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仮面の勇者  作者: 偽陥 アニア
仮面の勇者 第一章 神殺編
18/20

仮面の勇者 18

遅くなり申し訳ありません

仮面の勇者第18話!

始まりです!

仮面の勇者 18話


:奴隷とは 1


アオイはエリフェルに転移魔法で来てからずっと、奴隷制のことについて考えていた


奴隷制なんてものがまかり通っていいのか? 奴隷にされた人はみんな悲しむだろ


ずっとそう考えていた、ケルも壊四も奴隷制を無くそうと意気込んでいる


そんな時にこんな事を、奴隷制を無くすのは無しにしようなんて、こんな考え……


「アオイ! どうしたんだい! もうすぐで城に着くよ!」


その言葉にハッとした、そうだ、今は


「あ、あぁ、ごめんごめん、ちょっと考え事してて……」


そうだよな、僕の考えは間違ってるんだ、世界のためなら奴隷制があった方がいいなんて、そんなわけないよな


2


城の中に兵は全然いなかった


あっちから誘って来て、確実に罠だと思っていたのに……


「しかし広いな、どこにエリフェルの王がいるんだよ」


セオリーだと最上階とかにいそうだけど……


「あ、アオイさん、これ……」


壊四が指をさしたところには、この先王の間と書かれた看板があった


罠の匂いしかしない……


「でも行くしかないよなー、な、アオイ」


「あ、じゃあナノ確認して来てよ、安全かどうか」


「嫌だよ」


キッパリ断られた、それはそれとして、看板に従って先に進んでみることにした


先に進むと豪華で大きな扉があった


「この先に王がいるんだね! じゃあ、開けるよ!」


そう言いケルが扉を開ける


中には玉座に座った金髪のエルフ、エリフェルの国王リバン・ダルカーテがいた


そしてその横に眠っている愚三と、壊四達と遊んでいた獣人の子ども達がいた


「アンタが、アンタがリバン・ダルカー」


ドンッ!


「……え?」


一瞬だった、リバンはケルに向けて魔法を放ち、ケルは倒れた


頭の中が真っ白になった


「え、は? ……………は?」


すぐに思考を取り戻せ、何が起きた? リバンがケルに魔法を撃って、やっぱり罠? いや、それよりケルを助けなきゃ


あれは何の魔法だった? 一瞬の出来事で全くわからなかった、赤黒い光線だった


あんな魔法見たことない、マイラだって使ってなかった、色は赤黒い、変なオーラを纏っていて


もしかして毒? それとも


「はは、ははは! はははははは! 本当にバカですねぇ、いや、罠に決まってるでしょこれ、ほんと、バカみたいだ」


リバンは玉座から立ち上がり階段を降りてくる


「その獣人に打ったのはただの気絶魔法ですよ、王家の血という貴重なサンプルを傷つけたくありませんからね」


僕が仮面をつけ戦闘体制に入るとリバンは歩みを止め、獣人の子ども達に近づき、1人を掴み上げた


「この命、私が握っているのですが……どうしますか?」


リバンに何かしようものならあの子の命はないってことか


「……わかった、お前の望みはなんだ」


そう聞くとリバンは不的な笑みを浮かべる


「そうですねぇ、なら獣人の国ヴィラストの降伏でお願いしますよ」


まぁそうなるよな、でも降伏したらヴィラストの人達はみんな奴隷にされるし……


「………まぁ別に、あなた達が降伏すると言わなくとも、我らの勝利は確定してますからね」


リバンは子どもを元いた場所に寝かせる


そういえば、シーニィは俺に任せろって言ってたけど勝てたのか? アイツ


「お前は……お前の目的は、なんなんだ、リバン・ダルカーテ」


「目的? そうですねぇ、現状維持の方が個人的には良いですかね」


現状維持? ヴィラストの人達を全員奴隷にするとかじゃないのか?


その時、愚三が目を擦り起きた


「あ……れ、あーし何して……」


愚三が周りを見た後リバンと目が合う


「おや、ようやく起きましたか、姫様」


リバンはそう言い愚三にお辞儀をする


「姫様? 何言ってんの? あーしは別に……」


その時、部屋がいきなり暗くなった


何も聞こえない、誰がどこにいるかもわからない


「ナノ! 壊四! 大丈夫か!」


返答はない


さっきまで横にいたはずだ、急にいなくなったりする訳ない、転移魔法とかでもない気がする……


「一体どうなってんだ、これ」


3


あれから少しして、この空間では走っても走っても端に着かない事がわかった


それに走っても全然疲れてない


そんな事を考えていると、目の前が少し明るくなり真っ白な仮面をつけた人間が現れる


少し、リゼに似てる


「お前、いや、君は……」


そう問いかけた時、心を断ち切られるように言われた


「他人に乗っかってるだけの無能」


そう言い彼女は後ろを向いて消えていった


「なんだったんだ? あれ」


その時、僕の背後にユール、ガモ、マイラ、ケル、みんなの姿をした真っ白な仮面をつけた人が現れる


「家族が死んだからって悲劇のヒーローぶってんじゃねぇ」


「所詮は夢を見てるだけで実力がないね」


「戦いに勝っただけで全部救えた気になって、本当にバカな奴だ」


「お前の事なんて誰も好きになりはしない」


4人はそう言い消えていく


それから今まで旅で出会った人も出て来た


砂漠で出会った盗賊団のリーダーの少女ウィニ


「ご都合主義で苦しさを知らないカス野朗」


雷の国クレリチアの王子レグート


「他人から貰ってばかりで返そうともしない」


炎の国ガウィタチンで出会った巨匠レジェルさん


「異世界人だからって調子に乗って他人に迷惑しかかけない」


巨人の国デッグドッズの王で、一緒に時間逆行してたガットさん


「お前は英雄にも主人公にも敵役にもなれない勇者の仲間Aだよ」


シルファンで出会った強くなろうとしてる少年アイズ


「アンタは全然成長してないし、成長する気も見えないな」


シルファンで僕を倒した聖騎士ティルサ


「変わろうとしてるって言っときながら全然変われてないではないか」


長年の親友にして幼馴染、朽六洗雨(くちろ せんう)


「お前は誰も救えない、お前は誰も守れない、だから」


さっきの全員の声が聞こえてくる


「「「「「「だから、お前は消えろ」」」」」」


リゼが、みんなが、あの人達がこんな事を言うわけがない


でも本当はこう思っているのかもしれない、なら僕は


「僕はここで立ち止まっちゃいけない」


あいつを、リバンを倒す


いざとなれば、あいつの命を………


4


起きると、壊四も起きていた。愚三はスライムに包まれて寝ているようだ


「よし、スライムを倒すか」


まぁスライムなんて雑魚モンスターだろ、ゲームでも大抵は最初に倒すチュートリアル的な敵だし


「異國弐閃」


愚三を傷つけないようにスライムを縦に一刀両断した、が


「あのぅ、アオイさん、この世界のスライムと戦った事ないんですか?」


2つに分かれたスライムはうねうね動きくっついた


「壊四は戦ったことあるの?」


「まぁ、少しは……」


「この世界のスライムって、どんなんなの?」


「まず物理は効きませんし、魔法も特定のものしか効きません、まぁ、クソゲーですよねぇ」


物理無効に特定の魔法しか効かないか、うん、実にクソゲーだな


「ただぁ」


壊四はうーんと唸っていた


「ただ?」


「多分、グミちゃんをあそこから出したら弱体化はすると思います、グミちゃんって魔力が無限なのでぇ」


「……なるほど、よし、一緒に助けようぜ、壊四!」


「はい、そのつもりですが?」


壊四は弓を取り出し、僕は異國弐閃で剣を作った


「さぁ、助けるぞ!」


:絶対助けるからね 1


スライムに飲まれている愚三は少し目を開けている、こっちの声も少しは聞こえているようだ


「グミちゃん! 起きて!」


「愚三! 戻って来てくれ!」


「あっははは! 戻るわけないだろ! その女の心の闇を晴らさなきゃ、意味ないんだよぉ!」


僕は騒ぐリバンを蹴り飛ばした、リバンは壁にぶつかり気絶した


でも、リバンが言ってたこと、本当な気がする……闇を晴らさなければ意味がない


朽六の時も似た感じだったし


「愚三! なんか辛いことあるのか!? あるなら僕にでも壊四にでも言ってくれ!」


そう言うと愚三は口を開く


「無理っしょ、誰もあーしのこと、理解できないんだし」


なんだ? いつもみたいなあの明るい感じがない、それに目に光を感じない


「だから、見ないでよ、あーしの事なんて」


なんか、シルファンの時の朽六みたいだ、そう考えていた時、壊四が怒鳴った


「グミちゃんの馬鹿!」


とても大きい声だった


「何が辛いかとか言ってくれなきゃわかんないよ! 教えてよ! ねぇ!」


壊四の必死さ、力強さがわかる、壊四も愚三を助けたいんだ


「そうだぞ愚三! 何も話してないのに理解できないって言葉で突き放すのは違うだろ!」


「………じゃあ、聞いてね」


愚三はそう言い語り出した


2


あーしは、昔から女の子が好きだった、友情とかもあるけど、恋愛でも好きだった


あーしは中学校の時に好きだった女の子に告白した、仲も良くて何でも話し合える仲だった


その子はあーしを好きって言ってくれたし、あーしもその子が好きだった


でも、告白したら


「え、いやあれ友達としてだから、てか女子なのに女子が好きって」


「キモっ」


その言葉と、あのあざ笑うような顔が、今でも脳裏に焼き付いている


それから、あーしは同性愛者とクラスで馬鹿にされ、人を好きになるのをやめた


あーしの事を「悪いわけじゃない」「そういう人もいる、元気出して」と、元気づけてくれた人は多い


でも、偽りの言葉にしか聞こえなかった


それでもあーしは女の子が好き、同じ性別でも、好きなものは好き


でもこれを言ったら嫌われてしまう、言いたくない、言えない


家族はそれでもいいと言ってくれた、でも、あーしはそれじゃダメだった


それで、高校に入って、ギャルになって、あえて他人と距離を置くようにした


たがら、ほら


「あーしの事、理解できないでしょ?」


3


「ね? わかったでしょ? あーしは異物、普通になれない人間」


そんな事ない、と言おうとした時


「それが何!? 私はノーパンで学校行って興奮してる痴女ですが!?」


「「え?」」


僕と愚三の声が重なった


「私は推しの女優とエッチする夢小説とか書いてるし! それに百合とか最高じゃん! 尊いじゃん!」


「か、壊四……」


壊四の咆哮は止まらない


「でも私は、こんな私を理解してほしいっておもわない! 自分のしたい事ができて、やりたい事ができて幸せだから!」


確かにそうだな、僕も壊四の言う通りだと思う


「人になんか言われてやめちゃうなんて、もったいないよ! もっと希望見ようよ!」


その時、愚三に反応があった、これは効いてるのか? なら


「愚三! 僕はちゃんとわかってないかもだけど、そういう人間が普通じゃないってこととか、うん、考えなくていいと思うぜ!」


「そうだよ! そもそも普通って曖昧なもので括るのがおかしいよ! ね! アオイさん!」


「ああ! そうだな壊四!」


僕と壊四はグータッチする


「私はグミちゃんから勇気を貰った、だから、半分お裾分け!」


そう言い壊四はスライムをかき分けて行った。順調に進んでいっている、そう思っていたが


「いっつ!」


壊四が手を痛めた、というか、指の辺りから黒ずんでいってる


「壊四! 大丈夫か!」


「大丈夫だよ、アオイさん。私、いまからグミちゃんを助けるから。絶対助けるからね!」


壊四は愚三のいる方向に手を伸ばす、だが愚三は体育座りをしたまま動かない


「グミちゃん! 手を伸ばして!」


「………いいんだ、フシっち、あーしはどうせ、帰っても理解されないから」


ダメだ、あれは前の朽六と同じ、でもああいうのってどう解決したら……


「うるさい! 帰るよグミちゃん!」


壊四は愚三のすぐ近くまで行っている、四肢が黒くなって指先の皮が剥がれてる


「でも、あーしは」


「帰ったら結婚しよう! グミちゃん!」


「え?」


「他の人に理解されたいなら、私が先駆者になる! 0からスタートより、1からスタートの方が簡単なんだよっ!」


壊四はそう言い力を振り絞って愚三を捕まえる


「愚三ちゃん、つーかまーえた」


そう言い壊四は愚三を引っ張り出す、そして、スライムは崩れ落ち灰になっていく


唐突な結婚宣言に愚三は驚いていた、でも壊四は体力が大幅に削れたのだが疲れてる


「あ、ふ、フシっち」


「泣かないでグミちゃん、可愛い顔が台無しだぞ」


あっちは大丈夫そうだな


4


僕はリバンの転がっているところまで来た


「クソっ! やはりまだ実験が足りなかったか……兵器を作るにはもっとガキを使わないと」


コイツがいなければ、戦争は起きなかった


「ん? おいお前、なに近づいてきてる」


コイツがいなければ、奴隷はうまれなかった


「まさか、私を殺す気か?」


コイツがいなければ、みんな幸せだった


コイツがいたから、多くの人が悲しんだ


「僕はお前を許さない」


僕は異國弐閃で剣を作り、リバンの元に近づく


「選択する余地は与えない」


僕は、リバンに剣を振り下ろした



:ただの自己満 1


「ストップだキョーダイ」


僕が振り下ろした剣はシーニィの足に弾かれ、シーニィは僕の前に立った


なんでここにシーニィがいる? 他の軍と戦ってるんじゃないのか?


それとも、ヴィラストを裏切ったのか?


まぁでも、どうでもいい


「どけ、シーニィ、お前まで殺したくない」


「なぁキョーダイ、コイツを殺したって誰も喜ばねーし、それに、んな事したらリゼやユール達が悲しむぞ?」


僕は異國弐閃を触手のような形にしてリバンに近づけるが、シーニィに足で止められた


「キョーダイ、辞めとけ、こんなことしたってなぁ、結局」


「……うるさいぞ、シーニィ・ブラッド」


僕は異國弐閃を剣の形に戻しシーニィに向ける


「そいつを殺して、僕は英雄になる」


「……はぁー」


シーニィは兜の顔の位置に手を当ててうなだれる


「ダッサ」


シーニィはそう言い異空間から背がギザギザした刀を取り出した


「キョーダイがそのつもりなら、俺はキョーダイを止める」


「やってみろよ」


2


シーニィと僕にはそこまで体格差はない、武器の長さも同じくらいだ


リーチが同じなら戦闘経験が高い方が勝つ


シーニィがどれだけ強いやつかはわからないけど、邪魔するなら、倒すだけだ


「シーニィ、お前は味方だと思ってたよ」


僕はシーニィに剣を振るうが、こっちの動きを理解してるのか、次々に避けられる


「俺はキョーダイの味方だ、世界がお前を裏切っても、俺はお前を裏切らない」


「ならなんで邪魔する! そいつは人々を傷つけて戦争を起こした大罪人だ! みんなの大切な人が傷ついた!」


僕は異國弐閃を鞭のような形にして攻撃をする


「みんなの大切な人……か」


シーニィは剣だけで攻撃を全て振り払う


「それにそいつはもっと最低なことをしてた! 獣人の奴隷にされた子どもを実験に使って、兵器にしようとしてた!」


「キョーダイ」


シーニィの声かけに気づかず、アオイは攻撃を続ける


「しかもそいつは悪びれる様子もなく、さもこれが当然かのように振る舞い、人々に迷惑をかけた!」


「アオイ」


僕の斬撃をシーニィは左手で受け止める、剣を止めたシーニィの手には傷一つついてない


「それにアイツは愚三も壊四を殺そうとした、何もしてない罪無き一般人を! だから殺さなきゃダメなんだ! あんなやつ生きてる価値ない!」


我弐飛蒼(がにと あおい)!」


怒鳴ったシーニィに、僕はなぜかビクついた、普段おちゃらけてるシーニィの、本気の怒り


「俺も、アイツが死ぬほどクソ野郎でゲロみたいな奴ってのには同感だ」


シーニィはそう言い僕の剣から手を離す


「ただ、生きる価値が無い人間なんて、いないよ」


シーニィは少し下を向く


「なぁ、キョーダイ、お前は英雄になりたいんだよな?」


「あぁ、でもそれとこれに何の関係があんだよ」


シーニィは剣を異空間にしまい、僕から少し離れてこっちを振り向く


「キョーダイ、絶対に英雄になれない条件が1つあるんだけどよ、知ってるか?」


「……なんだよ、条件って」


「英雄ってのはな、英雄になろうとした時点で失格なんだよ」


「何を言って」


「要はお前、ソッコーアウトってわけだよ」


僕はなぜか、怒りや憤慨するよりも、先に納得してしまった


だから僕は、なれないんだ


「でも、それでも僕は、そいつを許せない」


僕はそう言いリバンの方に走る、が


糸氷(しひょう)刃線(はせん)


シーニィがそう言うと僕の周りに大量の青色の線が浮き上がり、僕を通過した線が光る


「なんだ、これ」


痛くも痒くもない、だけど、動けない


「キョーダイ、この戦争でお前は何を得た? これからもし、同じ事が起こるなら、お前のすべきことは1つだぞ」


そう言いシーニィは近づいてくる


「キョーダイ、相手がクズでも、人殺しでも、絶対的な悪でも、殺しちゃダメだ」


シーニィは魔法を解く、なぜだろう、シーニィの言葉は心に染みて、落ち着く


「人を殺したら、もうそれは、お前じゃない」


シーニィは僕の肩に優しく手を置く


「シーニィ、それでも僕は………僕は、英雄を諦めきれない」


「そうか」


シーニィはそう言い立ち上がり、壊四達の方へ行く


「シーニィ、1つだけ答えてくれ」


シーニィは振り向かず無言で立ち止まった


「お前は、僕にどうなって欲しいんだ?」


シーニィは俯いたり足踏みをしたりしていたが、上を向いて言った


「………言うなれば、俺だけの英雄……だな」


シーニィが壊四達の方に走って行った後、僕も走って近づいて行った


3


「壊四! 大丈夫か!」


壊四のチートは不老不死、さっき壊四がスライムから喰らったのは体を蝕む毒


「フシっち! フシっち!」


愚三が泣いてる


壊四のチートの能力は再生もなければ毒無効とかもない、毒に蝕まれて壊四の体がボロボロになっていく


でも壊四は死ねない


「クソっ、どうすればいい……シーニィ! なんかねぇか!」


「……そうだ、愚三! お前のチートを壊四に譲渡しろ! それで毒の侵食は止まる!」


「え、でもシニっち、あーし譲渡の仕方とか知んないんだけど……」


チートは相手を殺せば手に入る、でも、確か譲渡する方法もあった気が……


「細胞の譲渡! 愚三! お前の髪とか汗とか、そういうの壊四に飲ませろ!」


シーニィ、なんで知ってるんだ? まぁシーニィだし知ってても不思議じゃないか


「え、で、でもえっと」


「早く!」


「大丈夫だ愚三! 僕たちがついてる!」


「えぇいままよ!」


そう言い愚三は壊四にキスをした


次の瞬間、壊四の毒の進行は止まり、壊四の意識は戻った


「んん、あれ、私。……グミちゃん、なるほど完全理解した、よかった」


壊四は無事に戻って来た


4


壊四を連れて帰ろうとした時、リバンが飛び起きた


「あ、あれ? なんだこの状況は」


シーニィがリバンに近づいていく


「おや、これはシーニィさん、どうしたんですか? それより! あいつらを殺してくださいよ!」


そう言いリバンは僕たちに近寄ってくる


「シーニィさんは最強なんだよ、億越(アンリミテッドミリオン)えなんだよ!」


億越え? 戦闘力とかのことか?


「あー、殺さねぇし、死ぬのはお前だ」


そう言いシーニィは水晶を取り出した


「お前の今回の行動、それに子供の改造のこと。まぁエルフまでも実験台にしてたのは意外だが。全部国民に垂れ流ししてある」


あ、死ぬって社会的に死ぬって事か


てか改造ってまさかあのスライム………それにエルフまでって……


「は? あ、え、は? 嘘ですよね? シーニィさん」


「俺は言ったろ? 「お前達は勝てない、敵にアオイがいる限りは」って」


シーニィのやつ、そんな事言ってたんだ


「は、はは、ははは! 嘘だ! シーニィさんが裏切るわけない! だって相手は異世界人! あんなゴミどもの味方するわけない!」


「俺はな、いつ何時でも、″アオイの信じる正義″の味方なんだよ」


僕の信じる正義? そういえば朽六も僕の正義がどうとか言ってたような


「だ、だがこの国はどうなる! 私が王座から退いたら……この国は終わるぞ!」


まぁこれでも国をまとめてたんだし、非道徳的でも政治はできてるんだよな、あいつ


「………そーだな、キョーダイ! 奴隷制、どうする? 続けるか? 撤廃か?」


「いやシーニィ、なんでそんな事を僕に決めさせるんだよ」


「俺はキョーダイの意見を聞きたい、英雄なら、人の事を考えられるだろ?」


人の事を考えられるだろって………嫌な聞き方だな


でも、奴隷制か……


ケルなら即撤廃を言うんだろうし、エリフェルの人間からしたら、奴隷がいないと力仕事はできない


奴隷がいないと困る人がいる、でも奴隷がいると困る人もいる


「いやまだ年若い人間に決めさせる事じゃねぇ!」


「だよなーキョーダイ……なら俺が決める」


シーニィはそう言い寝ているケルに近づき、ケルを起こした


「んぅ……はっ! リバン! よくもっ!」


「ストップストップ、安心しろ、俺が終わらせた」


シーニィはそう言いケルをなだめた


ケルはシーニィがいることやこの現状に驚いていたが、少しして冷静になった


ケルとシーニィが話し込んでいる、やっぱ奴隷のことについてか?


「なぁ、アオイと言ったか?」


リバンが話しかけてきた


「お前、今まで他人にいろいろ辛い事を言われてきたんだろ?」


「え、あ、まぁ思い返すと、いろんな人に急に突拍子もないこと言われてたな」


ガウィタチンでは女王に、シルファンではティルさんに


「それがどうした? 正直、あの人達が言ってたことは的を当てたとも思うし」


さっきはシーニィにも


「その言葉は全て、シーニィさんが用意した言葉なんだよ」


シーニィが用意した言葉? でもあいつが、もし僕の考えてる通りの力を持ってるなら


「それがどうした? 別にシーニィが用意した言葉だとしても、それは僕が英雄になる為に用意したんだろ」


まぁ、英雄なんてもう………


「わからないか? お前は成長した気になってるが、本当はシーニィさんの手のひらの上……作られた人生なんだよ!」


リバンはまるで核心をついたかのように語った


「作られた人生? それがどうした、別にどうでもいいだろ」


「それでいいのか? お前は……お前は自分じゃ何もできない……」


「あのさ、お前は何がしたいの?」


こういう感じのいろいろ言ってくる人、もうめんどくさい


「僕がどうとか言ってるけど、お前は僕にどうなってほしいの? 変わってほしいの? それとも消えてほしいの?」


僕は大きくため息をついた


「正直、もうめんどくさいから騒がないで黙ってて」


僕はそのままシーニィとケルの話が終わるまで待った


5


「キョーダイ! 話はついたぜー!」


シーニィとケルが近寄ってくる


話はついたって……奴隷制をどうするかって事だよな、ケルは一体どうするんだろ


「アオイ、アンタに聞きたい、奴隷制は即撤廃すべきかい?」


ケルが真剣な面持ちで聞いてくる、ケルはまだどうするか悩んでいるんだろう


「そんなこと、僕には決める権利無いし、僕が決めていいような事じゃ無いと思う」


僕は下を向く、やましい事があるとか、悲しい事があるとかじゃないけど


「奴隷制があったら獣人の人達が苦しむ、でも、奴隷制を撤廃したら今まで奴隷を使ってきた人達が生きるのが難しくなる」


「………奴隷はエルフと違って、重いもの運んだり道を作ったり力仕事ができる。奴隷がいなくなったら、エルフ達は力仕事ができなくなる」


僕は喋りながら考える、この問題に正しさというものがあるのか


「それに、生まれてからずっと奴隷になっていた人は、奴隷の仕事しかできない、ならそれは、奴隷のままなんじゃ無いのか?」


僕1人だけの意見を言えば「即撤廃しろ」と言える、でも、見ないといけないのは世界だ


「奴隷制を無くしたって、結局いつかは同じ事が起こる。″力″の無い人が″力″を得るために別の″力″で他人を押さえつける」


獣人でやらなくなったら、今度は巨人やドワーフ、もしかしたら人間の奴隷が生まれるかもしれない


僕は見えてるものが狭い、実力も無いのに夢物語だけ語って、それを否定される


「ここで、立派な主人公なら撤廃しようとか言えるんだろうな……」


1人で、小さく、呟いた


「ケル、僕の意見は「撤廃しない」だ、ここまできて意見を変えるなんて自己中だと思う、だから、ごめん」


たった1人の小さな意見、それでもケルは真剣に聞いていてくれた


「ならアオイ、アンタはどうすればいいと思う? アタシ達は、奴隷制を無くしに来たんだよ?」


「……奴隷制の緩和だ」


苦し紛れに、半分は嘘が混じった言葉だ。咄嗟に出た、それだけの言葉


「……よし、わかったよアオイ、アタシもそうしようってシーニィさんとさっき話してたんだ」


ケルは笑って僕の頭を撫でた


「アタシは奴隷を全員救いたい、でも、それで困る人もいる、シーニィさんにも教えられたよ」


ケルは僕の頭から手を離し、笑った


「それでもアタシはやっぱり変われない、だから! ヴィラストの女王になってどうするか死ぬまで悩むのさ!」


ケルがそう言い胸をドンと叩いた時、王の間の扉が勢いよく開いた


「アオイ!」


扉の方にはユール達がいた


ユールは笑っていて嬉しそう、ガモも微笑んでいる、マイラはふてくされてて……リゼはなんか怒ってる?


「みんな、どうして」


「国中の放映機で生放送されてたんだよ! 来ないわけないだろ?」


なんか、どっと疲れて安心した


その後はケルとシーニィ、リバンを残して城から出た



第18 終

仮面の勇者第18話を読んでいただきありがとうございます。


今回は前回より投稿が遅くなり申し訳ございません

次回は早めに投稿します


それではまた次の話で会いましょう。

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