仮面の勇者 11
仮面の勇者第11話
今回は何があるんでしょうね。
さぁ、冒険の始まりです。
仮面の勇者 11話
:聖女の舞踏会[セイントバレー] 1
僕とユール、リゼは聖女の舞踏会に来た、ちなみになんやかんやあって僕とユールは女装している
聖女の舞踏会は女王の城で行われるらしい、ちなみに玄関で持ち物検査とかは一切されなかった
聖女の石板の力を過信してるのか、それとも……
「アーウィ様、ユーウェル様、と、呼べば良いのですね?」
僕もユールもこの世界じゃ女っぽい名前らしいし、別に名前は変えなくても良いんだけど、ケルが名前はこうしろって言ってたしな
「あぁリゼ、僕……じゃないな、アタシに任せな」
ユールがそう言い自分を親指で指す
「うん。じゃなくて、ええ、私達にお任せください……」
うーん、やっぱり違和感あるな
そして僕達は、会場の大扉の前に立った
「さて皆様、行きましょう!」
今、大扉が開く
2
中に入ると、とても多くの人がいた
「4、5、6……72人いるね、この会場に」
72人、確か1人に付き2人の付き人だから、24人の聖女候補、僕達合わせて25人か
ん? あれって……
「朽六?」
それに、朽六の横にいるのは、ミリィドじゃないか
なんで朽六はミリィドと一緒にいるんだ?
それに、朽六の様子がおかしい、目がうつろというか、目が曇ってるような
「あ、あああ、ああああ!」
リゼ? どうしたんだ?
「アーウィ様! ユーウェル様! ご飯です!」
リゼがよだれを垂らしていた。クソっ! 可愛いかよ!
肉料理とかお酒が多いな、まぁ酒の国でもあるしな、ここ
それから少しして、リゼはお腹いっぱい食べたのか満足そうだ。ユールはなんかいろんな人に囲まれてるな
僕は聞き耳をたてて人の会話を盗み聞いていた。有益な情報がいくつか得られた
まず一つ目、今回の聖女の舞踏会ではこの国の女王が次の聖女を養子にするらしい
二つ目、現聖女のミリィドは勇者朽六を仲間に引き入れたという噂、まぁ実際隣にいるしな
そして三つ目、これが一番大事だ、それは
「お前、何をしている?」
後ろから声をかけられた
僕は驚いて腰にさしていた剣を握る
「貴様、先程から何か嗅ぎ回っているな? ヘタな真似をすれば貴様を殺す」
多分顔を動かせばやられる。声の方を目だけで見れば、そこには朽六がいた
「朽六、お前、なんでミリィドと一緒にいるんだよ」
僕がそう聞くと、朽六はハテナという感じの顔になった
「貴様何を言っている、私はミリィド様の部下だ、お側にいるのは至極当然の事。そして貴様は誰だ?」
ミリィドの部下だって? まぁ朽六ならあり得なくも無いけど。
それに僕、今女装してるし正体わからないのか
「蒼だよ、女装してるしわからなかったろ?」
僕はそう言い笑ったが、朽六はさらにハテナという顔になった
「蒼? 私の友人にも知人にもそんな奴はいない。貴様は何を言ってるんだ?」
そう言われた時、僕は体の動きが止まった、僕を忘れたのか?
もしかして本当にわかってない? まぁ確かに朽六はバカだけど、そんな事わからないような奴じゃ無かった筈だ
と、その時
「こんばんは! ここにお集まりの皆様!」
そう聞こえ、声の方を見ると現聖女ミリィドが会場で一番目立つ場所、ステージの上に立っていた
3
「皆様、これよりとても楽しいショーを魅せましょう」
ミリィド……いや、何をするのかは分かってる、リゼの所に戻らないと!
会場の照明が消える
「皆様、前聖女リンファ様を殺した愚族、リゼ・ヘルフィをご存じですか?」
僕はなんとか人混みを掻き分け、リゼの元に着いた
「そして皆様、その聖女殺しの女が今! この会場にいるのです!」
そうミリィドが言うと、リゼにスポットライトが当てられる
「えっ、あ、えっと」
リゼが困惑してる、リゼを殺すのが目的だったよな。どうする、この状況
その時、リゼが一歩前に出る
「私が何を言っても、信じてもらえないかもしれません。でも、私はミリィドさんを殺していません」
リゼ、なんかキラキラしてるというか、強くなったな
「あっはっはっはっ! 黙りなさい!」
そう言いミリィドは炎魔法を撃ってくる
「ライトガード!」
ていうか、今撃たれた炎魔法、途中で逸れなかったか? まぁいいか
リゼが魔法を防ぐ、その隙に僕とユールがミリィドに切りかかる、が
「させん」
僕とユールの剣を朽六が1人で防ぐ
いやまぁ別にミリィドを殺す気は無かったけど、朽六は凄い殺気立ってるな
「ユーウェル、朽六は任せてミリィドの方を抑えて」
ユールがミリィドの方に走っていく
「なぁ朽六、お前と戦うのはこれで何度目だろうな?」
僕は闇の仮面をつけ、銃を取り出す
「貴様の事は知らんが、強者とお見受けした」
朽六も剣を握り直す
「「さぁ、始めようか」」
僕と朽六の声が重なり、戦いが始まった
4
「ミリィドさん、今すぐ魔法を打つのをやめるんだ」
ユールがミリィドの魔法を切り、軌道をずらして人に当たらないように調整する
「あっはっはっはっ、ユーウェル・シャルロットさんでしたか? でも残念、貴方の情報はこの石板に……あれ?」
ミリィドが石板を操作するが、ユーウェル・シャルロットという名は無かった
「は? な、なんで無いの? おかしい、そんなわけない……」
ユールはその時に気づいた、あの石板は名前が分からなければ使えないという事に
「残念だけど、君はその石板で僕を倒す事はできないよ」
僕がそう言うとミリィドは歯軋りを立てる
「……はは、あっはっはっ!別にいいわよ!」
そう言いミリィドは石板を掲げた。石板は桃色に光る
「何をする気だ?」
「あっちで戦ってる朽六、あの子はこれで洗脳したの、これでこの会場の他の奴も」
その時、桃色の煙が出て爆発する。その煙が集まり口の形が作り上がる
「コレハ、イチドシカ、ツカエナイ、ザンネンダッタナァ」
「なんだと……?」
あの煙、あの声、マイラか?
「あの魔女風情が! 裏切ったの!?」
「なるほど、僕はやっぱり、助けられてばかりだ」
ミリィドが激しく歯軋りをして止まる
「いいわ、もういいわ!」
そう言いミリィドは石板を自分の胸の位置に当てて押し込む
石板はミリィドの一部となる。ミリィドの体が変形していき、ドレスの下から黒色の球体が出てきて、そこから木が生えるように上にいたミリィドを囲う
黒色の球体は次第に大きくなっていき、5〜6メートルくらいまで大きくなり、成長が止まる
そして球体から、タコのような足が大量に生えてくる。ミリィドの背中の位置に黒色の大きな翼が生える
「あぁ、コロウア様、メツナ様、私は今、完全になりました!」
そう言ったミリィドはよだれや涙を垂らし、聖女とは到底思えない、おぞましいものになっていった
5
朽六との戦闘中、ユールとミリィドが戦っているのを見ていた
なぜか朽六が弱かったからよそ見する隙が多く取れた、その時、ミリィドが石板を体の中に押し込むのが見えた
その瞬間、朽六はミリィドの方に走って行った
なぜ走って行った? 助ける為か? いや、違うな、どちらかというと共闘しようとしてるような……もしかして!
「ユーウェル! そこから離れろ!」
僕の声が届いたのか、ユールはすぐに後ろに下がり僕の方へ来た
「アーウィもしかして、あの朽六って子……」
「あぁ、多分ミリィドに操られてる。そんでミリィドは朽六の力を使うつもりだ」
そういえば、炎の国ガウィタチンで朽六の力を聞いた、確か[洗脳]だった筈
もしかして、この場にいる人間を全員洗脳するつもりか?
「だとしたらどう防げば良いんだ? 洗脳なんて喰らったこと……いや待て、確か前にマイラに」
その時、朽六が触手に触れた、そこから黒い霧が出てきて僕達は眠りについた
最後に、朽六の目に光が戻るのが見えた
よかった、あいつの洗脳は解けたのか
:蒼の夢の中 1
目が覚めると、僕は元の世界の住んでいた家にいた
自分の部屋、自分のベッド、自分のパジャマ
一階から聞こえる料理を作る音と朝ごはんの匂い
一階に降りてリビングに行く
「蒼! おっはよーう!」
母さんがキッチンから手を振ってくる
「母……さん? なんで……ここに」
あれ? なんで、涙が、いや、嬉しいんだ
また会えたんだ
「お、蒼、起きてきたか、今日は休みだしどこか行くか?」
父さんも、生きてる
あぁ、そっか、きっと全部夢だったんだ。そうだ、あんなアニメみたいなこと、あるわけないんだ
今までのは……全部…………夢………
2
あれから少しして、僕は家のリビングでゲームをしていた、英雄が世界を救うゲームだ
かなり昔のゲームだし、知ってる人は少ない
それでも、楽しい
「蒼、楽しいかい?」
父さんが聞いてくる
「うん、すごく楽しいよ、それに父さんも母さんもいるんだし、僕は幸せだよ」
僕がそう言うと父さんと母さんは見つめ合って笑った
「ねー蒼、蒼はちっちゃい頃から「英雄になりたい!」とか、「僕が世界を救うんだ!」って言ってたね」
母さんがそう言い僕の頭を撫でる
「だから聞くよ蒼、今君がすべき事はなんだい?」
今、僕のすべき事…………頭にリゼの顔が浮かぶ
「蒼、僕達は君に会えて、本当に幸せだよ。だからこそ、君に幸せであって欲しい」
今度は父さんがそう言い僕の方を見る
「蒼、君は今、何がしたい?」
今、僕が何をしたいか……あぁ、嫌だな、
コッチが夢かよ
でも、この父さんも母さんも、凄くリアルだ、本当に、夢なのかよ
「僕は、僕は世界を、みんなを救う」
僕はそう言い立ち上がる
着ていた服が通っていた高校の制服になる
「蒼ー、行ってらっしゃい」
「蒼、行ってらっしゃい」
2人が玄関まで来てくれる
「うん、行ってきます!」
3
扉を開いたら、そこは僕が通っていた高校だった
「あれ? 引扉から横開きの扉になってる……」
そう思っていると
「おい蒼、早く帰るぞ」
「ん」
幼馴染の2人がいた、片方は不登校、もう片方は失踪、はは、会うのは久しぶりだな
「長髪のチビに、体のデカいボサボサ髪……久しぶりだな、お前ら!」
「誰が髪しか取り柄のないノミ身長だボケェ!」
そう言い髪の長いのがタイキックしてくる
この感じ、懐かしいな
「ん」
体のデカいボサボサ髪が親指を立てる
「あぁ、頑張るよ。でももう少し、ここにいたいな」
僕も親指を立てる
その後、数分、いや数十分かもしれない、久々に2人と話せたのが嬉しくて、時間の流れがわからなくなっていた
そして僕は、扉の方に歩いていく、今度は服があの異世界に行った時の服になる
「ん?」
「もういくのか?」
2人が聞いてくる
「ああ、だって2人とも元の世界で生きてるだろ?
生きてたらさ、また会えるって」
そう言い僕は2人とグータッチした
僕にとって2人は仲間の様な物なのかも、頭の中にユール、ガモ、マイラ、ケル、みんなの顔が浮かんだ
「じゃあ、行ってくる!」
僕はそう言い扉を開ける
「おう、気張っていけよ!」
「ガンバ」
4
扉を開けると、そこは父方の祖父母の家だった
昔の、僕はよくこの家に遊びに来ていた、かなりの田舎なんだけど、なぜか凄く好きだった
「あらあら、蒼ちゃん、いらっしゃい」
お婆ちゃんがいた
「久しぶり、お婆ちゃん」
お婆ちゃんは僕がこの家に来ると、よくお菓子とか漬物とか、食べ物をいっぱいくれた
「お父さん、蒼ちゃんが来ましたよ、ほら、起きてください」
お爺ちゃんもいるのか……なんか緊張するな
「ごめんねぇ、蒼ちゃん、お爺ちゃん起きてこないみたいで、居間にはいるんだけど」
玄関から居間が見える、頭だけだけどお爺ちゃんの姿が見えた
「蒼ちゃん、今は何か出せるものが無いけど、ずっとここにいても良いのよ? 辛かったでしょう?」
お婆ちゃん、ありがとう優しくしてくれて
その時、お爺ちゃんが言った
「バカ言ってんじゃねえ!婆さん、蒼は行かなきゃ行けねぇんだ、前に行かせなくっちゃいけねぇんだよ!」
お爺ちゃんがそう言うと、お婆ちゃんは少し寂しそうな顔をした後、笑った
「それもそうですね、蒼ちゃんの意思は硬いみたいだし……あ、そうだわ!」
そう言いお婆ちゃんは台所に行き、何かを持ってきた
「はいこれ、野沢菜の入ったおやきだよ、これがあれば元気が出るからね!」
そう言い一つのおやきを渡された、あったかいな
「じゃあ蒼ちゃん、行ってらっしゃい!」
そう言いお婆ちゃんは両手を前に出して握りしめた、お爺ちゃんは……
「ずく出してけよ」
そう言い手を振るだけだった。でも、それで、それが嬉しかった
旅で出会った人たちの顔が浮かんできた
「うん、お爺ちゃん、お婆ちゃん、ありがとう。行ってきます!」
5
扉を開けると、そこは宇宙のように星々が周りにある、変な空間だった
ここは確か、創造神カルナイと出会った場所だよな?
「でもなんで?と、思ったかい?アオイ」
目の前にはカルナイがいた
「おや? 君、黒いモヤが首まで消えているね、それに右肩から下も消えている、成長したようだね」
本当だ、あの黒いモヤが……って事は僕、また裏八の時みたいにやられたのか?
「安心しなアオイ、君は死んじゃいない、それにそこの扉を開ければ元の世界に戻れる」
そう言いカルナイは僕の後ろを指す、そこには黒い扉と白い扉があった
僕はお婆ちゃんから貰ったお焼きを食べる
「え? これ、どっちがどっちの扉?」
元の世界に戻れる……それはユール達の世界か?それとも、僕が生まれ育った世界か?
「答えはどっちもだ」
カルナイがそう言ってくる
「黒い方は君の生まれ育った世界、逆に、白い方はリゼやユールがいる世界」
なんで、その二つの世界に行ける門があるんだ?
「君はあの夢で元の世界の素晴らしさを知り、今過ごしてる世界の素晴らしさも知った。さぁ、前置きはここまでだ、なんたって、決めるのは君なのだから」
僕は
「僕は英雄になりたい!」
そう言い僕は、白い扉を開いた
「じゃあカルナイ! 行ってきます!」
そう言うとカルナイは少し驚いた顔をしていた
「それ、私にも言うのか」
「あぁ、あんたも旅で出会った大事な人だ!」
カルナイは目を閉じて、やれやれと首を振った
「行ってらっしゃいアオイ、君に祝福あれ」
:サイッコーの寝起き 1
僕が目を覚ました瞬間、ミリィドの方から凄い勢いで触手が迫って来ていた
僕は間一髪で避けられた
「危な!」
時間的には、まだ5分も経ってなさそうだな
「は、はぁ? なんで起きてるの? 朽六の洗脳黒煙は対象の一番会いたい人を夢に出して夢から離れられない様にする技のはず……まさかお前、大切な人から離れてここまできたの?」
そういう事か、一番会いたい人に会える、多分クオリティを高くする為に記憶の中のその人を作り出すんだろう
でも僕のあった人達は全員本人みたいだったけど
「この技はその人の記憶、さらには魂まで完璧に複製できる技なのよ? それなのに、それなのになぜ!」
あぁ、魂レベルで再現できちゃうんだ、なら僕の知り合いと相性悪すぎだな、全員僕を送り出したぞ
「まぁいいわ、このたった数分であなた達の素性を調べることができた。アーウィやユーウェルなんて人間は存在しない」
まずい、バレたか
「アンタはあの無能異世界人のアオイ、そしてそこでまだ寝てるのはユール・シャット、そこそこ有名な冒険者ね。でも無駄、私には勝てないんだもん!」
そう言いミリィドは触手で攻撃を仕掛けてくるが、全部避けられた、さっきも避けられたしコイツそこまで強く無い?
「は、ははは、あっはっはっはっ!まぁいいわ、そこのユール・シャットは夢で母親に会えて泣いてるし、リゼの方は……へ?」
リゼがいた方を見ると、リゼは立ち上がっていた
「な? は? リゼ、なんでアンタも起きてるのよ! なんで!」
ミリィドが声を荒げている中、リゼは淡々と言う
「私、夢の中でお母さんやお父さんとリンファさんに会いました、シーニィさんにも会いました、でも、皆様は私に「立て」と仰られた」
リゼは震える足で立ち、杖を構える
「私は嬉しかった、またあの人たちに会えて」
ミリィドは歯軋りを立てる
「じゃあなんで」
「だからこそ、あの人達に別れを告げて来た、ここで立って、あなたに勝つ為に!」
リゼがそう言い杖を地面に突き立てる、その瞬間、この場にいた寝てる人たちが消える
転移魔法で外に逃したんだろう
「は、はは、それで人質を無くしたつもり? でも残念、ここに朽六という可哀想な異世界人がいるの、この女が殺されたくなければ」
「黙れ」
僕はそう言いミリィドの元に走っていく、触手の数は10本、全部から違う攻撃が来る、斬撃、魔法、打撃、突撃、クソどうやって切り抜けるか……
一旦銃で牽制しながら戦って……
「アオイ様! 後ろです!」
リゼがそう叫ぶ、後ろから触手が来て僕は飛ばされる
「まずっ!」
闇の仮面……じゃ幻影作るだけだし、空間の仮面で空間の世界に行っても慣性は残るし
「はは、忘れてた、そうだよ、僕の能力は仮面を作る力じゃないか」
僕はクッションの仮面を作った
モフッ、という感触と共に壁にあたった
「さて、どうするかな」
2
「ガニト・アオイ、アンタさっきから遠くからチマチマ打ってきて!恥ずかしくないの!?」
僕はさっきからずっと銃で牽制し続けている
10本中9本の触手の力はわかった、全部魔法と同じ属性だ
でも、ずっとミリィドの後ろで動いてる触手がある、その力がわからない、攻撃もしてこないし
「恥ずかしい?そんな事ないだろ。だってミリィド、お前は僕の情報を知ってるんだろ?ならフェアだろ?」
こうは言ってるけど、実際僕は強がってるだけだ
リゼは遠くから強化魔法かけてくれてるけど……
よし、ちょっとやってみるか
「冥龍憑依! ウォルドルマ! ドライサンドラ!」
左腕と右足に装備がつく、ちなみに同時に冥龍憑依するとかなり疲れる
「さぁ、これは見えるかな?」
僕は高速で移動する
「それが何?ただ飛び回ってるだけじゃない!」
ミリィドの触手が襲ってくる
「さぁ、どうかな」
僕はミリィドの目の前で止まる、その時、上から大量の酒瓶が降り注いだ
「は? 何これ?」
僕は左手を握る、闇の仮面の斬撃でで瓶を切り裂き酒をステージ全体にかける
「あはは! 燃やそうって魂胆? でもそしたらお前も」
「あぁ、そうだな、僕も燃える」
僕はそう言いステージ上を燃やした
「は!? 何してんの!? ふざけんじゃないわよ!」
ミリィドと僕も燃える、が
僕はウォルドルマの力を使い体に水のバリアを作っていた
でもこの戦法、僕にもだいぶダメージがあるな
「死ねぇ!」
まずい、ミリィドの方から10本めの触手が、いやでもドライサンドラなら避けられる。足に力を入れて
その時
[パリン]
冥龍憑依が切れた!?
「まずい、これは避けられないか」
触手が腹に刺さり、飛ばされた
3
少し気を失っていたみたいだ、目を覚ますと目の前にリゼがいる
「アオイ様!起きたんですね!」
リゼが回復魔法で治してくれたのか、助かったー
「リゼぇ、アンタ、早く死になさいよ……」
ミリィド………
ステージの炎が消えてる、でもミリィドの体の動きが遅くなってるな
「死ね! リゼ!」
まずい! 触手が迫ってきてる!
「リゼ!」
「大丈夫です、アオイ様」
触手が全部逸れていく、ミリィド、なんか悔しそうな、苦しそうな顔してるな
なんで当たらないんだろう、いや、ミリィドのやつ、当てようとしてない?
「くっ!」
さらに触手が来るが、全然当たらずに逸れて行く
「ミリィドさん、あなたの攻撃は私には当たりませんよ」
ミリィドが激しく歯軋りをする
「うるさい! 死ね! 死ね!」
そう言いミリィドは触手を放ってくるが、やっぱり当たらない
「ミリィドさん、あなたは聖女の加護を、私の母と恩人の加護を怖がっている、だから私に攻撃を当てられない」
そういえばリゼの母親も恩人のリンファさんも聖女だったな
ていうか聖女の加護って1人分でも相当な力があるって聞いたけど……
「あなたの事はもう、怖くない!」
触手の動きが止まった、今ならいけるか?
僕はミリィドの方へ走って行く
「冥龍憑依!ドライサンドラ!」
右足に装備がつく、速度が上がる
「くっ!………疲れが、いや、まだだ!」
僕は力を振り絞る、大丈夫、僕がいれば、どうにかなるから
4
「寄るな!」
ミリィドは触手を発射してくる
1つ避けては切り、また1つ避けて触手を切っていく
「なんで……なんでなのよ!」
3つの触手が襲ってくる、鏖血鉱で槍を作り触手の動きを止め竜胆で切る
2つの触手が束になって襲ってくる、刀じゃなかなか切れない
「なら、こういうのはどうだ?」
僕は手を前に突き出し魔法陣を出す
「威力低めだけど、そこそこ破壊力はあるぜ」
僕の周りに雪が舞う
「ナイト・オブ・ダイヤモンドダスト!」
放たれた青色の魔法は触手を貫通しミリィドの方に行く、ミリィドは残りの3つの触手を犠牲にして防ぐ
「さて、選択しろミリィド、ここで倒されるか、罪を償うか」
僕はミリィドの下の黒い球体に乗り、朽六の囚われた黒い球体と上のミリィドを引き剥がした
「離せ! 私が償う罪なんてない! メツナ様もそう仰られた!」
「………わかった」
僕はそう言い、黒い球体の上からミリィドをステージの上に放り投げる
あいつは後に置いておくか、それより今は朽六だ
「リゼ、こっからどうしよう!」
引き剥がしたミリィドを投げ捨てたが、朽六の囚われた球体は消えない、何か特殊なギミックがあるのか?
「あっはっはっはっ!残念でしたー、その球体はね、私と離れた瞬間爆発するの、中身ごとね!」
て事は、このまま何もしなかったら朽六ごと……そう思っていると、朽六と目が合った、どうやらこちらの声が聞こえているらしい
「いー事を教えてあげましょうか? アオイ」
後ろからミリィドに言われた、ミリィドの黒い謎の部分が溶け始めている
「その黒いのはね、愛の力で壊れるの」
愛の力?
「でも貴方には無理でしょうねぇ!あっはっはっはっ!」
リゼがこっちに走って近寄って来ている。コイツ、何を言うつもりだ?
「貴方には愛が無いんですものねぇ」
………? 無かったらどうした? 別にあってもなくても同じだろ
「そんなどうでも良いことはいい、僕は朽六を助ける」
そう言い僕は朽六の方に近づいて行った
5
「朽六、大丈夫か? 今助けるから」
そう言い僕が武器を取り出すと
「蒼、もう良いんだ私なんてどうせ」
「もういいなんて言うな、大丈夫、助かるから」
朽六がそう言い僕が手を置いてる場所に手を置いてきた
「私はこの力で、多くの人に迷惑をかけた。それに、私は元々大勢の人間から嫌われていたんだ、どうせ私が死んでも誰も悲しまないさ」
僕は闇の仮面を外す
「お前のそういう性格、本当にめんどくさいな」
「いいさ、私を理解できる人間なんていない。見ないでくれ、理解できないだろ?」
僕はこの黒い球体を叩く
「私は何度も逃げてきた、だから今回も……それに、もう良いんだ、どうせ私なんて誰の役にも立たない無能」
僕の球を叩く力が強くなる
「それに、私に生きる意味も希望もない、あるのは闇だけだ、さぁもうわかったろ、ミリィドを連れてここから立ち去れ」
僕は強く黒い球を殴った
「あぁ、よくわかったよ朽六洗雨」
そう言い僕は球から離れる
「そうだ、それで良い」
僕はミリィドとリゼのいる場所まで来た
「アオイ様……」
僕は助走をつけて黒い球を殴った、でも、びくともしない、念の為に鏖血鉱でガントレットを作ったけど、壊せなさそうだ
「朽六!″俺″はお前の事が大っ嫌いだ!全部自分のせいだ?私は皆んなから嫌われてる?ああ、そうだな!」
僕は何度も球体を殴る
「あぁそうだな、お前みたいなクソめんどくせぇ奴を好きになるやつは ″俺″ くらいのバカだよ!」
朽六が驚いた表情をしている、でもそんなこと気にせず球体を殴る
「テメェのいっちばん嫌いなところはな、理解できないだろとか、誰の役にも立たない無能とか、勝手な決めつけしてるとこだよ!」
僕は右手で殴り、そのまま殴るのを止める
「泣くなとは言わねぇよ、理解されないって嘆くぐれぇなら! 辞めちまえよ! このバカ野朗が!」
僕はもう一度右手で黒い球体を殴る
「あっはっはっはっ!病んでる人間に悪口とか」
「ちょっとあなた黙ってて下さい!」
リゼがそう言い杖でミリィドを殴る
「は? リゼ、アンタはいいの?だってアンタ、あの男が」
「だから黙ってて下さい!」
そう言いリゼはミリィドをさらに殴る
「さぁ朽六、選択しろ」
:2の正義
僕と朽六は、一応幼馴染だった、幼稚園から同じだったけど、中学校からはグループが違った
まぁそれで、あまり話さない様になっていったのだが
「朽六さんってホントに気持ち悪いよねぇ」
「わかるー、まじでキモイ」
そう言ってる人をよく見かけた、なんか友達がそんな事を陰で言われてるのが嫌だった僕は、そう言う人たちを見るたびに喧嘩を売っていた
この話を他の幼馴染2人にしたら
「いや、朽六はキモくないだろう」
「うん、キモクナーイだ」
「いやキモクナーイって、なんだよ」
「まぁ次に喧嘩をするときはぜひ呼んでほしいがな」
「ん」
まぁこの2人はいい奴らだったし、まぁそれはいい
そんなある日、朽六が泣いていた。いつも過剰に振る舞って、いつも笑っていたあいつが
朽六は昔から心が弱く、鬱になりやすかった
だからこそ、僕が一緒にいる。朽六が泣いた100倍僕がお前を笑顔にする昔はそう思っていたよ
でも、今は違う、今の朽六には仲間がいるあの獣人の仲間達が
だから
:選べ
僕は目を閉じる
「朽六、ちょっと質問に答えてもらおうか」
僕はそう言い朽六の目を見る
「なぁ朽六、お前、この世界に来て何をしてきたんだ?」
僕はさらに聞く
「お前はずっと何してたんだ? 美味いもの食えてたか?」
僕は手の武装を解く
「お前はここに来て何が好きになった? 何に感動した? 何か楽しいことかった?」
そう聞くと朽六は笑って言った
「蒼、ありがとう。でも、もう良いんだ、だって帰ってもどうせ」
「どうせどうせってうるっせぇんだよ。なんで他人の事を考えてんだ? テメェはどうしたいんだ!」
僕は続けて言う
「テメェは何が欲しい! 何が気にくわねぇ! 何になりてぇ! さぁ! 言ってみろよ!」
「私は……」
その時、会場の扉が開く
「朽六様!」
声の方を見ると、朽六の従者達がいた
「爛漫、闊達、不羈、どうして」
朽六は涙目になる
「さぁ選択しろ、朽六洗雨、諦めるか、諦めないか」
朽六の目から涙が溢れる、仲間、親友、自分はもう少し、生きていてもいいのか
「さぁ、選べ!」
朽六が歯を食いしばり覚悟を決める
「私は、私はっ……」
朽六が立つ
「私はまだ、諦めたくない!」
僕はニッと笑う
「わかったよ朽六!」
そう言い僕は素手で黒い球体を殴る、その途端、黒い球体は殴った部分からガラスのように砕け散った
:氷国の女王 1
あの後、会場の光がついた
朽六は仲間に会えた事に歓喜し、リゼはミリィドを
「私に触るなぁ!」
ミリィドがそう言い短剣をリゼに振りかざす、しかし、リゼは糸も容易く刃を杖で止めた
「ミリィドさん、私は昔のあなたをよく知りません、だから、なぜリンファさんを殺したのか、わからないんです。だから、教えてください」
リゼは短剣を弾き、ミリィドの顔の前に杖を突きつける
ミリィドはまた歯軋りをする
「……なんで殺したか? あっはっはっはっ! 当然じゃない! 邪魔だったのよ! 邪魔な奴は殺すのが普通でしょう?」
「ミリィド、てめぇ!」
コイツ、誰かに似てると思っていたけど、滅七に似てるんだ
「アオイ様、大丈夫です」
リゼはそう言いアオイを止める
「普通、ですか。それでも、人を殺してはいけない、殺しちゃダメなんですよ」
リゼがそう言うと、ミリィドはさらに歯軋りをして、リゼに襲いかかったその時
「あぁ、どんな理由があろうとも、殺しは良くない」
会場の出入り口の扉に兵隊と氷の刺繍が入ったドレスを着ている人がいた
「あ、あなたは! 女王メイジ・ニゥフェ様!」
ミリィドが叫ぶ
女王? って事は次の聖女を決める人か
ん? ていうか聖女って世界中の教会を回らないといけないんじゃ……
まぁいっか
「メイジ様! 聖女を決めに来られたのですね? 聖女に相応しいのはこの私! さぁ!」
そう言いミリィドがメイジの方へ歩いていく
「聖女を決める? 貴様は何を言ってる、今回は決めるつもりはないぞ?」
「へ?」
「それに、決めるとしても貴様の様な愚物を聖女にはしない、前女王がなぜ貴様を選んだか分かりかねるな」
ミリィドがその場にへたり込む、メイジはミリィドの横に移動する
「それに貴様、掟を破っているな?」
掟? そういえば前にリゼから聞いたな、なんかいろいろめんどくさい掟があるとか
「皮肉な話だよな、この国は酒と氷、そして昔は愛と恋の国とも言われていた。しかし、コロウア教では色恋はできない」
そう言いメイジがこちらに歩いてくる、その時ミリィドが短剣を取り出してメイジに襲いかかる
って、まずい! 冥龍憑依して……クソっ、体が言う事を聞かない
「寄るな、愚物が」
メイジの足から冷気が出て、後ろに氷の柱が出来上がり、ミリィドを氷に閉じ込める
「さて、今はどういう状況だ?」
2
「……なるほど、まずは事の収集をつけなければな」
メイジは指をコキコキと鳴らす
「まずは死者がいないかだが……いないようだな。なら良し」
メイジはこっちを見る、敵意は、あるわけないか
……なんか頭痛いな
「貴様たちはリゼ、アオイ、朽六、爛漫、闊達、不羈だな」
全員の名前を知っている? この人も聖女の石板的な力を持ってるのかな
「そうだな……よし、朽六、君にしよう」
そう言いメイジは朽六を指差した
君にしよう? いったいどういう意味だろう
「朽六洗雨、君を私の養子にしよう」
養子? ヨウシ……養子?
そういえば次の聖女を養子にするとか誰かが言ってたな。そっちが本当なのか
「え、わ、私が養子?」
何あれ、シンデレラストーリー?
「そういえばリゼ、僕の腹って触手に貫かれてなかった? 服も破けてないみたいだし」
ていうかそもそも痛みすらなかったような、飛ばされて壁に当たった衝撃で気絶してたっぽいし
「そうなんです、アオイ様にお怪我はなかったんです、どうしてでしょうか?」
確か、触手一本ごとに違う能力があったな。僕は力のわかっていない10本目に刺されたんだよな
「あははは!あんたにいいことを教えてあげる!」
ミリィドが氷の柱の中から行ってきた
「10本目の触手はね、刺した人間の能力を奪う力、呪いなのよ。しかもこの呪いは聖女にしか解呪できないの」
能力を奪う……ありがちな能力だけど、かなり強いな、でも冥龍憑依は使えたし、もしかして
「………やっぱり、仮面の力が使えない」
空間の仮面を出す事ができないし、空間の仮面の中に他の仮面を入れてるから他の力も使えない
でも今つけている闇の仮面は使えるみたいだ
「て事は、帰還の仮面が使えない…………ま、どうにかなるか」
そういえば結構前にガウィタチンで帰還の腕輪ってアイテム貰ったよな、これ使えたりしないかな
「まぁいいか。よし、帰るかリゼ」
「はい! そうですねアオイ様!」
3
僕とリゼは帰ることにした
そして会場の扉に来た時、中を覗いてる茶髪の少年がいた
「ん? 君どうしたの?」
そう聞くと少年は素直に答えた
「ボク、お母さんに嫌われてるから、あのお姉ちゃんを養子にするつもりなんだ」
そう言い少年は泣いてしまった
そうか、この子はメイジさんの子どもで、メイジさんは朽六を養子にしようと……でもなんでだろう
「ねぇお兄さん、ボク、お兄さんたちについて行っていい?」
子どもにここまで頼まれちゃあ仕方ない
4
「で、ここまで連れて来たって訳かい」
ケルが深くため息をつく
「いいんじゃないかい? さぁ、君の名前を教えてくれ!」
ユールがそう言い少年の方を見る
「アイズ、アイズ・ニゥフェ」
やっぱりメイジさんの子どもか
[ピリッ]
………なんだ? また頭が痛い
「よし! そう言う事ならアタシ達と特訓しようか!いいね?アオイ!」
え? なんて言ってた?
「あぁ、ごめんケル、もっかい言ってもらっていい?」
ケルはため息をつく
「だから、アイズが強くなりたいって言うから、一緒に特訓しようって話だよ!」
ケルが背中を軽く叩く
「ごめんごめん、なんか頭が痛くてさ」
特訓はどうやら明日から始まるらしい、この国にはあと2ヶ月くらい滞在するし、ちょうど良いのかもな
その日の夜
頭が割れるように痛い、なんだこれ、耳鳴りがする
「なんだ、これ、クッソ痛い」
僕は宿から出る
前がうまく見えない
「アオイ? 大丈夫か?」
ナ……ノ? いたのか
「ナノ、なんか頭が痛くてさ、ちょっと、やばい……かも」
僕はそう言い倒れ込んだ
「アオイ? アオイ! 起きろ! こんなとこで寝たら死んじゃうぞ!?」
ナノ、少し、黙ってて、頭が痛いんだ
:″俺″と″僕″ 1
朝起きると、アオイの姿がなかった
「ガモ、アオイを知らない?」
「ん? いねぇのか?……確かに、アオイが早起きって珍しいな」
ベッドにはアオイの姿がなく、顔全体を包めるような白色のひし形が四つ付いた仮面が置いてあった
「一旦マイラ達の所に行くか、アイズも起こして」
そしてマイラ達の部屋に行くとナノが騒いでいた
「だーかーらー!アオイが分裂したんだって!」
分裂? アオイが?
「ナノ、詳しく聞かせてくれないか?」
数分後
ナノいわく、アオイは昨日の夜頭痛で倒れたらしい、その後、アオイが立ち上がり分裂したとか
「それで、アオイが水色の髪になったんだよ!!」
なるほどな
「探すか」
「あ、ちなみにもう片方の茶色髪の方はその水色髪の影に入ってっちゃったんだ」
なるほど、影の中に。にしてもどこにいるかわからないな
「よし、リゼはここでアイズと待っててくれ、僕達でアオイを探す」
アオイ、なぜ何も言ってくれなかったんだ!
2
ユール様達が行ってしまわれた、アイズさんは何か悩んでるみたいです
「あの、アイズさん?」
「リゼお姉さん、ボク達もアオイお兄さんを探すべきだと思う!」
確かに、アイズさんの言う通りかもしれない
「はい、行きましょうアイズさん!」
「リゼお姉さん、アイズでいいよ、だってボクの方が年下だし」
「はい、では行きましょう!アイズ君!」
3
僕とガモ、マイラとケルで別れてアオイを探していた
街でアオイを探していると、広場が何やら盛り上がっていた
「さぁ! 次は誰が″俺″の相手をすんだ?」
この声はアオイか?
声は集団の中心から聞こえた、そこでアオイは腕相撲をしていた
しかも、本当に髪の色が変わってる
「よっしゃ、俺が行ってくる」
そう言いガモが行ったが、秒で負けた
「俺が……負けるなんて、嘘だろ」
ガモが負けるのはかなり珍しい、それにアオイは腕相撲では僕達6人の中で4番目の強さ、どう勝ったんだ?
ちなみ一番強いのはガモだ
「残念だったなガモ、お前じゃ″俺″に勝てねぇよ」
そう言いアオイはいなくなった
4
マイラと一緒にアオイを探していたが、なかなか見つからないねぇ!
「もうすぐ昼か、ケル、昼ごはんでも食いに行くか」
マイラとご飯屋に行くことになった、この国は果物を使った料理が多いから、お昼ご飯もそれにしよう!
と、意気込んでいると
「ふー食った食った、支払い頼むわー」
アオイがいた
「アオイ! 見つけたよ! なにやってんだい!?」
「ん? ガモとユールの次はケルとマイラかよ、言っておくけど″俺″は帰らないぜ」
ガモとユール? 2人にはもう会ったってことかい
「アオイ、意地張ってないで帰るんだよ!」
「なるほどな、なら勝負だ!」
アオイが勝負を仕掛けて来た、お互い遠くに置いてある旗を先に取った方が勝ちと言うものだ
「アオイ、アンタはウチらの中じゃ速さは1番さ、でも、それだけじゃ勝てないよ!」
アタシはアオイに飛びかかったが、アオイは一瞬で消えた
「はい、″俺″の勝ち」
そう言いアオイがアタシの持っていた旗を掴んでいた、冥龍の力は使ってないのに
「なるほど、アオイ、お前魔法を使ったな?」
なるほど! マイラ! そういうことかい! どうりでアタシの猫騙しがよけられたわけだ!
「あぁ、新しく作った魔法さ、でも別に関係ないだろ? っはは、じゃあな」
そう言いアオイは手を振って行ってしまった
5
「アオイ様、どこにいるんでしょうか……」
もう夕方になる、アイズ君には先に宿に帰ってもらった
「おや? あれは……」
酒場に入るアオイ様が見えた
「待ってて下さいアオイ様!」
酒場に入ると、アオイ様がカウンターでスイーツを食べていた
「アオイ様!」
私がそう呼びかけるとアオイ様は嫌そうな顔をしていた
「はぁ、今度はリゼかよ、帰ってくれないかな?」
アオイ様は酒場でお酒を飲んでいた、いつもは飲まないのに………
「アオイ様、どうしてこんなことをしてるんですか?」
「リゼには関係ないだろ、″俺″はもう自由なんだよ」
アオイ様は手を大きく広げて言った
「アオイ様、勝負です!」
私はお酒のジョッキを持ちアオイ様の前に突き出した
「へぇ、お酒で勝負ってこと? いいぜ、かかってこいよ」
2人の飲み比べが勝負が今始まる!
3分後
「これで、ろくはいめ」
リゼがそう言いジョッキを置く
「リゼ、大丈夫か? 顔真っ赤だし、それにリゼが今飲んだのは七杯目だぞ?」
「だいじょうぶです、わたしはアオイさんにまけません」
いやだめだコレ、意識がはっきりしてないし、これ以上飲んだらリゼが危ないし
「アオイさんは朽六さんとどういうかんけいなんですか」
「え、普通に幼馴染で……あ、それよりリゼ、″僕″の負けでいいからさ、そろそろ帰ろう?」
リゼは一気にもう一杯飲みジョッキを机に叩きつける
「アオイさん! アオイさんはなんで、たたかうんですか?」
なんで戦うか……か
「もちろん、英雄に憧れてるからさ、まぁ今はまだ英雄になれてないけどね」
リゼはまた酒を一気飲みして言う
「あなたのいう英雄ってなんですか! 誰でもたすけるひとですか!?」
「え、えーっと、なんだろう」
そう言われると、わからなくなる。僕は、本当に人を助けるのだけが、目的なのか
いや、今はいいか
僕は財布を取り出して帰る準備をする
「ほらリゼ、僕の負けでいいし、酒は呑まれるものじゃなくて飲むものだ、ユール達の所へ帰ろう」
僕が手を出すとリゼは手を掴んで僕を引っ張る
あれ?このままだとリゼの口に
「あっぶねぇ!」
危なかった、あと少しでキッスする所だった、顔をリゼの横に動かしたおかげで助かった
「なんですか、いやなんですかぁ」
「いや嫌というかそういうのは大切な人にするものでしょ!」
リゼは一瞬止まって泣き出した
「うぅ、やさしいよー」
その後、リゼは泣き疲れたのか眠ってしまった
6
僕はリゼをおんぶして宿に帰ってきていた
「にしても、酒場に落ちてたこの仮面、なんなんだろう」
酒場から帰る時、僕の座っていたイスの上に、顔の右側だけ隠せるひし形の赤い仮面があった
「つけてもなんの能力もないっぽいし」
まぁ考えても仕方ないか
「あ! アオイー!」
「あ、来たのかナノ! どうしたんだ?」
ナノがこっちに飛んでくる
「どうしたんだ? じゃなーい! お前! どこ行ってた」
そういえば、酒場で飲み比べの時より前の記憶が無いんだよな
頭痛くなって、いつの間にか飲み比べしてて………
「もしかして、ユール達めっちゃキレてるんじゃね?」
「うん、凄い怒ってた」
なるほどなるほど
「よし、外泊しよう」
今ならユールの気持ちがよくわかる
その日は近くの宿屋で圧迫することにした
7
「ふぅ、リゼもベッドに寝かせた事だし、僕は床で寝るか」
今日の事、リゼと酒を飲んでいた記憶しかない、記憶が抜けてる、なんでだ?
この赤いひし形の仮面が関係してるとは思うけど
「アオイさん……」
リゼ、起こしちゃったか?
「こっちに来てください」
リゼの目が虚になってる、フラフラしてるし危ないな
「どうしたリゼ、大丈夫か?」
そう言い近づくと、リゼに抱きしめ………いや痛い、力が強い! あ! リゼ怒ってる!
「ごめんごめん、本当にごめん!」
僕がそう言うと力が弱まる
「アオイさん、あなたはとっても自由な人だと思います、だから、少し目を離したらすごく遠くに行ってしまいそうで、不安なんです」
リゼ、泣いてるのか? まだ酔ってそうだな
「大丈夫だよ、もし離れても、生きてさえいればまた会えるんだから」
それに、不安なのは僕の方だ、僕は、みんながいないと
「リゼの前だと、僕は正直になれるな」
僕は、みんなの力に、甘えてるんだ
次の日
「さて、帰るか」
いやだー! 帰りたく無い! 外泊したせいで余計に怒られるってコレ! なんで考えなかったんだ自分!
「リゼは寝てるし、お姫様抱っこで行くか」
昨日の夜、部屋が一つしか取れなかったから仕方なく2人同じ部屋にしたけど、いや、これはみんなには言わないでおこう
それと外泊するって事をナノに伝えに行かせたのに帰って来なかった、アイツ、許さない
「あれ? ここは………どこですか?」
「あぁリゼ、ちょっと説明するのが面倒なんだけど」
あれ? なんかリゼ顔が赤いな、あ、酔ってたから昨日の記憶が無いのかな?
「あの、リゼ」
「あ、あの、こ、ここ、これは一体どういう状況なんでしょうか」
男女が2人、外泊、同じ部屋………なんかマズかったか?
「まぁちょっとめんどくさかったからここで一晩泊まったんだよ」
「な、何かしましたか?」
「いや、何もしてないよ」
そう言うとリゼは止まりため息をつく
「でしょうね」
あれ? なんか怒らせちゃった?
8
「えーっと、ただいま」
僕とリゼはユール達の所に帰ってきた
「じゃあ私は部屋に戻ってるので!」
リゼ、まだ怒ってる、もしかして服洗濯したほうが良かったかな?
「じゃあ僕もとりあえず」
「アオイ、まず話そうか」
ユールに首を掴まれた
数分後
「なるほど、アオイがどうしてああなったのかはわからないのか。ま、別にどうであれ僕達は君を許すよ」
一応、覚えてる範囲で全力で説明した
「ところでアオイ! リゼに手ぇ出したのかい?」
ケルが圧をかけてくる
「いや、出してないよ、リゼ怪我してなかっただろ」
「なんで手ぇ出さなかったんだい!」
「アオイ、意気地無し」
マイラがメモってる
「アオイ、そりゃ無いよ」
「俺達は帰ろうとするナノを止めてたってのに」
「アオイ! アンタはなんでそうなんだい!」
「俺はお前のこと漢だと思ってのによ」
ガモがお手上げってポーズをしてる
「いや僕は男だよ、てかなんでそんな怒ってるの?家出の件より怒ってるじゃん」
「アオイ、家出って自覚はあったんだ」
「ユール、そんな虫を見るような目で見ないでくれ」
そう言うとマイラが近づいてきて言った
「よし、なら私が説明しよう」
マイラはコショコショと耳打ちしてきた
そして僕は、顔が熱くなって顔を埋めた
「アオイ、わかったか?」
「はい、すんませんでした」
「ま! そう言う日もあるさ!」
「いやだってさ! 別にリゼは僕に気ないだろ!」
僕は立ち上がって指をさす
「気のない奴が自分からキッスしようとするか?」
わぁガモがユールとアイズと遊んでいる、たのしそー
「で、でもさ、僕の勘違いかもじゃん! そうだ、きっとあれは僕を連れ戻す為の演技だ! きっとそうだ!」
ケルとマイラは深くため息をつく
「やってられるか、早く幸せになっちまえクソが」
「アオイ、応援はしてるからね!」
2人が部屋から出て行く
ガモとユールに肩を叩かれる
「まぁその、なんだ、胸張って生きろよ」
「アオイ、自信の上げ方教えようか? 僕得意だよ」
なんで僕、慰められてるんだろ、なんか敗北感……
「ありがと、2人とも」
僕は涙目でそう言った
第11 終
仮面の勇者第11話を読んでいただきありがとうございます。
今回はアオイの謎の行動がありました。これは一体何を意味するのか……
次回はこの主人公がめっためたに打ちのめされます。やったぁ!
それではまた次の話で会いましょう。