仮面の勇者 20
仮面の勇者第20話
今回は最後の冥龍が出てきます、楽しみですね
さぁ、冒険の始まりです。
仮面の勇者 20話
:新しい旅 1
朝、起きると部屋の外から子供達の騒ぐ声が聞こえる
「アオイー! 早く起きてー!」
ユールに叩かれて目を開く
「……できることならリゼに起こされたかった」
「ふざけるなよー? 僕に起こされたっていいじゃないかー」
そういえば今日の朝から旅に出るんだったな
「マイラとケルは国の出口で待ってるよ、シーニィさんはいなくなってたけど……」
ユールがそう言うと、ガモが部屋の扉を開けて入ってくる
「おい、おせぇぞお前ら、俺は昨日の夜から準備しとけってあれほど言ったのに……」
「でも昨日の夜はガモも一緒に枕投げして、準備する暇なかったんじゃないかい?」
「まぁ俺はいつも朝の4時には起きてるしな」
「君はいつも朝が早すぎるんだよ……」
2人が部屋から出ていく
ケルとマイラと本当に離れるとなると、やっぱり少し寂しいし……不安だ
「あっ、そういえばシーニィ呼んで来ないと」
2
シーニィが泊まっていた部屋に行くと部屋の扉は開いていて、ベッドの横の机に手紙と宿代、メモ書きが置いてあった
メモ書きには「宿代、あと俺の事は気にすんな」
そう書かれていた
宿代を置いていくだけの常識があって安心した
「それで手紙は……僕宛か?」
手紙には「アオイへ、他の誰にも読まれるな」と書いてあった
手紙の中身はそこまで書きつづられてるわけじゃなく、一言二言書いてあるだけだった
「もうすぐ決断と審判の時が来る、未来は変わりつつある、変えられるのは異世界から来た者だけ」
よくわからない言葉使いやがって……ん? 少し下にまだ何か書いてある
「全部終わったら俺から話す、お前がリゼの剣を突き立てた場所で待つ」
リゼの剣? 最初にリゼに貰ったあの短剣か? たしか空間の仮面で作った異空間に入れてたな
あ、でも今は闇の仮面以外使えないんだったな……
「あいつ、謎だけ残してどっかいくなよ……ってあれ? まだなんか書いてある……」
手紙の裏面を見ると少し小さめの文字で何か書かれていた
「ここまでは俺の導いた物語、ここからはお前だけ、お前1人でやるしかない、だから絶対、諦めるな」
これが1つの行に押し詰められて書かれていた、文字が小さくてすごく見づらい
なんとなくどういうことかわかる気がする
シーニィはたぶん、この世界で一番強い、それに時間も超越してるだろう
なら、たった1人の人間の人生を思い描いた通りに進めるなんて、あいつには簡単なことだろう
「もし僕が物語の主人公なら、主人公補正をあいつが作ってたんじゃ……」
昨日、シーニィに自分の過去の道のりを話した、順調に行き過ぎていると、そう言った記憶がある
「はぁ……考えるのはめんどくさい」
なら、シーニィが答えを教えてくれるのを待とう
3
宿から出て馬車乗り場まで来た、そこにはみんながいた、そしてケルとマイラも
「国の出口でって言っても、馬車に乗られちゃわからないからねぇ!」
ケルはそう言い仁王立ちしていた
僕とリゼ以外はもう馬車に乗ってるっぽい
「すみませーん! 教会でお祈りしてたら遅れちゃいましたー!」
リゼが走って来る、その間にケルとマイラが話しかけて来る
「アオイ! 寂しくないかい? ちゃんとご飯食べてちゃんと寝るんだからね? 無理はしないで具合が悪くなったら……」
「うん、大丈夫、大丈夫だからケル」
心配してくれてるのはわかるけど、昨日の夜も言われたし、流石にうるさく感じてきた
「アオイよ、これを持っていけ、昔一度お前に使った魅了の薬だ」
「あのマイラさん、そういうのってあんま渡さないと思うんですが」
あれか、シルファンに着いた時に宿で使ってきたやつか………あれ? 効かなかったような……
「さてアオイ! これでアタシ達からのお別れの言葉は終わりだよ! またねぇ!」
「アオイよ、きっとまたすぐに会うとは思うが、まぁ別れは別れ、またな」
2人は手を振る
「あぁ、生きてればまた会える、生きてさえいればいい、だから僕も、またね!」
その時何か倒れる音が聞こえ、その方を見るとリゼが疲れてへばっているのが見えた
「はぁ、やれやれだねぇまったく、最後まで世話がやけるねぇ!」
ケルはリゼの元に走っていく、僕もそっちに行きリゼを助ける
リゼは教会に行ってたって言ってたな、そういえば聖女になるには教会巡らないといけないんだっけ
その後、リゼはありがとうございますと言い馬車に乗った
「さて! これでアタシ達ができる事は終わりだよ! みんな! 気張って行きな!」
「これで今生の別れとは思わん、みんな、またいずれ会おう」
2人は僕たちが国を出ても手を振っていた
そのあと、ケルは国の復興と奴隷問題の云々に頭を悩まし、マイラはエリフェルで魔法の研究をしながら政治に関わっているらしい
ケル、マイラ、またいつか会おう
きっとまた、いつか
:炎風冥龍 1
「ナノ! 僕はすごいことに気づいたよ!」
「どうしたってんだユール! オレか? オレにカンケーあんのか!?」
ユールとナノが騒いでる、少し聞いてみようかな
「ナノ! もしかしたら僕、魔法が使えるかもしれない!」
「おおマジか! やったな! 頑張れよ!」
「あぁ! だからナノ! 力を貸してくれ!」
力? ナノの力、それって冥龍の力ってことかな?
「ナノ! 僕と冥龍憑依だ!」
「できねーぞ?」
「よし! うぉぉおおお! ……え?」
ユールが意気込んで立ち上がった瞬間、ナノが言った
冥龍って試練突破しないとそもそも力くれないし、ナノはまだ見習い冥龍的な存在らしいし
「なんで! ナノ!」
「だってオレ……」
その時、辺りが白い霧で包まれる
……この感じ、またか
2
いつも通りに冥龍の巣を探す……うん、なんか手慣れてきたな
「よしっ! よしっ! 今回はフラグウィンだ! やったぁー!」
ナノが隣で騒いでいる
「そういえば冥龍の中で特に憧れてるんだっけ? 炎風冥龍フラグウィン」
「そーだぜ! いやぁー、会えるなんて楽しみだぜー!」
「……てか最後の冥龍なんだし、そんなに興奮することか?」
そう言うとナノはポカンとしていた
「アオイ、お前もしかして冥龍に会えるのは当然って思ってるんじゃないか?」
そういえば冥龍ってどんな条件で会えるんだ? 今までは簡単に会えてたけど……
「冥龍に会えるのは完全に確率だぜ、あとは冥龍達が選ぶこともあるけどな!」
「なるほど……まぁ、これが最後だし頑張るかー」
歩いて行くとローマの闘技場のような場所があった、周りは炎で包まれていて天井はドーム状になっている
「これは、今までの罠を通り抜ける感じと違うのか?」
そう考えていると、目の前に大きな炎の柱が立つ
「アオイ! 来るぞ!」
炎の柱から炎の甲冑を着た兵士が出てくる
「「「さーて、第一の試練、あーなんだっけ……まぁいいや、頑張れよ」」」
フラグウィンの声か
「ナノ! 下がってて!」
「言われなくてもわかってる!」
ナノは僕の後ろに隠れた
異國弐閃を変形させ槍の形にして飛ばす、しかし、甲冑も中身も貫通し兵士に当たらない
「「「ほー、それ鏖血鉱か……面倒くさいなぁ、はぁ」」」
またフラグウィンの声か、面倒くさい? 当たっても無いのにそんな事あるか……?
「よし、ナノ、突っ切って奥行くぞ!」
「わかった!」
目の前に異國弐閃で盾を作ろうとしたその瞬間、心臓がドクンとなる
体が熱い血が沸騰しているかのようだ、苦しい、視界がぼやける、呼吸が荒くなる
「アオイ! どうした! なんか変なもん食べたのか!?」
炎の兵士が増えて行く、どうしろっていうんだ、これ、動けない……
「はぁ、くそっ、まだだろーが!」
気合いと根性で立ち上がる、目や口から血が出てくる
水魔法を使い炎の兵士に当てる、しかし水は蒸発し消える
「……ははっ、面白い、ならこういうのはどうだよ!」
水魔法で自分の周りに水の膜を張る、そのまま突っ込んで行く
「ナノは空飛んで上から行って!」
「おう!」
水が蒸発した瞬間にはもうすでに水をまとっている、これならいける
さっきの苦しさのせいか、足が重い
「でもこれで、第一の試練、クリアだ!」
闘技場から出たところにあった扉を開く
そこには、巨大な鳥のような龍がいた
3
「フラグウィンー! 久しぶりー!」
「おー! ナノ! よく来たなー!」
ナノはフラグウィンの周りを飛んでいる、僕はというと満身創痍で倒れ込む
「あ、アオイー! フラグウィン! アオイさっきから変なんだ! なんか血を吹き出して……」
フラグウィンは僕を見下ろしている
「大……丈夫だ、ナノ……さぁ、次の試練やろうぜ、フラグウィン」
「ん? あー、もう合格でいいや、おう」
まーたこれかよ
「いや待て! 納得できないぞ! 今回ばかりは戦ってすら……まぁ冥龍達とちゃんと戦った事は全然ないけど、でもなんで合格なんだよ!」
流石に僕だって多少は強くなった、はず……だから戦いたいし、どうせ力を得るなら勝って力を得たい
「なるほど、お前は理由を知りたいのか、なら答えてやるよ、理由は二つ、鏖血鉱を使えてないから、ナノがいるから信頼できる、この2つだ」
「……まぁ、なるほど……でもナノはまだしも、鏖血鉱が使えてないってどういう事だ?」
この鉱石は血に入り、血を消費する事で使える、形は自在に変えられる
「そのまんまの意味だ、お前、鏖血鉱で家作れるか?」
……やってみなきゃわからない、そもそもやったことがない
「家は作った事がない、どうせなら今やろうか?」
フラグウィンは人間の姿になる、赤髪のウェーブがかった長髪に緑色の目……身長高くね? 2メートルくらいないか?
「作れるものなら作って見せろ」
そう言いフラグウィンはその場に座り酒を出して豪快に飲む
そんな事より家作りだ、どんな家にしようか……前の世界の、母さんと父さんと一緒にいた時の家に星
それから数分、内装や外装を思い出しながら作った、自分の部屋、両親の部屋、キッチン、リビング
二階建ての真っ黒な家、窓とかちゃんと透過してないし、ぱっと見ただの黒い四角にしか見えない
「うん、40点」
「はーあぁ? これでも僕、頑張って作ったんだけど?」
「いやいや、なら色つけろよ」
色つけろって言われてもなぁ
「さっきさ、お前の血を沸騰させたんだよ」
フラグウィンがそう言い僕の体を指差す
「へー……はぁ!? お前なにやってくれちゃってんの!? 僕しんじゃうよ!?」
ていうか血が沸騰すると体が膨張するとか聞いたことあるような…なんで今の僕は無事なんだ?
「鏖血鉱は血を操って形を変える代物だ、なんで色が黒くなるのか、考えた事はないのか?」
「それが僕の血を沸騰させたことと関係あるのか?」
「……いや無いな、血が沸騰したところでそこまで鏖血鉱に変化はない」
「ならなんで?」
「鏖血鉱の操作が難しくなるからだ、あと、色の変え方だけどそれはこっちも知らない」
知らないのかよ……
ていうかなんで血が沸騰しただけで、あんなに出血したんだ? 血が沸騰しただけであんなになるか?
そもそも、鏖血鉱が血を使うものなのに、体に傷をつけなくても出すことができる
「うん……普通におかしくね? なんでさっきはあんなに血が出た? なんで血を出さなくても使える?」
「多分、鏖血鉱が制御できずに血管の中の血が針とかになって、体から出たんじゃないか? 血を出さなくても使える理由だが……知らん」
知らんかぁー
「アオイ! オレはわかったぞ! きっと食紅を使うんだ!」
「色の変え方か? ……えっ、血に食紅入れんの? ナノお前マジで言ってんの?」
「おうよ!」
こいつバカなんじゃないの? そもそもどうやって血に口紅を……
「ていうか話が広がりすぎだろ……それに僕、第一の試練しかしてないけどいいのか?」
「あー? 別にいいよ、力もあげるし」
都合が良い……そういえば、都合が良いといえばシーニィだな、なんかあいつ隠してそうだし……
「あの、フラグウィン……さん、シーニィ・ブラッドって男知ってますか?」
「シーニィ? うーん、知らないな」
知らないか、ならこれは全部僕の運ってことかー、なら仕方ないなー
「ってなるかぁ!」
僕は作った家を吹き飛ばした
「あ、フラグウィンさん、最後に一つ。なんで僕の血を沸騰させてこれ使いづらくしたんですか?」
「ん? あぁ、ちょっと未来が見えてな、今のうちに鏖血鉱を進化させようと思ってな」
「鏖血鉱の進化? それってどういうこと?」
「あぁ、まあ簡単に言うと強度とか増すだけだが、それに追加で血の使用量が減るってのもある」
なるほど、それは良い
アオイがそう思っているとフラグウィンがアオイに近づき耳元で囁く
「あと、名前の変更もできるから、お前今の名前は嫌だって思ってるだろ?」
まじか! やったぁ! いずれ慣れるって思ってたけどそんなことなかったもんなぁ
そしてフラグウィンは離れて手を振る
「じゃあまたなーフラグウィーン!」
「ああまたナノ! お前もまたな!」
フラグウィンにそう言われて僕も手を振りかえす
その後、なんやかんやあっていつもみたいにみんなの元へ帰って来た
4
数分後、ユール達が起きた
「くそっ! 僕はまた選ばれなかったのか!」
「ドンマイ、ユール、まぁオレは会えたけどな!」
「ナァーノォー!」
ナノとユールが追いかけっこしてる
次々にみんなも起きていく
「あ、そういえばナノ、お前霧が出てくる前なんか言おうとしてたよな、ユールに聞かれてさ」
「ん? あぁあれか? 俺が異世界から来た龍って事だぞ? まぁそれだけだぜアオイ!」
へー、ナノって異世界から来たんだ
異世界から来た?
「ナノ、それってどういう」
そう聞こうとしたが、ナノはユールに追われ遠くへ行ってしまった
異世界から来た……でも僕のいた世界に龍なんて……
もしかして、いや、もしかしなくても
″異世界はいくつもある″
そうなんじゃないか? ならシーニィも……
「アオイ、お前ユール達を止めて来てくれねぇか? 俺ぁまだなんか眠くてよ」
「ん? あ、あぁ、わかったよガモ」
僕もナノとユールの追いかけっこに混ざりに行った
:水の国ワラン 1
あれから数日、ようやく水の国ワランに着いた
今まで行った国と比べると珍しい真四角の城壁だ、上から見たら多分長方形になってる
家も綺麗に配列されてる、そして海側に城、反対側の陸側に門が1つ
敵軍とかに攻め込まれた時に真っ直ぐの通路で城まで行けそうだけど、いいのか?
宿屋で荷物をいろいろまとめていると、部屋にリゼが入って来た
「あの、アオイ様……一緒に教会へ行きませんか!」
「そういえば、教会巡りはこれで最後なんだっけ?」
「は、はい、ですので……」
「いいよ暇だし、それに暇じゃなくても一緒に行きたいからね」
「ありがとうございます!」
そっか、これで最後なのか……なんか感慨深いというか、リゼも願いを叶えられてよかった
今でも出会った時のことが目に浮かぶ……
「最初はバッグ盗まれたっけなぁ」
あの時、追いかけて良かったなぁ、あれが無かったらリゼと会えなかったわけだし……
なんか、今考えると初対面の人に対してあの態度は無いか……やばい、恥ずかしくなってきた
「アオイ様? 行かないんですか?」
「あ、ごめん、行く行く」
それから少して宿から出る、教会はお城側にあるらしい、宿は門の近くだから遠めだ
教会に行くまでにいろんなところを見てまわる
国の中央に巨大な噴水がある、ここら辺には人が多いな
「わぁ、凄いですね! 綺麗です!」
リゼがはしゃいでる、あー可愛い
「こっから真っ直ぐに城が見えるんだなぁ……確かに綺麗だ、うん、写真撮りたいな」
「写真ですか? うーん、持ち運びできる写真機となるとかなり高いですよ?」
「あーいや、別に買わなくてもいいんだよ、ただこの景色を撮っておきたいなぁ、って思っただけ」
なんか、柄にもなく悲壮感を出してしまった気がする……いや、出てないか
「アオイ様、どこかへ行ってしまうんですか?」
「へ? いや、そんなことないよ?」
「だってさっきの言い方、写真を撮らないと忘れてしまうみたいな、なんか、アオイ様が遠くへ行ってしまいそうな、そんな気がして」
「あー……ごめん、なんか心配させて、あっ! そうだ! あそこで小物売ってるよ! なんか買ってあげるよ!」
リゼは少し考えて、閃いたように言った
「なら、アオイ様がプレゼントしてください! アオイ様が考える1番良い時に!」
「プレゼントか……うん! 任せてくれい!」
にしても1番いい時、1番良いタイミング、シチュエーションとかも大事か?
そもそも何を送れば……
「まっ、とりあえず教会行きましょ?」
「あぁ、うん、そうしよっか」
2
教会に着き、リゼは女神像の方へ近づいて行った、僕は教会の1番前の椅子に座る
リゼが女神像の前で祈りを捧げてる
プレゼント、どうしよっかなぁ
「あっ、リゼが聖女の力手に入れたら、僕の仮面の力の縛り解けるんだっけ……意外と闇の仮面だけでもなんとかなってたよなぁ」
そういえば、仮面の力が封印されたのに、1つだけ作れた……というか勝手に出てきた仮面があったな
あの仮面は一体……そういえば、あれができる前は人格が変わってたってナノが言ってたな
まぁ、仮面の力が戻るのは嬉しいな、でもそれ以上に、リゼの夢が叶うのが、1番嬉しいかな
リゼが立ち上がる、光ったりとかしないんだなぁ
「アオイ様! 私! 聖女ですっ!」
リゼが胸に手を当てエッへンと胸を張ってる
「ん? そういえばシルファンの聖女の舞踏会って結局何だったんだ? 聖女候補がうんぬんって言ってたような」
「あー、確かあれはコロウア教だけのものだったはず……いやカルナイ教もありましたかね? でも、どちらにせよ大事なのは教会巡りです、その神の教会を訪れ、祈る、それが大事なんですよ」
なるほど、聖女の舞踏会は後付け設定みたいなもんか、コロウア教をより引き立たせ、世界がコロウアに依存するための
「まぁ、リゼが僕の仮面の力を戻せたら聖女って事だよ、ここでやってみるか?」
「はいっ! えーっと……そうだ、あの、手を繋いで……えっと、呪文を唱えると、できます……」
「えっ、手か……うん、わかった……」
なんか、恥ずかしくなってきた……顔が熱い
リゼが手のひらを差し出す、その上に手のひらを下にして手を置く
少しの間、沈黙の時間が過ぎる
「……リゼの手、小さいね……」
……いやいやいや、僕は何を言ってるんだ、バカか? キモいだろそんな事言われたら!
「あの……アオイ様の手は、大きくて、しっかりしてますね……じゃっ! じゃあ始めますからっ!」
リゼが呪文を唱え始める、周りが白い光に包まれる、心がフッと軽くなっていく
温かいものに包まれて、それでいて爽やかなような
「アッ、アオイ様、お、終わりました……」
「あっ、う、うん、ありがとう……えっと、帰る?」
「……はい、帰りましょう」
手を離そうとすると、強く掴まれる
「あの、手、繋いで帰りませんか?」
リゼから期待の目で見られる、リゼの手を掴む力が強くなる
「うん、そうしよっか」
僕は、勇気を出すべきなんだろうか……
それから少しして、手に汗が出てきたのか、2人は手を離した
3
あれから数分して、僕はプレゼントを買うと言いリゼと別れた、リゼは先に宿に帰って行った
「はぁ……やばい、心が……もたない」
噴水の近くのベンチに座り胸を押さえる
「おっアオイじゃねぇか、どうしたこんなところで……てかどうした? 胸押さえて」
「ガモ……僕はもうダメなのかもしれない」
「ど、どうした? 死ぬのか!? 死ぬなよ!?」
「いや、そうじゃなくて……」
その後、リゼと手を繋いだ事とリゼが可愛すぎて辛いことを話した
それとついでに仮面の力が復活したことも話した
「あー、うん、なるほどな……いや待てアオイ、仮面の力がついで?」
「え? うん、それよりだガモ、リゼってさ、僕のこと好きなのかなぁ、僕は恋愛したことないからわかんないよぉ」
「あー、うん、要約すると、手を繋いだらドキドキしてリゼが女性として好きになっちまったのか」
改めて言われるとなんか恥ずかしい、でもあんな事されたら誰だって好きになっちゃうよ
「いや、でもただ手を繋いだだけで……キモいか、キモいな、うん。ごめんガモ、忘れてくれ」
「はぁ……アオイ、お前なぁ、そういうのは本人にズバッと聞くのが」
「いや、違う、きっとこれは恋じゃない! そうだ! そのはずだ!」
僕はガモの言葉を遮り立ち上がる、そして胸をドンと叩き声高らかかに言う
「これはアレだ! ゲームとかでよくある推しキャラができたって事だ! うん! そのはずだ!」
あっ、そうだ、リゼへのプレゼントを買わないと……何買おう
「ガモ、僕はリゼにプレゼントを買おうって思ってるんだけど、何が良いかな?」
「自分で考えろ、じゃ、俺は宿に帰っ……いや、ちょっと遊んで帰るから夜帰りだわ、じゃあなー」
そんな……くそッ、ガモなら良いアドバイくれると思ったのに
そもそもガモは人にプレゼントしたことあるのか? まぁ、あるかもな
「うーん、さっき見つけた小物売ってる所、行ってみるか」
さっき見つけたところまで来てみる、いろんなの売ってるな、指輪にネックレスにピアス
どうせなら青色の宝石がいいかも、リゼの目の色も青だし
「んー? もしかして兄ちゃん送りもんか? 彼女さんかい? 」
お店の人に話しかけられる
「あーいや、彼女ではないんですけど……まぁ、大事な人です……」
言ってて恥ずかしくなってきたな、やばい、顔が熱い……
そういえば、元いた世界では石言葉とかあったな……
「そうだなぁ、確か灰簾石っていうのが希望だったはず……リゼにピッタリだな、うん」
「んー? 灰簾石かい兄ちゃん? そうだな、ならピアスかイヤリングがいいんじゃないかい?」
「へぇ、なるほど、でもなんでですか?」
ていうかピアスとイヤリングの違いってなんだ? 確かピアスは耳に穴開けるんだっけ?
「あぁ、ピアスとイヤリングは顔の近くにつけるだろ? だから、いつまでも見守ってるって意味がるんだぜ兄ちゃん」
いつまで見守ってる……か
「それなら、いつ僕が死んでも大丈夫か、よしっ! ならイヤリングを買います!」
金色の輪っかに小さな灰簾石……そういえば灰簾石って、タンザナイト
なんか、これじゃあ僕をあげるって言ってるような……
「よし、考えるのはやめた、流石に……気づかないよな……いや、気づいてほしい……かも……」
「うん、兄ちゃん、いい目をしてるねぇ」
「は、はぁ、ありがとうございます?」
そう言いイヤリングを受け取る、値段は……うん、見ないでおこう
とりあえず、空間の仮面の領域に保存しておくか
その後、噴水の方まで歩いて来る
「丁度良い時にあげたいよな、リゼの誕生日とか、それか……」
その時、後ろからさっきを感じる
その瞬間、後ろから槍が飛んでくる
「……っ! ぶねぇ!」
槍を避け、飛んできた方向を見る、そこには
「刄九……喰呑……」
僕と同じ異世界人で、多分、いや絶対サイコパスな奴
「あはははははっ! ねぇ? みんな死のっ?」
刄九は噴水の広場に、槍や剣を降らせた
第20 終
仮面の勇者第20話を読んでいただきありがとうございます。
今回は冥龍の話に刄九の再登場、アオイの力の解放がありましたね、よかったでしょうか
次回は刄九との戦闘ですね、実は何気にここまで死者が出てません、すごいね
それではまた次の話で会いましょう。