仮面の勇者 10
仮面の勇者第10話
今回はいったい何が起こるのか。
さぁ、冒険の始まりです。
仮面の勇者 10話
:断滅の村 1
マイラに獣人の奴隷の事を聞いた次の日
「よし! 今日は朽六探しだ!」
僕とリゼは朽六の仲間達と朽六探しをする事になった
マイラはまだ寝てるし、ケルは奴隷の事とか色々あって一緒には行けないと言っていたが……
「尾行されてるんだよなぁ、ケルに」
ケルは僕たちにバレバレの尾行をしている。いやまぁ、気づいてるのは僕だけみたいだけど……
「じゃあ爛漫と不羈、闊達とリゼ、僕は1人で朽六を探す。それで良いかな?」
「「「「はい」」」」
満場一致で良いならそうするか。にしても、ケルは誰について行くのか気になるな
まぁ、僕は僕で朽六が行きそうなとこを当たるか
2
私と不羈は共に森の方へ来た
「ねぇ爛漫、ホントにこんな所に朽六様がいると思う?」
「あぁ、私の勘を信じてくれ」
不羈が深くため息をついている
信頼されているのだろう、気張って行かなければならないな
「なぁ不羈よ、このような雪の積もった森にいると、私達が出会った時のことを思い出すな」
私は昔、旅をしていた時にこの不羈に出会った
不羈は出会った頃は名も無いただの奴隷であったが、朽六様が不羈を奴隷商人の手から救った時に名を付けられた
「確か、最初は爛漫が話しかけて来てくれたんだよねぇ、懐かしいなぁ」
不羈は私と違い家事もできるし料理もできる、私はよく不羈に美味しい物を貰っているのだが……まさか餌付けされてるのか?
「まぁワタシ、獣人の中でも特殊な「魚人のシャチ族」だったからねー、陸の上じゃ使えなくて捨てられそうだった訳だし……」
そう言い不羈は背伸びをする
「あの時、朽六様が救ってくれたから、今のワタシがあるんだ」
不羈は魔法使い、守ることしかできない私とは違い、やはり不羈は凄いやつだ
「不羈よ、ここで朗報だ」
「お! 爛漫の鼻が役に立ったか! さっすが爛漫!」
そう褒められると、少し照れるな
「さて、朗報なんだが……」
「うん! なになに?」
不羈が答えを望んでいる、役に立てて私はとても嬉しいな
「朽六様はそもそも港には来ていないようだ」
不羈が固まる、なぜ動かなくなったんだ?
「爛漫……あんた港町にくる前に「私の勘だと港にいるはずだ」って言ってたわよねぇ」
あ、これは、不羈が怒っている。ど、どうしよう、謝るべきか? 謝るべきだろうな、うん
「あの、すまなかった」
「爛漫! アンタの勘が間違うのはこれで21回目よ!」
そう言い不羈は私の頭をワシャワシャとかき乱した
「すまなかった、本当に、すまなかった」
何度謝ろうと不羈の手は止まらなかった
3
バサバサバサッ
そう翼をはばたかせ闊達様が空から降りてくる
ここは港を見下ろせる小高い丘の上
「凄いですね、鳥の獣人様」
闊達様は「鳥人のタカ族」らしい、獣人族の3割は鳥人で、1割が魚人、残りの6割が地上の獣だとマイラ様が前に言っていましたね
「朽六様が……どこにもいない、どこにもいないよぉ」
闊達様は私と似て、あまり気が強くないお方だと思います、ですから、こう言った時にどう元気付けられるのか私にはわからない……
「ごべんねぇ、リゼぢゃん、アタシもうダメがもぉ」
こんな時、アオイ様ならどうするだろうか……
「闊達様、安心してください……とも言えませんし、大丈夫……とも言えません。でも、あなたならできるはずです、少しだけでも、何か、得られた物はありませんか?」
アオイ様なら、ここで慰めの言葉は言わない、それが正しいのかは分からない
でも、私はアオイ様の言葉で勇気を得られた。だから、叶う事なら
「得られた物……あ、遠くに村があったよ、よく見えなかったけど」
村? そういえば、この辺りには港が近いということもあり村が多い
もしかしたらそこに朽六様がいるのかも知れない
「さすが闊達様! 飛べるという事はやっぱり凄い事です!」
「え、リゼちゃん……ありがどうねぇー!」
泣き止んでもらえたと思いましたが、いやはや、ダメだったのかもしれません
「あ、そうだ、さっきから気になってるんだけどさ、あそこにあるお墓、なんなんだろう」
そう言い闊達様が指を刺した先は丘の端っこ、一つのお墓が建っていた
来た時は気にも止めていなかったが、そう言われると気になってくる
「私は聖女になるのだし、手を合わせておいた方がいいかもですね」
そう言い闊達様とお墓に近寄り、その墓石に書かれた名前を見た時、私は驚いた
「リンファ……コラゥイア?」
そこには、私の育ての親のリンファさんのナイフと、リンファさんの好きだったタバコが置いてあった
「このタバコ、まだ新しい……」
という事は誰かがここに来た?
リンファさんが亡くなって、もう10年ほど経ってる筈なのに……もしかして、シーニィさんが……
「リゼちゃん? どうしたの?」
闊達様が聞いてくる
「いえ、ただ、恩師に再び会えたことに驚いただけです」
私はリンファさんのお墓の前で手を握り合わせた
「ただいま、リンファさん、そして、本当にありがとうございました」
私はそう言い、少しして立ち上がった
「さぁ、行きましょう、闊達様」
リンファさん見てて下さい、私、頑張ります!
4
「遠くに見えた村……か」
僕たち5人は再度集まり、情報共有をした
「ああ、この港に来ていない所を見るに、そちらに行っておられる可能性が高いだろう」
爛漫達の話だと、朽六はそもそも港まで来ていないらしい
「て事は、やっぱりその村にいるかも、っていうのは正しそうだな」
ちなみにケルは爛漫達の方について行ったようだ
「じゃあ行ってみるか」
正直、朽六の手がかりがあるかどうかはわからない
それに兵士たちの言っていた朽六の王国兵団の事を考えると、朽六の失踪と辻褄が合わない、きっと何か裏がある筈だ
「まぁ、行ってみるしか選択肢はないよな」
考えている暇は無い
ちなみに僕はなんの情報も得られなかった
なんの成果も! 得られませんでしたぁ!
5
村に近づくにつれ、魔物や動物が少なくなっていった、それに、爛漫いわく
「人の死臭がする」
との事らしい
僕は生物の仮面を使い、生命反応を見た、村の中には何も感じない、いや、何か感じるような……
ここは一旦、目視で見てみよう
「なんだ?これ……」
僕はあの簡易的望遠鏡を取り出し村の方を見たが、森は暗い上に木々が邪魔でなかなか見えない。まぁ望遠鏡は持っておくか
そしてもう少しで村という時に、僕は恐ろしいものを見た
「あれは……嘘……だろ………」
村の周りには柵があり、その柵には人の死体が吊るされていた
いや、ドロドロに溶けていて人の死体なのかもわからない
鼻をつんざくような臭いが痛い
大きさ的に、子どももいるみたいだ
「アオイさん、なんなんですかぁ、あれは」
闊達が聞いて来た、そうか、鷹だし目が良いのか
「みんな、一旦引き返すぞ、ここに朽六はいない。だから」
そう言った時、後から化け物が飛んできた
「アオイ殿、失礼する」
そう言い爛漫が僕を突き飛ばし、化け物の攻撃を盾で防ぐ
その化け物は、狼のような形をしていたが、皮膚は爛れ骨が剥き出しになっており、爪や牙にはひびが入っている
そして何より
「この狼、群れじゃない」
狼とは主に群れで行動して狩りをするもの、一匹狼という言葉があるが、実際の一匹だけの狼は驚くほどに弱い
生存競争では生き残れない程に……
この狼があの村をあんなふうにしたとは到底思えない。それにあの死体は全部「吊るされていた」人の手によって
「なら、あれをやった人間がいる筈……まさかこの狼、あの村を守ってるのか?」
ゲームとかでもよくある設定だとは思う。しかし、この狼は僕たちを村に近づけないように立ち回ってる
多分コイツは、あの村を守ってるんだ
:村の守護獣フェンリル
おれはこの村で生まれたフェンリルだ
ここは港が近くあるおかげで、おれはいつもうまい魚がくえる
おれはいつもみんなと遊んでいる、だからみんなの事が大好きだ、ずっと遊んでいたいと思っていた
アイツが来るまでは
「この村を救いに来た勇者、メツナと申します」
その時は別に村は何も困っていなかったし、あぶない目にも会っていなかった
でも村を守ってくれるなら、おれが動けない時も安全だし、居ていいと思っていた
でも、メツナが来たせいなのか、村のじいちゃん達はどんどん老衰で亡くなった
村の若者達も死んでしまう人が増えた
おれも、一気に歳をとった気がする、最近は魔法もまともに操れない
そんな時だった
「皆さんにこのお水をあげましょう」
メツナがそう言い黒色の水をみんなに渡し始めた、そうすると死んでしまう人たちが居なくなった、おれもこれは嬉しかった
みんなは
「メツナ様がこの危機を救ってくださった!」
「さすがメツナ様! 我らの英雄!」
「メツナ様! 万歳!」
最初はそう言っていた、でもそれから数日後、みんなが突然苦しみ出し、死んでいった
おれはメツナがやったんだとすぐにわかってメツナのところに行った
「おい! メツナ! お前がやったんだろ!」
そう言いメツナの為に作られた家に入ると、村の子ども達と赤子がいた
「おお、さすが村の守護獣。ですが、気づくのが少しばかり遅かった」
メツナが子ども達に手を伸ばす
「やめろ! 子ども達には手を出すな!」
そう言うと、メツナはおれの方に振り返る
「うーん、そうですねぇ。子供達を傷つけられたく無いなら、この水を飲んで下さい」
そう言いメツナはあの黒い水を渡して来た
「わかったよ、これを飲めば良いんだな?」
そう聞くとメツナはお辞儀をして言った
「はい、このメツナ、約束しますよ」
「わかった、子ども達は絶対に解放しろよ」
そう言いおれは水を飲んだ、水は甘く粘り気があった、しかし、その後すぐに異変が起きた
体が燃えるように熱い、身体中が痒い、頭が痛い
「……くっ、くっはっはっはっはっは! バカじゃないですかあなた!? 本当に、バカみたいだぁ!」
メツ……ナ?なに、言ってるんだ。
待て、そっちには子ども達が……クソ、なんで……なんで動けないんだ……!
「じゃあ、まずはこの子から」
そう言いメツナは1人の少女に近づき中指を折る
「やめろ……やめろ!メツナ!子どもには手を出すな! 約束だろ!?」
そう言うとメツナはおれの方を向いて言った
「私が犬畜生との無意味な約束を守るとでも?」
おれは、ただひたすらに、絶望した
その後もメツナの子ども達への拷問は続き、メツナが村の人間を全員殺した後
見せ物にするように村の周りに吊るして行った
:腐狼不死1
この狼、あの村を守ってるんだ、なら
「なぁ、狼さん、アンタはいったい誰を憎んでるんだ?」
そう聞くと狼は唸り声を上げた
「……そうだ、メツナ、許さない、異世界人は、殺す………」
メツナ? もしかして、滅七時恋か?アイツ、逃げたと思ったらこんな事してたのかよ
「狼さん、いい事を教えてあげよう。僕は異世界人で、ここにいる他の奴らは僕とは関係ない。だから、僕にだけ牙を向けろ」
狼は唸り声を止める
「わかった、なら、お前だけを……いや待て、なぜその人達を助ける?」
まずいな、みんなを逃がそうとした事がバレたら何されるかわからないぞ
「もしかしてお前、その人達を助けようとしたのか?」
バレてるなぁ、さてと、どうするか………そうだ
「もし、そうだったらどうする?」
もし、この狼がこの村を守ろうとしたのなら、僕の「コイツらを守りたい」って気持ちにも気づいてもらえると、いいんだけどな
「お前、おれを試してるのか?」
狼は戦闘体制を崩し、村の方へ歩いて行った
「ごめん」
最後に狼はそう言っていた
2
「って、事があったんだよ」
宿屋に帰ってきてガモとユールに伝えた
「なんで俺を呼ばなかったんだよ、危ないだろ、リゼたちが」
おいガモー?僕のことはどうでもいいのか?
「そうだよアオイ、僕たちがいれば、リゼたちの危険は少なかったと思うよ」
やっぱり僕のことはどうでもいいのか?
「まぁ、リゼたちには怪我がなかったからよかったけどよ」
「ガモさーん、僕にも怪我無いよー」
「しかし、アオイが亡くなってしまうとは、なんとも悲しい事だよ」
ユールが頭に手を当てて言った
「おい無視するなって、泣いちゃうぞ」
僕はそう言いながら空間の仮面の力を使い銃を取り出す
「冗談だよアオイ、待って、銃を取り出して何するつもりだい? アオイ? アオイ!?」
僕は銃口をユールの方に向ける
「まぁまぁ落ち着けアオイ、確かにこれはユールが全部悪いけどよ、怪我されたら迷惑だし、銃をしまっちゃくれねぇか?」
ガモがそこまで言うなら、しまうか
「ガ、ガモ、そんな、迷惑だなんて……僕がカッコ良すぎる事かな?」
そう言いユールは決めポーズをとった
数秒の沈黙
時が止まったかのような静寂
ユールの口元がピクピクしている
「さて本題だよアオイ、明日からシルファンに行く、準備をしておくように」
あー、恥ずかしい
ちなみにあの後、村の周辺を探したが朽六は見つけられなかった。
でも明日出発する事は決定事項
「まぁ、仕方ないか」
朽六の従者達にもこの事は伝えた、彼女達はまだもう少し探してみると言っていた
「アオイ、君の親友がどこにいるかはわからない、でも、僕たちは進まなくてはいけないんだ」
ユールがそう言ってくる
「あぁ、わかってるよ」
それに、生きていればまた会える
:黒の取引
ここは港町から少し離れた洞穴
月明かりで水面が照らされた洞穴の中に1つの影があった、その姿はこの場に似合わない白いドレス姿の女だった
「おや、やっと来ましたか」
ドレス姿の女がそう言うと、闇の中から黒い服を着た女が出てきた
「待たせたか? ミリィド・リーフィード。いや、氷の聖女様と言った方がいいかな?」
黒風の女はと桃色の液体の入った瓶を持っていた
「ミリィドでいいですよ。これから仕事をする仲間ですし、貴方のことは、二つ名の「鏖殺の魔女」と呼べば良いですか?」
黒服の女が瓶をミリィドに渡す
「呼び名なんて勝手にしろ。あと使い方だが、お前の持つ石板に薬をかけて対象を選べば使えるぞ」
黒服の女がそう言い去ろうとする
「待ちなさい、この薬、本当に効果があるのかしら?」
そう言いミリィドは液体の入った瓶を月明かりにかざす
「信用できないなら、返してもらっていい」
そう黒服の女が手を差し出したが、ミリィドは首を横に振った
「いや、いいわ。だってあなたは、たった3年で1万以上の魔法を作った大天才、信用するわ」
ミリィドがそう言うと、黒服の女は箒で飛び、洞穴の天井に大きく空いた穴から帰って行った
「にしても、あのカルナイの異世界人がまだ生きていたとは驚きねぇ。それに、あの子もいるみたいだし……」
そう言いミリィドは薬を見つめる
「にしてもあの異世界人、仲間に裏切られたと知ったら、どんな絶望の仕方をするのか、楽しみだわぁ」
ミリィドは立ち上がり洞穴から出ていく
「この洗脳の秘薬を作った「鏖殺の魔女」……いえ、確か今は、マイラ・メルフェナとか名乗っていたわね」
この日の夜は雪が降った、冷たく
しんしんと、降り積もっていった
:到着!氷と酒の国シルファン! 1
僕たちはおよそ2週間の旅を経てシルファンの国の中心、いわゆる王都についた
え? その2週間の冒険が知りたいって?うーん、
ユールが雪に石入れてガモに投げたり
リゼが小さいナイフを投げて鹿を仕留めたり
ケルが料理スキルを手に入れたり
マイラが焼き土下座をする羽目になったり
その程度のことしかなかったな
ま、これはまたいずれ話せる時に話すよ
さて、本題はここから
「シルファンに着いたぞー!」
僕たちはシルファンに着いた
今回の宿探しは僕とガモとユールになった
この国にある家は全体的にレンガ作りで煙突が生えてる、それにほぼ一年中雪があるからか外にもストーブ的な物が置いてある
「さてアオイ、ガモ、毎回恒例の宿決めだけど、少し趣向を変えてみようと思う」
リゼ達と別れた後、ユールがそう切り出してきた
「趣向を変える? どゆこと?」
いつも泊まってるのは木造とかで、雷の国クレリチアでも泊まったのは木造の宿だった
ホテルみたいな場所もあったけど、みんな木造の方が良いと言っていたからそっちにしたけど
「つまりよユール、今回は木造じゃあなくて、ああいう機械的な宿にするってのか?」
ガモがそう言い、元の世界でもよく見たホテルみたいな建物を指差した
一応、木造建築の宿もあるみたいだけど。ってそういえば、なんでみんな木造の宿に泊まるんだろ
「アオイ、君にとってはあっちの建物が馴染み深いだろう。なんせ、あのホテルとやらは昔いた異世界人が残していった物なんだからね」
なるほど、昔にいた異世界人か
「よしアオイ、後は頼むよ!」
ユールがそう言い背中を叩いてきた
「悪いなアオイ、俺たち、ああいう所に泊まったことねぇんだ」
いやそんなこと言われても、僕も泊まったこと無いんだけど。どうしよ
2
ホテルのロビーまで来た
「すごいなぁ、とても大きい! あ、ガモ! 見てみなよ! 上下に動く箱だよ!」
「本当じゃねぇか! 凄いなこれ、どうなってんだ!?」
2人がはしゃいでる。都会に来た田舎の人みたいだな
あ、でもハルファウル、僕が召喚されてユール達と出会った国には、ビルやホテルなんて無かったし、ハルファウルは意外と田舎なのかな?
「あれはエレベーターって言うんだよ、ユール」
「え、エレベーター! 面白い!」
面白いならいっか
「なぁアオイ! なんでこの扉自動で動くんだ!? 俺が通ると動くぞ!」
ガモが自動ドアに出たり入ったりしてる
「まぁまぁ2人とも落ち着いて、自動ドアで遊ぶと迷惑だからガモ、こっちに来て」
でも、僕にとっては当たり前だった情景が、この世界では非日常なんだし
こっちの世界の人からしたら、僕の世界の普通は普通じゃ無いんだよな
「よし、2人とも、このホテル予約無しで部屋2つ取れたし。荷物置きにいくよ」
僕がそう言い2人の方を向くと、2人は口を押さえていた
「あぁ、うるさくしなければ喋って良いと思うよ」
僕がそう言うと2人は口を押さえたまま何度も頷いた
まぁ、いっか
3
僕たちの部屋は最上階の角部屋だった、そこからは城が見えた
「凄いな、この部屋、僕のいた世界にあるホテルとほぼおんなじだぞ」
この部屋、電話もあるしテレビもあるのかよ、本当にやばいな。そういえばネットワークとかあるのか? この世界
それに2人はエレベーターに乗った時、凄いビビってたし、ハイテクな物を触らせるのはちょっと不安だな
「そういやユール、お前まだミーフィに手紙送ってんのか?」
ミーフィ? 確かハルファウルの集会場の受付嬢さんで、ユールの幼馴染だっけ
「な、なんだよガモ、悪いかい?」
おや? この反応……もしかして
「ユールってミーフィさんの事好きなの?」
僕がそう聞くとユールは飲んでいた紅茶を勢いよく吹き出す
「な、何を言ってるんだアオイ!ぼ、僕は別に、ミーフィの事は……幼馴染、だと……思ってるよ」
ユール、そういえば1週間に1通は手紙出してたけど、そういう事か
「アオイ、ユールはサキュバスの店なんか行っちゃいるがよ、実際はミーフィに止めて欲しいから行ってるんだぜ?」
へー、ユールって可愛いところあるんだな
そう思っていると、ユールがドタン! と立ち上がって部屋の出口の方に走って行った
「うるせぇー! 僕は今日帰ってこないからな!うわー!」
そう言いユールは部屋から出て行った
僕とガモは、なぜかグータッチをした
4
「うわぁぁあああーー!!!」
外にいたリゼ達の横をユールが走り去っていく
「え? ユ、ユール様? いったいなぜ?」
私はケル様、マイラ様、ナノ様と一緒にお買い物をしていた
「なるほど、ありゃ恋だね!」
ケル様がニヤニヤしてる、なるほど、恋ですか
「たしか、幼馴染のミーフィだっけか?」
そういえば、ユール様には幼馴染の受付嬢さんがいましたね
ミーフィ様はよく孤児院に来て子ども達と遊んでいたので、私も仲が良かったんですよね
「ユールのやつ、すげぇ慌ててたな、どうしたんだ?」
私の肩に乗っているナノ様が私の頭に飛んで移動した
「いったいどうしたのでしょうか?」
ユール様、何かお辛いことがあったのでしょうか
そんなこんなで街を散策した後、ナノ様がアオイ様の気配を検知し宿がわかり
宿に向かっている途中
「貴様、リゼ・ヘルフィだな? 聖女殺害の罪で連行させてもらう」
兵隊さん達に囲まれててしまいました
ケル様はすぐに戦闘体制に入り、ナノ様も兵士さん達を威嚇してます
「アンタら、この国の兵士かい?」
ケル様がそう聞くと、偉そうな兵隊さんが前に出てきた
「その女、リゼ・ヘルフィは聖女リンファを殺しこの国から逃げた大罪人だ!」
リンファさんを殺した?
「私はそんな事してません、だってリンファさんは、私の恩人なんです。それに、彼女が亡くなったのはもう10年以上前。その時の記録が残っているとは到底思えませんが」
私は少し強めの口調で言った
多分、私がリンファさんを殺したと言うのはミリィドさんが言ったのでしょう
「それに、まだ六つの子どもにそんな事が」
「黙っていろリゼ・ヘルフィ。それと、そこの2人もついて来い」
声を遮られるように言われた
「さぁ、ついて来い」
そう言われ兵士さん達に国の大聖堂「ファスファラス」へ連れてこられた
:大聖堂「ファスファラス」 1
「こりゃあ、でっかい教会だねぇ、ハルファウルにあった教会の10倍くらいデカいんじゃあないかい?」
ここ、大聖堂ファスファラスはこの世界で一番大きな教会である
この教会は昔から破壊神コロウアだけを信仰していた。私の母はカルナイ教の聖女だったけど、ここによく連れてきてくれた
「さて、我らはここまでだ。貴様達はここで待っていろ」
そう言い兵隊さん達は聖堂かから出て行った
あたりを見ると、壁や床のところどころに草が生えていたり、壁がひび割れていたりしていた
この教会……あまり整備されていない?
でも目の前の階段の上にある石像、あれだけは綺麗に飾られている。なぜ?
と、その時
「皆様、お越しいただきありがとうございます」
階段の上から修道着をきた金髪の女性が降りてきた
「私はミリィド様の使いの者です。リゼ、貴女に招待状を届けに参りました」
そう言い彼女は私たちの方に近づき、私達に石板をかざす
これは……聖女の石板? と言う事は、私達の情報を取ろうとしている?
「マイラ、ケル、そしてリゼ……なるほど、貴女達の情報は手に入れました。そして、こちらを」
そう言い彼女朱印の押されたは手紙を渡してきた
「リゼ貴女を1週間後の聖女の舞踏会に招待します。しかし、そちらの2人は連れてこない方がいいかと」
そう言い彼女はケル様とマイラ様の方を見た
聖女の舞踏会、お母さんから聞いたことがある。確か、3年に1回行われる聖女候補の女性達が集まる舞踏会、そこでこの国の女王が次の聖女を決める
尚、参加できるのは女性だけ……
「リゼ、私は昔、リンファさんの弟子でした。だからわかるんです、あの方は貴女のような人には殺されないと。それに……」
金髪の修道女さんはそう言い、膝をついて私と目線を合わせた
「この国には案外、貴女の味方が多いんですよ」
そう言い彼女は去って行った
2
一度、整理しよう
私は聖女の舞踏会に呼ばれた
聖女の舞踏会は3年に一度行われるもので女性以外は参加できない
さらに、聖女の舞踏会に参加する者は皆、素性や力などの全ての情報が現聖女知られている為、暗殺や殺しなどができないようになっている
しかし、今の聖女はミリィドさん。マイラ様もケル様も罠だとわかっている。私も罠だと思う
でも、一度ミリィドさんと話さないと、話さないとダメなんだ
それに、付き添いができる方は2人だけ。ケル様もマイラ様も情報が知られている
ミリィドさんは戦いを仕掛けてくるかもしれない、でも、情報が知られているマイラ様やケル様は力になれないかもしれない
「ど、どうしましょう」
私達は宿に来た、とても大きい建物だった
「まぁ、どうしようかねぇ」
ケル様も深いため息をついた
ミリィドさんが聖女の舞踏会で仕掛けてくる可能性は高い、でも、ケル様達では……うーん
「朽六の従者の闊達や爛漫、不羈達には……いや、港町からここまで遠すぎるな」
マイラ様がどうするか考えている
ケル様もマイラ様も自分達では力になれないと言っていましたし
「……よし!アタシに良い案があるよ!」
そう言いケル様が部屋から出て行った
3
数分後、ケル様が2人の女性を連れてきた
「こんにちは、ユーウェル・シャルロットです♪」
青髪で青眼の可愛らしい剣士さん
「こんにちは、アーウィ・ガニートです……」
こっちは茶髪で片目を隠した美人さん
あれ? アーウィさんが震えてる
「おいケル、なんだコレ?」
あれ? アーウィ様の声、どこかで……
〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜
数時間前……
「アオイ!ガモ!女になりな!」
僕とガモがテレビを見ているとケルが部屋に入ってきた
「えっと、ケル? 頭のネジぶっ飛んだ?」
「さぁ!行くよ!」
僕とガモはケルに掴まれて服屋まで来た。くる途中にちょうどユールもいたから道連れにした
「さぁアンタ達、これを着な!」
僕達は女装させられた
あと、なんかガモはムズイってケルに言われ女装を免れた
〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜
そして今に至る
「どなたかはご存じありませんが、アーウィ様とユーウェル様ですね! よろしくお願いします!」
あれ? リゼ、僕達が誰か気づいていない?
ちなみにその後の1週間、僕とユールはケルとマイラに立ち振る舞いとかめちゃくちゃ教えられた
泣くほど、キツかった
チクショウ!
:ケル、最強の料理人になる 1
シルファンの港町から王都に行く途中
「アタシ! 最強の料理人になりたいんだ!」
急にケルがそう言い出した
「よし、次の村までもう少しだし、そこに行って医者に診てもらおう」
最強の料理人か、うん、何言ってるんだケルは?
いや、わかる、ケルは料理が上手だ。料理がもっと上手になりたいというプロ意識はわかる気がするけど
「最強の料理人になるには[料理人]のスキルが10以上、そして世界中の料理を作る必要がある」
スキルが10個、聞く分には簡単そうに思えるけど、普通の人でも人生に2〜3個作れる程度、うちのパーティで一番持ってるマイラでも7個しか持っていない
「まずは料理スキルを身につけるところからだな」
この世界には基礎スキルと呼ばれる物と応用スキルと呼ばれる2つがある
基礎スキルはその職業に就いた時に誰でも得られるスキルである
ケルは武闘士と料理人、経営者とかいろんな職業をしていて、基礎スキルと応用スキルを合わせて10個スキルがあれば、最強の料理人になれるらしい
「今、アタシが持ってる料理系スキルは基礎スキル含め4つ、もう一つあれば二つ名の匠が得られるのさ!」
匠……大工かな?
2
あれから数日後
「ケルよ、これは厳しい訓練になるぞ?」
立ち寄った村でケルはその村一の料理人の弟子になった
「ああ! どんと来な!」
それからマイラは苦しい鍛錬をしていった
野菜の皮を1ミリ単位で剥いていったり
果物のヘタとタネを綺麗に取り除いたり
魚の鱗を綺麗に取り除いたり
その肉が何キログラムか目で見ただけで当てたり
そんなことをしていた
一方その頃、僕達は村で困っている人たちを助けたりしていた
そして……
「ケルよ、君に教える事はもう無い。今なら、新しいスキルが得られるだろう」
そう言い村一の料理人の彼女は手を掲げた
「ああ、これが新しいスキルだぁぁ!」
そうケルが食材に手を掲げた時、ケルの脳内にその食材の情報が全て叩き込まれる!
「この食材は……!」
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「それでケル、新しく手に入れたスキルってどんなのなんだ?」
あの村から出て、夜になり食事を作っている途中に聞いた
「ああ、あのスキルかい? あのスキルはね、食材の情報をすべて見ることができるスキル……まぁ聖女の石板みたいなスキルだね」
なるほど、だいぶ強く無いか? 戦闘面でも使えそうだけど、ケルは使わないか
「まぁこうやって使うんだけど、なんか人にも使えるんだよね、ほら、マイラとかに使うと……ん?」
ん?
あれ? マイラ、めっちゃ冷や汗出てね?
「マイラ、この前、密会してるね」
え? いやそんなわけ……
あ、マイラ歯をガチガチ合わせて目を動かしている。いや焦りすぎだろ
「し、してないぞ? わわわわわわ、私は別にな?うん」
焦りすぎだろ、もうやってるって言ってるような物だろコレ
「何話してたかはわからないけど、変な事してたって事で、マイラ、土下座しな」
ケルがそう言うと、マイラは鉄板を敷き鉄板を熱する
そしてマイラはその上に乗り、土下座をする
「ほんっっっっとうに、すいませんでした!」
良い眺めだなぁ
でもなんで焼き土下座? まぁいっか
こうして、ケルは最強の料理人に一歩近づいたのだった
第10 終
仮面の勇者第10話を読んでいただきありがとうございます。
今回はちょっと怖めの話を作ろうと思ってフェンリルゾンビを書いてみました、いかがだったでしょうか?
次回は聖女の舞踏会があります、楽しみにして下さいね。
それではまた次の話で会いましょう。