表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/80

ヰ77 対リンゴ戦争参謀本部にて


「理科室の椅子に背もたれがない理由をご存知ですか?」

ピンクのスケルトン眼鏡をかけた短髪の少女、土田(つちだ)優茉(ゆま)が、

手札から黄色の6を2枚、同時に場に出しながら言う。

実験台の黒い天板の上には、UN(K)Oの戦場(バトルフィールド)が展開され、

周囲には真剣な表情をした、少女達の顔が並んでいた。


「ん?それは、なぞなぞ?エロいやつ?」と、

幸運(こーうん)の、超ピラ子少女、近藤(こんどう)夢子(ゆめこ)が、

胸の裸陰(らいん)を強調した白いセーターの前で、20枚以上のカードの整理をしながら言う。


「あ、いえ、なぞなぞではないですし、エロくもないのですが…」

「じゃ、興味ないわ……」


「危険な実験中に、背もたれがあると、素早く避難できないからよ。」と白装束の三浦(みうら)(うた)が、手持ちのカードを出しながら言う。すぐに「あ、なによこれ?6じゃない?9かと思ったわ。」と(うた)は舌打ちをしてカードを引っ込めた。


それを見た夢子が「ガハハハ……」と笑い、「さすが部長ね。シックスナインとは畏れ入るわ。……にしてもこの椅子はお尻が痛くなるわよね。」と言った。

「ですね。背もたれがないから、防災頭巾をひっかけられませんしね。」と優茉(ゆま)が言う。


「ああ、防災頭巾と言えば…」と夢子が嬉しそうに4枚のカードを同時に出しながら口を(ひら)いた。

「あれ、なんのかんの言って6年間使うじゃない?だからカリメリでさ、血と汗が染み込んだ女子小学生のやつが高額で取引されてるわよ。…私も卒業したら売ろうかしら。」

「それ、ホントですか?!それが事実なら……ツチダはまだ5年分しか熟成しておりませんが、部費の足しにする為に、今すぐにでも売りたいです!」

「やめなさいよ。」と(うた)が顔をしかめながら言う。「小ガネ稼ぎの為に、あと1年間の安全を犠牲にするつもり?大地震の時、後悔するわよ。」

「確かに……」と優茉(ゆま)がショボンとする。


………。


(うた)は心の中で、

……あの防災頭巾に才ム"/機能を付けておけば、ある一定の割合で子供達の身に起こる授業中のあの悲劇(▪▪▪▪)を回避出来るのに……。と考えていた。

もし、私が将来その道(▪▪▪)の第一人者になれたなら…、全国の小学校にこの頭巾を導入して、彼らの尊厳を破壊する虎馬(トラウマ)級の大惨事から子供達の未来を守れるのに……。決壊するダムに子供達が落ちないように、私は彼らを受け取められるような、そんな人間になりたい……。


ハイウェストの黒いジーンズと白いチョッキを着た優茉(ゆま)が、リスのように歯を出して嬉しそうに「UN(K)O(ウノ)!」と叫ぶ。


「……あなた、異様に強いわね……」と夢子が(つぶや)く。


「す、すみません。ツチダごときが調子に乗りました……。UN(K)Oと言うのが2秒ほど遅かった気もします……ペナルティとして2枚取りますのでお許しくださたい……」

「いや、そういうのはいいのよ。あくまで実力で(まさ)っているのだから…普通にプレイしなさい。」と夢子が言うと、優茉(ゆま)が「ではお言葉に甘えて……ドロリつーっ……」と言い「私も、どろぉり、つ~っ」と(うた)がニヤケながら言った。

「むはっ」と夢子は白目を剥き、「……容赦ないわね……」と言いながらカードを取った。「おおっと?出たわよ…。喰らいなさい!『再生のリバー・フェニックス!』このカードが場に出ている間、全てのプレーヤーのストリームが逆流する!」「ムハッ?!」


「………ところで、土田さん?部費が必要って……あなたのところのシンブンブン、経営難に陥ってるの?」


「ハイ。三浦センパイ……正直、赤字で倒産寸前であります。……先日の我々のチ。環逮捕の記事と、相撲大会ネタには、ある程度の反響はありましたが……向井センパイの憤怒(フンド)シ姿をカラー印刷にした為に……ギリギリ赤字でした。」

「紙印刷をやめれば?特殊紙の取り寄せにコストの大半を使ってるじゃない?」と(うた)が、タブレット上で、新聞部の収支報告書を見ながら言う。


「しかしながら三浦センパイ。その紙印刷こそが、我がシンブンブンの存在意義でもありますので……。それが出来ないのであれば、いっそ廃刊に……。近藤センパイ?エロ4コマ漫画、また連載してもらえませんでしょうか……。」

「いいけど、原稿料を貰うわよ?」

「……やめておきます。」と優茉(ゆま)が項垂れながら「UN(K)O(ウノ)…」と言った。


**************


「ところでさ。」

夢子が実験机を背もたれにして、椅子に逆向きに座り、胸の山脈を反らせながら言う。

「3組の飛鳥めいず、(あい)不穏(ふおん)に変えたらしいわね。」


「マジで?!」と(うた)が言う。

「ちょっとちょっと……あの子、今日も睦美と一緒に帰ってるわよ。学校側が防犯上、下校班を組んでるからしょうがないと思ってたけどさあ……。睦美に変な影響を与えないか心配だわあ…」

「ちょっと待ってて」と言って、(うた)は自分のタブレットを取り出し、何かを打ち込み始めた。

「三浦センパイ、なんすかそれ?」と優茉(ゆま)が横から覗き込む。


「学年内の(あい)不穏(ふおん)所持比率よ。」「ほう。」

「本校の6年生で、こちらが把握している範囲で、女子の6割が愛・不穏。1割がアンドロイド。3割がまだ所持していないわ。後、例外で私と近藤夢子は、ガラケーね。」「フィーチャーフォンと言いなさい。で、男子の比率は?」と夢子が聞いてくる。

「そっちは調査対象外よ。興味ないし。あ、転校生は愛・不穏だったわね。

……いまや3組のカリスマとなった飛鳥めいずが倫護(りんご)カンパニー側に転向したことによって……3組の女子は全員陥落する可能性すらあるわね……」と、(うた)が険しい表情をして言った。

「それを調べてどうするつもりなんですか?」と優茉(ゆま)が言う。

すかさず夢子が、「設楽居(したらい)睦美(むつみ)を守る為よ。」と口を挟む。


「……したらい…むつみ、さん。以前から皆様の話題に上るお方のようですが、どなたでしょうか?他ではあまり耳にしたことのないお名前ですが。」と優茉(ゆま)がタブレットで6年生の名簿を呼び出しながら言った。

「……設楽居はね…アンドロイドなの。少女型()リボットね。コードネーム:『ライム』。動く球P体関節人形よ。私達は、設楽居を守る為に結成されたチームなの。あの子を純正品のままに保つことが私達の使命。愛・不穏に代表されるイマドキ女子のアタマカラッポな生態から、最も遠いところに彼女の存在を保全するのが我らの目的よ。作戦名、『ライムぎ畑でつかまえて』!」「…相変わらずアンタは…ぶれないわね……」と近藤夢子が呆れたような顔をして(つぶや)く。

「……なので、本校ではなるべく愛・不穏を使用する女子は少ない(ほう)がいいわね。アンドロイドは、言われなき差別と迫害を受けているから。」


土田(つちだ)優茉(ゆま)は、自分が愛・不穏を持っていることを言わなくて良かった……と心の中で考えていた。

「あ、そうだセンパイ(がた)。愛・不穏と言えば、今度この近くで倫護カンパニー主宰のセミナーが開かれるみたいですね。」

「セミナー?なにそれ?」と(うた)が言う。

優茉(ゆま)はタブレットを数回叩き、「これです。」と画面をこちらに見せてきた。


『倫護カンパニーによる(あい)覇奴(ぱっど)を使ったアプリ作り』

『ダうんこーディングで学ぶプログラミング学習。10歳以上のお子様におすすめです!』


「は!倫護カンパニーは恐ろしいわね。……こうやって小さい頃から刷り込みを行うのね。…興味ないわ!」(うた)はそう言うと、まだ机に散らかっていたUN(K)Oを手で集め、片付け始めた。

「……ねえ、私達って最近ここでUN(K)Oばっかりしてるけど、先生にバレたらマズイわよね。」


「ああ、それなら大丈夫よ。理科の剣持(けんもつ)先生なら大抵のことに目をつぶってくれるから。」と夢子が言う。「実は私ね、あの人が休日に駅前でパチンコしてるところを見ちゃったのよ。」「「ほわっ?!?」」と (うた)優茉(ゆま)が大きな声を出す。

「なんかその日の剣持先生、パチンコで凄い大当たりを出したらしくてさ、

偶然、通りかかった私が、…店の入り口近くの台で、パチンコを出してる先生を見かけたってわけ。……で、口止め料として理科室を自由に利用させてもらってるのよ。」

「そ、そ、そ、それ、新聞に書いていいですか??」と 優茉(ゆま)が真っ赤な顔をしながら叫ぶ。

「ダメよ。」と夢子がピシャリと言う。「先生も人間よ。きっと魔が差しただけなんだと思うわ。まあ、私も本物のパチンコを見れて、良い社会勉強になったしね。先生もあの日は凄く酔ってたみたいだから……、それに今は反省しているみたいよ?お酒もやめたらしいし。ほら、生徒の前でパチンコ出したくらいで、人生を終了させられるなんて可哀想でしょ?なんか年老いたお母さんと二人暮らししているらしいし…ストレスを解消する為に、パチンコを出してしまったと供述していたわ。それに、こんなことするのは初めてだとも言っていたわよ。」

「知らないわよ!そんなこと??私、明日から剣持先生の顔を見れないわ!!最悪……」


「アハハ…三浦(うた)?エロというのは奥深く、そして罪深いものなのよ……それにさ、私らなんて可愛いものよ。去年卒業した6年生の中には、教室で堂々とUN(K)Oしてた(やから)もいるらしいわよ。」と夢子が言う。

「あ、それ聞いたことあります!男女含めて5、6人のグループで、机くっつけてみんなでやってたらしいですよね!更にUN(K)Oにジュースを賭けてたらしいっすよ!」と優茉(ゆま)が興奮して、前に唾を飛ばしながら言った。


「…もう、わかったから…UN(K)OとかPAチンコとか……脳が腐るわ……」と(うた)が頭を抱えながら言った。

「……で、なんの話だったっけ?」と(うた)が、科学特捜部と新聞部の面々を見渡しながら言う。


「……た、確か倫護(りんご)カンパニーの魔の手からシタライムツミさんを守るとかなんとか……。」と言って手書きのメモ帳に目を落とした。

「ちょっと、なにそのメモ帳?…土田?剣持先生の件、新聞に書かないでよ?」「はい。近藤センパイがそうおっしゃるなら……。

……では、ツチダはこのへんでお(いとま)させていただこうかと思います。…*はあ*。ここ数日で不信者(アンビリーバー)の目撃情報も、ぐっと減ったらしいですね。こう平和だと、新聞記事のネタが無くて困ります……」

「じゃあ、土田。これ知ってる?」と夢子が立ち上がり、奥の部屋を案内するように体を斜めにした。「…学校の七不思議、その2。理科室の怪。」


「勿論知ってますよ。人体模型が動くんですよね?」


「そう。まあ、正直動くところは見たことないんだけどね。伝説によると、この人体模型くんには、モデルがいるらしいのよ。理科が大好きだった男の子が、病気で亡くなる前に、遺言で自分の体を使ってくれって言ってね。……だからこの模型には魂が宿っているってのが、もっぱらの噂ね。」

「はい。知ってますよ。」

「でね?これは私がこの理科室の利用にこだわった理由でもあるんだけど…」と夢子が言いながら、

奥の部屋にある、白衣を着せられた少年像に近寄っていった。

「噂によるとね、この人体模型が動くのは、……ある体の一部だけらしいのよ。」


三浦(うた)を別室に残し、夢子と優茉(ゆま)の2人は、冷蔵庫や実験用具棚の並ぶ狭い部屋で、模型の少年の前に立っていた。

「つまりね?……この少年が思わず動いてしまう(▪▪▪▪▪▪)くらい、貴女(あなた)が十分にセクシーかどうか……、この伝説はそれを物語っていると思うのよ。」

「はあ。」と優茉(ゆま)は半信半疑の顔でセンパイを見上げた。


「理科室を使用するようになってから、私はこれを毎日のように試してみてるわ。」「……と言いますと?」

ガバッ……と、夢子は少年の白衣を脱がし、体半分に細かく造形された内臓を|露《あらわ

》にした。

優茉(ゆま)は、先輩の目線の先を追う。


そこにはちょこん、と、彼女の弟のもののような閉じた小さな巾着袋が飛び出していて、

優茉(ゆま)が再び、先輩を見上げると、夢子はうっふ~ん♡と片目を(つむ)って、変な体勢の背苦い(せくしい)ポーズを取っていた。

「センパイ……?」

「ああ、今日もやっぱりダメだったわね。ピクリとも動かない。……私もまだまだ修行が足りないわ。土田?もし、この人体模型くんが動いたら、一番最初にアナタに教えてあげるから。その時はさくらんぼ新聞の一面を華々しく飾りなさい。」「は、はい。ありがとうございます……」

「アナタも試してみる?」「……あ、いいえ……結構でございます……ツチダごときがおこがましいので…ご遠慮させていただきます。」

「そう?まあ、いいわ。確かにアナタじゃ役不足かもね。」「……はい…」


隣の部屋から(うた)が、「そろそろ最終下校時刻よーー」と叫ぶ声が聞こえ、

2人の少女は、模型に白衣を着せ直すと、「でも卒業までには何とかなるような気がしてるのよね~」という先輩に「頑張ってください。期待しております……」と後輩は答え、何とも言えない微妙な表情で帰り支度を始めるのだった。


『At the Headquarters of the Anti-Apple War』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ