二人目の妻
園生が亡くなってから、ドゥーフはオランダ人の友人から遊郭から来た遊女に会いに行こうと誘われた。
「また、見つかるよ。きっと……。
可愛い子が多いからね。」
「私は……行きたくない。」
「行って見つけられたら、おもんちゃんの母親になれるよ。」
「おもんの母親?」
「そうだよ。母親、必要だろう?」
「そうだな。」
「そうさ。さぁ、行こう!」
着いた先で、その人に会った。
二人目の妻になった瓜生野である。
「君が好きな花の名前は、何という花?」
「おいは桃を好いとっばい。」
「桃の花?」
「はい。桃の花は長く咲くから好いとっばい。」
「桃の花……か……。」
「カピタン様は?」
「私は桜の花が好きだ。」
「桜の花……おいも好いとっばい。」
「花のことをオランダではブルーム(bloem)と言うんだよ。」
「ぶるーむ?」
「そうだ。ブルームだ。」
ドゥーフは瓜生野を身請けした。
そして、おもんと三人で暮らし始めた。
おもんは生まれて初めて「お母様」と呼べる人を得た。
瓜生野は年若く、母と呼ばれるには気の毒だとドゥーフは思った。
瓜生野は、おもんと仲良くなってくれた。
そして、瓜生野が身籠った。
子どもが二人になり、ドゥーフ家は賑やかになった。
生まれてきた子は男の子で、ドゥーフは道富丈吉と名付けた。
男の子だから苗字を日本語にしたのだ。
ドゥーフから、道富と………当て字だった。