仮面の勇者 12
仮面の勇者第12話
今回は「冒険」というより「経験」ですね。
さぁ、冒険の始まりです。
仮面の勇者 12話
:強くなるが為に 1
僕が家出して帰って来てから3日後、本格的にアイズの特訓が始まった
「だから、剣の振り方は力任せじゃなくて、風をなぞるように振るんだ」
剣術はユール、魔法はマイラ、防御や回避はガモが教えている
「はー、疲れた」
「ほら! アオイも手を動かす!」
「あ、ごめんユール」
僕は仮面の力が使えない、それに冥龍憑依も使いすぎて当分使えない、だから自分を鍛える為にアイズと一緒に鍛錬に励んでいる
そして休憩時間の時
「そういえばアオイお兄さん」
「どうしたアイズ、もしかして能力が無ければ僕が弱いってことに気づいたのか!?」
「いや違いますよ。アオイお兄さんのその黒い武器、名前はあるんですか?」
黒い武器、まぁ鏖血鉱の事だろう、そういえば武器の名前は付けてないな
「いや、無いよ、まぁ正直あってもなくても変わんないでしょ」
あれ、でもレジェルさんといいレグートといい、2人とも武器に名前つけてたな
「まぁ強さとかは変わんねぇけど、名前あると自分のって感じがするぞ」
「へー、あ、じゃあガモの盾とかユールの剣にも名前あんの?」
あんまり気にした事なかったけど、言われると気になりだすな
「ああ、あるよ。僕の剣は鈍鉄、レジェルさんが打った両刃の剣」
「俺の盾の名前は頑天、これもレジェルさんが作った武器だな」
なんというか、レジェルさんのネーミングセンスが面白いな、僕の刀も竜胆と炎牙だしな
「マイラとリゼの杖にも名前あるの?」
「私のは無いな、天才はその辺の木の棒でも世界を滅ぼせる、そういうことさ」
マイラなら本当にやれそう、でも世界を滅ぼせるくらいは嘘だろ
「私の杖も名前は無いですね、買った物ですし。ちなみに2年ほど使って一度も壊れてません」
へぇ、杖って壊れやすいのかな
ケルは……武器使わないしいいか
「にしても名前かぁ、どうしよう」
ネーミングセンスが問われるぞこれ。
[黒き漆黒のダークブラック]とか、いやだめだな、黒ばっかだし
「冥領の堕刻天とかどうだ?」
「いやナノ、冥領の堕刻天とか厨二病全開すぎだろ。もっと凱天の深淵とか……」
いや待て、ナノといると厨二病が全開になる
でもそうだな、なんかいい名前、いい名前……
「異國弐閃」
頭にフッと浮かんだ言葉。
いや長いしやっぱり厨二病全開だしやめとくか、うん
「いいな、異國弐閃か、アオイっぽい」
「あ、いやナノ、この名前は」
「アオイ、その武器異國弐閃っていうのか、いいね!」
「いや、ユール」
「俺は結構かっこいいと思うぜ!」
あー、引くに引けなくなった
「そう!これは異國弐閃!僕の武器さ!」
はぁぁーー、やっちまった
2
「て事で、強くなる為にもこの世界の設定の詳細が知りたい」
僕はそうマイラに切り出した、世界の設定というかこの世界にある力、○○殺し(スレイヤー)とかスキルとか魔法とか、わからない事が結構ある
「それらを説明する為にはまずこの世界にある力、魔力を知る必要がある」
マイラが言うには、魔力は簡単に言うと力の源らしい
「魔力は魔法とスキルを使うのに必要で、冥龍の力も魔法と同じような物」
僕は異國弐閃の形をいろいろ変えながら話す
「スレイヤーはその対象を一定数殺せば手に入る称号で、例えばスライムスレイヤーならスライムと戦う時強くなる、まぁバフがつくってことか」
それでスレイヤーはスキルでも魔法でもないから魔力を使わない
「じゃあマイラ、魔力ってなんだ?」
この世界にある物質とか原子とかは全部、元の世界とほぼ同じ物だった。でも魔力だけはよくわからない
「そんなこと知ってる奴はいない。と、言いたいところだが、一応知っているぞ」
そんなこと知ってる奴はいない? この世界では魔力が何かとかあまり知られてないのかな
「簡単に言うと魔力は電池だな」
電池……よくある表現だなぁ
「いや待て、電池ってこの世界にあるのか?」
電池って、なんかこう……現代的な物じゃないか?
あ、でもなんか学校の実験とかで使うような電池かも
「まぁ電池は異世界人が持ってきた物だしな、あまり布教しなかったが」
へーそうなんだ
「まぁ電池だから使ったら力がなくなる、充電するには時間がかかる、そして、ここからが魔力の本質だ」
そう言いマイラはステッキを取り出した
「魔力は感情、思想、欲望の力、心の力だ」
「心の力?」
「ああ、この世界では強い憎しみや憎悪により魔力が多くなる者や、強い信念で魔力が多くなる者がいる」
なるほど、つまり心が強ければ強いほど魔力が多いって事か
「ん?でもマイラってそんなに心が強いようには」
「さて、魔力の話は終わりだ、他に聞きたいことはあるか?」
完全に話を遮られたな
「まぁ、また気になる事が増えたら聞くよ」
「そうか、では早く鍛錬しに行け、お前はもっと強くならなければいけない」
「わかってるよ、マイラ」
強くならなければいけない……か
3
今日は鍛錬がお休みなのでミリィドの収容されてる監獄へ来た
「何? 嘲笑いに来たの? あはははは!」
僕とリゼはミリィドの姿を見て驚いた
髪は乱れボロボロで、目の下にはクマができていて、服は聖女の時の服だったがボロボロで汚くなっていた
唇が青色になっていて身体中に掻きむしったような痕があった
「ミリィド、あんた何が」
「メツナ様、メツナ様メツナ様メツナ様メツナ様メツナ様! メツナ様ぁぁ」
なんだこいつ、頭おかしくなってないか?ていうかメツナって、滅七時恋の事だよな
「ミリィドさん、何があったんですか?」
リゼがそう聞くと、ミリィドは急に幼い口調になった
「わたしぃ、がんばったのにぃ、なんでぇ。メツナ様のためにぃ、がんばったのにぃ」
こいつ滅七滅七って、滅七を神みたいに信仰してるのか?
「元聖女が、見る影もないな」
そう言いこの国の女王、メイジ・ニゥフェが来る
「こやつの事は私から説明しよう。その為にも、私の家に招待せねばな」
そう言われ僕たちはメイジの家、つまり王城へ行くことになった
「あ、少し待っててください」
そう言いリゼはミリィドの方へ小走りしていく
「どうか貴方に、幸がある事を願って」
そう言いリゼは跪いて、ミリィドに向けて手を握り合わせた
ミリィドは虚空を見つめていた
4
城の見た目は街と同じ赤いレンガで作られた城だった、植物や庭園が広く、今までの国の要塞的な城とは全く違っていた
中は白と金色の壁や柱で、内装も他の国の城より裕福な感じがした
「さて、元聖女ミリィド・リーフィードがなぜああなったのか教えよう」
ミリィド・リーフィード、元聖女でリゼを殺そうとした人間、リゼの恩師のリンファという聖女もミリィドに殺されたらしい
「まず、ミリィドがああなった理由は2つ、破壊神コロウアを裏切った事、そしてメツナという人間に裏切られた事だ」
そういえばミリィドはコロウア教の掟を破ったとかメイジさんが言ってたな
「メイジ様、コロウア様を裏切ったというのは、ミリィドさんが掟を破ったという事と捉えていいのですか?」
「ああそうさ、しかも2度もな」
2度、たしかこの前、皮肉だなんだとか言ってたな
「まず1度目は聖女を殺した事、本来ならここで天罰が下るはずだった、しかし、ミリィドはリゼを聖女殺しの犯人とする事に成功し、神は裁くに裁けなくなった」
なるほど、世論に逆らってミリィドを裁けば神への不信感が生まれる、それをコロウアは怖がったんだろう
[神は信仰心が無くなれば消えていく]
昔誰かがそんな事言ってたな
「そして2度目、ミリィドはとある1人の男と夜を共にした」
僕とリゼは口元を押さえて、まぁ、というポーズをしていた。
え、だってそういう事だよね?
「まぁお前たちのような初心な者には刺激が強いから言わんが……なんだ、お前たち顔を赤て、子供か?」
メイジはため息をつく
「まぁいい。リゼ、お前は昔コロウア教だったな、こういった時どうなるかはよく知っているだろう」
そう言われるとリゼの顔が真面目な顔になる
「はい、コロウア教の掟、経典の代3目[我が教団の神官達は恋愛を禁ず、人とまぐわう事を禁ず、反した時は神の裁きが下る]です」
「え、リゼ全部覚えてるの?」
「はい!13章72目まで全部覚えてます!13×72ですので936目ですね!」
リゼもマイラと同じくらいのヤバい奴だった。しかもその計算すぐにできるのヤバいって
「よく覚えてるな、ちなみにカルナイ教っていくつあるの?」
「5章6目なので30目ですね」
すっくねー
「でもよく知ってるな、リゼはすごいよ」
「いえいえすごくないですよ、それに私たちはいくら凄くても、人を生き返らせる事はできないですし」
「それでもすごいもんはすごい !もっと自分を誇ってもいいと思うぞ」
「いや、そんな事、それならアオイ様だって」
「なぁ、そろそろ次の話にしていいか?」
メイジさんの方を見ると、なんというかもどかしい表情をしていた
「「あ、ごめんなさい」」
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「さて、ミリィドがああなった2つ目の理由だが、メツナ、ミリィドが夜を共にした男に裏切られたからだ」
滅七……そういえば僕たちが召喚された時にいたのもミリィドだったよな
「メツナはミリィドと出会ったその日にミリィドと寝た、そこからミリィドはメツナの考えや意見に従うようになっていき、メツナの傀儡となった」
えぇ、滅七やっちゃってたんだ、でも出会った日って事はこの世界に来た日に? やばくね
「そして、メツナからこんな手紙が昨日送られてきた」
そう言いメイジさんは手紙を机の上に出した
その手紙の内容は別れを告げるというものだった、しかも、とてもきつい言葉で書いてあった
「こんなの、お前を捨てるって言ってるようなものじゃないか、滅七はなんで」
「そもそも、ミリィドのことなんぞ愛していなかったんだろう、好いてすらいなかったかもな」
これ、ミリィドの自業自得だけど、滅七もかなり酷い事してるよな
「ミリィド……ま、かわいそうだったな」
僕は手紙を閉じ封筒に戻した
「ああ、本当の愛に気づかず、己を捨てた愚かな女だ」
本当の愛か
その時、リゼが耳打ちしてきた
「実はミリィドさん、仲の良い男性の方がいたんです。その男性はミリィドさんが始まりの国ハルファウルに行く前に結婚したいと言っていたらしいですよ」
なんだろう、凄く綺麗な終わり方………いや僕は何を考えているんだ?
「ま、そういう事だ、ミリィドにはもう関わらない方がいい」
その後は少し茶会に付き合って帰った
6
「アオイお兄さん、ボク、そろそろ帰るよ」
特訓から1週間経った頃、アイズがそう言ってきた
「おいおいどうした、ユールにいじめられたのか?」
ユールがアホづらをしてこっちを見てる
「いや、違うんです。ボク、そろそろ家に帰らないとお母さんが泣いちゃうから」
あれ?でもアイズはお母さんに嫌われてるって……
「なーんだ、そういう事か、僕たちもいっしょに行こうか?」
ユールがアイズにそう聞くとアイズは少し考えて縦に首を振った
「よし、アオイ、リゼ、送って来てあげな」
そう言われて僕たちはアイズを城に送って行くことになった
ユールが送ってくわけじゃないんだな
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「それじゃあアオイお兄さん、リゼお姉さん、長い間ありがとうございました、他の皆さんにも伝えてください」
そう言ってアイズは走り去って行く、最後にこっちを向いて言った
「よかったら、また来てくださいね!」
「ああ! また来るよ!」
「お元気で!」
僕たちは手を振ってアイズとお別れをした、まぁ、また会えるだろう
:変わるんだ 1
ある日、城に行くと聖騎士のティルサ・マレクサナという男が兵士を何人か連れて城門にいた
「貴方達が元聖女ミリィド・リーフィードを倒したお方達ですね。初めまして、私の名前はティルサ・マレクサナ。水の国の聖騎士です」
そう言いその金髪の男はリゼ達の前に跪いた
「ところで、そこの方は異世界人ですね」
聖騎士が僕の方を見る、自己紹介したほうがいいかな
「いや、自己紹介はいらない、下がっていろ愚か者」
愚か者?おろかもの?オロカモノ?
僕は城に入って行くティルサの肩を掴む
「おい待てよティルサ・マレクサナ」
「その手を離せ、私は異世界人が嫌いだ」
まぁ異世界人が嫌いな人は多く会ってきたけど、最初から愚か者って
「愚か者と言われた事に腹を立てたか? それはすまなかったな愚者」
ランクアップしやがった
「僕は英雄になる男、我弍飛蒼だ!覚えとけ!」
僕がそう言うとティルサは舌打ちをした後、深くため息をつく
「そこまで自分を誇示したいのか? ならいい、決闘だ、そこで教えてやろう」
2
「さぁ、決闘開始だ」
ルールは魔法とスキルは禁止、剣だけで戦う事、それだけだ
ティルサは切りかかってくる、剣の動きが早くて見えない
「さて、君に問おう。君はなぜ英雄を目指す」
こいつ、こんな激しい戦いしながら話せるのかよ
「僕は、英雄になって世界を救う!だから英雄になりたい!」
僕はティルサに切りかかるが全て避けられる
「……なるほどな、では、なぜ彼らと共にいる」
彼らか、ユール達の事だろう
「もちろん、仲間だからだ!」
僕はまた切りかかるが全て避けられ、剣を弾かれ手から離れる
「嘘はいい加減にしろ」
僕は一瞬で体をめったうちにされる、僕の後ろにティルサは移動していた
「キサマがなぜ未だ英雄になれていないか教えてやろう」
そう言いティルサはこっちを向く
「それは自分が″正しい″と思いこみ、″痛み″を味わった事がないからだ。お前には″覚悟″がない!」
正しい? 痛み? 何言ってるんだこいつ
「わからないなら教えてやろう。お前は先程世界を救うと言ったな。それはどのようにして成す、どれほどの期間で成し遂げる、どうして世界を救う?」
「どうしてって、そりゃ、僕が人助けをしないと」
僕が言いかけると
「人助けをしないとだと? お前はなぜ人を助ける」
なんでって
「なんでって、それは僕が……えっと……」
「私は人の心を読める、だがお前は見るだけでわかる。お前は人を助けてチヤホヤされたいんだろ?」
それは、そんなわけ、いや僕は世界のために、いや、えっと
「努力はしたのか?」
努力は、した、はずだ、したよ、そうだよ、シーニィだって認めてくれたじゃないか
「お前の考えは正しいさ、世界を救う? 大いに結構! だがな、お前は人から物褒められるためだけに動いている、お前と会った時私はそう見えた」
僕は……いや、そんなわけない、僕は確かに世界を……
「次に、お前は痛みを知らない、故に覚悟がない」
痛み……
「覚悟はしてる……僕はいつでも死ぬ覚悟が」
「ほらな、できてない」
そう言いティルサはため息をついた
「お前は全部どうにかなると思っているだろ、ぜんぶうまくいくと思っているだろ」
僕は炎の国で出会った女王の言葉を思い出す
「お前は1人じゃなにもできないんじゃないか?」
「お前は強い者たちに囲まれて自分も強くなったと勘違いしている」
「貴様は何も偉く無いし何にもできない」
「お前の本性はグズで弱虫なんじゃないのか?ガニト」
全部、言い返せなかった言葉
「大切な人を失ってからでは遅いんだぞ」
そう言いティルサは去って行く
まだ、まだ僕は負けてない
「冥龍
グサッ!
左手をティルサに刺される
「本当に愚かだなお前は、次会った時そのままなら、斬り殺す」
そう言いティルサは去って行った、僕はみんなが座ってる席を見る
「なんでっ、誰も、助けてくれないんだ」
僕は……まだ……
3
決闘場から出ると、通路にみんながいた
「みんな、僕、頑張ったんだけど…その」
ユールが近寄ってきて僕の言葉を遮る
「アオイ、それ以上はよすんだ」
「いや、あの、でも」
「もういいよ」
そう言いケルが去って行く、ケルに続いてリゼとマイラも行く
「アオイ、これは君の問題だ、でも」
「ユール」
ガモがユールの言葉を遮りユールを担いで行く、去り際にガモが言った
「アオイ、頭冷まして、よく考えろよ」
僕は実際、慰めの言葉をかけてもらえると思ってた
よく頑張った
凄かった
かっこよかった
褒めてもらえると思ってた
でも………僕は
僕は走って建物から出た、外は雨が降ってた
体に雨が当たって冷える
寒い
「いや、僕は悪くないだろ、そもそもアイツが愚か者とか言ってきたせいで、それで、僕は……負けて、いや、負けてない、まだ」
左手を見ると血が出ている、雨が染みて痛い、なんで僕は
「僕は精一杯戦ったんだ、それなのになんでみんな褒めてくれないんだよ、僕は頑張ったのに」
なんで……なんで僕は戦ってたんだ?
僕はどうして
「ふざけるなよ!全部僕のおかげなんだよ、僕が異世界人を倒して、国を救ってきたじゃないか!それなのに……なんで……」
「ほらな、できてない」
アイツが、アイツが悪いんだ、僕は頑張ってるのに、誰もわかろうとしない
「僕は頑張ってるんだよ!みんな僕を褒めていいだろ!なんで……」
「努力はしたのか?」
僕は、なんで……
「君はなぜ英雄を目指す」
あぁ、どうせ僕は……そうだ、復讐して
いや待て、僕は何考えてるんだよ、あれだけの……あれだけの事……あの程度の……
「あの、程度の……」
決闘場での周りの視線
ティルサからの目線
戦いの後のみんなからの視線
「それでも僕は、正しいはずなんだ……」
その時、声をかけられた
「やぁ、奇遇だね蒼君、どうしたんだい?」
そこには異世界人、死十即破がいた
4
「死十……なんでここにいる」
死十は傘をさしていた
「ん? ああ、僕は旅行が好きでね、いろんなところにいるよ」
今までの事、見られた? でも別にいいか
「それにしても、随分と惨めだね、今の君は」
は? こいつ、僕を煽ってるのか?
僕は立ち上がる、死十を睨みつける
「遠目で少し見てたよ君のこと」
「なんだよ、笑いに来たか?」
僕がそう聞くと死十は近寄ってきて言った
「うん、笑いに来た」
そう言い死十は本当に笑った、大笑いしていた
「あっはっはっはっ!いやーほんとにさ、格好悪いよ君、本当のことを言われて逆上して、勝てないから不意打ちしようとしたけど失敗した上に、ルール違反もしようとした」
「まさに滑稽ってやつだよねぇ」
死十は腰に下げてる剣を抜いた
「さて」
剣を僕の目の前に出して言った
「我弍飛蒼、君を殺す」
僕はそれを聞いてホッとした
もういい、僕は生きてたって変わらない、どうせ同じ事の繰り返し
ならもういっそのこと、ここで
「いや、やっぱりダメだ」
僕は剣を右手で掴む
「ごめん死十、僕はまだ、死にたくない」
死十は少しニヤけていた顔からニッコリ笑って剣を僕の横に思いっきり振りかざした
「残念、今までの我弍飛蒼はここで死んだ。さぁ、今の意気込みは?」
僕は立ち上がる、空が晴れる
「生きる、ダサくたってかっこ悪くたって、みんなから褒められたい、凄いカッコいい理由じゃないけど、僕は褒められたいから英雄になる。みんなから褒められたいから英雄になる!」
きっとティルサは僕に恥をかかせないために、僕が冥龍憑依する前に僕の左手を刺したんだ、違うかもしれないけど
「今からは新生、我弍飛蒼って事かい?」
死十に聞かれる
「いいや、人はそんなすぐに変われない、でも僕は変わりたい、いや、変わるんだ」
今までの僕には、痛みも覚悟も無かった、ただ自分が正しいと思って、全部どうにかなると思ってた
「やってやるよ。僕は、変わる」
そう言うと、死十は笑って去って行った
「頑張れよ、僕のヒーロー」
死十がそう言ったのは、アオイには聞こえていなかった
5
「本当に、ごめんなさい」
僕はみんなのところに帰ってきて土下座をした
「アオイ、別に僕たちは」
「ユール……」
ガモがそう言いユールの肩を掴み、僕を踏んだ
「えっと、ガモさん?これはいったい……」
「罰」
わぁ端的
その後僕はみんなから盛大に怒られたが、誰1人として僕に慰めの言葉をかける人はいなかった
いや、それでいいんだ
「アオイ様、今左手の傷を治せば傷跡も綺麗に消えますが、いいんですか?」
「うん、いいんだ。これはケジメだ、僕が変わるための」
リゼいわくこのまま放置したら一生この跡は取れないと言われた
でもいい、自分をすぐに変えられなくても、まずは形から
「そうだ、結局あのティルサって聖騎士さん何しに来たの?」
そう聞くとマイラが答える
「ん? お前知らないのか? ティルサ・マレクサナはこの国の女王、メイジの夫だぞ」
………ふぇ?
「ん? え? はい? え、でも苗字違くね?」
「あぁ、あの夫婦よく離婚するからね」
「えぇ、そんなイベントみたいなノリで離婚するのかよ」
「この間は音楽性の違いとかっつってたな」
「何そのバンドみたいな離婚理由」
でもなるほど、少し納得するような気もするな、決闘場の場所も知ってたし
「あ、もしかしてお前の事を養子だと思ったんじゃないか?」
「あぁ、朽六が任命されてたやつか」
なるほど、だから人の心を読むスキルを使ってまでも
「ちなみにティルサ様はメイジ様もお互いにベタ惚れらしいですよ」
「もうよくわかんないな、この国」
でも、この国で学んだ事は多かった
「僕は、昔の僕から成長する、そして、変わるんだ」
さて、僕はどうしようか
:神の間
そこには2人の女性がいた、黒髪で青目の幼そうな者、白髪で赤目の優しそうな者
「ねぇカルナイ、この異世界人、1番行く確率の低いルートに行ったよ」
カルナイと呼ばれた白髪の女が円盤を見る
「うん、でもこれが1番いい道なのかもな」
「でもさでもさ、これならまだ元のルートに戻せるよ?」
「ああ、新しい力を与えれば戻る。でも、それで本当に良いのかな?」
カルナイは考える
異世界人は全員が悪の素質、クズの性質を持っている
自分の間違いを認めなかったり、自分を正しいと勘違いしたり、様々だ
その中で我弍飛は変わろうとした
最後まで変わらなかった裏八、逃げた滅七、帰ってから変わろうとしてる血五、何も考えてない朽六、彼らとは何か違う………
「我弍飛は、彼はもう私達の子供ではないのかもしれない」
私達が力を与え、成長を見届け、助ける義務のあるのが子共
「彼は、いつか私達の手から離れていく、そうなれば、彼は新しい神に……」
私達と同じように……
「じゃあカルナイは我弍飛を推すんだ、じゃあこっちは滅七を推すよ」
コロウアは微笑み、カルナイは苦い顔をしていた
:願う程に 1
私、朽六洗雨はこの国の女王メイジ・ニゥフェの養子になった
私はそれから政治や国の事、様々な事を勉強している。強くなる為、己の洗脳という力をちゃんと使えるようにする為に鍛錬もしている
あの時、蒼に救ってもらった時、私は己の未熟さ、そして弱さを知った
爛漫、闊達、不羈は私の専属騎士としていつも鍛錬している
「蒼に、会いたいなぁ……」
「授業中ですよクチロ様、私語は謹んで。ほら、筆をしっかり持って」
「あ、す、すみません」
昔の私は1人でいいと思っていた
高校に入ってから蒼とは話さなくなった、それでもずっと蒼は私の事を気にかけてくれていた
「なのに私は……私はあいつの優しさに気づいていながらそれに甘えて……」
「クチロ様、授業中ですよ」
「私は!」
「クチロ様、授業ちゅ」
「どうして!私は!」
私は机を叩いた
「えぇぇ………」
「あ、すみません」
勉強って難しいな
2
ある日、メイジ殿があって欲しい人がいると言い、私を呼び出した
「こちら、私の夫のティルサ、ティルサ、こっちは養子にした異世界人の朽六洗雨だ」
ティルサ殿は私と同じ顔をしていた、うん、びっくりして口をあんぐり開けていた
「いや待てメイジ、養子をとるとは言っていたが、異世界人だと? それにこっちはてっきりあの男かと……、いや、それに異世界人なんていい訳が」
その時、メイジ殿が口でティルサ殿の口を塞いだ
キッスだ! キッスだ!
「いいな? ティルサ」
「……くっ、殺せ」
いやどうしてそうなる
そしてティルサ殿、なぜ頬を赤らめて少しニヤけてるんだ
「あいわかった」
そう言ってメイジ殿が氷の剣を作る
「いや待て待て待ってくれ、どうしてそうなる?」
そしてなぜティルサ殿はこの状況を楽しんでいるんだ
「すまない、興が乗ってしまった」
そう言ってメイジ殿は氷の剣を消滅させる
ティルサ殿は姿勢を正し咳払いをした
「さすがメイジ、私を倒した唯一の者」
一息置いてまた言う
「私は許す、だが王位を継承させるのは我が愛息子のアイズだ。いいな?メイジ」
「考えておこう」
ティルサ殿は笑い席をたった
「それでは……メイジ、君の好きなケーキを買って来ている、後で食べよう」
「あぁ、わかったよ」
ティルサ殿は部屋から出て行った
メイジ殿が深くため息をつく。あのような人は本当は苦手なのか?
「しんどい」
やはり、メイジ殿は
「夫が可愛すぎてしんどい」
この夫婦……面倒すぎだろ
まぁでも、本当に2人は愛し合っているんだろうな
「さてと、どうだった、私の夫は」
「はい、とてもふざけていましたが、実力は凄まじい物だと思います。剣でのし上がって来た人、そう思いました」
ああいった人は多く見て来た、私の剣道の師範もティルサ殿と似た強さだ、才能だけでなく、努力と覚悟の上の強さ
私は何をしてもティルサ殿には、勝てないだろう
「まぁいいだろう。ちなみに、ティルサは人の心を読める、クチロに何も言わなかったところを見るに、害はないんだろう」
と言う事は、私は認めてもらえたのか……
「ティティ……じゃなくてティルサは飴と鞭をしっかり使える者だ」
ティティって、ほんと仲良しだなこの夫婦
「しかし、お前に飴も鞭も与えなかったところを見るに、ティルサはお前に期待してないんだろう。あいつは期待してる者に強く当たるからな」
なら、私は認められたんじゃなくて、無害認定をされただけ……
熊が兎を敵と認めないのと同じように……
「まぁティルサはアイズ、息子にだけは甘いがな、その代わり私が鞭を務めてる。正直つらい」
あの人は、ティルサ殿はしっかりしてる人だ、しっかりとした覚悟がある、そんな人だろう
「私は、どうすべきなんだ」
こんな時、蒼がいれば………
3
ある日、この国の第一王子、アイズ様に会った。私にとってアイズ様は一応兄という立場になるらしい
「ごきげんよう、アイズお兄様」
「いや、えっとクチロさん、ボク年下なんだし、お兄様じゃなくてアイズでいいよ」
なんていい子なんだこの子は
「なら、アイズくんでいいかな」
「うん!」
いい子な上に可愛いなこの子は、どっかの蒼ってやつとは大違いだ
「ところでアイズくん、何か用かい?」
「あ、要件とかは特に無いんだけど、えっと、挨拶しておこうと思って」
そういえば、私が養子に来てから1〜2週間ほど居なかったんだっけか
メイジ殿が凄く心配していたな
「そうか、ありがとう。ところで君はずっとどこに行っていたんだい?」
「えっと、秘密の特訓……かな」
アイズくんはそれ以上は語らなかった
それから少しアイズくんと遊んだ
4
ある日、メイジ殿に気になっていることがあったので聞いてみた
「メイジ殿、なぜ私を養子にしたのですか?」
こないだティルサ殿は王位継承権はアイズくんにあると言っていたような……
「まぁ、いろいろと理由はあるが、1番の理由は戦力の増強だ」
「戦力の……増強?」
これから戦争でもするのだろうか?
「きっと近いうちに戦争が起きる、一年……いや、もっと早くて半年ほど先かもしれない、だが、必ず起こる」
そんな、いったいなぜ……いや、そもそもどこの国と?
「だから、異世界人の私を養子にしたと?」
「まぁ……そうなるな」
まぁ、戦争が起こるなら仕方ないか、それで人が死んだとしても私に関係ないな
「わかった、私にできる事があればなんでも言ってくれ、この国のために力を使おう」
こうして、私の城でのスローライフが始まっていくのだった
:友達 1
「アオイ様!見てください!綺麗なドレスですよ!」
僕たちは数日後、次の国に行く。
そのために僕とリゼ、ケルは買い出しをしている。
マイラとガモ、ユールの3人は次の国で必要になる薬を買ってくるって言ってたな
「うん、綺麗なドレスだねぇ、久々だよ、こんなほのぼのした日はさ」
にしてもドレスかぁ、僕には一生縁が無さそうな物だよな
「アオイ!アタシにはどのドレスが似合うかな!」
「そういうのは好きな人に聞くべきでは?まぁ、やっぱり無難に白いのとかがいいんじゃない?」
「え!じゃあアオイ様!私にはどれが似合いますか!」
「え、リゼならこういうフワッとしててフリフリしてるような……いや、こういうきっちりしたのも、いやそれともこんな感じの方も……」
悩ましいな、これは
「ていうかケル、急にドレスなんてどうしたんよ?」
「ん?あぁ、そりゃ、うーん」
ケルが腕を組んで悩む
聞いちゃいけない事聞いちゃったか?
「アタシねぇ、故郷に結婚する予定の人がいてさ、まぁ国に帰る理由はそいつと結婚する約束してたんだけどさ」
そこでケルの言葉が詰まる。もしかして、その人はもう……
「あ、いや、死んじゃいないよ、きっと」
ケル………。そういえば、なんでケルってあの国に、ハルファウルにいたんだ? 国から出ないといけない理由があったのか?
「ま、アイツにはアタシがいてやんないといけないからね」
そう言ったケルは遠くを見ていた
「帰って、一緒に居てやりたいのさ」
2
あの後、自由行動になった
「買いたい物も無いし、普通に帰ろっかな」
いや、久々に集会場で依頼でも受けようかな、個人で使うお金無いし
こうして集会場に行くことにした
集会場に着くと少し騒ぎになっていた
近くの人に聞いてみるか
「あの、なんかあったんですか?」
「実ぁな、ここら辺でドラゴンが出てな、それの討伐依頼が張り出されたんだよ」
ドラゴンか……そういえば僕って冥龍以外のドラゴンって会ったことないな
その時、奥の方から大声が聞こえた
「俺が倒すって言ってるじゃないか!」
赤色の鎧を着た焦茶髪の剣士の男の子がいた
歳はまだ14〜16くらいか?
「行ってみるか」
人をかき分けて鎧の男の子の所まで来た
「なぁ少年、どうしたんだ?」
「誰だよあんた、あんたも若いから無理だって言うのか?」
この子、泣いてる………
「お前、なんでこのドラゴンを倒したいんだ?」
「あんたに言ってどうなる」
僕に言ってどうなるって……そりゃもちろん
「ちょっと、助けるだけだよ」
3
少年の名前ラックゼン・ザルザトス。
依頼のドラゴンがラックの友達と故郷の村の仇という事らしい
「だから俺はあのドラゴンを倒したいんだ」
まぁ戦うには十分な理由だよな
「よし、助けるか」
僕はそう言いラックに笑いかけた
「おう、ありがとな!」
……なんか簡単にまとまったな
「なんか不信感とかないの?ただ助けてくれる人って、なんか怪しくない?」
「ん?だって助けてくれるんだろ?じゃあもう友達だ!」
そう言いラックは僕の手を握って握手した
「と、友達?」
「おう!俺の夢は世界中のみんなと友達になる事だ!だからアオイとももう友達だ!」
なんか、こういうタイプの人間にはあまり会った事ないな
あ、でもユールは最初こんな感じだったな
「じゃあよアオイ、お前が人を助ける理由ってなんだよ」
「え?ああ、人を助けたら褒められるだろ、だからだよ」
そう、僕の戦う理由なんて、こんなくだらない物でいいんだ
4
あれから少しして、ドラゴンの出没する場所まで来た
「なぁアオイ、ドラゴンの倒し方とか知ってんのか?」
ドラゴンの倒し方……知らないなぁ、うん
「どう倒すかなぁ、ラックはなんかいい作戦ある?」
「え、無い」
「うーん、オレはあるな」
………?
「いたのかナノ!?」
「よぉ、オレだぜ!」
こいつマジでどこにでも現れるな
「えっと、ナノって言ったか、作戦あんのか! 教えてくれ!」
「おう!まかせとけ!」
よし、ナノはどこにでも現れる。もうそれでいいや
「んで、作戦についてだが、まずドラゴンについて知る必要があるぜ!」
「ナノ、めんどいから手短に」
「おう! アオイは黙ってろ! さて、ドラゴンだが鱗の部分は硬いから腹、喉を重点的に狙うんだ!」
僕はナノに言われたから口を両手で塞いでる
「そんで、ブレスが強力だ! でも大丈夫、大抵のドラゴンはブレスを打つ時に翼の皮膜やツノが光るんだ!」
なるほど、それに気をつければいいと
「そんで最後に! 大抵のドラゴンは魔法が効きづらい! これを踏まえて戦うんだ!」
凄い、ナノがちゃんとしてる、珍しい
「よし! じゃあさっそく行こうぜ! ナノ! お前も今日から俺の友達だ!」
「おう! わかった!」
……僕はいつまで口を塞いでればいいのでしょうか?
5
「で、ドラゴンがこれか………」
「ああそうだぜナノ! こいつが俺の村を襲って、友達を……許さねぇ」
うーん、このドラゴン、完全に
「「骨……だな」」
全身が黒色の骨で青色の炎をまとっている、肉や皮は無く鱗も無い
「ナノお前どうすんだこれ」
「……もしかして、骨だと何かまずいことがあるのか?」
あ、これやばいやつかも
どうする……いや、ちゃんと観察しよう
ん?あのドラゴン、額に赤色の宝石が付いて……あれ、前に見たゴーレムのやつと同じじゃね?
「ナノ、あのドラゴンの額についてるあれ、覚えてるか?」
「んー? あ! あれ! あの時のゴーレムと同じ!」
よし、ナノも同じって言ってるし多分同じだろ、うん
多分あのドラゴン、あの時のゴーレムと同じで赤色のあの球を取れば壊れていくはず
「よし、ラック! あの額の赤い球を取りたい、手伝ってくれるか?」
「おう! 任せろ!」
ラックとナノをドラゴンの上に行かせる。ドラゴンからの攻撃は僕がいなしたり防いだりして2人に当たらないようにする
「ただ、ブレスがいつ来るかわからない」
ツノや皮膜がない、ただあの青色の炎、ドラゴンが攻撃する時いつも炎が大きくなってる
「あの炎、消したらどうなるんだろ……」
2人はまだ額に辿り着いてない、肩の位置まではなんとか行けるみたいだけど……
やってみる価値はあるか
「冥龍憑依、ウォルドルマ!」
……っクソ、まだ体が痛い
でも我慢できる痛みだろ
「これでどうだ?」
左手から水流を出してドラゴンを包む
炎はなかなか消えない…けど
「さぁ、喰らえ[夜の細氷]!」
僕は魔法を地面に打った、そこからドラゴンの周りの水が固まり、頭だけ出てる状態になった
久しぶりに打ったな、この魔法。って、そういえばそうだった
「これ、魔力切れで動けなくなるんだった」
僕は倒れた
その時
「取れたー!」
ナノがそう言い赤い宝石を持ってきた
………なんかデジャヴ……。あ、コイツこの前食ってたな、これ
「おいナノ、それをそこに置いてすぐに壊せ、食ったら殺す」
「わ、わかってるって」
ナノが置こうとした瞬間、後ろから青色の炎が迫ってきた、僕はナノを左手で弾き飛ばした
周りが青色の炎で包まれる、でも僕のところには来てない、なんでだ?
ナノを弾いた不可抗力でナノの口に宝石が入った
「ん?んー、ゴクン」
ナノは宝石を飲み込んだ
ドラゴンの動きは止まり崩れ落ちる
まぁでも、ナノに怪我が無いなら、いいか
6
「ありがとう、お前たち2人のおかげで仇が打てた、ほんっとうにありがとう」
僕はまだ倒れたままでいる
「いやいや、いいんだよ、それに今褒められたし十分!」
その時、空から黒い雨が降ってきた
「お、雨降ってきたしそろそろ帰るか」
動けないけど
「あぁ、先に帰っててくれ、やる事がある」
「ん? そうか、わかった。ナノ、運んでくれるか?」
目が霞む、うまく前が見えないな
「アオイ、最後に一ついいか?」
「どうした? ラック」
「お前は褒めてもらいたいって言ってたよな、ならさ、いっぱい友達作れよ」
「うん、そうだね」
僕はナノに首を捕まれ運ばれていく
それを見守るラックの後ろには、さらに5体ほどのドラゴンがいた
「じゃあな、アオイ」
ラックは体の左半分が焼けていた
「さぁ、俺はまだ戦えるぞ」
7
目が覚めると、朝だった
窓際にはリゼが座っていて、リゼの膝の上でナノが寝ていた
ラックはあの後ちゃんと帰れただろうか
………まだ眠い、もう少しだけ、寝ていよう
僕にあったはずの怪我は完治していた、きっとリゼが治してくれたんだろう
ラック……僕はちゃんと帰って来れてるよ、だから
「ちゃんと君も、帰って来てくれよ」
僕は目に涙を浮かべていた、何もできなかった無力感、救えなかった苦しみ、痛み
第12 終
仮面の勇者第12話を読んでいただきありがとうございます。
今回はいろいろありましたね。主人公の蒼がボコボコにへし折られてるところが実に滑稽でしたね。
次回はただの日常会とかになりそうです。
それではまた次の話で会いましょう。