表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オランダさん  作者: yukko
出島
7/12

おもん

ヘンドリック・ドゥーフにとって、最初の子ども、おもん。

青い目、金色に輝く髪、全てがドゥーフの姿にそっくりであった。

似ているから可愛いのか、それとも子どもが持つ可愛さ故なのか、ドゥーフにはそんなことを考えるまでもなく、ただただかわいい我が子だった。

そのおもんが風邪を引いた。

その風邪が治らない。


「お父様はここに居るよ。おもん。」

「……お父様……。」

「うん。」

「お父様……おいは、お母様の所へ……いくのでしょう?」

「何を言ってる!」

「お父様……おもんは治らないのでしょう。」

「おもん、必ずお父様が治して見せる。」

「お母様のお話をして!」

「優しく美しい人だった。……桜の花を教えてくれた。」

「桜の花?」

「そうだ。私の好きな花だよ。」

「さくら………。」

「おもん、もう、おやすみ。疲れるといけないからね。」

「………お父様。」

「うん? 何だい?」

「お父様のお国へ行きたか。」

「それは……。」

「駄目?」

「そうだね。もう、私の国は無いんだよ。」

「ない?」

「そうだよ。」

「お父様、可哀想……。」

「おもん、本当に疲れたらいけないからね。もう、おやすみ。」

「はい。おやすみなさい。お父様。」

「おやすみ。」


おもんの額に優しくキスをする。

この子を失いたくないと切に願った。


オランダ商館で仕事をしている時のことだった。

おもんの死の知らせが入ったのは………。


「おもん、君はまだ9歳なのに……。

 何故、何故なんだ!

 神よ。何故あなたは私の大切な者を……

 御傍に………

 まだ、私は娘の姿を目に焼き付けておりません。

 大人になった娘の姿を……

 私の目に……目にしたかったのです。

 娘おもんの花嫁姿を………。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ