ヰ83 こインランどりー
五十嵐葉南が、コインランドリーに戻ってくると、
雑誌を読みながら待っていた飛鳥めいずは、
驚いて師匠の元に駆け付けた。
「……は、葉南ちゃんの禅羅姿にはもう慣れましたけど………、そ、その背中の傷、いったいどうされたんですか??」
オタクに優しいギャル、飛鳥めいずが、目を白黒させて葉南の小さな身体を見つめながら言ったが、あまりにも丸出しすぎる少女の姿に、やはり恥ずかしくなってきたのか目を逸らしてしまった。
葉南は「ああ、ちょっとね…。」と言って手に持っていたしりこ玉をテーブルに置いた。
めいずが「……な、なんだかそれ、さっきより大きくなりましたね……」と言う。
「あ?うん、そうね、…ところでめいずちゃん?ボクのポシェットから絆創膏を出してくれない?」と葉南が言った。
「あ、はい。」と言って、めいずが、洗濯籠に分けておいた深緑色の革のポシェットを取り出し、中から缶ケースを見つけ出す。
「…これですか?」「うん、そうだよ。悪いけどめいずちゃん?それ、背中の傷に貼ってくれない?」「はい。かしこまりました。」
めいずがドロップ缶に似たブリキのケースから、絆創膏を数枚抜き出し、
ピンク色の爪を輝かせながら包み紙を破くと、小指を立てて葉南の背中に廻る。
「……乾燥機が終わるまで、あと30分弱か……」と葉南が、背もたれのない椅子に座りながら言う。
「あ、めいずちゃん、こっちに3枚だけちょうだい。」「はい」と言って、めいずが包みを取った絆創膏を3枚渡した。
「いったいどうされたんですか?お風呂の壁か何かに擦ったりされたのでしょうか?消毒した方がよろしくないですか?」
そうめいずは言いながら、ペタペタと、切り傷の深いところを中心に捉えて、一つ一つの赤い切り傷を、ベージュ色のシールで塞いでいった。
葉南は受け取った絆創膏の一つを、丸いお腹の下にある『身体の中心線』を隠す為に縦に貼り、
あとの2枚を、鎖骨の傾斜と平行に、桃の蕾部分が白パッドで被るようにして貼りつけた。
「さ、これで大事なところは隠したから、もうそんな風に目を逸らしながら作業しなくても大丈夫よ?」と葉南が言う。
「あ、ありがとうございます……いくらか助かります。禅羅は流石に女の子同士でも恥ずかしいですから……。それに、何と言うか…葉南ちゃんのそこはまだ隠されてないじゃないですか?……ほら、私なんかは、自分のそこを直接見なくなって久しいので…なんだか…決まりが悪いです……」
「そうね。そこもボクの有利なポイントよね。」「……と言いますと?」
「やっぱり今のご時世、YO-JAWのここはタブー感が半端ないからね。通常の人間なら、まあ直視出来ずに目を逸らすわよね。それがボクの隠密行動を人より容易にしている側面は確かにあるわ。
……はい、アリガト!もうそれくらいでいいわ。」と言って、葉南は首を後ろに捻って背中の傷を確認した。
「……とは言っても葉南ちゃん?やっぱり私落ち着きませんわ。……あ、もうこっちの機械は乾燥していると思いますから…せめて靴下と靴だけでもお履きになってはいかがですか?」
「まあ、それもそうね……」と葉南は言って、乾燥機を途中で停め、まだホカホカの白いハイソックスと、エナメル調の黒いパンプスに脚を通した。膝丈の白い靴下が、細いふくらはぎにピッタリと吸い付くと、フォーマルな印象の靴が、一気に彼女の足元を清楚な、少女らしい雰囲気にする。
その様子を見ていためいずは視線を上げ、
「…髪もぐちゃぐちゃですよ…」と言いながら、自分の鞄から、鼈甲のブラシを取り出した。
肩に優しく手を置き、葉南を再び椅子に座らせると、
めいずは丁寧に、葉南のおでこの上に前髪を流すように梳かし始める。
「……葉南ちゃんは額を出した方が可愛いですよね。」めいずはそう言うと口に咥えて準備していたヘアピンを、バッテンの形にしながら葉南の耳の上で髪を纏めてあげた。
「……なんか、もうこのまま帰れそうね。」と葉南が言う。「それか、多少湿っててもいいからワンピースを着て帰ろうかしら。」
「駄目ですよ。風邪をひきますよ?あともう少しですから待ちましょうよ。」
葉南は諦めたように、テーブルに向かって腕を乗せると、
改めて、乳白色のしりこ玉を見つめた。
……山神自体の能力は、時間を置いて回復するだろうけど、
このしりこ玉に含まれる、はぐれ不信者の成分は、多分なんやかんやで取り返しにくるんだろうなあ……。めんどくさいから、やっぱり音入れにでも流しちゃおうかな……。
でもさ……これを湯船に入れて入浴すれば、オシリスからしりこ玉の力を取り込めるんだよね……。
……女子が試したら、いったいどうなるんだろう……。
《仮説1》おじいちゃんの書き残していた通り、一定時間、男になる。
《仮説2》山神や3人の銭湯客がそうなったように、元のしりこ玉の主の能力を引き継ぐ。
《仮説3》その両方が同時に起こる。
…そして、どの仮説の場合も注意しなければいけないのは、銭湯客と同じように、完全に理性を失ってしまう可能性よね……。あと、もしボクが、このしりこ玉効果で男になっているタイミングで…、
敵からしりこ玉を抜かれてしまったら、最悪ボクの能力までコピーされてしまう恐れがある……。
急に葉南は、さっきの山神との戦いで、記憶が途切れている時間があることを思い出して、
……あれ?何か見落としがあるかな……?と考えていた。
「葉南ちゃん、」と、めいずが声をかけてくる。
「ん、なあに?」
「……今、部屋の四隅に置いている形代…でしたっけ?あの白い折り紙のお人形、もう少し分けていただけないでしょうか…」
「勿論いいわよ。めいずちゃん、ひょっとして、もう全部使い切っちゃった?」
「あ、いえ……まだ一度も使用してはいないのですが…部屋に置くことで、さっきみたいな変な人が寄り付かないようになるのなら、……御守りにもう少し欲しいかな………って思いまして。」
「ああ、そっち?そりゃいいけど、……魔除けに使うなら、使用済みの物でないとダメよ?」
「はい??」
「……この部屋の四隅に置いたやつも、ボクが使用したやつだから。きちんと乾かしてあるけど、……ほら、よく見て?ここのところなんて、結構黄ばんでるでしょ?これはあくまで身代わりの器だから。……ちゃんと使用しないと効力はないわよ?今回は緊急だったから、ボクのを使ったけど、本来ならめいずちゃんの使用した物でないと効果は薄いわよ?
…自分を守るなら、自分の物でないとね?分かるでしょ?」
そう言うと、葉南は、部屋の角に置かれた形代を一つ摘み上げ、
「あー、ごめんなさい、これなんかはもう効力が抜けてしまっていたわ。継続して使用するなら、上書きしておいた方がいいわよ?」と言った。
めいずは無言で部屋の隅の形代を見つめ……(ああ、自分には無理だ)とすぐに諦めた。
「あ、見て、めいずちゃん!ワンピースの方の洗濯も終わったみたいだよ!」
葉南は嬉しそうにそう言うと、乾燥機を開き、黄色いモガワンピを引っ張り出してきた。
そして、それを頭から被り、よっこらしょ……と踠きながら着ようとする。
「………。」
「……めいずちゃん?こ、これ、」
「はい?」
「レーヨンか何かだったかも………水洗い不可だったみたい……」
「え?で、でもその服、タグも何もついていなかったもので……だ、駄目でしたか?」
「めちゃくちゃ縮んだわ……」
葉南は無理矢理、身体を通したワンピース姿を、めいずに見せた。
ナンバーツーが作ってくれた衣装は、幼稚園児が着る服かと見紛うくらいに縮み、
小柄な葉南でさえ、肩や胸がぱっつんぱっつんになり、
………スカート部の裾は、おへその下くらいまでしか届いていなかった。
葉南は前の絆創膏と、prin☆cessとした青いオシリスを後ろに飛び出させ、
膝下の白いハイソックスを履いた脚を肩幅に開くと、腰に手をあてて「……この服、気に入ってたのに…」と呟いた。
「す、すみません……」と、めいずがショボンと床を見つめる。
「まあ、仕方がないわ。」と葉南は言い、テーブルのしりこ玉を掴み、洗濯機の横にぶら下げてあったビニール袋を一枚破ると、
その中に放り込んだ。「帰りましょうか。……ほら、今日の16時からニテイルケド不一致2の圧漏りのアプデがあるじゃない?だからボク、今日は久々に家に帰ろうと思っていたの……」
飛鳥めいずは、「は、はい?な、なんですか、それ?……ニテイルケド?不一致?あ、厚漏り……?」と言って、……いまさらながら、師匠の黄色い園児服から飛び出したお腹の下に見える、丸く弧を描いたしわを眺めていた。
「だいたい、こんなに遅くなるつもりじゃなかったのよね……」と葉南が言うと、
めいずが「あ、葉南ちゃん……」と言って彼女のスカートの前を指差した。
「ん?」と葉南が俯くと……、
汗で湿った絆創膏が、半分だけ捲れて下に垂れ下がり、
小さな越智くんちみたいになっているのが見えた。
「あら。」と葉南は何処か嬉しそうに声を出し、人差し指でそれをピンピン♪と弾いてみせた。
めいずも「ウフフ、ちっちゃくて可愛いですね?」と微笑む。
そのまま葉南は赤い顔をして、入り口近くの壁掛け鏡の前まで歩いていき、
腰を前に付き出して、小さな越智くんちをユラユラと揺らしてみる。
2人の少女はクスクスと笑い、
いくら指で戻しても、すぐに剥がれてきてしまうフニャフニャな絆創膏を弄り続け、
やがて可笑しそうに大きな声で笑い出した。
めいずは洗濯機から、自分のカーディガンを取り出し、改めて葉南に貸してあげる。
「…ねえ葉南くん?これを腰に巻いて、そのちっちゃい越智くんちを隠してください!」アハハ……と2人は顔を見合せてまた笑い合う。
「ギャルのお姉さん?」と葉南が言う。「ボクのちっちゃくて…情けない越智くんち、……見てくださいませんか?」そう言いながら葉南が腰に巻いたカーディガンを捲り上げると、
演技をしためいずが、「……ナニソレ?まじでちっちゃ!!」と言って、再び2人は爆笑する。
ひとしきり笑ったあと、葉南が「あ~~、おかし……。男ってホント憐れよね……」と言って涙を拭く。
「え?可愛らしいところもあると思いますよ?」とめいずが言い、
「そう?どこらへんが?」と葉南はぶっきらぼうに返事をした。
……さてと。
このしりこ玉の活用法は、もう少し考えてみましょう。…おそらく山神は、今回の敗北のせいで警戒して、そう簡単には手を出してこないでしょう……。あと、奴はさっきの戦いで、あれだけ越智くんちを膨張させていたから、
……お母さんが前に言っていたように、しばらくはアソコの皮が伸びきってしまっているはず。
あの手の不信者はプライドが高いので、当面の間は活動を自粛するだろう。
「じゃ行きましょうか。」葉南はポシェットを肩にかけ、
久しぶりの圧漏りのアプデの待つ自宅へ、
意気揚々と帰っていった。
『lewd-romat』
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