仮面の勇者 4
仮面の勇者第4話、蒼の新しい力、ここからどう物語が動くのか…それは誰にもわかりません。
さぁ、冒険の始まりです。
仮面の勇者4話
:雷光冥龍 1
僕たちは今、炎と鍛治の国ガウィタチンへ向かっている
「ねぇユールー、まだつかないのかー、疲れたー」
マイラがユールに聞く、馬車を運転してるのはガモだし、マイラは疲れてないと思うけど
「ガウィタチンの国境は後3日くらいだよ、マイラ」
後3日くらいかー、遠いな
「そういや、ここら辺には冥龍の巣があるな」
ガモが唐突に言い出した、なんだその冥龍って、厨ニ病臭がぷんぷんするぞ
「ガモ、冥龍って何?」
僕がそう聞いた時、周りが霧に包まれる
「アオイ、説明が無くて悪いが、もしかしたらお前1人だけになるかもしんねぇ、用心しとけよ」
「え? ガモさん?」
あれ? ガモやケルが倒れてく、なんでだ
「アオイ、これは試練だ、君の好きにやりな」
そう言ってユールは倒れる、続いてマイラとリゼも倒れる
「試練?」
その時、森の奥から何か聞こえた
「「「さぁ、見せてみろ」」」
なんの声だ?
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声がどこから聞こえたかわからない、僕は馬車から降りて少し歩く
「なんだ、ここ」
洞窟があった、だがその洞窟は壁が白く黄色と白の装飾がされていて、まるで神殿のようだった
「「「貴様にはあるか、その資格が」」」
「誰だ? さっきから語りかけてきて」
声は返ってこない
「まぁ、聞こえないか。ん? あれはなんだ?」
第一の試練と書かれた扉があった
「第一の試練、行ってみようか」
そう言い扉を開けると、大きな穴とそこの上に一本の縄が張られていた、穴の下には針がありその針から電気が出ていた
「奥には扉があるな、あそこに行けばいいのか」
魔法や仮面の力を使おうとしたけど、使えなかった。
仕方なくそのまま縄を渡る、難なく中間地点みたいな場所まで来れた
「来れたのはいい、だけどさ、これはちょっと…」
中間地点に来た途端、前からレーザーみたいなのが迫ってきた、近くにあった白い石を投げると綺麗さっぱりなくなった
「はは、馬鹿げてるよ」
僕は走ってこの縄を渡る、レーザは足の位置に来た
「なら、跳べばいいさ」
ジャンプして避ける、次は頭の位置に来た、それはしゃがんで避ける、髪の先端がちょっと焼き切れた
「なんだ、行けんじゃん」
次は十字か…いや、ちょっと待て、変形して…
「わぁ、ひし形がいっぱいあるぅ」
縄の位置から天井まで斜めのレーザーが大量に出てくる
「おいおい、こんなんで試練なのか?」
僕は縄にぶら下がりレーザーの下を通り、躱した
「第一の試練、クリアだ」
そう言って決めポーズを取る
「「「なるほど、突破されたか」」」
「謎の声、誰か知らないけど、すぐにそこへ行ってやるからな、待っとけよ!」
そう言って扉を開けて進むと、でっかいドラゴンがいた
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「「「よく来たな人間よ」」」
目の前にはは四足歩行で背中から翼が生えてるスラッとした感じの白いドラゴンがいる。
僕は腕を組んで悩んでいる
「「「どうした?人間」」」
「いや、案外ヌルッと会えたから、なんか、うん…面白みがない」
そう言うとドラゴンは黙る
「「「……我の名は冥龍ドライサンドラ、雷光龍と呼ばれることもある」」」
あ、話逸らしたなこのドラゴンさん
「「「人間よ、二つ目の試練だ、我と戦え」」」
「嫌だ」
「「「え、嫌なの?」」」
「僕はたまたまここに来ただけだし」
それにこのひとと戦ったところでなんになるのか
「「「強くなれるぞ」」」
「強くなれるなら考えてやらないこともないような」
そう言った瞬間ドライサンドラは一瞬で僕に近づき前足で攻撃してくる
「「「私の勝ちだな」」」
正直、負けた。もう体が全然動かない、痺れてるのか?でも痛みとかは感じないような…
「わかった、負けた、あぁ、負けた」
勝てると思ってた、自信はあった、でも負けた
「「「わかった、二つ目の試練は合格、では最後に三つ目の試練だ」」」
「え? 合格? なんで?」
こういうのって勝ったら合格とかじゃないのか?
「基準を言うことはできないが、お前ならいいだろうと思ってな」
えぇ、全くわからん
「じゃあ最後は、私から聞きたいことだ」
「あれ? 話し方というか、なんか違う?」
さっきみたいな響くようなエコーがかかってる声じゃ無くて、スラーっとしてるというか、聞こえやすい声だ
「君、誰かのために死ぬ気で戦えるか?」
誰かのためにか…
「死ぬ気では戦えるよ、でもできれば生たいけどね」
「わかった、少し待っててくれ」
そう言ってドライサンドラは神殿の奥へ行く
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「この子を連れて行ってくれ」
そう言いドライサンドラは黒色の小さなドラゴンを渡してきた
「私の試練に合格したものには、私の力と秘宝を一つ与えるんだが、君にはこの子を託したい」
「いや、でもドラゴンの子どもって」
「オレは子どもじゃないぞ!」
そう言ってこの黒いドラゴンが僕の首を噛んでくる
「いってぇ!」
確実に殺しにきてる……
「こらナノ、ダメでしょう」
「オレ、人間は嫌いだ。それにコイツ、異世界人だし」
「ナノ、あなたが旅をしたいと言ったんですよ?その方についていけば、いろいろな物が見れますよ?」
ナノと呼ばれたドラゴンはむむむーと言っている
「すみません、この子は五龍目の冥龍の候補なのです。どうか、面倒を見てあげてください、私はこの神殿から出られませんから」
ドラゴン1匹くらいなら、いいかもな
「僕はいいですよ、でも、この子がいいと言うのか」
「オレはナノだ! この子じゃない! あとオレは18歳だ! どうだ、見たか!」
「えー、僕お前とと同い年なのかよー」
そう言って僕はナノを指差す
「オマエ、声に出して言うのかよ」
ナノが引いてる
「あ、ドライサンドラさん、僕コイツ気に入りましたよ、このちんちくりん」
「ちんちくりんだと!? ドライサンドラ! オレもコイツが気に入った! どっちが上かわからせてやる!」
「はっ!やれるならやってみろちんちくりん!」
「黙れ、この翼もない人間!」
「人間に翼はねぇよ!」
ドライサンドラさんが声を抑えて笑っている
「ありがとう、人間の方、そこの光に入れば元いた場所へ戻れる。そうだ、最後に名前を聞かせてくれ」
いいけど、ナノはお別れの挨拶を言ったのかな
「なぁナノ、ドライサンドラさんにお別れの言葉とか、言ったか?」
「ん? オレはもうさっきお別れの挨拶したぞ?」
なら、いいか
「僕の名前は我弍飛蒼通りすがりの、仮面の異世界人さ!」
「じゃあな!ドライサンドラ!オレ!頑張ってくる!」
光に包まれ当たりが白くなっていく、ドライサンドラさんの目に涙が見えた
「最後まで泣かんと、決めていたのにな……」
ナノも、泣いていた
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「おい! 起きろ!」
目が開く、どうやら馬車に戻っているようだ。まだ少し霧があるみたいだし……
「ナノ、お前のことどう説明しよう」
「ん? 俺は世界最強のドラゴンって言ってほしいぜ!」
よし、みんなには最弱のドラゴンって言っておこう
「ん? う、うぅ、ア、アオイ?」
あ、ユールが起きそう
「わぁ、トカゲさんですか?」
リゼも起きそう、ていうか起きてるか
「ん? トカゲ?」
「トカゲかい? そうだねぇ、夕飯にはならなそうだねぇ!」
ケルもマイラも起きたし、ガモも目を擦ってるな
「オレはトカゲじゃない! 最強のドラゴン、ナノ様だー!」
新しい仲間ができた
この後、ユールたちに事情を説明した、ナノはみんなから快く受け入れられた
まぁ、ナノもみんなも楽しそうだし、いっか
僕はそう思った
:鍛治と炎の国 1
「あ、暑い」
「ユール、その発言、なんかデジャヴを感じるよ」
僕たちは今、炎と鍛治の国ガウィタチンへ向かっている
「でも、本当に暑いですよ、アオイ様」
なぜ炎と鍛治の国へ向かっているのかと言うと、新武器を作るためだ
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炎と鍛治の国ガウィタチン、ドワーフという種族が大半を占めている国で火山が多く、洞窟や採掘場も多いのもあって鍛治がかなり発展してる
この前までいた雷と機械の国クレリチアは砂漠地帯にある国だったけど、ここは火山地帯ですごく暑い
国の感じは、家は石で作られてて窓にガラスがない、国の周りには石でできた壁があり、門をくぐると大きな山がありそのすぐ前に城が見えた、かなり遠いな
それと、英語でカジノと書かれた巨大なお店があった
「何だあれ? 何て読むんだ?」
ガモが聞いてきた。そっか、ここ、日本語しかないから英語が読めないのか……
ちょっと待て、「英語」だと?
「あ、そういえば異世界人達、各国を支配する的なこと言ってたな」
「「「「「今言うなよ!」」」」」
リゼを除いた4人とナノが言ってきた、やっぱり言っといたほうがよかったかな
「ところでアオイよぉ、あれなんなんだ?」
ガモが聞いてきた、でも僕もそこまで知らないんだよなー
「そうだな、言うなら賭博場かな?お金をかけて戦う感じのもので」
「へぇ! 面白そうじゃないか!」
ケルが食いついてきた、カジノとか好きじゃなさそうって思ってたけど、好きなのかな? 賭博
「でもよ、賭博場なんて国占領してまで作るものか?」
「まぁまぁガモ、別にいいじゃないか、賭博場なんてそんなに迷惑かからないだろう、それに楽しそうだしねぇ!」
ケルが言う
「よし、ガモ、アタシとカジノに行こうじゃないか!」
ガモが何か言う前にケルがガモを持って行く
「なら私とリゼは宿屋でも探させてもらおうか、そのついでに教会に行こうな、リゼ」
あ、この流れは
「じゃあ僕は武器の強化に行くけど、アオイはどうする?」
「一緒に行きます、いや行かせてください」
ユールが聞いてくれて助かった
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今ユールと来ている場所はなんというか、のどかな場所だ
「なぁユール、あっちの賑わってた方には行かないのか? 鍛冶屋がたくさんあったし、武器作るならあっちの方がいいと思うんだけど」
「うーん、行ってもよかったんだけど、僕はこっちにいる人に用があるから」
こっちの人? ユールがお世話になった人かな
「それに、田舎や都会とか、そう言うことが重要なんじゃない、僕は恩返しをしたいだけなんだ、だから僕は全てに平等さ」
なんかすごい勇者っぽい
「おう、ユー坊じゃねぇか、おーいみんなー! ユー坊が帰ったぞー!」
少し小柄で筋肉質な人がそう家のある方に向かって言った
「あらユー坊、おかえり」
「おー! ユー坊! どうした! ガモ助は一緒じゃねぇのか?」
「アオイ、紹介するね、この人たちはここ、ハクハセ村のドワーフさん達さ。ところでレジェルさんはいる?」
レジェル? ユールと関わりの深い人だろうか
「ああ、レジェルはずっと家に引きこもってるよ、元気ないみたいでね」
引きこもりか、気が合いそうだ
そんなことを考えながら、村の上の方にある家に来た、隣には鍛冶場もあるのか
「レジェルさん、いるかい?」
ユールはそう言い案内された家に入って行く
「おお、ユールじゃあねぇか、旅の仲間が見つかったんだな」
そこには赤髪の背の高い男がいた。ドワーフと呼ぶには背が高い気がする、ガモと同じくらいかな?
「うん、そうだよ。あ、アオイ、こちらドワーフのレジェルさん、俺とガモが孤児院にいた時に戦い方を教えてくれた人だ」
「まぁ、ここら辺のドワーフ達はあの孤児院に世話になったしな、時々行っていろいろ手伝ってんだ。ところであんたは…」
レジェルさんが僕を見る
「ああ、レジェルさん、コイツはアオイ異世界人だよ」
そうユールが言った時、レジェルさんの顔つきが変わった
「おいユール、お前、異世界人なんて連れてんのか?」
まぁ確かに異世界人って嫌な人ばっかだしな
「まぁ、そんなことどうだっていいじゃないか、レジェルさんにはアオイに武器を作って欲しいんだよ」
僕の武器か、え、ユール優しい!
「はぁ、わかった、ならアオイとやら、お前に頼みがある」
「頼み? まぁ僕にできることならなんでも」
「頼みってのはな、国の中央にあるカジノ、あそこでオリハルコンという景品がある、それを持ってこい」
オリハルコン! 異世界でよくある最強のあれ
「でも景品ってどういうこと?」
そう聞くとレジェルさんは答える
「あのカジノで大勝ちすれば丸いオリハルコンっつう黄色い宝石がが貰えるんだとよ、それを持ってきてくれ」
そうレジェルさんが言うとユールが
「ん? 丸いオリハルコンって」
何か言おうとしていた
「まぁ、行ってこい、そうすりゃ作ってやる」
カジノか、僕、運ないんだよな
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その日の夜
「大負けしたー!」
ケルがそう言い宿屋に帰ってきた
「まぁまぁケル様、あ、お風呂に入りましょ、こっちですよ」
そう言ってリゼがケルを連れて浴場へ行く
「あ、ユール、お前レジェルさんのとこ行ったんだろ、詳しく聞かせろ」
そう言いガモはユールを連れて行った。そうだ、マイラに聞きたいことがあったんだ
「あ、マイラ聞きたいことがあるんだけど、この世界の文字と言葉の話なんだけど」
「この世界の文字と言葉だと? まぁ私にわからん事はそうないからな。なんでも聞け」
「あのね、この世界の文字と言葉が僕のいた世界と同じなんだよ。それでさ、この世界の他の国も同じ言葉なの?」
マイラは腕を組み考える
「ああ、この世界は言葉も文字も全て同じだ」
「やっぱりか」
僕がよく読んでた小説とかではでは集会所ではなくギルドと言っていた、しかもこの世界は集会所とか集会場という
だけどエルフやドワーフなどは日本が発祥の言葉じゃない
そう、日本語ではあるが英語とごちゃごちゃ、それがこの世界の言語だと僕は思う
「なぁマイラ、この世界の言語っていつからこの言語なんだ?」
「質問の仕方がバカみたいだな、まぁ今話しているこの言語がいつから世界共通になったかというと、最初からだ」
「最初から?」
「私の知る限りはな、そうだ、この世界の歴史をお前に教えてやろう」
そう言ってマイラは話始めた
:神の人の昔話 1
この世界の歴史は2人の神が生まれた時に始まった。それは今よりおよそ2000年前
創造神カルナイ、破壊神コロウアが誕生した。2人は100年かけて今いる種族を全て作った。そして2人は長い眠りについた。
「これが今よりだいたい1900年前、暦100年のこと」
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2つの神が眠りについてから400年後、11の国が生まれた
今現存している九つの国と、魔物の国、龍の国、その国たちは仲良く貿易や技術の分け合いなどをして発展していった
そして、それぞれの国でだんだん個性が出ていった、これがおよそ暦500年のこと
「国ごとに歴史もあるが、それは一旦置いておこう、今は世界の話だ」
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それからさらに約500年ほど経った時、異世界から来たと名乗る人間が10名来た
来た場所は龍の国以外の全ての国だった、その時の各国の王は異世界人に言われるがままに従い、戦争を起こしたそれは数年続いた
これは10国世界大戦と言われている、龍の国は幸い巻き込まれなかったらしいがな
「これがだいたい暦1000年から1300年の間に起きたこと、ちなみに暦と言うのは異世界人がよく言う西暦とかというものと同じと考えていい」
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戦争が終わり各国はすごく傷ついた、そして自然の国、岩の国、氷の国、魔物の国は外交を全くしなくなった、鎖国したということだ
それがおよそ数十年ほど続いたある時、魔物の国が大量の軍勢を率いて龍の国を滅ぼそうとした
これが暦1300年から1800年の間に起きたこと
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1600年に起きた戦争、魔天戦争と言われているが、その戦争は他の国も巻き込み、11カ国で行われた
しかしそれは3日で終わった、仮面の勇者が現れたからだ
仮面の勇者は魔物の国に魔物の大半を封印したのだ
これは仮面の勇者の伝説として今も語り継がれている
「まぁここからが面白い話だ、アオイ、おい、寝るなよ?」
「う、眠くなってた」
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それから200年ほど経ったある時、魔界から魔物の大群がまた来た
これは第二次魔天戦争と言われている、この時も仮面の勇者は現れた、しかも、200年前と変わらない姿でな
「え?変わらない姿で?」
「まぁそれを見たものたちは皆、仮面の勇者は本当は魔物なんじゃないかと言っていたな。それに語り継がれている姿と同じだけで、本当に同一人物とは限らん」
まぁその戦争はまたもや仮面の勇者によって防がれた
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そしてここからは記憶に新しい出来事だ。
今より18年前、第三次魔天戦争が起きた、この戦争でもまた仮面の勇者は現れた、しかし、この戦いは長く、約3年ほど続いたのだった
そして、この戦いにより龍の国が滅んだ、元々龍の国は毎年のように魔物の軍勢から国を守っていたせいで滅びかけだった
「そして今に至る。ちなみに別の世界の人間が来る事は多々あり、2つの神が現れた時も10人いたらしい」
「て事はやっぱり、異世界人がなんか関係してそうだな」
異世界人が文明を作ったのだろうか
「そういえばなんで全部10人なんだ」
そう言うとマイラはまた腕を組み考える
「今まで異世界人が召喚されたのは13回、全部10人なんだよ、確かになぜだろう」
少しの沈黙の後
「質問なんだけどさ、この世界の人たちってどうやって異世界人かそうじゃないか見極めてるの?」
今日会ったレジェルさんはユールに紹介されて僕が異世界人と気づいた、でもリゼは最初から気づいていて、僕からバッグを盗んだ
「見分け方だが、服だな、そういえばお前は新しい服を作ってもらったと言っていたな」
そう、僕はこの世界に来てリゼに会ったあと、一緒に仕立て屋に行って服を作ってもらったのさ!旅人の服(特注品:5枚入り)
ちなみに着てきた服は今も大事に保管してある
「ま、アオイは髪も目も異世界人とは少し違うからな。黒髪黒目じゃねぇし」
ガモの後ろにいたユールが言ってきた
それだけなのかな
「まぁ今日はもう遅い、寝よう」
マイラが言う、うん、寝よう
:運と仕事 1
次の日、僕はリゼとカジノに来ていた
「ガモとユールはレジェルさんのところに、マイラとケルは負けた分の金を集めに集会所で依頼を受けに行く……か」
「アオイ様、今回はオリハルコンの調査が目的なんですよね、賭け事はするんですか?」
「時と場合によるね」
そう言ってカジノに入る、中はかなり大きく、ルーレットやトランプ系のもの、魔物を競馬みたいに走らせるところもあった
そして中央に厳重に守られた丸い宝石があった
「ひ、広いですね」
ちなみに奥にはVIPルームと書かれた扉があった
「じゃあ、情報を集めがてら遊ぶか」
と、リゼに言ったが、神に仕えるものが賭博っていいのか?
「私、前までコロウア教でしたので、賭け事をするのは初めてです。でも頑張ります!」
楽しそうだし、まぁいっか
それよりもだ、あの黄色で丸い宝石、多分オリハルコンで間違い無いだろう
しかし、あれを取る方法かー難しい
「あ、そうだ」
そういえば仮面に能力を与えることができるじゃないか、帰還の仮面のように
ちょっと作ってみるか
「えーっとここをこうして、ん? どうやるんだ?」
勘で3つほど作ってみた
「これは空間の仮面、バックパックみたいなのを作り出すことができて、無限に物を詰め込める」
使ってみたら、できた。僕は心の中で強くガッツポーズをした
「次は闇の仮面、闇に潜み闇に生きる、隠蔽とか隠密に特化した仮面だな」
ここじゃ使いづらいかな、後で使おう
「そして最後は応用の仮面!」
これはどう作ったかわからないしなんか最初に作れたけど、能力はよくわからない
でもこれをつけると仮面が作りやすいんだよなぁ、そういう力かな?
「まぁこれくらいでいっか、よし、トイレから出よう」
そして、この仮面の力に関して気づいたことが二つ
能力を付与した仮面は一つしか作れないという事
仮面は自由に作成と破壊ができるという事
「これ、結構チートだな」
だってこれ、応用力と想像力があればなんだってできるぞ
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数時間後
「リゼー、どこだー」
あたりを見回すと、多くの人だかりができている場所があった、そこにリゼはいた
「おーるいんです!」
リゼの手元には1万と書かれたチップが20枚くらいあった
「おい、ねーちゃんマジかよ! 今の倍率5000だぞ! 勝ったらいくらになるんだよ!」
そんな感じでヤジを飛ばしてる人が多くいた
「じゃあ、18番で!」
どうやらルーレットをやってるらしい、1から100までの数があり、勝つごとに倍率が上がる仕組みだ、5000倍ならオールインで50連勝すればいけるっぽい
「あ! 勝ちました! やったぁ!」
リゼは跳ねて喜んでる、ウサギみたいで可愛いな。でも僕はそんな豪運が怖いよ
その後、リゼは勝利の女神と称えられていた
「いやぁ、カジノ楽しかったですね」
ちなみに僕は情報を聞いたりしていたせいで儲けは少ししかなかった
「あ、リゼ、なんかいい情報ある?」
そう聞くとリゼは青ざめて言った
「あの……忘れてました」
「いや、忘れてたんかい」
「ごめんなさい、アオイ様」
「いやいや、別にリゼはわるくないよ。それにリゼはカジノでめっちゃ勝ってたし。僕より凄いことしてるよ!」
「そ、そんなことありませんよー、それにアオイ様だっていろんな情報を手に入れたじゃないですか!」
「僕もそんなことないよ」
2人で笑っていると、後ろから
「すみません、少しいいですか?」
と、声をかけられた、声をかけてきたのは、異世界人、血五賢斗だった
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「君たちをここに呼んだのは、少し話がしたくてね、少ししか時間をとらせないから」
血五はVIPルームのさらに奥にある社長室という場所に僕たちを案内した
「いやでもビックリしたよ、あんなに勝つ人がいた事も、僕と同じ異世界人がいた事も」
そう言われたリゼは照れていた
「それで、まずいくつか質問あるんだけど、どうしてあんなに勝てたのか、そして何を嗅ぎ回っていたのか」
あ、バレてたのか、まぁ流石にわかるか
「ずっと勝ってたのは、本当にただの運なんです、だから何かしてたわけではありませんよ」
血五が止まって、驚いていた
「で、探ってた事だけど、このカジノに丸い形をしたオリハルコンがあるって聞いて、それを探していたんだよ」
そう言うと血五は近くにいた部下に合図を出し、黒い箱が出てきた
「これのことかい?」
その箱の中には丸い黄色の宝石が入っていた
「これの名前はオリハルコン、まぁ同じ異世界人だし、だいたい知ってるでしょ」
嫌味な言い方だなぁ
「なぁ、これってどうやって手に入れたんだ?」
そう聞くと血五は口元に手を当てて考えた
「うーん、説明するのは少し難しいね。話すとかなり長くなるよ」
「まぁ、聞かせてもらおうか」
ちなみに2、3時間くらい話された
まとめると、血五は城に忍び込んだ盗人からオリハルコンを取り返したらしい、それで王からオリハルコンを預かってほしいと言われ、それで持っているとの事
うさんくせー!
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血五の話をまとめながら僕とリゼはレジェルさんのもとへ向かった、レジェルさんのところにはガモとユールもいたから2人にもさっきのことを話した
「オリハルコンは異世界人の手に、か……」
ユールが言う
「で、その血五はどうやって手に入れたって言ってたんだ?」
ガモが聞いてくる
「なんか、盗人から取り返したって言ってたよ」
そう言うとユールの後ろにいたレジェルさんが言ってくる
「そうかよ、やっぱり異世界人はこれだから嫌いだ、平気で嘘をつきやがる」
「そういえばアオイ、君が見たオリハルコンって何色だった?」
そうユールが聞いてきた
「え? レジェルさんが言った通り普通に黄色だったよ」
そう言うとユールはアゴに手を当てて少し考えて言った
「それは、本当に黄色だったのかい?」
黄色だった、紛れもなく黄色だった、レモンみたいな色だったな
「僕の見た感じレモンみたいな黄色だったけど」
「なるほど、ならそのオリハルコンは偽物だね」
そうユールが即答した、僕は驚いていた
「これはドワーフの方言とかも関係してるんだけど、ドワーフの言う黄色は橙色なんだそれにオリハルコンはどっちかと言うとミカンだね」
なるほどなるほど、方言かぁ
「え、じゃああれは偽物なのか」
なら本物はどこにあるんだ? 考えているとユールが言う
「たぶん、その血五っていう人が本物を持っているだろう」
「でも、持ってるならその複製も簡単じゃないか?」
「もしかしたら、血五は箱からまだ出せていないのかもね」
「箱?」
「ああ、オリハルコンは箱の中に入っていてね、それを開けないとオリハルコンが取れないんだけど……」
あ、鍵がかかってるとかか
「まぁアオイも考えてると思うけど、かなり頑丈な鍵がかかってるね」
なるほど、ならまだ完全に取られたってわけじゃないのか
「ま、やれる事をやって情報を得よう」
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次の日、僕は城に向かった
「で、予約もなしで私に話に来るとはな」
今日、僕はこの国の王様に会いに来た
王様、いや、女王様だけど、赤髪でグラデーションで神の先端が黄色っぽくなってるな、クレリチアの王より怖い
「それは本当に申し訳ありません。ですが、お尋ねしたいことがあってですね」
「なんだ? 言ってみろ」
「異世界人の血五賢斗がこの国でやっていることはご存知ですか?」
王は少し黙り、言う
「ああ、知っているさ、この国で賭博場を作り大いに儲けているとな」
「王様、あそこにあるお金、欲しくありませんか?」
それを言うと僕のあたり一帯が炎に包まれる
「あれは正当に得た金では無いかもしれない、だがな小僧、人から盗んではいけないものは3つある」
そう言い王は座っていた椅子から立ち近づいて来る
「それはな、金と、愛と、命だ。わかるか小僧?」
「はい、だから、取り返すんです」
僕の目的はこの人を味方につけること、できなければ、終わる
「話にならん」
「王様、僕は橙色の月が欲しいんです」
それを言うと王が少し止まる
「………要件はなんだ?」
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夜0時
「はぁ、こんな事してるのリゼに知られたら、叱られるなぁ」
僕はあのカジノに侵入していた。そう、侵入、まずはことの経緯を説明しよう。
先日、王と対話した。その話はまぁ、うん
それはいい、あれから1週間ほど、みんなでここにある物をどうやって手に入れるか考えていた
そして今、金庫の前にいる、この中にオリハルコンの入った箱があるはず……
「しかし、ないな。やっぱり鍵は血五が自分で持ち歩いているのかもな」
だとするとここに用はもうなさそうか、そう思っていると
「ん? 誰かいるのか?」
血五が現れた。今僕は闇の仮面をつけている。しかし、闇の仮面は隠密が得意といっても透明になれるわけじゃない、つまり
「これはまずい」
血五が入ってきた扉以外の出入り口は無い、この部屋の明かりをつけられたら闇の仮面の力は薄れる、いったいどうすればと思っていると
パチッ
部屋の明かりがついた、さっきまで暗かったから眩しい
「あ、やべ」
血五と目が合った、でも仮面をつけてるから目は合っていないのか
「お前は誰だ?」
いや、僕の顔には仮面がついてる、なら正体はバレないのでは? よし、いける
「お前、この間来た異世界転生者だな?」
なんで…バレた?闇の仮面で正体を隠蔽しているはずなのに
「お前、僕のお金を盗みに来たんだろ? だけど残念、鍵はここだ」
そう言って血五は黄色の鍵を見せた
「なぁ血五、お前本当にオリハルコン、持ってるか?」
僕が聞くと急に血五は怒りだす
「あ? そうだよ! 本物だよ! 俺があのパズルを解けないと思ったか? あの箱のパズルはもう解いたんだよ! だからこれは本物なんだよ!」
「なぁ血五、箱って、パズルって何だ? それがその偽物のオリハルコンと関係があるのか?」
そう聞くと血五の目がこっちを見つめる、僕、変なこと言ったか?
「これはっ! 偽物じゃっ! ねぇんだってっ! 言ってんだろっ!」
そう言い血五は岩魔法を打ってくる、岩魔法は実態があり大きい、この部屋は結構狭い、避けるのは難しい
「でも、上に避ければいいのさ」
僕は上にジャンプし照明に手をかけ血五に近寄る。そして腰から銃を出そうとする
「武器を取り出す時間なんてやらない!」
銃を取り出そうとした隙を狙われ岩魔法が直撃する、よりにもよって頭に当たった、意識が朦朧とする
「おや、こんなものですか? やはり弱い! あんたは雑魚なんだよ! ただのモブなんだよ! モブは世界の端っこで野垂れ死んでろ! 俺が主人公なんだから! 邪魔すんなよ! クソが!」
そう言って血五は僕を蹴ったり踏んだりする
「おい? どうした! 手も足もでねぇのか? 無様だなぁ! ははははは!」
そう笑う声が聞こえて、僕の意識は途絶えた
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目が覚めた。目が覚めた場所は、牢獄だった
「ここは、牢獄か、さて、どうしようかな」
牢獄にいる理由は、血五が僕のことを泥棒と言って国に突き出したんだろう。まぁ実際泥棒みたいなことしてたしな、なんも盗んでないけど
「おや? 起きましたか? 雑魚」
血五が来た。なぜ雑魚呼ばわりされてるのか、僕は
「なぜこんなことになっているか全くわからないでしょう」
そう言って血五は黄色のオリハルコンを取り出してそれを見つめる。
血五の周りには兵士がいる、それを何も言わない、まぁ偽物だしな
もしかして血五は僕がオリハルコンを盗んだ犯人にしたのか? その犯人がカジノに侵入して盗みを働いたとか
「いや、人のことを雑魚と罵って見下してる人がそんな安直なわけないか」
小声で言った、たぶん聞かれてないだろ
そんなことを思っていると血五は牢の中に入ってきて僕に耳打ちした
「実は、あなたをオリハルコンを盗んだ犯人にさせていただきました、さらに、あなたはカジノに襲撃した盗賊としても罪を償っていただきます」
そう言い血五は離れていく
「まぁ僕は王に表彰され、国民達から大きな感謝をされます。ああ、なんて僕は主人公らしいんだ!」
そう言い血五は牢から出る
「ああそれと、あなたの処刑日と僕の表彰式は今日ですので、あなたも出てきてください」
そして僕は牢から出て、血五についていった
僕は王の間にいく途中に、疑問に思ったことをいくつか並べた
血五の箱とパズルのこと、カジノの景品にあのオリハルコンがあったのになぜ誰も何も言わなかったのか
血五は本物のオリハルコンを持っていない、だって黄色だし、でも偽物だとしても、今までなんで国民達は何も言わなかったんだ?
「おい、もう着くぞ」
そう血五に言われて気づく、目の前には玉座があり、そこに王が座っていた
「さて、まずはアオイとやら、貴様の件だ」
盗みのことか
「貴様は3日前の夜、カジノに入り盗みを働いたらしいな、しかも以前に我らのオリハルコンも盗んだと、それは本当か?」
「いいえ、僕は何も盗んでません」
僕は即答した
「いやいやいや、待て待て待て、お前がやったんだろ! このクソ野朗が!」
隣で血五が騒ぐ
「静粛にしろ、これは国王命令だ」
そう言われた血五は国王の方を睨み黙った
「その方は自分が違うと言っていたが、証拠はあるのか?」
「ない、だから心で信じてください」
僕は国王に言う、そう言うと血五は小さい声で無理だろと言って笑っていた
「わかった、それでは処罰は3日後にしよう、それまでに貴様が無実の証拠を出せたら許してやる、表彰式も3日後行う。もう下がれ」
そう言い国王は部屋から僕たちを出す
「無実の証拠なんて出せない、なぜなら僕のチート、賢者があるからだ」
そうドヤ顔で僕に言ってくる
「僕のチート、賢者はあらゆる情報を持っている、そして、情報改ざんもできるチートだ」
なんでこういう奴らって自分から言うんだろう
「僕はお前のチートを知っているぞ、お前のチートは増幅、全く同じものを作り出す力だろ、刄九が言っていた、この剣は全部、同じものだとな!」
刄九って確か、機械の国で僕がコボルトから取った剣を食ってたやつだよな
てか刄九の言うことを聞いたって、その賢者で考えろよ
「そのチートじゃ、僕には勝てないよ」
血五はそう言い去って行った
その後、僕は処罰までの3日間自由だった、その間僕は、ずっとカジノにいた
8
あれから3日
僕が処罰を受ける日が来た
「さてアオイ、無実の証明はできるのか?」
そう国王が聞くと、隣にいた血五が笑いだす
「はははははは! 無理ですよ! だってコイツ、3日間ずっとカジノにいたんですよ!? はははははは! そんな奴が、無理に、決まってんだろ! はははははは!」
そして血五の笑いが静まった頃
「わかった、ではまずは血五賢斗、貴様の表彰式からやろう」
国王はそう言い僕たちをテラスに案内した、下には大勢の国民がいる
「皆の者! よく聞け! ここにいる血五賢斗はこの間失われたオリハルコンを取り戻したのだ! 彼は英雄だ!」
そう国王が言うと国民達は盛り上がる
「さて、血五よ、何か言うことはあるか」
そう言われた血五は前に立ち高らかに言う
「僕は、2度取り返した! 一度城から盗まれた時も! ここにいるこのチートを悪用することしか脳のないカスから! オリハルコンを取り返した時も!」
血五は少しためて言う
「僕は、天才的な主人公なんだあ」
血五は涙と涎を垂らしていた
そう血五は言い、黒い箱から丸い ″黄色の宝石″ を出す
「僕は、この難解なパズルを解くことに成功し、中にあるオリハルコンの無事を確認した! もう大丈夫だ! 国民達よ!」
さらに血五は続ける
「さぁ! このオリハルコンを盗んだクソ野郎を今から殺す! 見たまえ! 犯罪者の末路を!」
そう言い血五は近くにいた騎士から槍を奪い、僕に刺そうとする、しかしその刃は僕に届かなかった
「アオイ、ふざけすぎだぞ」
ガモが盾を持って僕の前にいた
:5の主人公
僕の名前は血五賢斗、ただの18歳の高校生、世界一の天才にして世界の主人公さ
僕の両親は教師だ、僕は学校で毎回テストでいい点を取っている、なのに両親も教師もみんな「このままじゃ将来やっていけない」と言ってくる、意味がわからない
僕は生徒会長にもなれなかった、僕の代わりになったのはいつも周りに人間がいる弱者だった
仲間や友達を作る人間は弱者だ、1人こそ強者、今まで成功した有名人はみんな1人の力で有名になったんだ、だから他人は必要ない
そんなある時
「血五君って友達いるの?」
そう聞いてきた奴がいた、そいつは僕の代わりに生徒会長になった奴だった
「もしいないならさ、俺、血五君の友達1号になってもいいかな?」
そう言ってソイツは手を差し伸べてきた
「あ、血五君って何か好きな食べ物ある?俺、料理得意だからさ、何か」
ドガ!
ソイツが言い終える前に、俺はソイツを殴った
「気持ち悪い、弱者が強者に近づくな!ゴミが、気持ち悪いんだよ!死ね!」
そう言い教室を後にした
「ま、待ってくれ血五君、俺はただ!」
ソイツはそう言い近寄ってきた、だが言い終える前にもう一発殴った
「死ね!弱者は死ね!無能が主人公の邪魔をするな!消えろ!」
そう言ってもソイツは立ち上がった、周りが僕に変な目を向けている、僕は正しいことをしているんだ、弱者は強者に虐げられて当然なんだ!
「なのに、なのになぜ誰もっ!俺をっ!認めないんだよっ!」
そう言い学校を飛び出した
「待ってくれ!血五君!」
あの生徒会長になって威張っている弱者も、俺を変な目で見るカスどもも、全部消えればいい!
そう思っていると周りの景色が変わり、気づいたらこの世界に来ていた、俺は選ばれたんだ
:シーニィというキョーダイ 1
これは、僕たちが雷と機械の国クレリチアから出国するよりちょっと前の話……
「「ランク上げ?」」
ユールが僕とリゼに話をしてきた
「そう、2人は冒険者協会に所属しているだろ? それで、冒険者にはランクっていうのがあるんだ」
わぁ、異世界って感じだな、ていうか異世界だよ、うん、ここ異世界だよ
「アオイ、なんで1人で頷いてるの? きもいよ?」
「よっしゃユール、表出ろ」
「上等だよ、いつかこうなるんじゃないかと思っていたさ」
2人で宿の外に出る、リゼも付いてきた
「勝負は……一本選手でいいかな、アオイ?」
「別に、いいぜ」
そう言い僕は腕を交互に合わせ手を握り、顔の前もってくる
「アオイ、なんだいそれは」
「お、ま、じ、な、い☆」
リゼがアタフタしてる、小動物みたいだな、チワワとか兎みたいな感じだ
「「じゃんけんポン!」」
僕はグー、ユールはパーを出した
「クソ! 漢のグーで負けた!」
「オトコノグー? バカめアオイ! アオイバカめ! 君はいつも最初にグーを出すからね! 知っていたさ!」
リゼが胸を撫で下ろしホッとしている
「いやーでも、じゃんけんって面白いですよね、グーとチョキとパーっていう簡単なもので勝敗を決められるなんて」
「うん、本当に便利というか、考えた人は天才だと思うね」
そんな感じで話しながら、僕たちは宿の中に入っていった
「で、2人とも、ランクアップの件なんだけど」
ユールがそう切り出してきた
「なぁユール、ランクアップして何になるんだ? 低ランクでも高ランクの依頼は受けられるぞ?」
ユールはチッチッチッと指を振った
「違うよアオイ、ランクが高くなると集会場で受けられるサービスが良くなるのさ!」
少しの間沈黙の時間ができる
そして僕は聞いた
「サービスって何?」
「良く聞いてくれたねアオイ。サービスというのは、例えば食事、ランク8までいけば集会場でタダ飯が食えるのさ!」
ランク8か……
「あ、安心して、ランク1でもサービスは受けられるよ、例えば定食のおかず1品無料だったり」
1品か
「しょぼー」
でもサービスを受けられるのは何かと便利だよな、それに集会場ってどこの国にもあるし、この冒険者証明書を持ってればいいだけだし
そう考えていると、リゼがユールに聞いた
「参考までに聞いておきたいのですが、皆様のランクはいくつなんですか?」
たしかに気になる、ランクは強さの基準にもなると思うし
「僕とガモはランク8、ケルは7でマイラは6だよ、まぁマイラはランクアップするのが面倒くさいだけで、実際には8ぐらいの実力だよ」
たしかにみんな強いしなぁ
「ま、2人ともランク4〜5くらいの実力はあると思うからさ、行って来なよ」
いくかー
2
ランクの昇格は1日に1ランクずつしかあげられないようで、僕は1週間でランク3まで上げられたけど
リゼはすでにランク5になっていた
「はぁーランク上がらないー」
ランクの昇格には特定の任務をクリアする必要がある、2に上がる時は薬草集めとかで3に上がる時は強めのモンスターの討伐だった
「でも4からは難しすぎるんだよな」
4に上がるクエストの内容は独自の魔法や独自のスキルの創作
マイラいわく、僕は異世界人ということもありスキルの創作が難しい体質らしい
「まぁ普通の人でも作るのは難しいらしいし、それに焦ることじゃないか」
集会場で骨付き肉の骨をかじりながら考える
「よぉキョーダイ、ランク上がらなくて困ってんだろ」
コイツは最近仲良くなった冒険者で名前はシーニィ・ブラッド
僕のことはキョーダイって言ってくる。顔は兜のような仮面で隠れている
「そうなんだよ、シーニィは確かランク4だったよな、どうやって作ったんだ?」
「うーん、そうだな、スキルや魔法を作るヤツは2種類いる、感覚的なヤツと論理的なヤツ、キョーダイは……どっちもダメだな!」
どっちもかー
「まぁキョーダイは裏で程努力するヤツだし、才能はないから論理的に考えたほうが速いな」
「お前、僕が裏で努力してることも知ってんのか」
シーニィは会った時から馴れ馴れしかった。まぁ、ランクアップとかよく助けてくれたし悪い奴ではないと思う
「にしても論理的に考えるって、どうしたらいいんだ?」
シーニィは顎を抑えて考える
「そーだなー、論理的に考えるなら魔法の方がやりやすいから、魔法の作り方を教えるぜ、俺のことはシーニィ先生って呼びな!」
「はい! シーニィ先生!」
「ワンモアプリーズ!」
「はい! スィーヌゥイー先生!」
こうしてシーニィ先生との授業が始まった
3
「まず、魔法ってのは基本の9つの属性、火、水、風、雷、地、氷、自然、まぁ自然は植物とかだな、んで光、闇の9つだ。キョーダイは光と雷、ちょっとだけど水と氷も得意だったな」
魔法は適正というのがあって、普通は1属性か2属性くらいが普通、ちなみにマイラは全属性に適性がある、マイラは異常なので無視するとして
「確か適性の高い魔法は作りやすいんだっけ?」
「お!キョーダイ、昨日言ったたこと覚えてんのか!やるなぁ」
「お?バカにしてんのかー?」
昨日は魔法の基礎や応用のやり方、属性ごとに打ちやすい弾の形とか教えてもらった
「さ、いよいよ魔法の作り方だ」
魔法は大きく2種類に分けられ、補助と攻撃、僕は攻撃を作る
「キョーダイは光魔法に適性があるし、なんか楽しかった思い出とか、そういうのを力にするといいぜ!」
楽しかった思い出か……
「昔、クリスマスに家族でプラネタリウムに行って、その帰りに、スノードーム買ってもらったな」
父さんと母さんとの、1番覚えてる記憶、寒かったけど、暖かかった
「………そうか」
シーニィ、なんか泣いてるのか?
「キョーダイ、今思い出した記憶を力に変えるんだ、それができたらいけるさ」
そう言ってシーニィは立ち上がった
「あ、待ってシーニィ」
「お褒めの言葉はいらないさ」
「いや、お前が飲んだ紅茶の金、払ってけよ」
シーニィはその場で立ち止まって言った
「俺、実は紅茶よりコーヒーが好きなんだよね」
そう言ってシーニィは手を振って去って行った、金を払わずに
「アイツ、絶対にいつか払わせてやる」
4
数日後
「アオイ、魔法の練習に僕を呼び出すのはいいが、まだその魔法を使った事がないって本当かい?」
「ユールがランクアップしたら? って言ったんだから、責任持たないと」
「ま、そうだね」
今日は機械の国クレリチアの近くにあるオアシスに来ている
ここでは最近ワーム、簡単にいうとミミズみたいな魔物が出たから倒すという依頼を受けて来た
「しかし、どういった魔法なんだい?」
「まぁ、見てればわかるさ」
オアシスに着くと、黄色のワームがいた、かなり大きくて二階建ての家くらいの大きさだった
「僕は詠唱してるから、ユールはワームの足止めしてて」
ユールは目を閉じてやれやれと言ってワームの方へ向かって行った
僕は手を前に突き出し唱える
「満月、星空、吹雪、街灯、深閑」
空が暗くなり体の周りに雪が舞う
「暗く冷たい世界を照らせ、寒く震える世界を照らせ、心に燃える冷火を燃やせ」
無数の魔法陣が出現する
「これは夜には絶対に見られない現象だ、よく目に焼き付けとけ」
力を高めワームを狙う
「[ナイト・オブ・ダイヤモンドダスト]!」
手から青白い光線が放たれワームに当たる、光線はその名の通り光の線、一瞬でワームを貫き光線は爆発した
その瞬間、疲れたのか僕は倒れた
「アオイ!」
ユールが走ってくるのだけ見えた
目を覚ますと宿屋のベッドの上にいた
「起きたかアオイ」
マイラがいた、隣を見るとユールもいた、ユールは涙目になっていた
「もしかして僕、魔力切れで倒れた?」
そう言うとマイラが答えてくれた
「ああ、お前の打った魔法、少し調べたが消費魔力がとんでもなかった、私も1000発が限度だろうな」
それでも1000発は打てるんだ
「1000発以上打ったら魔力が1割も削れてしまうからな」
マジでどうなってんだコイツ
「あと名前が長い、詠唱は省略できるとしても、名前が長い。ナイトダストとかいいんじゃないか?」
それじゃあ夜の粉になっちゃう
「まぁでも、これでアオイはランク4に昇格、これからも頑張ってね」
ユールに応援された
「あと、お前の魔法だがな、氷属性も少し付与されているみたいなんだ。私もこんな現象見るの初めてだし、もっとこの魔法のことが知りたい。訓練なら手伝うぞ」
マイラが優しい、明日は砂漠に雪が降るかもな
それから、マイラと魔力を多くするトレーニングをして、巨人の国デッグドッズに行く直前にやっと気絶しないまでになるが
それはまぁ、いいだろう
あれから数日後、また集会場でシーニィと出会った
5
「よぉキョーダイ!元気してっか?」
「おぉ、シーニィ、元気だぜ。てかお前、この前の紅茶代」
「それよりキョーダイ!ランクアップおめでとう!」
「お前、話逸らすよなー?」
「いや、でも本当に良かったぜ、ここで魔法を作れてよ」
うん? シーニィが落ち込んでる? 珍しいな
「元気出せよ、一品くらいなら奢ってやるからさ」
「マジかキョーダイ! お前サイッコーだぜ!マイ! ベスト! フレンド!」
楽しそうだな、コイツ
「集会場のみんなー! 今日はキョーダイの奢りだってよー!」
「おい、バカ、やめろ!」
その日、僕のお財布はとても寂しくなった
でもこの時は知らなかった、ここで出会ったシーニィという男が、どれほど凄い人物なのかを
第4 終
仮面の勇者第6話を最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回は血五の末路や目標の確定など、道が定まっていくことでしょう。
それではまた次の話で会いましょう。