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ヰ2 科学特捜部


ちきゅう(▪▪▪▪)ぼうえいぶですって……?」


設楽居睦美(したらい むつみ)三浦(みうら) (うた)のクラスメイト、近藤夢子(こんどう ゆめこ)が、自分の頬に手の甲をあてがって、小さな声で言った。


「…あなた達、そういうこと、あんまり大きな声で言わない方がいいわよ。男子が聞いてるかもしれないから。」


……近藤夢子。


今どき珍しいおかっぱヘアーの、こけし(ふう)女子。その純和風の切れ長の目は、パッと見、表情を読み取るが難しいのだが…、口元がいつもにやついている(?)ため、

ちょっと人を馬鹿にしているようにも見えた。

二学期までは、彼女は睦美や(うた)と同じく、痩せっぽっちの少女であったが……、

……最近急に太ってきたようで、近藤夢子はキュロットスカートの下から、ぱんぱんの太ももをはみ出させて、(うた)の側ににじりより寄ってくると、体をぴったりと近付けてきた。


「気を付けなさいよ?うちのクラスの男子は、みんなガキだけどね…。奴らはもれなくエロいことしか考えていないものなのよ。特にこの年頃の男子は…、自分の信仰(ちんこう)の大きさや、祈祷(▪▪)する際に、誰にむけて(▪▪▪)祈っているかを、えらく気にしてるものなの。

私らみたいにカワイイ女子が、男子に先駆けて、ちきゅうボーボーなんて話をしてたら、刺激が強すぎっから……。」


「は?誰がそんな話をしたのよ??そもそも地球防衛部に関しては秘密にしているの!あなたこそ、辺り構わずベラベラと喋らないでよね!」

(うた)が静かに怒りを(こら)えながら、喉に何かが詰まったような声で言葉を返した。


そんなやりとりの中、睦美がキョトンとした顔をして夢子の方を向いているのを見て、(うた)は、にやけたこけし少女の肩を掴むと、教室の隅にある掃除用具入れの所に引き摺っていった。


「……近藤夢子。やめてよね。」

「なにをよ?」

「知ってるでしょ?設楽居(したらい)はね………()の知識が……、限りなくゼロに近いの。あの子はそっち方面(▪▪▪▪▪)では、まるっきりQP(うぶ)で、まだ穢れのない赤ちゃんのままなの!

……例えばね、男子のお祈りの先が、まだ特定の神にむけ(▪▪)られていないとか……、信仰(▪▪)の対象が定まらなくて、ショウペン(▪▪▪▪▪)ハウアーのペシミズ(沁水)ムが若い世代に拡がるとか……。宗教とか哲学とかさ、そういった(たぐ)いの話は、あの子の前ではしないで!」


「ほほう……おぬし、なかなか高度な話をするじゃない……。一般読者がついてこれるかしら……」と言って、夢子は腕を組んで、わざと一度目を逸らした後に、改めてジト目でこちらを見つめてきた。


三浦(みうら) (うた)も負けじと睨み返す。「…ねえ近藤夢子?私の科学特捜部を、あんたのくだらないなぞなぞ倶楽部(▪▪▪▪▪▪▪)と一緒にしないで。

……なぞなぞ倶楽部の……悪い噂を聞いてるわよ。あなた、放課後の理科室に下級生の男子を連れ込んで、なぞなぞでカモフラージュしたY談してるらしいじゃない?」


「ひ、人聞きの悪い!私は勉強を教えてあげただけよ!」と夢子が顔を赤くして言う。

詩が「どんな勉強をよ?」と冷たく返す。


「そ、それは……、り、理科よ!私が何のためにわざわざ理科室を借りて、なぞなぞ倶楽部をやってると思ってるのよ!!じゃ、じゃあ、あなたにもなぞなぞを出してあげるわ!私をヒボーチューショーするならこれに答えられてからにしなさい!」


夢子は、ランドセルを体の前の方に回すと、素早く中から小さなメモ帳を取り出して、パラパラとページを捲り出した。


「は?なんで私があなたのなぞなぞに答えなきゃいけないのよ?」


そう言う詩を無視し、夢子はメモ帳内の目当てのページを見つけると、唐突にこう叫んだ。

「いくわよ!

……理科の問題です!

えー、地球(▪▪)上では沈降(▪▪)隆起(▪▪)といった地殻変動が起きていますが……。

沈降(▪▪)で有名なのはリアス式海岸です……よね?では……、隆起によって出来た、地球上でもっとも標高の高い地域はどこでしょう?」

帰ろうとしていた睦美にも聞こえるように夢子が大きな声で出題する。

「……あら、意外にまともなクイズなのね?」詩はそう言うと、迷惑そうな顔をしたアンドロイド少女、睦美が「それ、答えたら帰っていい?」と言うのを聞いた。

「ええ、いいわよ。」と言った夢子のおちょぼ口が……ニヤリと歪む。


ん……??……ちょっと待って?……これは罠?!

詩は慌てて、睦美に「待って!!」と叫んだ。


「……ヒマラヤ山脈。」


と、睦美が言うと、夢子がキャッハハハハ……と嬉しそうに手を叩いて笑った。


詩が真っ赤な顔をして(うつむ)く。


……し、しまった……。気付くべきだったわ……。ちきゅうの上で、ちんこう、りゅうき、と来たら………次は『ひマラ(▪▪)やさんみゃく』と来るのを予想しておくべきだった…。睦美の口からそう言わせたかったのね……。クソ!私の純粋なQPちゃんに、何てことを言わせてくれたのよ……。ゴメン、睦美……。


「帰っていい……?」とアンドロイド少女、睦美は無表情でそう言うと、2人の少女に背を向けて、教室を退出していった。


ガクリと項垂(うなだ)れる三浦(みうら) (うた)の側に、近藤夢子が近寄ってきて、肩を叩く。

「……今回は私の勝ちね。」

「うるさい。あなた、座敷わらしみたいな顔して……、どうしてそんなにエロいのよ……!」

「ふふふ……。あなたこそ……、幽霊みたいな顔して、なかなか見所があるわね。その怪談みたいな三角頭巾(ずきん)っぽいカチューシャ……、見ようによっては、頭にパンツ履いてるみたいに見えるしね。」

「さらっと失礼なこと言ったわね。呪い殺すわよ……科学的に…。」(うた)はそう言うと、ふと夢子の手の中にあるものに気付いて「……あら、あなた、ガラケーなのね……。」と言った。

夢子は、ん?といった顔をして、自分の折り畳み式の端末をパカッと(ひら)いてみせた。

「なに?フィーチャーフォンと言いなさいよ。そうよ?利用料金とセキュリティの観点から、うちはタブレットと併用して、これを使っているのよ。悪い?」と言った。

「いや、悪くないけど……。あなた、愛・不穏じゃないのね。」

「はっ!教えてあげるわ!モバイル端末の性能の違いが…戦力の決定的差ではないということをね!」と夢子は言いながら、自分の赤いガラケーを詩の目の前でパチン、と閉じた。


……………。


「ねえ、近藤夢子?」「ん、なによ?」


「あなた……、私の科特(かとく)部に入らない?」

「………は?」夢子が疑うような目で、詩の顔を 見つめ返す。「まあね、あんたが私をスカウトしたい気持ちもわかるけど。……近頃の私は、……なんと言うか…スゴいから。」そう言うと夢子は、自身の体の前で組んだ腕の上に、最近痛みと共に急速に成長してきた仲良C(なかよし)カップルを乗せて、左右に揺すってみせた。


「そういうのはいいから。でもね……正直、倫護(りんご)カンパニーに対抗するには、……出来るだけ戦力が必要なのよ……。」と詩が言う。


夢子が「え?倫護カンパニーに対抗?何の話してるのよ?……今までの話の流れで、何でそうなるのよ?」と言った。「ボーボーなセクシーガールを募集してるんじゃないの?」


ついさっき設楽居睦美(したらい むつみ)が出ていった扉の方を見つめながら、夢子は「私にはわかるわ……。設楽居睦美(したらい むつみ)。……あの子、ウルトラQP3分クッキングだかなんだか知んないけどさ、……あの子の不毛(ふもう)な抵抗では、ちきゅうなんて、到底守れないんじゃないの?

……実際のとこ、設楽居睦美(したらい むつみ)のちきゅうは無防備でしょ、違う?」と言った。


「な、なんで設楽居(したらい)が不毛だって思うのよ……?」と詩が、夢子を睨みつけながら言う。


「さあね。なんとなくわかるのよ……そう、私が、(ニュー)タイプだからかしら?」


「………。」


「……やはり、あなた……乳タイプなのね……。」

(うた)が、目の前の少女の胸を見つめながら、諦めたように溜め息をついて言う。「悔しいけど、やっぱり私達には…あなたの助けが必要みたいね。」


「勘違いしないでよ。」と夢子が言う。「私は、あなたの恥きゅうぼうえい部に入るとは、一言も言ってないわ。……倫護(りんご)カンパニーに対抗するですって?……あんたバカなの?クラスの他の女子達を見てごらんなさいよ。

……あの子達、洗脳されて、自分の意思も持たず、意見だってシリ(▪▪)代弁(▪▪)させてさ。そのうち、笑顔でそこにある掃除バケツにし始めるわよ。私はごめんだわ。……それなら倫護カンパニーに見つからないように隠れている方がマシよ。」


「……危険だということは、私もわかっているわ……。」と詩は、今はもう誰もいない教室で、念のために辺りを伺いながら小さな声で言った。「……ただね、私は信じたいの。最近のアンドロイドのAI()は、倫護カンパニーのAI()よりも(まさ)ってきているという噂を……。」


「ほおん……。それで、あんたは、設楽居睦美(したらい むつみ)のアンドロイドの()の力に賭けようと言うわけね……?大丈夫?シリはチャットGTP(グーチョキパー)と連帯してるわよ?」


……大丈夫よ。私のQPちゃんの愛は、地球を救うのよ……。


「……それで、三浦( みうら) (うた)さん?」「なによ」


設楽居睦美(したらい むつみ)は………


……あんたの気持ち(▪▪▪▪▪▪▪)を知ってるの?」


「え?」

「気持ちは伝えたの?」

「え?」

「え、じゃないわよ。……立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合(▪▪)の花。……あんたの趣味、私には全然エロく感じないけど……、つまり、そういうこと(▪▪▪▪▪▪)でしょ?」

「か、勘違いしないでよ!わ、私のはそういうんじゃないから!!」と詩があたふたと両手を前に突き出して、激しく左右に振った。


()()りするんだったら、やっぱり、私、あんたの科特部に入るのは遠慮しとくわあ……。あ、でも逆に、私のなぞなぞ倶楽部に入るっていうなら、歓迎するわよ?」と言って、夢子が歩き去ろうとする。


「ま、待って!」

と詩が追い(すが)ってきて、夢子の肩を掴んだ。

「わ、私が今から出すなぞなぞに、あなたが答えたられたら、勧誘を(あきら)めるから!……逆に答えられなかったら……、科学特捜部に入って!!」


近藤夢子は、細い目を更に細めて、三浦(みうら) (うた)のことを見つめた。


「……ふふっ面白いわね。じゃあ出してみなさいよ?」


詩は長い黒髪に乗せた白いカチューシャの位置を直し、スカートの下に纏わりつく夜用ギャザー(▪▪▪▪▪▪)を気にして、裾を正した後、(コホン)と軽く咳払いをした。


「……問題。『ある男が……、()イセツな(ブツ)チン(▪▪)列した罪で、裁判にかけられました。半ケツ(▪▪▪)が出されたところ、彼は剥き(▪▪)懲役を言い渡されたのですが……何故か、本来なら適用されないはずの、しっこウ(▪▪▪▪)猶予がついて、30年後、仮尺包かりしゃくほう認められました。……いったい何故でしょう??』」


「お、おう……。あ、あなた何気にスゴいわね……。実際、何毛なのよ、あなた……。」


「さあ!御託はそれくらいにして!……答えてもらおうかしら?」

夢子の反応を見て、自信を取り戻した詩が、額に張り付いた自分の前髪を剥がしながら言う。


一瞬、夢子は何かを言いかけたが、すぐに口をつむぎ、

もう一度深呼吸をすると、眉間にしわを寄せながら考え始めた。

「……30年……。30…30……そうね、30歳を越えたDT(ドンキータンク)ようせいさん(▪▪▪▪▪▪)になると言われているわよね……。え~っと、え~っと………。」


「…お、お見事よ……。」と詩が言った。「感染症陽性(▪▪)のため、仮釈放制度が柔軟に解釈、運用されて、結果病院に収監された……。そう、正解よ……。」


「え?あ?そ、そう?ジューナンにカイシャクしてビョーインにシューカン??そ、そうよ。そんななぞなぞ、私には余裕よ!オホホホホ……半年前までの私と思わないでね?第二次せかいぱいせん勃発中の私は、今まさに激動の二十性紀(▪▪)を経験しているところなのよ!舐めてもらっては困るわ!」


「……こ、これが(ニュー)タイプというやつか……。」そう言うと、詩はがっくりと(こうべ)を垂れて、近くの机に手をついた。


すると夢子が「まあ、でも、あれね……。今のなぞなぞ、なかなか良かったわよ。」と言い、「こんな風に、またなぞなぞバトルが出来るのなら……、私、科学特捜部に入ってあげてもいいかも。」と笑顔を見せた。

「ほんと?!」


「でも、確認だけど……。そもそも科特部っていったい何をする部なのよ?」と夢子が言う。

「……表向きは、校内で起こる不可解未解決事件の科学的調査、解決を請け負う倶楽部ね。」と急に(うた)が得意げな顔をして説明をし始める。

……て言うかそもそも、校内にそんな(たぐ)いの事件が、請け負えるほど転がっているものなのかしら……。と夢子は心の中でそう思ったが、まだ黙っていた。

……あとなんか、これ、どっかの少年探偵団と仕事が被らない?

夢子は続けてこう尋ねた。「なるほどね。あんたは科学の力で、ユリ(▪▪)毛ラーの謎に迫ろうとしていると……。で?地球なんとか部(▪▪▪▪▪▪▪)の方は具体的に何をするの?」

それに対して、詩がニッコリと微笑み、こう返した。

「地球防衛部はね……、(あい)不穏(ふおん)を介して世界征服を企む、倫護りんごカンパニーに抵抗するレジスタンス組織なの。主な活動内容はね☆……アンドロイド少女、設楽居睦美(したらい むつみ)を、敵勢力から守ることよ!」

「は?」


「……まずは設楽居を入部させることが先決。あの子をワタシの庇護下に置く必要があるわ。」と詩が真剣な顔をして言う。

「だ、だから、あんた?その想いはあの子に伝えたのかって言ってるのよ?」と夢子が呆れたような表情をして言う。


「そ、そういうんじゃないって言ったでしょ?!」


「あ゛~~~、もう、わかったわ!あんたには、非凡なエロ才能がある!それは疑いようがない。ただその能力を……つまらないゆり(▪▪)かもめ乗車で浪費している!……私が!あなた達を(▪▪▪▪▪)!正しいエロの道に導いてあげる!だから科学特捜部に入って見守ってあげる!これでいい?!」

「なによ、なによ、あなたは私のことをピエロ(▪▪)だって言いたいのね??」と詩が涙目になりながら言う。「覚えてなさい!!なぞなぞバトル……つ、次は負けないから……!今回あなたが勝ったのは、……たまたま(▪▪▪▪)なんだからね!

次は手抜き(▪▪▪)なしの、ガチンコ対(ケツ)でイかせてもらうから!」

「お、おう……。あんたって…ホントに……それ……、自覚ないの……?」と近藤夢子は言って、

ひっそりとランドセルを閉じるのだった……。

『Science Special Search Club』

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