仮面の勇者 19
仮面の勇者第19話
今回は前からかなり間が空きすみませんでした
さぁ、冒険の始まりです。
仮面の勇者 19話
:終わりと再開 1
僕は壊四と愚三、連れ去られた子供達を連れて城から出た
「………ねぇみんな、気まずくない?」
僕がそう言うとユールはため息をついた
「アオイ、君が言うかい? 僕達の方が気まずいんだよ」
ガモは腕組んで目を閉じてるし、マイラはやっぱりふてくされてる、リゼは頬を膨らまして睨んでくるし
壊四は愚三と子供達を見てる
「まぁみんな言いてぇ事があんだ、俺は別に無いが………まずはマイラからいってみようか」
ガモが司会みたいなことしてるー
「私は……シーニィさんに雑に倒されたのが気に食わない」
雑に倒されたんだ、にしてもマイラはシーニィと戦ってたのか
シーニィ、本当にあの短時間で各国の軍を倒してきたのか……
「マイラは魔導隊の隊長として前線で戦っていた。でもシーニィさんに全員が魔力を吸われて倒れ、僕達の冒険者軍も魔力切れで倒れた」
魔力を吸った?
どれだけ兵がいたかわからないけど、普通は100人から吸ったら許容量オーバーで吸えなくなるのに……
シーニィってマイラぐらい魔力量が多いのかな?
「他の軍もシーニィさんに雑に倒されたらしいぞ、あの人が敵にまわったら……勝てるわけないんだよ」
マイラはそう言った後、小さく愚痴を言っていた
「じゃあ次、リゼの言いたいことだな」
そう言いガモはリゼの方を見る
リゼは大きくため息をついた
「まず、マイラ様は何も言わずに魔導隊がどうとか言って居なくなっちゃうし! ユール様はなんか暗くて黙ったままだし!」
リゼは一呼吸おいて僕の方を見た
「アオイさん! なんで何も言わずに行っちゃうんですか! それに半年も帰ってこないし! せめて一言! 何か言ってくださいよ!」
リゼは半泣きになり、ガモはうんうんと頷いてる
「ガモ様も同罪です! ユール様とマイラ様が喧嘩してるのに他人事で! あなた昔から2人と一緒なんでしょ!? じゃあ仲取り持ってくださいよ!」
「い、いや、俺たち昔からってほど昔じゃ」
「うるさーい! とにかく、私の言いたいことはここまでです! 後はどうぞ!」
リゼは拗ねたように頬を膨らまして、椅子にどっかり座った
「じゃ、じゃあ次ユール……どうぞ……」
ガモがおとなしくなってる、というかしょげてる?
「僕は……みんなと離れ離れになった事が一番辛かった、リゼとガモは近くにいたけど、心が離れていた気がした」
さっきリゼが言ってたように、ユールとマイラは喧嘩して、ガモは何も言わなかったんだろう
みんなそれぞれ、気まずかったんだろうな
「僕は、もっとみんなとちゃんと話したかった、僕の言いたい事はこれだけだよ」
そう言いユールは目を閉じた
「んじゃ最後はアオイだな! うん!」
「おいガモ、僕はちゃんと言うがお前も言えよ?」
「わ、わかっ……た」
僕がガモを睨むとガモはそっぽを向いてそう言った
「僕は特に言いたい事はないけど、でもあえて言うなら、またみんなと再会できてよかったよ」
こう言うことを言うのは、なんか恥ずかしいな
少し無言の時間が続く、とても気まずい……
「あ! そーだガモくーん、君も何か言うべきじゃないかーい?」
「なっ! アオイ! それ卑怯だぞ!」
「どこが卑怯なんだ! 言ってみろ!」
結局ガモもみんなと同じように言いたい事を言う羽目になった
「俺ぁさ、ユールと喧嘩する事は多かったんだが、ユールが誰かと喧嘩する所は全然見たこと無かったんだ」
そういえばガモとユールって同じ孤児院の出なんだっけ……
「孤児院でも冒険者になっても、ユールは、自分から人を突き放すことなんてしなかった、なのにマイラとは喧嘩して……俺は、何すれば良いのかわからなかった」
ガモは頬を掻きながら口ごもっていた
「それで、なんかよ、嫌だなって思った……それだけだ! あぁもう! 恥ずかしいなこれ! こんな事させて悪かったな!」
それを見て僕はなぜか拍手をした
2
数時間後、ケルとシーニィが僕たちの元に来た
「話し合いは終わったよ、それじゃあ帰るか!」
そう言いケルはグッドポーズをした
「いやケル、帰るって言ってもリゼやユール達はどうするんだよ」
「あ、じゃあ僕たち宿の「ちぇっくあうと」ってやつやってくるよ」
そう言いユールとガモは走って行った
てか、みんなで数日間ヴィラストまで旅するってちょっと気まずいな……
「気まずいって顔してるなキョーダイ、安心しろ! 行大はどうやってこの国に来た?」
「あっ、そうか転移魔法……ってなんだよ行大って」
「あ? 京大だったか?」
「なんで大学になるんだよ!」
シーニィは頭 (兜)を指でかいていた
「んま、俺の転移魔法なら簡単だろ、魔法使いの嬢ちゃんも手伝ってくれるよな?」
「シーニィさん、その呼び方はやめてください……まぁでも手伝いますよ」
マイラはそう言いシーニィについて行った、シーニィなら1人でも僕たちをヴィラストに転移させられそうなのに
「あ! じゃあアタシは攫われた子達見てくるよ!」
そう言いケルは走って行った
「………アオイ様」
リゼが睨んでくる
「えっと、なんでしょうか」
「なんで帰ってこなかったんですか?」
そんなこと聞かれても、帰るに帰れなかったとしか言えないし……それに、ちょっと怪盗にハマってたし……
「わかったよ、今度から離れるときは何か言うし、絶対帰ってくるよ」
「アオイさん、私は帰ってこなかった理由を聞いてるんですが?」
リゼは冷たい、まるで虫を見るような目で僕を見る
「………かった」
「はい? なんですか?」
「怪盗が……予想以上に楽しかった……」
みんなに悪いけど、本当に楽しかったんだ、怪盗やるの
「アオイさん、それだけですか?」
「あ、はい、それだけっす」
よかった、これで解放され……いや待て、リゼに叱られる機会なんて滅多にないのでは?
「じょ、女性関係とか、できてないんですね?」
「え? うん、そんなもん無いよ、それよりリゼ、今君は僕を叱っているのかい?」
「はい叱ってます。ですが、まぁ、許しますよ」
「いや、そのまま叱ってくれて構わない、なんか貴重な体験をしてる気がするから」
「はぁ……そうですか」
リゼは頭を抱えて俯いた
それからしばらくリゼにいろいろ言われ、その後みんなと合流した
3
ユールやケル、壊四や子供たちと合流しマイラとシーニィの元に来た
「よーしキョーダイ、魔法陣はできてるゼイ!」
シーニィはマイラと魔法陣を描いていたらしい、地面には大きめの陣が描かれてる
「まぁ俺にかかりゃ指パッチンだけでいけるんだが、マイラの面子を保つためだな」
「シーニィ、そういう事あんま口にだして言わない方がいいぞ」
マイラの方を見てみたがユールたちと話してるみたいで聞こえてなかったぽい、良かった
いろいろあったけど、結局ぜんぜんなにも解決してないし、まだ考えることはたくさんあるし
「やばい、もうわけわからん」
僕が頭を抱えるとシーニィが肩をポンと叩いてきた
「キョーダイここは中間地点だ、いろいろ整理してみよーぜ」
「整理か……」
「まず最初、キョーダイのこれまでを振り返ってくれ」
これまで……この世界に召喚されて、聖女のミリィドに城から追い出されて、リゼに会った
「そういえば、僕が追い出された理由ってチートがカルナイって神の力だからだよな、コロウアって方の神だったらどんな力になるんだろ」
「ん? そりゃキョーダイ、吸収だろ」
「へ? なんで?」
「あ? 勘だよ、勘」
「クソが」
僕はシーニィを殴った
「痛ぇじゃねぇかーキョーダイー、んで、追い出された後は?」
……たしか、異世界人の裏八と戦ってユール達と会って旅をして、雷の国クレリチア、炎の国ガウィタチン
クレリチアの近くでは盗賊団のウィニ、冥龍のドライサンドラとナノに会って、ガウィタチンでは異世界人の血五と戦ったな
「なんか、着々と、それも簡単に進んでるような気がするな……」
「まぁ、だろうな」
「だろうなって……シーニィ、お前なんか隠してるな?」
「そそそ、そんな、んな、そーんなわけ! あっははは!」
「はぁ……まぁいいや、どうせ聞いても答えねーだろ、それよりその次だな」
巨人の国デッグドッズに氷の国シルファン、ワガットさんにティルさん、アイズ……元気かなぁ
そういえばどっちも滅七が関わってたな
いや待て、そもそもいろんなものに滅七が関わってるような……
「滅七、あいつなんなんだろう、個人的には大っ嫌いな奴だけど」
「あー、あいつはまぁ、今は放っておいてもいいと思うぞ、多分」
「ふーん、そうなのか?」
「まぁイレギュラーが起きなきゃ大丈夫だな」
「……はぁ、よくわかんないな、まぁいいや」
それで、シルファンから出て、自然の国エリフェルで投獄され、逃げて獣人の国ヴィラストに行って
奴隷制をどうこうするって言って戦争が起きて終わって、今になる
「よし、終わったか? キョーダイ」
「なんか、やっぱり全部の道筋が順調に行ってるような気がする」
「おいおいキョーダイ、お前はマンガの主人公かー?」
「あぁ、そうなんだよ、まるで主人公補正でもあるかのように全部うまく行って……」
その時、マイラが近寄ってきた
「シーニィさん、アオイ、ヴィラストに帰るのだろう、もうそろそろ行くぞ」
シーニィは立ち上がり魔法陣に入った
「っし! 行こうぜキョーダイ、今はムズイ事考えなくたっていいだろ」
頭痛いし、なんかもうどーでも良くなってきた
「あぁ、そーだな」
僕が陣に入るとマイラは詠唱を始めた
「シーニィさんみたいにピッタリ場所指定できないし、この人数だし不安だが、まぁ、見ていろ!」
マイラは杖を回し呪文詠唱を終える、魔法陣が青く光り光の柱が立つ
「さぁ! 転移開始!」
この時気づいた、そういえばガウィタチンの時は詠唱なんてしてなかったと
4
目を開けると、森の中だった
「チッ、失敗した」
マイラは悔しそうに舌打ちした
「あ、マイラ、なんでさっき詠唱してたの? てか、詠唱って意味あるの?」
「あぁ、詠唱すると精度と効果が少し上がる、あと使う魔力も少し減る……くらいだな」
「あと詠唱はカッコいい!」
ユールが話に割り込んできた
「あ、そういえばユールって魔法使えないんだっけ」
「アオイ、僕は使えないんじゃない……使わないのさ、ハハ」
ユールはそう言い、かわいた笑いをした
森の中は意外と明るく、ところどころ日差しが差し込んでいて綺麗だった
少し森の中をみんなで歩くと、急にケルが止まった
「うん、なるほどねぇ、ここはヴィラストの近くの森だよ! ヴィラストまてもうすぐってわけさ!」
ケルがそう言うとみんなはやる気になった
それから数分後、森から出て野原に出た、少し遠くに土の道が見える
その時、愚三と壊四が少し離れた
「んじゃ、あーしらはここら辺で……またね!」
「えっ、ちょっ、愚三?」
僕が呼び止めようとすると壊四が僕の前に来た
「私たち、旅に出ようと思うんです……行く場所は決まってませんが……」
2人はそう言い笑っていた
旅か……半年、って言ってもほとんど怪盗してたけど、その間の仲があるし
「僕も、僕も行きたい!」
そう言い僕が前に出るとリゼに肩を掴まれた
「アーオーイーさーんー!」
背中でわかる、これはだいぶキレてる
「なら、私も行きます! あなたは手綱にぎってないといなくなっちゃうので!」
「なら、僕も行こうかな! 楽しそうだ!」
ユールも手を挙げた、ケルの方を向くと、ケルはにっこり笑っていた
「……アタシは、ヴィラストでやる事がある、だからここでお別れかな! なぁに、寂しくないさ! もう決断してた事だしねぇ!」
ケルは、もう決めてたのかな、シーニィと話した時点で
その時、マイラも口を開いた
「すまないが、私もここで離脱させてもらう……私も、やらねばならない事がある」
ここで、2人とお別れなのかな……それはちょっと悲しいな……
「待って待って! あーし達の為にそんな事してんならやめて! マジで気なんて使わなくていいから!」
愚三は両手を前に出して首を振ってた、その時ガモは愚三の前に出てくる
「多分アオイもみんなも気ぃ使ってるわけじゃねぇよ、あ、俺も行く」
その後何回か行く行かないで話し合ったが、結局僕たちは愚三と壊四と一緒に旅に出る事になった
「まぁとりあえず、今旅に出るよりも、今日は休んで明日いこーぜ、キョーダイ」
「……ははっ、ま、そーだな!」
僕たちはその日は休む事にして、ヴィラストの宿に泊まった
これから考えることは多いし、マイラとケルと別れるのは悲しい
それに今の僕は、何がしたいかよくわからなくなってきてる、だからこそ
旅をしたいと思ったんだ
:シーニィ・ブラッドの記憶 1
宿屋の個室、1人部屋でシーニィは兜を外して寝ていた
口元から首元まで続く大きな傷、半袖の白シャツに黒いブカブカのズボン
シーニィはいつでも臨戦体制に入れるよう意識ははっきりさせておくつもりだった
シーニィはベッドに寝そべり考え事をしていた、そしていつの間にか眠りに落ちていた
2
「″シーニィ″さん、早く起きてください」
1人の少女に呼ばれて起きる
「″シーニィ″! 何やってんだい! 朝だよ!」
闘士が俺の元に来た、朝食を作ってくれたんだろうか
「って、もう朝か……みんな早いなぁ」
外からは街に住む人の声、それにちょうど帰ってきたのか、仲間が家の扉を開く音が聞こえる
「腹減ったー! もう走りたくないー!」
剣士が扉の前で倒れた
「テメェが鍛えるっつったんだろぉが! 立て! 次は筋トレすんぞ!」
鎧を着た大男が剣士の首根っこを掴む
「お前達、少し静かにしてくれ、勉強に集中できない」
魔法使いが頭を掻いて考え込んでいる
「はぁ……まったく、アンタら! 朝食の時間だよ! 席付きな!」
「「「「はーい!」」」」
闘士がそう言うとみんながそう返事をする
俺が階段から降りた瞬間、景色が一変する
周りは火の海になり、さっきまで朝食を楽しんでいた仲間の死体が目の前に現れる
「あぁ、そうだよな、その通りだ」
シーニィは膝から崩れ落ち、影で隠れた顔を覆う
「俺は、何も救えなかった……」
その瞬間、シーニィは目を覚ます
3
シーニィが目を覚ますと部屋は暗く、さっきからさほど時間は経ってないようだった
「大丈夫だ、これで、7万と8536回、今度こそ、絶対に救うぞ……なぁ、キョーダイ」
その時、シーニィの部屋の扉が叩かれる
「あー? 誰だー、ちょっと待ってろー」
「シーニィー、僕だー、アオイー」
「おいおいマジかよキョーダイ、俺にオレオレ詐欺するとか……失望したぜ!」
「いや僕だってわかってるじゃねーか! あと僕の一人称は「僕」だ! 覚えとけ!」
シーニィはそのツッコミを無視して部屋の明かりをつけ、兜をかぶり扉を開けた
「どーしたキョーダイ、俺に惚れたか?」
「んな訳ねーだろボケ、聞きたい事があったんだよ」
シーニィは兜をパンと叩き、あちゃーとジェスチャーする
「俺はお前をそんな風に育てた覚えはねーよー、親の顔が見て見たいもんだなー」
「………そっか、まぁそんな事より質問だ、お前ケルになに話したんだ?」
「んあ? あぁ、ただ自分のやりたいことと自分の使命、それを天秤にかけろって言っただけだ」
「なるほどな、だから……って、お前そんな言い方したのか? 冷たくない?」
「いやいや、もっとオブラートに包んだぜ? 甘く優しく……な?」
いや、本当はもっと厳しく言った、ほとんど選択肢を強制する形で俺は言った
「まぁキョーダイ、早く寝ろ、明日から旅でんだろ? 英気でも養っとけ」
そう言いシーニィはアオイにデコピンを喰らわせた
「んじゃ、おやすみキョーダイ」
そう言いシーニィはアオイを追い出し扉を閉めた
次の日、宿屋にシーニィの姿はなく、部屋に手紙と宿代だけ置かれていた
第19 終
仮面の勇者第○話を読んでいただきありがとうございます。
今回は如何でしたでしょうか
次回は早めに投稿します
それではまた次の話で会いましょう。