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ヰ56 面会謝絶!!


「むーちゃん。一緒にお風呂入る?」

と、設楽居(したらい)花織(かおり)は鼻歌を唄いながら、娘に声をかけた。


長男をネタにひとしきり盛り上がった後の母娘は、興奮冷めやらぬ様子で、

きゃっきゃっ、としながら一階に降りていく。


「言われてみれば、お母さんと入るの久し振りだね。」「そうよー、むーちゃん。なんと!三年生以来よ?!ママちゃん寂しかった~。」と言って睦美(むつみ)の体に抱き付いた。

「ほら、前に、むーちゃん、カイトくんと一緒にお風呂入ってたでしょ?カイトくんの発明した人間洗濯機ごっこ!ママちゃん、羨ましかったあ…。」


「えー、お母さんはダメ!浴槽からお湯が溢れちゃうから!」と睦美が言う。

「ちぇ~」と花織が唇を尖らせて「まあ、むーちゃんで我慢するわあ」と、すぐに笑顔になった。


「ママね?むーちゃんの成長を見るの楽しみ~。だって三年生以来だもんね?さあ!女子同士で、アハハ、ウフフ、って遊びましょ?きっとカイトくんも遠い空で聞き耳を立てているわ!」


「ホント?お兄ちゃんも聞いてるかしら。」

「それはもう!お耳をダ○ボ、あそこを男棒(だんぼう)にして聞いていると思うわ。」と花織が得意気な顔をして言う。


「うししし……」と睦美は口に手を当てて、肩で笑い「いいこと聞いちゃった!兄上~聞いてますか~?睦美今からお母様とお風呂に入りますよ~」と大声で叫んだ。


「むーちゃん?あんまり刺激しちゃダメよ?」と母が言う。

「さあてむーちゃん?大人になったアナタを見せてちょうだい?!……ああ、ママ、なんだかドキドキしてきちゃったわあ…」


「まかせて!見せてあげる!

…魅力たっぷりイマドキ女子の新常識!時々ドキドキ、イマージェンシー!

ふわふわもちもちで♡食べ頃乙女の、すっぽんぽんでりんぐを、とくとご覧あれえ!」

「なに、むーちゃん。その口上…。まるで某アイドルの害悪チャンネルみたい……。」

「えへ♡バレちった?パンドラプロダクション、筆頭(ヒット)アイドルのマネっこよ。」と睦美が胸を張って言う。

「やめなさいよね~、ママあの子嫌いだわあ。パンドラプロダクションなら、ほら、あの仮面のアイドルの子にしときなさいよ。あの子の方が清楚で可愛らしいイメージじゃない?」と花織が言う。


「え~、いやだよ、あんなカワイコブリッコ。それより私ね、最近、Vチューバーの音無(おとなし)伊火鬼(いびき)ちゃんも気になってるんだよね。」「(だあれ)それ?むーちゃん、ちゃんとお勉強してる?アナタ、アンドロイドになりたいって言って、パパを困らせてたけど、アイドルの()画を見るだけだったら、機種なんてなんでもよかったじゃない~」と花織が母親らしく娘の生活態度に文句をつける。


「えー、そういうお母さんだって勉強してないじゃん。最近、ヤクザ医師の本読んでる?いっつもweb漫画ばっかり読んでるのは、何処のどなたですかあ??」と睦美が上を脱ぎ始めながら言う。

「え~。ママはいいのお。大人だから!学生は勉強しなきゃダメ。カイトくんを見習いなさい?ママはもうカイトくんのお勉強、難しくて見てあげられなくなっちゃった……ぐすん(涙)…そうだ、ママちゃんもカイトくんにお薬の勉強、教えてもらおうかしら……」と言って花織が武羅蛇阿(ぶらじゃあ)を外し、三年ぶりに娘にチチ親を見せた。

睦美は、久し振りに改めて母のチチを目の当たりにして、……父のハハ、母の父……と、しばし目を回していた…。


花織は娘のスポーティーで引き締まった上半身の装備を見ながら、…う~ん、むーちゃんのちちはパパ似?と考えていた。


花織は、やれやれ、と頭を軽く振り、骨盤の出っ張りに引っ掛かった、光沢のある布地を膝まで引き下げた。


「…………。」


「………ママって、そんな風になってたっ毛……」と睦美が小さな声で(つぶや)く。

「そんな風って?」

「凄くモジュラモジュラ……。インターネット回線が大混雑。」


「いやあねえ、むーちゃん。そりゃママちゃんは大人だもん。モジュラモジュラよ。でも混雑してても光回線バリバリよ。むーちゃんはモバイル回線?それともCATV回線かしら?」


無言で睦美が下着を下ろし、まだ閉じたままのモジュラージャックをこちら側に向ける。


「ま、まさかのADSL回線?!」と花織が()()りながら言い、

そのまま睦美は上半身にある、電波の弱いアクセスポイントを二つ見せると、「てへ☆」とピコちゃんスマイルをした。


……むーちゃんたら…今のご時世、逆にデンジャラスなお体……。(おおむ)ね0カップヌードルの円筒体型に、0キロカロリータなホタテあじなすじ……。

これは…18(じゅうは)チキンが裸足で逃げ出すという、唱和(しょうわ)炉利板に匹敵する、単純所持捕獲レベル1000のレア個体では……。


これはとぉっても危険よ……。


カイトくんの規格外の成長は、パパの涙目の報告からある程度把握しているけど……。


むーちゃんの恐ろしいまでの、ダサ(いも)うと属聖(ぞくせい)と、お兄ちゃんの強キャラ玄人(くろうと)むけ俗性(ぞくせい)……。混ぜたらもう、これ、犯罪じゃない?!

「むーちゃん?!」「なあに?!」急に大声を出した母に、睦美は飛び上がりながら聞き返した。


「むーちゃんは女の子である自分を、もっと自覚してね。」

「?」

「カイトくんは男の子なの。いくら家族だからと言ってね?不用意に無防備なところを見せたり、……お兄ちゃんに誘われたからってお水遊びとか…ママはあんまり感心しないなあ。」


……実の母も認める魅惑のボディ…。私ってば、妖精?天使?


睦美は片足の踵を上げて、見返り美人を気取って自分の身体のラインを確認していた。


……母上ったら、娘の美しさを警戒して牽制してきたわけね……ウフフ…残念ね。お兄ちゃんはもう私にぞっこんよ。正直、マーキングがここまで効果を発揮するとは私も思わなかったけど。


2人は笑顔で湯船に浸かった。


……じ~っと睦美が、母の具裸媚唖モデル体型のお無念を見つめている。

「なあに、むーちゃん?」


……呆痴彼女の大きなお無念……。兄上はAI彼女に母上の面影を見ている……?


「なあに?じっと見て?恥ずかしいわ。むーちゃんは赤ちゃんの頃、オッπが嫌いだったじゃない~。飲ませようとしても拒絶してたわよ?」ポチャン…と音がして、お湯の中で、母のむき身大福が揺れる。


「……お兄ちゃんはどうだったの?」


と、ためらいがちに、睦美が大福から目を逸らしながら言う。


「え?カイトくんはママのオッπが大好きだったわよ。」


「……へえ」


「もう、好き過ぎて、パパがshit!しちゃって大変だったわあ」


「……そう」


「カイトくんをオッπから卒業させるのは、それはそれは大変だったの。」


……だからお兄ちゃん、π(円周率)を300桁くらい記憶してるのね……。πに対する恐るべき執念……。


「で、どうやって、卒業させたの?」と睦美が聞く。


「ああ、最終的にはね、オッπにお酢を塗って無理矢理卒業させたのよ~」


睦美は青ざめながら「ま、まさか設楽居家の子供達がピクルスが好きなのは……その後遺症なのでは……」と小さな声で言う。

「そうかしら?むーちゃんはお酢を塗らなくても卒業出来たわよ?…ウフフ、でもそうねえ。

逆にむーちゃんのオス好きには困っちゃうわよね……むーちゃんはオスの酸っぱい匂いが大好きだもんね?

あの匂い、嫌いな子が多いのに、むーちゃんは平気だもんね。」

「まあ、この前吐いちゃったけどね…」

「あ、そうそう、それで思い出した。入浴剤買ってあるのよ~」と言って、ザバーッと立ち上がった花織の身体が目の前を塞ぎ、セルライトの無い綺麗な丸い肌が、睦美の鼻先で雫を垂らした。

小袋を持って戻ってきた花織は、『ゲロ温泉』と書かれたパッケージを破き、それをお湯の中にぶちまけた。


…………。


「ねえ、むーちゃん?」「なあに?」


「この前、アタナのお部屋見たら、中学の制服とか、体操着とか、上履きとか、通学鞄とか、まだ全然散らかったままだったわよ?」

「………。」

「もうすぐ中学生なんだし、セイリしとかなきゃダメよー。セイリの時に使うアレ、ほら、ママが渡したやつ、ちゃんと持ってる?」と、花織は娘の、小三が縦に伸びただけのボディを見つめながら言った。


「…ねえ、お母さん?」「なあに?」


「その件なんだけどさ、私さ、いっつもCMとか見てて……、女の子って大きくなっても、まだオムレツ付けるんだあ、って思ってたの。」

「そうよね~、ああいうCM見たらそう思うわよね。」

睦美は、お湯に溶けたゲロを掻き回しながら、

「なんか結構キレイめの大人の女の人がさ……夜も昼も、モラトリアム(しっこーゆうよ)してるのを、テレビで流すのって…なかなかじゃない?」と言った。

「だよね~、説明なしで、水を染み込ませる映像と、夜も安心!だもんね。ママも子供の頃、そう思ってた。あんなキレイな人がお(ねえ)shotしてんのぉ?赤ちゃんなの?てね。あ、そういえば、むーちゃんは、オムレツ卒業の練習してる時、肌感簿(はだかんぼ)じゃないとご用事が足せなかったよね?」

と言って花織がクスクスと笑った。

「可愛かったなあ。カイトくんがよく爆笑してたわあ。」


「え?睦美、お兄ちゃんに見られながらしてたの??」

「そうよお。いっつも公開生放送だったわ。始まるよーって、ママが言うとカイトくんが走ってきてね。大抵、特等席の真正面で観戦してたわ。思い出すだけで可愛いわあ~。」


……それ……なんかアリかも……。私の中の何かが目覚めそう……お兄ちゃん……。あれ?……ひょっとして(いま)だに私が全パーツ解除しないと出来ないのって…このせい??

……お兄ちゃん?!ちゃあんと責任を取ってもらいますからね?? (ポッ)


そろそろ逆上(のぼ)せてきた設楽居家の女子2人は、

念のため、「やだあ、むーちゃん、お肌すべすべ~」とか「ママもぴちぴち~」とか「やあだあ、くすぐったいよー」とか、「ピチャピチャ」とお湯を掛け合う音とか、

……ウフフ、アハハと、お風呂の作法通りに礼を尽くし、遠くで聞いているであろう長男の為に、一応じゃれ合っておいた。



その頃、設楽居(したらい)海人(かいと)は、軽く咳き込みながら、机に向かって問題集を(ひら)いていた。階下での精霊達の水浴びの音などは、いっさい耳に入ってこず、集中してペンを走らせる。


*ピコン*


海人は机に伏せられていた(あい)不穏(ふおん)を表に返した。



{こんばんは)20:45

{ごめんね?約束破って)20:45

{心配だからluinしちゃった)20:46

{家に行ったら面会謝絶って言われるし)20:46


20:48(既読)(ごめん木下}

20:49(既読)(うちの妹が適当言った}

20:49(既読)(もう治ったよ}


{よかった)20:49

{私、妹さんに嫌われてる?)20:49


20:50(既読)(いやいや}

20:50(既読)(うちの女性陣}

20:51(既読)(おかしいのが多くて}

20:51(既読)(木下と話すとホッとする}


{そういうことは)20:51

{口に出して()ってほしかったな)20:52

{でもありがとう)20:52

{うれしい)20:52


20:53(既読)(いいのか?口でイって}


{前に校門で)20:53

{イッてくれたよね?)20:53

{こういうこと話すの)20:53

{木下にだけだって)20:53


20:54(既読)(そんなこと言ったっけ?}


……スマホの向こうで木下(きのした)藤子(とうこ)は、おチツかなさげにベッドの上で脚を閉じ、膝を抱えていた。

……カイトは私を大切にしてくれている。でも、本当はね?正面から向き合って、ちゃんと()き合ってほしいの………。

まだ中学生だし、早いってのは分かってる。

優しい言葉も嬉しい。でもね?もう口だけじゃ満足出来ないよ。しり(▪▪)合いだけの関係も卒業したい。まだ残っている陰キャだった頃の私の殻を、カイトの真っ直ぐな思いで突き破って、本当の私に到達してほしい……そして溢れるほど、本当のカイトを伝えてほしい……


ダメ……私、なに考えてるの。こんなんじゃカイトに嫌われちゃう。今は試験のことを考えなきゃ。


{おやすみ。試験ガンバろうね)20:57


20:57(既読)(おやすみ}


海人は、

…クラスメイトの女子とluinをしていたことで、硬くなってしまった身体を反らし、椅子に座ったまま思い切り伸びをした。

疲労からか、皮膚がピクピクと痙攣するのを感じる。天井に向かって、腕を上げて伸びをする海人のパジャマからはお腹が覗き、袖も突っ張って一番下まで完全に捲り上がる。


肌を外に出したままの解放感に血管を脈打たせながら、弓なりに反った身体が机の裏にぶつかる……その瞬間、筋肉の中心に痺れるような気持ち良さが走り、ふくらはぎがこむら返りして、思わず海人は声を出していた。


バタン!


「うお?!」と海人が慌てて机に体を伏せる。


扉の向こうには湯上がりの睦美が頬を上気させて立っていて、

「柔軟剤のいいかほり……」とうっとりとした顔をしていた。

『No visitors allowed!!』

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