でしょうか?」

 確かに小説とかなら素材の買い取りとかしてくれるし聞いておいた方が良いか。そう考えた宗八(そうはち)は承諾する。

「お願いします」

「かしこまりました。では、案内しながら説明いたしますのでこちらへどうぞ」

 インフォメーションに残る別の受付嬢にこの場を任せた職員に付いて行く。彼女は振り返り自己紹介から案内は始まった。

「申し遅れました。(わたくし)はアインス=ヴォロートと申します。発行には時間が掛かりますので先に手続きを行ってから案内を致しますね」


 ギルドカード発行窓口へ案内された宗八(そうはち)は受付女性からの説明を受けた。

 まず冒険者ギルドの上に魔法ギルドという魔道具や魔導書の研究を行っている機関があり、その研究費回収の為に冒険者ギルドという下位組織が出来たそうだ。そしてギルドカードは魔法ギルドの粋を結集した魔道具の一つであり【ステータス閲覧】【財布】【インベントリ】【装備機能】【帰還機能】が付いていると説明された。


「インベントリは何となく想像がつくんですが、装備機能と帰還機能がよくわからなくて……」

 宗八の問いかけに、職員は丁寧に微笑む。

「どちらも、実際にお見せした方が早いですね。《ステータスオープン》」

 彼女が手元で呟くと、空中に淡く光るステータス画面が現れた——。

「これが私のステータスです。鑑定玉と同じ内容の表示とこちらがインベントリ枠、こちらが装備枠になります。ドロップした品や購入した装備品はインベントリに収納することが出来ます。さらにこのように指で移動させ装備枠に合わせると一瞬で着替えることが出来るのです」

「おぉ~!」

 目の前で行われた職員の白ローブへの早着替えに拍手する。なるほど。ゲームの装備切り替え画面なのか。

「装備機能説明の追加になりますが【外装(ドレスアップ)】という機能もございまして、性能は良いのに見た目が気に入らない場合などは【外装(ドレスアップ)】で見た目を上書き出来ます。この機能のおかげで見た目は私服なのに防御力は鉄鎧なんて事はざらなんですよ」

 市販品ならともかくダンジョン産のドロップ品は見た目を選べないし確かに有用な機能だ。活用していこう。宗八(そうはち)の頷きに了承の意を汲んだ職員は【帰還機能】の説明に移る。


「帰還機能は盗難や紛失を防止する為に搭載された機能になります。お風呂や眠る時などギルドカードの置き場所を曖昧に覚えている場合などや盗難された場合などおよそ3m登録者から離れると持ち主の側に瞬間移動します。多くは寝床の横やポケットに入っている事が多いそうです」

 財布の機能も付いているしこれは良い機能だと宗八(そうはち)も納得する。

「ありがとうございました。機能についてはわかりました」

「はい。では、発行についての説明に移らせていただきますが、冒険者ランクはS~Fランクとなっておりお客様はFランクからスタートとなります。また、PTについては最大で6人で組む事が出来ますが分配などを考えると4~5人PTが多い状況です。PTを組む事で仲間が討伐した魔物の経験値も得る事が出来ますがこちらも分配なので多く得るならより少人数で組む必要があります。他にも【クラン】という複数PTが所属する団体もありますがこれはランクが上がった際に説明予定となります」

 PTとクラン。記憶にあるのはオンラインゲームとかで聞く程度か……。家庭用ゲームばかりだったので宗八(そうはち)にとってはクランというシステムはいまいちピンと来なかった。


「一通りの説明は以上となります。何かご質問がございますか?」

 宗八(そうはち)は首を振り否定する。

「いえ、大丈夫です。宜しくお願いします」

「かしこまりました。それではこちらの用紙に記入をお願いします。重要事項などの了承も必要になりますので時間が掛かっても構いませんのでお読みいただき納得の上でチェックをお願いします」

 異世界なのに普通に契約書が出て来た事に失礼ながら驚く宗八(そうはち)は気を持ち直して渡された羽根ペンを握り用紙に記入を進める。年齢は分かるけど生年月日がどう書けばいいのかわからなかったので白紙で提出したら説明中も傍に控えてくれていたインフォメーションの受付嬢アインスに向けて職員が相談を始めた。

水無月(みなづき)宗八(そうはち)様……。ギルドマスター、こちらは空白で宜しいですか?」

「構わないわ。ナデージュ様から話は通っているからそのまま申請して頂戴」

 ギルドマスター!? 驚き振り向く宗八(そうはち)に気付きウインクするアインスに最初から自分を知っていたのだと分かり気が抜ける。もしかしたら異世界人という事も知っているのかもしれない。

水無月(みなづき)様。ギルドカードの発行に少々お時間が掛かりますので30分程お時間を潰してまたお越しください」

「それでは水無月(みなづき)様。案内の続きと参りましょう」


 アインスの案内で冒険者ギルドから繋がる解体所と素材売り場。その後少し離れたギルド武具店に案内された。

 ダンジョン産の装備品やドロップの買い取りを行った後、綺麗に磨いてから中古品として売っているそうだ。一般的な武具店では手に入らない装備が手に入る点と闇市(やみいち)に比べて安い事もあり利用者は非常に多い。とは言ってもここは低ランク冒険者が集う町なので冷やかしが多いのが悩みの種ともアインスは説明した。

 ギルド系列のショップの案内で30分は潰せたので改めてギルドに顔を出すとギルドカードは発行されていた。


「こちらが水無月(みなづき)様のギルドカードになります。魔力を登録致しますのでこちらの魔道具に手のひらを乗せてください」

 異世界で機械を時折見かけるが全て魔道具という魔力を使用する機械なのだそうだ。街中のダンジョン以外にも迷宮(ワンダリング)という一回クリアしたら消滅するダンジョンが存在し、異世界の魔道具が最奥に流れ着きクリア特典で手に入る事があるらしい。それらを魔法ギルドが引き取り研究し一般的に使用出来る品を開発して還元しているそうだ。

 魔道具に手のひらを乗せると、淡く光ったカードが静かに温もりを帯びた。


「(……これが、俺の冒険の始まり、か)」

 そんな独り言を飲み込んで、宗八は無意識にカードをぎゅっと握りしめた。


「お疲れさまでした。良い冒険者ライフをお過ごしください」

「ありがとうございました」

 渡されたギルドカードをさっそく試す。

「《ステータスオープン》」


 * * * * *

()は武具補正値、[]は称号補正値。


 名前   :水無月(みなづき) 宗八(そうはち) Lev.5

 所持金  :1000Mölln(メルン)

 ステータス:STR 6   (+0)[+0] =STR 6

 INT 6   (+0)[+0] =INT 6

 VIT 6   (+0)[+0] =VIT 6

 MEN 6   ( +0)[+0] =MEN 6

 DEX 6   ( +0)[+0] =DEX 6

 AGI 6   ( +0)[+0] =AGI 6

 GEM 15


 ■職業(ジョブ)■ ※最大Lev.10

 一次職業(メインジョブ)  :剣士

 二次職業(サブジョブ)  :Unknown

 三次職業(サブジョブ)  :


 ◆称号◆ ※◎職業系 △実績系 □評価系 ※+は最大3まで

 △異世界人           [異世界言語翻訳]

 △???の救世主        [???]


 * * * * *

 このひと月は肉体改造と剣を振るだけの期間だったけれど少量ながら経験値は入っていたらしい。レベルが上がってもステータスは自動で増えず、都度3つ手に入るGEMステータスポイントという成長素を自分で振り分ける仕組みだ。。これを振り分けてステータスを上昇させるわけだが、装備品には要求ステータスというものがあって満たせていない場合は装備が出来ない。ギルドカードの装備機能を用いず使用することは可能だが基本的に重くて持ち上がらなかったり魔法の威力が著しく下がったりすると教導官から説明を受けている。

 ギルドの資料室を閲覧したかったのは今後装備したい武器防具を見定めてステータスの振り分けを考えたかったからだ。


「それでは資料室へご案内いたします。夕方には職員も減りますので出勤状況により資料室を締める場合もあります。その際はお声がけしますので速やかに退室お願いいたします」

「わかりました」


 案内された資料室はそこまで広くはなかった。

 それでも1日で読み切れる量でもなかったので、宗八(そうはち)は予定通り目的の資料を探してその日の夕方まで調べようと考えていた所。一冊の資料に、ふと目を奪われた。

 表紙は無いが、パラパラと流し読みしてみると、魔道具の製法について書かれている初心者用の資料のようだった。


【魔道具を製作する為には、素材と魔石が必要となる。魔石には属性ごとの種類があり、動力源として使用する魔石は魔道具に合ったものを選択しなければ、暴発して大変危険である】


 なるほどな。電池でいう”マンガン””アルカリ””リチウム”みたいな違いかな……?


【魔石が無い場合は、魔物の”核”を代用する事も出来る】

 宗八は、その一文を何度も読み返し、終日資料室に閉じこもって読みふけるのであった。

読み終わり『続きが気になる』『面白かった』など思われましたらぜひ、

広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援いただけると執筆の励みになります。

よろしくお願いします。

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