仮面の勇者 9
仮面の勇者第9話
今回は投稿が遅くなってしまいまし申し訳ございません。その代わり、つまらなくはない筈ですよ
さぁ、冒険の始まりです。
仮面の勇者 9話
:岩の国からの贈り物 1
今日は岩と巨人の国デッグドッズで、岩担祭というお祭りがある。
が
「何れこんな朝っぱらから王城に行かなきゃ行けないんらー! 酒ー! 酒持ってこーい!」
マイラがガモに背負われながら騒いでる
今、午前5時、僕たちはこの国の王ガット・ワガットに招待され、国の中心部にある巨大な城に来ている
なお、マイラは絶賛酒酔い中である
「わたしは! さいきょうの! まほーつかいだぞー!えへへー」
マイラ、大丈夫か? これから王に会うんだぞ?
「マイラ、本当に大丈夫?」
「アオイ! いま、わたしのこと、酔っ払ってるババアって言ったでしょ! うるさいわねー! わたしはー、酔ってなんかー、いないのよー!」
おいおい、本当に大丈夫かマイラ、酒好きなのに酒に弱いのかよ
「マイラさぁ、そろそろ黙っててくれないかなぁ?」
うわぁ、ユールが珍しくイラついてる、拳握りしめてるし
「ぁぅ、ごめんなさい……」
あー、マイラ泣きそう、でもこればっかりはマイラが悪い
「まぁまぁユール! そんな怒ることないじゃないか! 確かにマイラは今、酔っ払ったババア状態だけど! 大事な仲間だろ!」
「ケルさん、今あなたサラッとマイラのこと傷つけませんでしたか?」
「あ、皆様! 城門につきましたよ!」
城は小高い丘のような場所の上にあったから、結構登ってくるの大変だった
「リゼ、すっげぇ元気だ」
僕がそう弱音を吐くと
「アオイ! アンタは頑張った! 偉いよ!」
ケルが褒めてくれる、いや、それでも辛いもんは辛いって。まぁ助かるけど
その時、城の門の前にいた白髪混じりの執事のような男が語りかけて来た
「やや! これはアオイ・ガニト様御一行ではありませんか! ささ、国王様はこちらですぞ!」
そう言い執事さん……かな?
この人は僕たちを玉座の間に案内した
「ハハハ! よく来たな、この国を救ってくれた若造どもよ」
そこには、体長20メートルほどの大男がいた
2
「ハハハ! 驚いてるな? この姿に」
顔や見た目は完全にあのガットさんだった
「これはな、俺の巨人化状態だ、ちなみに全力を出すと100メートルを超えるぜ」
マジかよ
「ま、疲れるし、すぐに戻るけどな」
そう言いガットさんは縮んだ
「さてと、今回の功績により、お前たちに褒美をやる、何が欲しい? あ、そうだ、アオイ、お前には特別なものやるから何も言うなよ」
「いや別に僕は褒美いらないよ、それに用意する金があるなら国の復興に使いなよ」
あ、思わずタメ口になっちゃった
「やっぱり、レジェルが言った通りだなぁ」
ガットさん、やっぱりレジェルさんのこと知ってるよな、でもどうして……
「じゃあ僕たちは巨人ステーキ100人分でお願いします」
え、ユールたちそんなに…….あ、国民に配るのか
「あ、アオイ様、やっぱりわかっちゃいましたか?はい、国民の皆様に配るんです」
うぅー、そんなことされると、僕だけ特別なものもらうなんて余計に、出来ないよ
「巨人ステーキ10万人前だな。よっし! シェフに頼んで早速作れ! ユールたちよ、祭りで出すってことでいいのか?」
ガットさんが指示を出し、ユールに聞く
「ああ、それで頼むよ」
ユール、キザに手なんか振りやがって、なんかかっこいいじゃないか
ん? 待てよ、今100人分が10万人分になってた気が……
「じゃあ次はアオイの方だな」
そう言いガットさんは僕の両手に収まるくらいの白い岩を持って来て、僕に手渡した
「それは鏖血鉱、血を垂らした者に合った武器になる不思議な鉱石だ」
へぇ、そんな鉱石がこの世界にはあるんだなぁ
これ、実はめちゃくちゃ貴重なものだったりしないよな、怖いんだけど
「一応言っとくとな、それはめちゃくちゃ貴重な鉱石だからな、大事にしろよ」
えぇー、それ今言う? めっちゃ貰いにくいというか貰えないよ!
「ごめんガットさん、僕、これは受け取れない、返すよ」
そう言い僕はその鉱石を握りしめる
「イテッ」
あ、この鉱石の出っ張りに指引っ掛けて、怪我しちゃった
と、その時、鏖血鉱が光り輝き変形していく
「え、あ、え? おい、ちょ、ちょっと待てよ」
あ、やばい、やっちまった! 怪我したせいで血が付いたんだ! まずい! どうしよう!
「アオイ、受けっとってくれるか、ありがとうな、俺も本望だぜ」
違う、ガットさん! 僕は欲しくないんだ! こんな貴重な物貰えないよ!
「アオイ、君、やっちゃったね」
隣でユールが笑いを堪えている
「嘘だー!」
ああ、もう、最悪だ
3
結局、鏖血鉱の変形を止めることはできなかった、そしてできた武器だが、少し奇妙だ
「なんか、すごく丸い」
色は黒色、宙に浮いていてまん丸、どんな形にもできて硬さは、めっちゃくちゃ硬い、ガットさんが鋼の100倍以上って言ってた
柔軟性も作れて柔らかくできる上に、質量を完全に無視している
マイラがどの文献でも見たことないと言っていたし、本当になんなんだこれ?
ちなみに想像力で形が変わる、それに僕の体の一部だから血さえあれば無限に作れるし他の人は使えない
「便利すぎるだろ」
ちなみに、もう離れないから僕のものになった。これが不可抗力ってやつか、クソ
「ま、アオイ、よかったね!」
ユールが満面の笑みで親指を立てグッドポーズしてる
コイツ、ちょっと煽ってるな
「ああもう! もういい! わかったよ! これは僕のものだぁ!」
僕自身も、何言ってるかよくわかっていなかった
:祝え!岩担祭! 1
ガットさんの城から帰って来て次の旅の計画を練り、僕たちは祭りに出かけた
「いやー、にしてもアオイ、最強って人、本当に強かったんだよー、多分あのままなら負けてたね」
ユールが弱音を吐くなんて珍しいな、やっぱり総合格闘技界最強の人間は伊達じゃないのか
「ユール、んな事言ったらあの刄九って奴もだいぶ強かったんだぞ? マイラが本気の6割くらいで勝てるぐらいなんだしよ」
逆にマイラは本気の6割あれば刄九倒せるんだ、やばいだろ
「今回アタシはなーんもできなかったねぇ。ほんと、悪いことしちまったよ」
そう言いケルは落ち込んでいる
「いや、前の時間とかでケルが刄九の相手をしてくれたからこそ、滅七と刄九の力がわかったんだし、今回のMVPだよ」
僕はそう言いケルを励ます
だってケルが刄九と戦っていなかったら、あの場に滅七は来なかったかもしれないし
「ありがとうねぇ、アオイ。ところでえむぶいぴーってなんだい?」
え、MVPって何か?
「えっとー、MVPってなんの略だ?」
「マジで、ぶっちゃけ、パねぇ! これっしょー」
後ろから声をかけられた。
声をかけられた方を見ると、ギャルがいた
2
「うぃーっす! あーしは愚三魔乱でーす♪よろしくねー!」
コイツ! 異世界人の!
僕はそう思い、警戒する、みんなも武器を構えそうになる
「ちょちょ、ちょい待ちちょい待ち、別に戦う気ないってば! あーし喧嘩とか好きくないしー」
そう言って愚三は待て待てと手を振る
「何の用……ですか?」
なんか思わず敬語になっちゃった
「え? 普通にダチに話しかけただけだよ?」
ダチ? 友達って事だよな…………ダチ?初めて会ったのに?
「友達になった覚えはないけど?」
「え? んじゃ今からダチ。おけ?」
コイツ、本当に何なんだ?
僕たちを騙そうとして……いや多分違うな、コイツの目的は何だ?
「つーかアオっちビビりすぎ〜、あーし別に敵いないよ?あ、なんなら飴いる?」
本当に敵意は無いのか?
……なさそう、かな
「あ、やっべ、あーしツレとはぐれてんの忘れてた」
そう言い愚三はポカンとする
無さそうだな、敵意
「グ、グミちゃーん!」
遠くから黒髪で眼鏡をかけた女の子が走ってくる、あれって確か壊四不死って子だよな
「あー、フシっちじゃーん。おひさー」
そう言い愚三は壊四に手を振る
「お、おひさーじゃないよ、この人達に、め、迷惑かけちゃってるよ」
すごい小声だな
にしても、やっぱりあの最近デビューした小説家の壊四先生に似てるよな……姉妹か?
「じゃあアオっち、あーしジョカノと会えたから帰るねー、アオっちの仲間のみんなもバイバーイ!」
そう言い愚三は壊四と共に去っていく。本当になんだったんだ?
にしてもジョカノ? ジョカノ……ジョカノ……
カノジョ?
……彼女!?
「アオイ? どうしたんだい?」
後ろからユールが話しかけてくる
「……いやぁ、恋って、いいですよね」
後にユールから聞いた話だと、その時の僕の顔は子どもを見守る親の顔の様だったらしい
3
「あ! 見ろよアオイ! 岩担祭の名物、岩担かつぎやってるぞ!」
ガンタンカツギ? なんだそれ?
そう思い、ガモが指差した方を見ると、4〜5人の褌を履いた男たちが岩を担いでいる
「なんだ、あれ」
咄嗟に頭に出た言葉は「謎」だった
なぜ岩を担いでいるんだ? ご利益でもあるのか? 気になる
「あれはこの祭りの元になった逸話が関係しているのさ」
マイラが言う。流石にもう酔いはさめたか
「昔、この国にあった大岩を担ぎ、その大岩の下にあった鉱脈を見つけ、この国を発展させた巨人がいた……という話なんだが、今ではただ岩を持ち上げるという奇妙な光景になっているな」
へぇ、そんな歴史が。まぁ祭りの謎の風習とかってそういうのが元だよな
「よし! アオイ、ガモ、持ち上げに行こう!」
そう言いユールが僕とガモを引っ張り岩の前に連れてくる
「え、いや、ユールさん、これ大人5人くらいで担ぐんですよ? 僕ら3人……」
ユールはワクワクしてる目をしてる。あ、もう何言っても聞かないなコイツ
「アオイ、頑張るぞ」
ガモはもう半分諦め多様な顔で言ってくる
少し遠くでリゼたち3人が手を振っている
リゼと目が合うとリゼが嬉しそうに笑う
「よっしゃ! やってやろじゃあないか!」
僕は意気込んだ
その時、ユールが言う
「これ、人が少ないほど賞金が増えるらしいよ!」
3人の場合巨人ステーキ18人分と、看板に書かれていた
「よっしゃあ! 上げるぞ!」
ガモがそう言い岩に力を入れる、魔法を使うのはダメらしいから僕とはあまり力になれないが……
「すげぇ、30センチくらい上がったんじゃ無いか? 人間記録だと最高かも……」
ちなみに巨人族でも肩まで上げるのは至難の業、人間で30センチは人間卒業してるレベル
て事はめちゃくちゃすごいんじゃないか?
「おぉ、お前ら、やってるな!」
ガットさんが岩を下ろした僕たちに話しかけてくる
「なぁ司会者、これ俺もやっていいか?」
ガットさんが司会者さんに聞く
「いやダメに決まってんでしょ、あんた去年も一昨年も最高記録じゃ無いですか」
なかなかフランクに話すな
ガットさんが国の人から好かれてるのがよくわかる
「まぁまぁ、ちょっと、先っぽだけ」
そう言いガットさんは小指を使い岩を持ち上げ、空に投げた
「は?」
あの岩、1トンはあったと思うぞ………
そんな事を考えていると、空から岩が降ってきて、ガットさんは小指でキャッチした
「いや、どうなってんだよ」
この人このフィジカルでしかもチートが効きづらいんだろ? この人こそがチートだろ
「じゃあ俺は殿堂入りでいいからよ、国のみんなも! 俺みたいに楽しんでってくれよなあ!」
そう言いガットさんは帰って行った。帰り際にサインとかしてたし、アイドルみたいなような
「オレ、あんな風になれるかな」
肩の方から声がする
「いたのかナノ。あと、ああはならなくていい」
ありゃバケモンだ、うん
4
次の日
「よし、今日は自由行動にしよう! みんな、行きたいところに行ってきたまえ!」
ユールがそう言い手を前に突き出した
僕とリゼは2人で教会に行くことにした
マイラなんか酒を飲むとか言ってて、ケルはそれに同行すると言っていた
ユールとガモは個人で動くらしい。まぁ大丈夫だろう
「アオイ様、ぼーっとしてますが大丈夫ですか? どこか具合でも……」
「うん? あぁ、大丈夫だよ」
気になることがある、僕は滅七の力で何度かループした、その時、破滅の仮面を作った時以前の記憶が曖昧なのはなぜだ?
「アオイ様! 見てください! 教会が光ってますよ!」
リゼに言われて教会を見てみると、七色に光っていた
「ゲーミング教会……」
なんで光ってるんだよ。と、思ったが、よく見たら宝石が散りばめられているだけだった
「凄いな、この教会、カルナイ教って好かれてないんじゃ無いのか?」
「あぁ、そうですね、デッグドッズはカルナイ教もコロウア教も興味ないので、昔の人が適当に作ったらしいですよ」
いや適当て、リゼは怒らないのかな?
「アオイ様、教会の中も宝石でいっぱいですよ! 早く入りませんか?」
リゼがはしゃいでるなぁ、元気はいい事だ、うん
中も外と同様宝石が至る所に散りばめられていて、ステンドグラスから差し込む光が宝石に反射して、より一層綺麗に見えた
「ん? なんだあれ?」
リゼが祈りをしている間、僕は長イスに座って上を見ていた
そこには、なんか触手が生えているデカい何かと10人の武器を持った者たちが戦っている絵があった
そういえば、他の教会にもあったなこの絵
後でマイラに……いや、教会関係ならリゼの方が詳しいか?
「あのーアオイ様?」
リゼに呼びかけられてなぜかビックリして跳ねる
「もしかして、あの上の絵が気になるんですか?」
「あ、うん、あれってなんかの神話とかなの?」
「はい、あの触手が生えているのが破壊神コロウア様で、あれは10人の英雄です」
10人の英雄……
「破壊神コロウアが力を使い人々を傷つけ、それを辞めさせるため10人の英雄が戦う。そう言った予言がカルナイ教にはあるんです」
なるほど、でも、なんか劣勢に見えるな
「一応、いくつか本も出てるんですが、英雄達は絶対に負けているんです」
英雄か……
「あ、10人といえば異世界人の人々も10人ですよね、まぁあの予言には異世界人が一切関係ないのですが……」
それにもう異世界人を2人は帰しちゃってるしな
「じゃあアオイ様、遊びますか!」
「うん!」
その日、僕たちは日が暮れるまで遊んだ
5
宿に帰っている途中、遊び疲れてリゼは眠ってしまったので、おんぶして帰っている
宿は結構いいところで男女同じ部屋だが寝室が二つあるとかいう結構凄い宿、ちなみにお高い所
まぁこんな夜だけど、みんな流石に節度は保ってるよな
「みんなーだだい……ま?」
部屋に入ると、泥酔しているマイラとケル、ケルに技をかけられたのかピクピク痙攣しているガモ、そしてユールの「夜の園」という置き手紙があった
「ユールの野朗、サキュバスの店行ったのかよ、あれで最後にしとけって何度も何度も」
少しため息が出る
「リゼとガモを寝かせたらとりあえず全員しばく」
そう心に固く誓った
:次の旅、地水冥龍 1
あの祭りから数ヶ月
「出航だー!」
ユールがそう叫んでいた
国の人たちが手を振ってくれていて、僕たちも手を振りかえす
僕たちはこれから氷と酒の国シルファンに向かう
この国はカルナイ教の制限が厳しく、僕とリゼは正体を隠した方がいいとマイラが言っていた
「いやーにしても、もう寒い気がする」
ユールが体を震わせながら言った
「まぁシルファンって最高気温が5°Cとかだしな」
は? 5°C? 嘘だろ、防寒着なんてないぞ
「みんな防寒着忘れてるのか。まぁアオイはリゼとのデートで浮かれて考えてなかっただろうし」
ガモが言った
いや、別に浮かれてないよ、多分
「ってデートじゃないし! 別に!」
「まぁまぁ、寒くなったらマイラの魔法があるし、大丈夫だろう」
あれ? ケル元気ない?
あ、寒いからか!
「ケルは寒いの苦手だもんな、僕は得意!」
ユール、そこは自慢するところじゃないと思うぞ
「よし、船の中に入ろう」
そう言いみんなご船の中に入っていく……が、その時、周りが白い霧に包まれる
ガモを含めたみんなが眠っている
「もしかして、冥龍か?」
そう思っていると
「ああ! これはウォルドルマだな!」
ナノが出てくる
「「「ガッハッハッハ!挑戦権を渡そうと思ったが、ナノ坊が一緒か、なら話は早いな!」」」
あ、これドライサンドラと同じ感じか
「アオイ、ウォルドルマに会うにはあの海の大渦に飛び込めばいけるぞ」
そう言いナノが指した方向には巨大な大渦があった
「え? あれに? 飛び込めと?」
怖いけど、みんなを早く起こしたいし、行くか!
「待ってろ! 地水冥龍ウォルドルマ!」
そう言い僕は渦の中に飛び込んだ
2
渦の中に入ると、濡れる事なく一番下の地面についた、落下してきたはずなのに痛みがない?
「「「さてと一つ目の試練だ、扉を潜れ」」」
僕がいる小さな足場から扉までに橋がある。普通に渡れそうだけど、また何かあるんだろうな
「えっと、ウォルドルマ……さん?やっぱりあなたはナノの知り合いなのか?」
聞くが答えは返ってこない
と、その時、目の前を一閃の水が通り過ぎた
「あ、あぁ、なるほどね、こりゃやべぇ」
ドライサンドラの時のレーザーは形が変わるだけでスピードは遅かった
それに、通ってきた橋が崩れてきている
「なんだよ、ドライサンドラよりスピード勝負じゃん」
僕は走り出す
「でも、スピードなら負けないぜ、冥龍憑依!ドラ……っ!」
言いかけて止まった
このまま言えば「死ぬ」直感的にわかった
「「「よく止まったな、ああ、使うなよ、その力は」」」
この試練
「面白い!」
僕はまた走り出す、水の弾を避けるのには慣れてきた、その時
ズブォブォブォーン!
橋から岩でできた触手のようなものが生えてきて、襲ってくる
「おいおいおい! 難易度高すぎだろ!」
全部を避けていたら橋が崩れる、しかし、全部避けなきゃダメージを喰らいすぎる
ならどうする?
後ろから触手が迫ってきている、この体制じゃ避けられない……
「いや、いいか」
僕は後ろを向き鏖血鉱で作ったあの球体を盾に作り変え、自分の前に持ってくる
「信じてるぜ! 僕の武器!」
岩と盾がぶつかり、僕は扉の方へ飛ばされる
「着地はこんなのでどうだ?」
僕は盾をトランポリンに作り変え、いい感じの位置に投げて置く、ちなみにぜんぜん柔らかくなくめちゃくちゃ硬かったので、普通に着地して扉を開けた
「第一の試練、合格か?」
僕は立ち上がり、体についた砂を落として聞く
「ああ、合格さ」
そこには、ナノから聞いた通り四足歩行で口がでかい茶色と緑の龍がいた
3
「さて、二つ目の試練だ、私と戦ってみろ」
私と戦ってみろ……か
「あぁ、いいぜ!」
そう言った瞬間、ウォルドルマの体から霧が出てくる
「毒!? いや、違う……においもしないし、少し白っぽいだけ……まさか!」
「お前、勘が鋭いな。そうさ、これは「スキルブレイクミスト」相手の能力を全てかき消す力さ」
やっぱりそうか、仮面の能力も使えなくなってるっぽいし……
さて、どうするか
「しかし、ガモ・シードも呼ぶべきだったか?」
ガモ? なんでガモが出てくるんだ?
いや、ちょっと待てよ、確かナノが言うにはこの龍は守りに長けた龍だったはず………ならガモも呼ぶのも
もしかして、一定時間耐えれば……やる価値はあるな
「どうした? もしや、逃げたくなったのか?」
一旦避け続けて……いや、違うな
「耐えるだけじゃつまんないな」
僕はそう言い右手を体の後ろに隠して、ウォルドルマの方へ走っていく
「能力は使えなくても、コレは使えるみたいだな」
僕は右手から鏖血鉱で作った手裏剣を飛ばす
当たってはいるが攻撃としては全く効いてないみたいだ
「こんな豆鉄砲、痛くも痒くもないぞ? どうした、これだけか?」
「ああ、これでいい、いや、これがいい!」
僕はそう言って氷魔法を使い周囲を冷やした
「おいおい、冷やせば私の動きが遅くなると思ったのか? 無駄なことを……」
「いいや? 固まるぜ、なんたってアンタは、僕の血で体全身包まれてんだからな!」
あんまりよく覚えてないけど、血は水よりも早く固まるはずだ
なら、鏖血鉱の「血を使う」という特性を活かし、ウォルドルマを固めることができる!
「さーて、あとはこの霧が晴れるまで待ちたいところだが、聞きたいことがある。ナノはどこだ?」
一緒にあの大渦の中に入ったはずのナノは、僕が最初の試練の間に降り立った時にはいなかった
「あ? ナノ坊か? 奥の部屋にいるから後で会えるぞ」
ふーん、ナノはこの龍のこと信頼してるし、まぁ安全そうだしいいか
「さてと、そろそろ出るか」
ウォルドルマがそう言い、体についた血の氷を溶かして動きだす
「お前の作戦、とても素晴らしかった。だがあと一歩、惜しかった」
僕は思い出した
そうか、こいつ地水冥龍だ、なら、地熱や沸騰、そういった芸当ができても不思議じゃあない!
「あ、あはは、僕の……負けか……」
ウォルドルマがこちらをみてニヤついてる
「いや、認めない、まだ負けてない! 諦めない! さぁ、地水冥龍ウォルドルマ! 僕は何度だって立ち上がるぜ!」
僕はそう言い鏖血鉱で刀を作り、空間の仮面でレジェルサンから貰った刀、竜胆を取り出す
「さぁ、第二ラウンドだ!」
「合格!」
……………………?
4
「さて、最後、三つ目の試練だが」
「いやいやいや、待て待て待て………えーっと、うん。ドユコト?」
僕はめちゃくちゃやる気になってたのに、なんというか、消化不良というか不完全燃焼というか……
「まぁ合格だ、気にすんな、よかったな」
なんだこの人、情緒ぶっ壊れてんじゃないのか?
「おーい、始めるぞー。えーっと、お前は他人を守るために立ってい続けられるか?」
他人って書いて人って読むタイプの人だこの人……あ、龍か
「まぁ、守れるならそれに越したことはないし、ずっと立ち続けられるよ。僕は」
僕が今守りたいのは一緒に旅をしているリゼたちだ、もし、他人がいても僕は助ける
これは絶対、僕ならそうするだって僕は英雄になりたいから
「ま、合格でいっか。はい、力は与えたし、部屋のほうに行くか」
そう言いウォルドルマは緑色と茶色の髪の毛が入り混じった大人の女性になった
「う、ん?」
服は青と白色のドレスで髪型はウェーブがかったロング
「あ、もしかして冥龍のこの姿は始めてかい? ごめんね、びっくりさせてさ」
いや、びっくりも何も、人型になれたの!?
「え、じゃあナノもなれんのですか?」
なんか変な感じの敬語になっちゃったな。
てか冥龍って全員メスってナノが言ってたような……
「ア! オ! イーーー!」
扉が開くとナノが突撃してくる。喉にナノのツノが刺さる。痛い
「さてと、私のする事はもう終わったし、君たちを船の上に返してあげるから。乗りな!」
そう言いウォルドルマは龍の状態になり、僕たちを乗せて海から出た、水の中ではウォルドルマがバリアを張っていたから濡れなかった
「じゃあ君たち、良い旅を!」
そう言いウォルドルマは僕たちを見送ってくれたのだった
5
「冥龍憑依! ウォルドルマ! って言えばなれるぜ」
ナノがそう伝授してきた
一度でも憑依型とかって決まったら、変える事はできないらしい
「わかったわかった、やるよ」
僕は息を整える。ナノがキラキラした目で見てる。うん、それはいい。でも
「おう!早くやれ!」
「頑張りな!」
「アオイ、君ならできるさ」
「アオイ様!頑張って下さい!」
「おーがんばれー」
なんでみんなも見てるんだよ
「えー、我弍飛蒼先日19歳になりましたが、恥を捨てて挑みます」
僕は左手で空を掴むように胸の前に出し拳を握る
「冥龍憑依! ウォルドルマ!」
そう言うと左腕に焦茶色と深い青色の丸い鱗が交互に付いた腕になる、そして、膝と肘に左腕と同じ鱗が付く
次に頭から木でできたツノのようなものが生え、目の色が緑色になりギザギザの牙になる
「「「「「「おおー」」」」」」
みんな同じ反応だった
「じゃあもう解除するよ」
普通に恥ずかしい、やばい、顔赤くなってきた
「えーもうちょっとー」
ユールが言う
「アオイ様、写真機! 写真機持って来ましたよ!」
リゼ……まさか撮るつもりじゃないよな?
「い、いやだー!」
それから数分、僕たちは追いかけっこをし、結局写真を撮った
:氷と酒の国の闇 1
「あれか、シルファンは」
少し遠いが、もうシルファンの港が見えて来ている
実は港といっても、ここからシルファンの国に行くには1週間ほどかかるらしい
それに……
「アオイとリゼは正体を隠すために、このブレスレットを付けておけ。「光弾きの石」というものが入っている」
シルファンの港では「聖女の石板」というアイテムでその人の個人情報が全て抜き取られるらしいのだが、無宗教なら出身地と名前だけわかるらしい
ちなみにこの光弾きの石はまだ対策されていないらしく、これを持ってると無宗教と同じ扱いになるから安心らしい
「一応、僕たちも付けてるけど、何かあったらすぐに言うんだよ、2人はカルナイと密接な関係にあるんだから」
ユールが心配してる、まぁ僕はともかくリゼはバレたらいろいろまずいしなぁ
「はい、頑張ります!」
そう意気込んでいると、すでに港に着いていた、石板を持っている兵士が1人ともう1人横にいる
僕たちは順々に船から降り、リゼも無事に降りれた。そして僕の番だ
「よし、次のもの、前へ!」
あれ? この石板、どっかで見たことある様な………
「異世界人? ははは、なるほど、貴様は異世界人か、まぁいい、さっさと行け!」
そう言い僕は解放される、その時、後ろから少し会話が聞こえた
〜〜 〜〜 〜〜
「異世界人と言えば、最近王国兵団に所属したクチロって人がいるよなぁ」
「あぁ、ありゃなかなかの上物っすよねぇ、俺の彼女にしよっかなぁ」
「おいおい、俺たち地方憲兵と中央の人間だぞ? 夢なんて……いや、いざとなったら力で……」
「俺たちが何人かでかかれば、女なんて一捻りですからね!」
「「ははははは!」」
〜〜 〜〜 〜〜
クチロ? まさか朽六か? アイツ王国兵団に入ったのか、やっぱり凄いな、朽六は
「あの、アオイ様、あの兵士さん達の会話、聞こえてましたか?」
「うん、朽六が王国兵団に入れたんだって、出世したなぁ」
そう思っていると
「アオイ、大事なのはそこじゃあないよ、アイツら、いつか朽六を襲う気だよ?」
そうケルに言われる
「おん、それで?」
「アンタ、朽六の友達なんだろ! 助けてやらなきゃダメじゃないか!」
そうケルに言われる……
「いや、朽六は強いし大丈夫だよ、それに朽六は……」
と、その時
「貴方! 朽六様を知っておられるのですか!?」
後ろからオオカミの獣人に話しかけられた
2
歩いていると、オオカミの獣人の女性から声をかけられた
そのオオカミの獣人は首に鉄の首輪をつけていて和服を着て大きな盾を持っている人だった
「どうなんですか? 朽六様を知っておられるのですか!?」
そう聞かれ体を揺さぶられる、さすが獣人、力が強い、目がぐわんぐわんする
「ちょ、ちょっとアンタ待ちな! アオイの首が吹っ飛んじまうよ!」
ケルが止めてくれた
「い、一旦落ち着いて話そうかー」
まだ目の前がぐわんぐわんする
「アオイ様ー、獣人の方はこっちですよー」
あ、もうダメかも僕
それから数分後
「先ほどは誠に申し訳ございませんでした」
「謝らなくていいよ、ただ興奮してただけなんだろ?」
このオオカミの獣人の子の名前は「爛漫」朽六の1番目の従者で大楯使い、盾は大剣にも変形できるらしい
そして彼女たちの名前は朽六が付けたとか
「にしても爛漫か……朽六らしいネーミングセンスだな」
爛漫……花が咲いてるとかそんな意味だけど、朽六は天真爛漫の方の意味でつけたな
「私と後他に2人の従者が朽六様にはいます。その2人を連れて来ますので少々お待ちを……」
そう言い爛漫は行ってしまった
それから10分、30分、1時間、3時間、5時間………
「え?約束すっぽかされた?」
もうすぐ午後6時だぞ、と、思っていると
「誠に申し訳ありませんでしたー!」
スライディング土下座をしてくるピンク髪の女の子が来た
「ほら! 爛漫も謝る!」
「ま、誠に申し訳ございませんでした」
後ろからもう1人金髪の重装備をつけた女の子が走ってくる
「みんな、早いって、ちょ、もう、ダメ、ボォロロロロ」
………吐いた…
「えーっと、えーっと、あの、大変失礼で申し訳ないんですが、同じ宿までご同行してもいいですか?」
なんか大変そうだし
「うん、いいよ」
これは断れないだろ
3
ユールたちが見つけた宿まであの人3人を連れて来た
「えーっと、紹介します、こっちは知ってると思いますが、大楯使いの爛漫。そして私は不羈そしてさっき吐いたのが闊達です」
不羈は狷介不羈かな、それで闊達は自由闊達か? 全員四字熟語なのか。まぁ朽六とらしいと言えば朽六らしいが
「それで、ワタシ達はこの通り、朽六様がいないと何にもできない者でして、今は行方不明になった朽六様を探してるんですが……」
多分、爛漫は方向音痴で闊達は遅いとかなのかな
「あの、アオイ様は朽六様のなんですか?」
朽六様のなんですか?
朽六様のなんですか?
朽六様のなんですか?
朽六様のなんですか?
「え……えーっと、友達……かな?」
いや、ここで幼馴染っていうのも違うとは思うし、かと言って最近全然話してなかったし、第一あっちは友達だって思ってないかもだし……
「よかったですぅ、友達ならなんとかなるはず、よかったよぉ、朽六様、泣いてないといいなぁ」
闊達、不羈、爛漫、この子達全員獣人な上に、全員同じ首輪をしてる……それに
ずっとケルの機嫌が悪い
「あのー、ケルさん?」
「あ?なんだい?」
めちゃくちゃ怒ってるー!
「いやあの、あの3人についてる首輪ってもしかして」
「ああ、あれは奴隷の首輪、設定した人間の道具に成り下がっちまうモンさ、あれだけは……絶対に許さない!」
奴隷の首輪か、異世界っていったら奴隷とかよくあるよな
でも朽六が人を奴隷のように扱うとは考えにくいし……何か事情があるんじゃないか?
「悪いけど、今回はアオイの力にゃなれないよ、あの子達には申し訳ないけどね」
ケルがそう言い自分の部屋に帰っていく
多分、過去に何かあったんだろう。奴隷は見た事ないし、後でマイラにいろいろ聞くか
「まぁ君たち、今夜は止まって行きな、僕がお金出すからさ」
そう言うと朽六の従者の3人は
「自分で払います」
と、言った
まぁその事は任せて、僕も僕にできることをしよう
4
「奴隷制について知りたいんだな?」
その日の夜、マイラに聞いてみた、ちなみに部屋が2人部屋を三つしか取れなかったので、じゃんけんをして僕とマイラ、ユールとガモ、ケルとリゼが同じ部屋になった
「うん、頼むマイラ、教えてくれ、どんな話でも」
マイラは目を閉じて、口を開いた
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数百年前、とある異世界人が召喚された時のこと
その異世界人はエルフと自然の国エリフェルに召喚された
その異世界人は莫大な魔力を有していたおかげで、エルフ達から好かれるようになったと
そんなある日、その異世界人はとある問題に差し掛かった。労働力が足りなかったのだ
魔力が多いだけで重労働はエルフには不得意だと、しかし、その時
その異世界人は「奴隷制」を閃いた
元々エリフェル近郊に住んでいた盗賊達に
「奴隷となる奴ら、特に力のあるものを連れてこい」
と言い、盗賊達は獣人の子供を攫って来た
そして異世界人は獣人の力を気に入り、さらにもっと多くの獣人を攫い、他国に売って行った
そして、奴隷に名前をつけた者の意思で動く首輪も作った
これによりその男はエルフやその近くの国から崇められたが……
数日後、風と獣人の国ヴィラストの英雄[ヴァヲォルツォ]と言う獣人に決闘を挑まれ、負け、その異世界人は奴隷に負けたショックで自殺した
しかし、それでも尚、奴隷制は消えずにまだ残り続けている
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「まぁ、獣人は仲間思いが人一倍強い種族でもあるからな、知らない赤の他人でも助ける。それが獣人族というものなのさ」
だからケルは……
いや、待てよ、ならなんでケルはあの場で関わらないなんて言ったんだ?
「ちなみに獣人族はなんでもまっすぐ言うが、大事な事は隠すとか」
まさか、ケルの奴、1人でどうにかする気か?
「ところでアオイ、まだ魔法の制作は続けているのか?」
「え?あぁ、うん。この前9つ目ができたよ」
実用性の少ないものとかも含めてるけど
「ははは、それはすごいな、やはりお前には魔法作りの才能があるみたいだな」
あれ?今マイラ服の後ろで何かしたような……まぁいっか
にしても、僕の作ってるの本当にしょうもないぞ?
オーブンでレンチンしたぐらいのちょうどいい暖かさを作る魔法とか、体の痒みを消す魔法とか、タライを落とす魔法とか……
「まぁどんな魔法でも、つまらない魔法など無いのさ」
なんか今日のマイラ……凄い良いやつに感じる。いや、実際良いやつなんだけどさ
「なぁアオイ、一緒に寝ないか?」
「あ、いえ、大丈夫です」
数分の沈黙の後、またマイラが言う
「アオイ、私はずっと孤独だった、これ程、知識を共有できた人間は他にいない。確かにみんなといるのは楽しい、特にお前とは……」
「あ、マイラ、おまえ酒飲んだな?」
僕がそう言うとマイラは笑った
「……あっはっはっ! やはりダメだったかー」
「どうした? 急に壊れたか?」
マイラは「はー」と、ため息をついた
「いや、ただ魅了の魔法を作ったのでな、試したが、ベースを闇魔法にしたせいかお前には効き目がなかったようだな」
なるほど、そういうことだったのか
「急に魔法は使うなよ、ビックリするだろ。それに、魔法の力になんか頼らなくてもマイラは結構美人だぞ」
そう言い僕は寝た
「ああ、魅了の魔法は、もう使わないよ」
マイラがなんか言ってたけど、あんまよく聞こえなかった
次の日、僕たちは朽六を探すために動く
そこで僕たちはとんでもないものを見たのだった
第9 終
仮面の勇者第9話を読んでいただきありがとうございます。
今回は蒼の新武器や新しい冥龍の力など、パワーアップイベントが多かったですね
さて、次回は蒼達がとある村に行くことになるのですが……これは次回のお楽しみですね。
それではまた次の話で会いましょう。