9.謎が謎呼ぶ最終回
堕悪を連れ天空樹に戻ると、思ってたより兵達が残っていた、揃って俺を待機していた様だ
「良かった、ご無事でしたか久殿」 1人の兵が話しかけてきたついでに現状報告を命じた
「承知致しました、我々はここ上層でしばらく邪族と交戦しておりましたが、あまりにも敵が弱く逃走までする始末で…」どうやら上層といえど大した戦力はおらず邪族の下っ端連中が大半だったようだ、肝心の主戦力はおそらく俺が道中蹴散らした…
「なるほど、倒すべき敵が勝手にいなくなって対応が分からなかったということか」
「も、申し訳ありま…」
「いやいいんだ、これより撤退する」 またもや兵達がざわつき出す
「ここの統率者は俺が討った、もちろん残党狩りや捕虜の受け入れなどまだやることは残っているが収穫はこれで十分だ」 それを聞き入れる兵たちだがすると今度は堕悪に視線が集まり出す
「ああ、こいつは捕虜…ということにしておいてくれとにかく重要なやつだ」 兵達は戸惑いつつも受け入れた
「うへぇ捕虜ムーヴ噛ます日が来るとは思わなかったぜ」 おちゃらける堕悪を後目に俺は撤退を宣言した
〜カセイ国守官管理所横自宅地下〜
「確かに言ってたけどよ本当にマイホームまで連れてこさせられるとはな…まあお前なりの考えがあっての事なんだろうが」
「ああ、とても重要な事だこれからのために」
(魔王城で堕悪は好きにしろと言った、これを活かさない手はないが俺はひとまず由美のことを頭の隅におくことにした…)
「うわぁこりゃまたずいぶんと最先端」
地下室まで堕悪を運んできたがここまではしゃぐとは思っていなかった
「気に入ったか?ここは」
「まだ来たばっかじゃねえか、それで…本題は?」 そう言う堕悪に俺は…精神融合装置を
見せた
「なるほどな、これで俺の記憶を合わせれば
お前の記憶が戻るかもしれないってことか」
「ああ…」
「なに凹んでんだよ、好きにしろと言ったのは俺だぜ。まぁといってもお前を吸収して成熟した時より前の記憶は俺にない、でもきっと中には残ってるだろうからな希望持とうぜ」
堕悪に励まされた俺は装置の説明を始めた
「これは精神融合装置、他者の核に残る記憶をコピーし記憶喪失者に移して治療する装置だが、今回の場合は全ての記憶を移さなくてはならない…精神だけでなく核も融合されるだろう、その時お前はお前でなくなってしまうが…」
「ああ、そこんとこは了承してるからよ!後のことだけよろしくな!」そう言って装置に入る堕悪
(ああわかっているさ…抜け殻になったお前の面倒を見ると。)
そうして装置を起動させたが…
エラー発生、エラー発生、急な危険信号が出たと思いきや装置が暴発。部屋中に大量の蒸気が舞い装置が止まった
「だ、大丈夫か堕悪!」 俺はまず最初に堕悪の身を案じた、すると
「あぁ…なんとかぁ」 堕悪の声がした一憂しその声を頼りに向かうと ドテッ なにかにつまづいてしまった!すると蒸気が晴れ
「んんっ…」そこには少女がいた
「だ、誰だ?」 青く長い髪に白い肌の少女がそこにいた
「あぁっえぇっ…」 上手く言葉が出ないかと思われたが
「大丈夫k…」
「わぁぁぁぁぁ、だだだ誰?君!だれぇぇぇ」
な何だ急に何かよく分からないがひとまず落ち着かせねば…
「あー俺は伝永久という者で…」
「つ、た、伝な…ぎゃぁぁぁぁぁ」 どうやら逆効果だったようだ叫び出す少女に俺は固まっていたが
「おいおいなにやってんだっtうぉっ」 奥から堕悪が出てくるや否や
「おい、おまっこの子裸じゃないか…早く着せろ着せろ」と言い出し俺は自身の上着を掛けてやった、すると落ち着いたらしく叫ぶのをやめ眠りについた
「はぁ〜ったくお前は冷静なのかトンチンカンなのか…感情がないってのも考えものだな」
そう言うと座り込みつつ再度口を開く堕悪
「しっかし、融合は失敗で俺もお前も変わらずのくせになーんか来ちゃったんだよなあ」
「この子、どうすればいいと思う?」
「とりあえず起きるの待ってる間に考えるしかないだろ、さっきの見る限り話せないってわけでもなさそうだしな」 そうして俺達は待つことにした
〜魔王城・王の間〜
「ああっ老いたわしや魔王様、こんなはずでは…」 核が割れ再生出来ないギガーンの横で側近の邪君はうなだれていた
「おい!奈落神、魔王様をなんとかせんか!」 しかしそれは無言で立ち尽くすばかりだった
「ちっ、主の命令なしではろくに動かん木偶の棒めが正にその主が一大事だと言うのに…堕悪の奴もあっさり寝返りよって。」
「ギラングレファランがぁぁぁぁあ」 そうして大きな声がしたかと思うと片手片足で身体中に流槍の柄を引きずったギランが戻ってきたが…「まヴぉ…様」 ドサッ しかし倒れてしまった
「うぅっ」 「これではもう…」 そんな姿を目の当たりにしてか生き残った秘書達は泣き出してしまった
「ぐぬああ後にせんか!そんなことより魔王様を救う手建てをだn…」
「お困りですか?」 するとそこにいきなり謎のローブの男か女かも分からぬ者が立っていた
「な、なにぃ」 奈落神が反応しておらん、こいつどうやって入ったんじゃ…
「お困りなら、お手を貸しますよ?」 謎のローブはそう言って手を差し伸べてきた
「ちっ貴様のような得体の知れないものの助けなど借りるか!身を慎m…」 その瞬間完全に背後を取られていた、赤く縁った黒い鎧の闇としか形容し難い者…
「あら?私が話しているのは貴方ではありませんよ」 そう言うと魔王を指刺す
「ま、魔王様は虫の息じゃ会話なぞ…」
「なんだ…」 魔王は口を開いた
「生きていましたか、良かったです」 するとその者はローブを脱ぎだすと
「申し遅れました、私は夜白正直というものです」 それは青白い髪に真っ白な肌、小柄で赤いメガネが特徴的な女だった
「私が造った傀儡の1人、堕悪が身を置いていたにも関わらずその責を放棄したことを謝罪いたします。お詫びとして私の可愛い傀儡3人と全ての技術を差し出し、貴方様を復活させることをお約束します。フフフ」
「ほお、運命はまだ私を見捨ててはいなかったか…」そう言って魔王は微笑むと
「奈落神!邪君!これより全軍につたえよ。
私はしばらく眠りにつき新たなる時代に備える、期待しているぞ我が臣民とな!」
永伝第1章 ご読了ありがとうございました
次回からは外伝紹介 全3話 を投稿したのち
第2章を投稿させていただきます