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永伝(エデン)   作者: ちがタニ
永伝(エデン) {改訂版}
5/36

5.ギラン急襲

〜魔王城・王の間〜


「失礼します」その重厚感のある分厚い扉を前にして場違いの通信機にそう告げるとまるで地響きかのように開き出す、あまりの騒音に下の階の者はたまったものじゃないがそうして王に逆らうものは誰一人としていないだろう


「邪族軍2番隊隊長ギガース、ただいまユウトピア戦略拠点より帰投致しました。ギガーン様」そう…彼女を除いては


「直談判とは珍しいな…ま、少ない陣容で重役を惜しみ若手ばかりを戦線に立たせているとそういう声もあがるだろうが、で何の用だ」

風貌こそ鉄仮面に阻まれ拝むことは出来ないが装甲の上からでもわかる程の筋骨隆々の肉体と常に纏いつづける瘴気

その身こそ邪族の王 魔王ギガーンその人である


「恐れながらも私ギガースは、先の戦闘で慣れない非正規軍人の者達がむざむざやられ闇属性の民間人の皆の生活を脅かし戦線を後退させてしまった身ながらも、今こそ本軍を動かし敵本拠地へ奇襲をかけることを進言します。」魔王はその言葉に耳を傾けこう告げ

「ほぉ、それはまたよ…」ようとしたが阻まれる


「フンッ与えられた約目もろくにこなせず、何を言い出すと思えば!今まで正面切ってちまちまやってきたものを今更変えれると思ご…」


「おい、邪君今ワシが話そうとしてたよねいい意見だってそれでめちゃくちゃ魔王っぽい良い発言しようとしてたんだけどなにやってんの」


「申し訳ございません魔王様、あしかしその素が…」

「あーもうやっちゃったよせっかくいい雰囲気出せてたのにちくしょう」


「クスッ」

「あ、そこ!笑った今笑ったでしょ笑うんじゃないよ全く」


「申し訳wありませんw真面目なところに急にツッコミ入れるからww」


「だからって…あーもういい仕切り直しだ、とにかく奇襲って言葉が聞けるとは思わなかったぞいい意見だそれなら敵も同じ方法をとって魔王城まで乗り込んでくるはず勇者との戦闘ごっこをする日々ともおさらばだ!」

「あーいやそうじゃなくて間違えた」慌てて取り繕う魔王


「我が側近邪君、代わりにお願いできるか?」

その声を聞きふとため息をつくもすぐに切りかえこう告げる

「分かりました魔王様、ギガース貴様は先の戦闘で何が起こったか詳細に説明しろ作戦のためにな」


「はっ分かりました!」

そうして私は政府国がカセイに手を貸したこと、伝永久が生きていたことなど詳細に語った


「そうか、なら狙うはカセイ国守官管理所だな」

「よろしいのですか?魔王様」

「ここ数ヶ月の猛侵攻は総指揮官が潰えたことで一時的にできたことだ、それを取り戻すには再びそれを潰せば良い。ただし…」そう言い切る前になにかがまた口を紡ぐ


「待てよギガーン、伝永久は俺を完全体とするためのパーツだ、殺させるわけにはいかねえよ?」

「堕悪…」全身真っ黒の服に身を包んだ男がまるで背中から生えているような黒く染まった4本の腕の1本でギガーンの頭を掴んでいた

「堕悪お前、早くその手をのけろただじゃおかんぞ」


「へぇwただじゃおかないって邪君、側近だとか言って大した力も持ってないお前に何ができるって言うんだよ?」

「くっ言わせておけば…闇属性能力:暗黒弾(あんこくだん)!」だが攻撃が発動する前に

「やめろ!」魔王の一喝で場が静まった


「堕悪、私もなにも殺そうとは思っていないさ苦境を乗り越え復活を果たした勇者と相まみえたいと思ったまででな」

「あぁそうかいなら、終わったら俺に渡せよっ」そう言うと堕悪は手を離した

「…では続けるぞ奇襲の件だが、ギラン!」


魔王がそう告げるとと音もなく現れた、魔王程では無いが纏う瘴気は尋常ではなくまた炎のように火花を立ててもいる

「邪族軍1番隊隊長ギラン参上致しましたギガーン様どのようなご要件で」


「ギランよ先の私の言葉は聞いているな」

「はいしかと…」と言いつつも困惑している様子だ、邪君がこっそり紙を渡して教えている

「ギラン、お前にはカセイ国守官管理所まで出向き伝永久を生け捕りにしてここに持ってこい単身でとは言わんお前が目をかけていたやつを同行させることを許可する」


「ありがとうございます。今回の任務承知致しました。」そう受け答えるがギガースが口を挟む


「お待ちくださいギガーン様!何故私ではないのですか?力不足は承知していますが伝永久をこの目で見た私が最適かと存じます」


「ギガース、お前の叔父の…名前はなんといったか忘れたが、戦死したらしい邪族軍名簿には登録していなかったようだが…確かな情報だ」

「そんな…」

「戦時中とはいえこれは大事なことだ」

「ならばこそ!私を行かせてください叔父さんが最後に戦ったのは伝永久で間違いありません!私が仇を」涙を流しつつ必死で声をあげるギガースだったが


「感情的になっているうちはまともに戦う事は出来ない、お前は元の任務に戻りユウトピア戦略拠点でその気持ちを覚悟に変えろ」

「はい…」


「堕悪!」

「なんだよ、でかい声出して」

「貴様もユウトピア戦略拠点に行け、案外こちらがそうこうしているうちにも侵攻が始まっているかもしれんからなその場合伝永久はそっちにいるだろう」

「なるほどな、子守りは勘弁だが可能性アリなら一応行ってやる、ただし伝永久を見つけた場合手出しは無用だ!」

「分かった、ではギランあとは任せたぞ!」

「御意」


〜カセイ国守官管理所〜


「平和だ」数日前までは緊迫した状況だったというのに、すんなりと得た優勢に俺は気を緩めていた。

「何もかも上手くいってやることがない…」久々の休息だこういう時こそ記憶探しをするべきなのだろうがいかんせん手がかりがない、毒闇太郎という男も謎のままだ


「由美はどうしてたっけな」とふと聞いたばかりの会話を思い返す

____________________

「まさかあの宇元将軍を籠絡してしまうとは、君には恐れ入ったよどうやったんだい?」そう目を輝かせて聞いてくる下倉


「たまたまだ、だがこれで継続的な協力も取り付けられるし、今日の政府国軍の侵攻でユウトピア敵拠点も陥落するだろう。願ったり叶ったりだ、にしても宇元の態度を見た時の国守官達のあの顔は傑作だったよ」俺の言葉に同調したように笑顔を見せる下倉


「しっかし例の新勢力、ゴルゴンゾラと…もう片方は?なんだったかな」

「重力族だ、両方なかなかの強敵で…流槍刃を生み出せなければ今頃」

「調べてみたけど、やはりそれ核から直接生えてるみたいだねふむ、再生には流槍の核エネルギーを利用したのか」

資料を取り出し眺めながら語る下倉


「咄嗟の判断だったが上手くいって助かった」下倉が頭をかかえつつその詳細を口に出す

「流槍に関しては君と長い僕ですら知ってることは少ない、ましてや核を再生など聞いたことも…」

下倉ですら伝永家伝来の魔道具であるということ以外詳しくは知らないようだ


「ゴルゴンゾラと…重力族、それに関してもめぼしい情報はない、しかし提督か懐かしい言葉だな今となっては本国の活火山によって海は汚染され化異物で溢れかえって船など出せたものではないからなぁ」

そう感傷に浸り話す下倉

「そうか」俺は下倉との会話を終え自室に戻ろうとすると


「あぁそうだ久君、実は由美君は今日出かけていてねほら、人民国ゲートが解放されただろ?それでユウトピアまで買い物に」(随分とお早いものだこれも政府国の協力あってのことだろうか) ともあれ納得する


「実は君が帰ってきたら電話をかけるように言われていてねせっかくだ君の方からかけてやってくれその方が良いだろうw」珍しくニタリ顔をする下倉に寒気を覚えたが電話を受け取り俺は自室に戻った


〜カセイ国守官管理所正面ゲート〜


「あれが管理所か」チキュウとは違い人口星であるカセイには昼夜の概念がない、暗雲に包まれた政府国以外は常に明るく青色の空が広がっている、そのため奇襲に時間は問わないのだ


「とりあえず来て初日から向かいの民家の屋根に潜伏しているが…伝永久は一向に現れる気配がない」未だ見ぬ標的に目を光らせながら思考する

「管理所から出てくるところを奇襲するのが手っ取り早いが、この際燻り出すことも視野に入れるか?」と焦る気持ちを露わにするもすぐに引っ込める


「おい、ギガントそっちはどうだ?って!」俺は布にくるまり縮こまっている体たらくを起こした

「ふぁおはようございむぁすギラン様〜」そう眠そうに答えるのは俺の部下のギガントだ、肩書き上は1番隊副隊長だが今は見習いのようなものだ

「ほら、もっとビシッとしろあと様付けはいい形式等は気にしないといつも言っているだろ」


「ふふふっギラン様は私を地獄から救ってくれた命の恩人じゃないれすかぁ〜このくらい当然でふ」と支離滅裂に言われてもまるで信用出来ないが。

「ならもう少し言うことを聞いてもらいたいものだな、とにかくお前はそれで周囲を警戒していろ、割かし帰宅中の可能性もある」


「遠距離索敵・狙撃用兵器:光輝(こうき)」邪族戦争初期に作られた敵兵の核を用いて作られたもので、使用者の属性に応じた「核エネルギー弾」を放つことが出来る」

「それであわよくば伝永久を射抜いてくれ」

まぁ藁にもすがる思いだが


「おいどこを向いている、こっちは俺が見ているからお前は後方をだな…」

「あっ伝永久見つけた!撃ちます」

「待て、何っ本当かどこだ」しかしそう言った時には既に発射された後だった


〜管理所入口〜


部屋を後にした俺はすぐさま電話をかけた

「もしもし、由美〜先程帰ったところだ」

「もしもし、良かった出迎えできなくてごめんね」

「気にすることじゃない」そう言うも由美は納得してない様子だ


「いやいや悪いよ、うーんそうだな〜ならなにか欲しいものとかある?お詫びに買ってくるよ」と言うので返答を考えていると

「ちょっと待って、あれなんだろう」由美がなにかを目の当たりにしたようだ


「え、なに…」

「おい、どうした?もしもし」急いで聞き返すもなにも聞こえなくなってしまった、だが心配する間もなくなにかが俺目掛けて飛んでくる

寸前で避け、俺がいた位置に目を向けると

「これは、闇属性の!?」

急いでそれが飛んできた方向へ目を向ける


「ちっ、外れたかギガントお前はそこで狙っていろ俺が近接戦で蹴りをつける」

そこに居たのは2体の邪族だった、片方が俺に迫ってくる今まで見た中では身に纏う瘴気の量が尋常ではない程多く、まるで燃えたぎる炎のようだ


こちらも流槍刃を出し戦闘態勢を取った


「闇・火属性混合能力:邪炎咆哮砲(ギラングレファラン)くらえ、伝永久!」

轟音と共に紫がかった炎が飛んでくる、あまりの速さに避けることは諦め流槍刃を固めて受けた

「ちっ、まぁこの程度で死ぬとは思ってないがな」

あっという間に周囲がが火の海になり背後のビルにはぽっかりと穴が空いている


「流槍刃がなければ危なかったかもしれないな」流槍刃はなんとか持ちこたえたが熱を帯びて蒸気を発している、急な戦闘で流槍の持ち合わせはない…迂闊に傷つけるわけにはいかない状況だ

「再生はできない、3本でカタをつけるしか…」


敵の追撃が始まる

「火属性能力:火炎」

「下位の能力、何故だ?」

邪族の闇の瘴気に燃えたぎった剣に紫の炎がともる

邪炎剣(ギラングレイド)

「なに、そんなことができるのか」(上位の火属性能力なら刀身を溶かしかねないことを考慮して…あえて!下位のものをかけ…)そうこう考えているうちにも攻撃は飛んでくる


「はっ!」素早い横振り、流槍刃の立体移動で上に回避した

「くっ流石にあれに当たるのは不味い」

(こいつ、火と闇の核を持つか…火属性に引けを取らない攻撃力を持ち広範囲へ効果の及ぶ闇属性能力にただでさえ攻撃力の高い火属性を混ぜるとは) あれは流石に流槍刃で受ける訳には行かないだろう…だがしかし手がない


「とりあえず距離を取って」バシュン

「しまった、あいつが居るんだった」先程から核エネルギー弾を撃ってきている向かいの屋根の邪族、これにより遠・近を抑えられている状況だ


「ならば間を取って中か」俺は先の魔術で半壊したビルに逃げ込む

「屋内戦に持ち込む気か…なら」そう言うと

「なら火炙りにしてくれる「火・風属性混合能力:火炎嵐(かえんあらし)」火柱によってビル全体が包まれるが


「水属性魔術:(なみ)」流槍刃に水を纏い俺は回転しながら飛び出し、勢いそのままに屋根上の邪族目掛けて飛んでいく

「なんだ、これも逃れたか面倒な…」邪族が俺に目をやると


「…!?ギガント逃げろ!」勘づかれたがもう遅い俺は銃から離そうとした腕を切り落とし追撃を入れようとしたが

「ギラングレファラン!」再び飛んできた火闇の大技で退くしかなかった

「あの技、まだ撃てたのか」あんな火力の攻撃一度限りと思っていたが意外と侮れないようだ反撃に警戒していたが


「ギガント、大丈夫か!」

「ギラン…様」腕の断面から魔力が出ているがすぐに再生することはできまい

「ここは一時退くとする、お前をこの場に置いておくことは出来ない」1人で来なかったことを悔やみつつその場を離れた


「逃げた、のか!?」(正直…あれを撃ちながらも疲弊している様子がなかったこのまま戦闘を継続していたらやられていたのはこちらだったかもしれない…だが安心するのはまだ早い、別棟とはいえ管理所の一部が壊滅的被害を被った。すぐに下倉に報告しに行かねば…)


と、来た道を戻ろうとすると今まさに向こうから下倉がやってくるではないか

「下倉、ちょうど良かった今邪族が…」と言おうとしたが結局言い切ることはなかった

「久君、落ち着いて聞いてくれ今さっき報告があって由美君が…死んだ。」

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