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永伝(エデン)   作者: ちがタニ
永伝(エデン) 第3章
35/36

12.悪魔の証明

前回のあらすじ

毒闇と赤根が皆と親睦を深めるために企画した

ショッピング、そこで1人になった久は仁羅祭と出会う。人民国の新事業、混合属性アイドルを目にした久は仁羅祭の人となりを見直した

しかしその翌日…仁羅祭の弟子、月壊無倉は久に彼が偽物であると伝えたのであった


「仁羅祭が偽物?ちょっと待ってくれそれはどういう…」

「さっき説明したように、来れば分かります。準備が出来たら会いに行ってください」


「そうは言っても!こっちも仁羅祭のことを特別知っているわけじゃ…」そう言うと月壊の表情が少し暗くなる

「…とにかく、頼れるのはあなただけなんです。心配なら仁羅祭と仲のいい人を連れてください、では!」そう言って月壊は去ってしまった


「…仁羅祭と仲のいい人?そんなもの、こっちが知りたいくらいだ。」軽く脳内を洗ってみるも浮かぶ顔はない、振り返り戻ろうとすると

「あ…」江美がいた


「どうした?江美」

「あ、いやたまたま声が聞こえただけだ…」

「そうか」そうして通り過ぎようとすると

「仁羅祭!がどうかしたのか?」ビクッ


「江美、もしかして仁羅祭を知っているのか?」

「ああ、昔からたまに会って…いるんだ」

好機だと思った、こんなところで重要人物が見つかるなんて


「実は、仁羅祭の弟子から最近彼の様子がおかしいと言われてな。見に来て欲しいとのことで…」

「そ、それ私も行ってもいいか?私も…ちょうど胸騒ぎがしていたところなんだ」頼み込む江美の表情には必死さが感じられた


「当然だ、今更1人で行ったりはしない。行くなら家族全員でだ」

「ありがたい」


(信じられないことで胸がいっぱいだ、どちらにせよ行かなければ何も分からない)

そうして意志を明らかにする


「ということで、今から人民国国守官管理所に向かう」

「うん!」「わかったぜ」「はい!!」「ああ!」いつもの皆が言葉を返すと

「俺達も、当然行かせてもらうぜ」

「なにかやれることがあるかもだしねっ!」


〜人民国国守官管理所〜


「仁羅祭、いるか?」そう言って仁羅祭の部屋に入る

「やぁ、君が来てくれるなんて珍しいこともあるもんだねぇ」そこには仁羅祭と…

「カセイ国守官様!もう来てくださったんですね」月壊がいた、やけに揚々とした月壊の態度を見て違和感を覚える


「はい、みんな〜飴ちゃんあげるよ〜」

「わーい!」「いいんですか?」たちまち喜ぶ優と隼


「いいよ〜、はいそちらさんも」

「ああいや、俺達は…」一方で謙遜する堕悪と光だったが

「貰っておけ。」江美に軽く小突かれる

江美は仁羅祭と目を合わせた


「久しぶりですね」

「お互いにな…」


「うわー相変わらず独特な味〜」

「無理して食べなくていい。ほら、俺の口に移しとけ」和気あいあいとした雰囲気が作られている中、久は月壊を警戒していた


「月壊、どうしてここに?」

「カセイ国守官様、よくぞ来てくれました!これであいつの正体を見破れます!」

「何を言ってるんだ?まだ来たばかりで何も…」しかし彼を止めるにはまだなにも知らなすぎた


「おい!」

「ん?どうしたんだい?無倉君」

「俺はお前の正体を知っている!仁羅祭をどこにやった?この偽物め!」「!?」

「えええええええええ!?」

開口一番、月壊は仁羅祭に向かって偽物と名指した


「ど、どういうことだ?仁羅祭…さんが偽物だと?」

「無倉君それは…」

「さぁ、カセイ国守官様!決定的な証拠をこいつに突きつけてやってください!」

「…!?」 (何を言っているのか理解できなかった、いや理解したところでどうすることも…)


「待ってくれ!」「ん?」

呆然としている中、江美が声をあげた

「さ、江美…さん」仁羅祭の細目がいつになく細くなった

「だ、誰だお前は!」

「悪いな久…ここは私に譲ってもらうぞ」その場が緊張に包まれる


「さて仁羅祭、私と会った時のことは覚えているな?」江美が刀に手を掛けた

「お、覚えていません」江美が刀を抜く

「嘘をつくな仁羅祭、アレを覚えていないなら私の貴様への信用は貴様を切り刻めるところまで落ちるぞ?」江美は刀を仁羅祭に触れる寸前まで近づけた


「ほ、本当に覚えていないのです私は…!」

「そうか…」江美が刀を構えた

「待て…江美!」


「…」刀は振られなかった

「?」

「よく言わなかったなふん、覚えていなくて当然だ。私が会ったのは2代目と3代目の仁羅祭、貴様は5代目だろう?」


「ふぅ〜驚かせないでくださいよ」

「ふふ、しかしよく名を知っていたな?」

「まぁそりゃあ代々伝えられてきましたもんで…」


「ん?5代目で…2代目と会った?」

「なんだ…堕悪、まだ1歳にもなっていない分際で私の歳にケチをつけるつもりか?」

「えっ?」

「ああっダーク!それは江美に失礼だよっ」

「そうだぞ〜堕悪〜」

「えええええ?」


「ということだ久、仁羅祭は嘘をつくような者達ではない。怯えて言葉を並べるようなら斬っていたところだが、流石は仁羅祭といったところだ。ふん、読みが外れたな?久…これが彼は本物の仁羅祭であるという私の証明だ」


「なっ!なんだよそれ、そんなの納得できるか!カセイ国守官様、なにか言ってやってくださいよ!」


「いや、江美の主張は最もだ私には言い返すための情報が足りない…まだ仁羅祭と話してすらいないからな。月壊、一度頭を冷やしたらどうだ?」


「何を!…」月壊は周りの目を見て、自らの行動が我儘地味ていると悟った

「ぐっ、わかりました…今しばらく待つとしましょう。」


「よし、じゃあみんなで食事にしようか」

「えっ?」


「ぎにににににににぃ」月壊が仁羅祭を睨みつけている、2人の間に距離を取るためとはいえ長机の対称になってしまったのは良くなかったようだ

「ちょ、ちょっとちょっとあんまり睨まないでよ無倉君〜」


「あ、今いつもより口角が上がっています!カセイ国守官様!」「あえ?」

「月壊…それぐらいあるだろう?黒にしたいからって言ってることがめちゃくちゃになってるぞ」


「もう〜食事中ぐらい疑うことから離れたらどうなの?ほら、皆を見てみなよ〜」仁羅祭に言われ、目を向ける


「うーおいしい!」

「人民国の料理って面白いですよね」

「うん、この長いやつとかどうやって食べるんだろ?」「それは吸い込むものだよ」

「ズズズズズズッうおっこうか!?」


「いっただっきまーす…うっ相変わらずのお味」

「だから…無理して食うなって、ほらワープゲートの中に吐けよ」


「無理ですよ、毒でも入ってるんじゃないですか?」

「こらこら、怖いこと言うんじゃないよ」

「ぐっやっぱり俺、席外します。あんたがあの人の声と姿で話してるの聞いてられるかってんです!」


「ああ…」

「気にするな仁羅祭、時間をかければ時期に誤解も溶けるさ」

「ありがとう身に染みるよ…あっ久君、僕に聞きたいことがあったらなんでも言ってくれよ」


「仁羅祭、情報のことならもう月壊を説得する方向でいいんじゃないか?」(仁羅祭は心境の変化があっただけだ、江美の証明もあるしこれ以上考える必要はないだろう)しかし


「久君嘘は良くないよ、まだ君は僕への疑念が残ってるはずだ。それは今ここで洗いざらいにしておくべきだよ」

「そうだぞ久、お前も自身も乗り気にならなければ上手くいくものもいかないだろう?」


「うーん、わかった…ならひとまず、何故あの新事業を始めるに至ったか…教えてくれ」

「もちろんさ、聞いてくれて嬉しいよ…僕は亜人種の立場を守りたいと思っているんだ」仁羅祭の目の色が変わった、彼は体を傾け口を開く


「きっかけは本国の亜人種移民計画、本国は反亜主義を掲げているけれど暴動を避けるため本格的な武力行使を控えている。


それが維持されているのは今日まで旧属性戦争から邪族戦争にかけて争いが続いているからなんだ!

誰もがああはなりなくないと思っている。


だがそれも永久じゃない、少しづつでも本国は手を講じているし政府国も治安維持のため亜人種排斥に乗り出すかもしれない…


だがそれは今じゃない!今のうちに亜人種のイメージを改善する象徴たるものを擁立させればいずれ訪れる時代にも、彼らは人でいられると…!僕はそう考えているんだ」熱き演説が終わる、ここがコンサートホールであれば拍手喝采が巻き起こっていただろう


「ありがとう仁羅祭、いち亜人種として敬意を評する」

「流石だな仁羅祭、安寧の国の統治者として相応しい心持ちだったぞ」そうして席を立つ


「もう行くのかい?」

「ああ、私も私のするべきを成さなくては。江美、皆を集めていてくれ」

「了解だ、おーいお前たち〜帰るぞ〜」


さり気ない足でその場を離れ、僅かに写る人影に話しかける

「調子はどうだ?月壊」ビクッ

「えっ調子…とは?」

「聞いていてくれて何よりだ、まぁあれを聞いて感化されない者はなかなかいないだろうな…」

「な、何なんですか一体?」怖気ずく月壊に囁く

「最後にひとつ試したいことがあるんだ、ゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョ」それを聞いた月壊は首を縦に振った

「…よし、戻ろうか」


「ごちそうさまー」

「お料理ありがとうございましたーっ!!!!」

「人民国っていいとこだなぁ、ありがとよ!」

「はははっまたいつでも来るといいよ」


「それじゃあ帰るとしようか…ん?堕悪、久知らないか?」

「え?あっそういや確かに、どこ行ったんだ?あいつ」と周囲を見渡す一同、そこへ


「あっいたいた、ひさ…って月壊!?」再び場の雰囲気が曇る

「てっきりもう帰ったと思っていたんだがなぁ…何の用だ?」江美が腰に手を回した


「落ち着け江美、仁羅祭に最後に話したいことがあるだけだ」

「僕にかい?無倉君…」仁羅祭の目がまた細くなる


「そう身構えなくていい、俺はあの仁羅祭が心変わりによって曖昧でなく裏表もなく芯からあんな言葉が出たことを素晴らしく思った。再び聞いた今日も気持ちが昂ったほど、今の月壊もそれと同じなんだ。どうか聞いてやってくれ」


「仁羅祭…いや先生、俺はずっと感謝してたんだ。先生は行く宛てのなかった俺を拾ってくれただけでなく自分勝手な我儘も聞いてくれて、おかげで俺は生きる術を知り今日まで命が続いています。


そして信頼できる仲間もでき、共に同じ目標に向かって進むことが出来ています。先生に取ってはたわいもないことだったかもしれませんが、俺にとっては運命を変える出来事でした…


普段の態度が災いしてなかなか言葉にできませんでしたが、今日先生の言葉を聞いて感激し俺も心を改めました。先生は、俺の尊敬する唯一無二の師匠です!」


「うぅ…いい話だぜ全く」

「急に泣かせるなんて…一体どういうつもりだね?」

「ほんと…感動しましたー!!」

「いいよねっこういうの…」「ああ」

「いいはなしー」


「無倉君…僕こそ、君の師匠になれたことを誇りに思っているよ」仁羅祭は目に付いていた液体を拭った

「先生!」月壊が振り向いた、それに合わせ1歩前に足を踏み出す


「久君…!」淡い表情の仁羅祭と顔を合わせて


「…仁羅祭、私は今まであなたのことが好きになれなかった。争いを好まないあなたは周囲に愛想を振りまくことで自身の立場を争いから逸らしてきた」

「久君…?」場の雰囲気は後戻りとまでは行かないが少なくとも理解の及ばない空気になったことは明白だった


「争いを好まないというのは平和的に聞こえるかもしれないが、他者同士が言い争う場では矛先が自分に向かないようなぁなぁで済ませ、1対1の話し合いでも自分が火種にならないよう話を逸らす…」 「ひさ…久君!」


「それは自分が損害を被らないとするために、他者の主張を乱し問題を先送りにするに等しい行為だった」

「久君!」仁羅祭の声が激情に染まったようだが気にせず続ける


「そんな彼は愛想を振りまくため常に笑顔を絶やさず明るく好意的に人と接していた。

分厚い表の笑顔で奥底に沈む裏を隠さんとしていた」

「…」


だが彼は、人に愛想を振りまく手段に…涙を流したことは一度もなかった!それがあなたが仁羅祭でないことの証明だ!」


「な、何を言っているんだ君は!」


「その証拠に…」

「…っそ、そうだぞ久!この期に及んでまだ仁羅祭を疑う気か?彼が本物であることは私がさっき証明しただろう?」言葉を遮り江美が問いただしてきた


(仁羅祭の怒号で皆が正気を取り戻したか…)

「ではそのことから触れるとしよう、江美…お前の証明は単に小物でないということにしかならない」

「なんだと?」


「つまり…その彼は仁羅祭になり得る器を持つ人間だったというだけだ」

「そんな…いやまだだ!それだけではお前達が怪しんでいるだけ、重要なのは私達が納得できるかどうかだ」


「ああ、それでは話の続きに戻ろう…月壊!」

久の横から月壊が飛び出す

「仁羅祭、あなたは確かに俺を力剣士として不足がないまでに状態になるまで育ててくれたそれは感謝しています。


ですが、あなたの行動は単に名家:月壊家に汚点が残らないように体裁を整えたに過ぎないんでしょう?

あなたと過ごす中で疑いのない本心を感じたことは一度もありませんでした」

「無倉君…!」


「仁羅祭、あなたは人に好かれるような人間ではなかったんです」


「久君、だがそれは君達がそう言っているだけだろう?江美さんが言ったように君達が疑いの目を明らかにしたところで問答は堂々巡り…」プルルルルル「おっと失礼」


「久君電話は後にしたらどうか…」開いた携帯の画面を仁羅祭に見せつけながら言葉を放つ

「そこで先程部下に頼んで、国守官権限でFS、パロンドリン、ロングロード、3国の国守官に同じ質問をしたんです」

____________________


「仁羅祭は好きですか?」

「好きなわけないだろう、やつは裏表が顕著なことは置いておいても…話していて流れを乱され如何せんまとまらん」


「嫌いだ、あいつの言葉ははっきりしない」

「私も兄さんと同意見です、あの裏しかない計算づくの笑顔が本当にいけ好かない」


「悪い奴ではないんじゃろうがな…わしは彼を肯定することはできんよ」

____________________


「だそうだ、あと仁羅祭が泣いているのを見たことはあるか?という質問に対しても皆ノーだった」

「っまじか、もう決まりじゃねえか」

「そんな、仁羅祭本当に…」


「ちなみに…いい雰囲気で誤魔化してましたが、実は仁羅祭のことを先生と呼んだことはないんですよね」


「だそうだ、仁羅祭これ以上なにか言うことはあるか?」

「き、君は納得していたじゃないか…これは心境の変化で人が変わったように感じるのだって!」


「ええ、あなたは素晴らしい考えで世界をより良いものにしようとしていた、これまでの仁羅祭は考えられないことで私も皆も感激だった…だから、できることならそのまま信じていたかった…でも気づいてしまった。


心境の変化がもたらすものは考え方や価値観の変化…だけど月壊が様子がおかしい事に気づいてからから今日まで、たった数日…仁羅祭は聖人ではない。それだけで思い入れもなかった弟子の言葉で泣くことなんてできるわけがないだろうと


そして思った、あなたもまた聖人ではない…あなたは、月壊の言葉を聞いて自分が仁羅祭でないことへの"罪悪感"を感じたのだと…」

「なっ何を言って…っ!」


「仁羅祭、でも私はあなたを肯定する…あなたは仁羅祭ではないが仁羅祭にはない素晴らしい心を…」「何を言っている!」仁羅祭が、信じられない形相に変化した


「何を言っている何を言っている何を言っている何を言っている何を言っているぅ!」ガバッ ガッシャァァァン


「なっ!!!!!!!?」振り返った仁羅祭はそのまま、窓を突き破り外へ飛び出した


「ちょ、ちょっとこれまずいんじゃないか?」

「すぐに追いかけなければ…私は先に行く!」

「カセイ国守…いや久様!早く行きましょう!久様!久様ぁ!」月壊の呼び掛けに私は正気を取り戻した


「ああ、行くぞ!」

次回予告!

己の運命を悟った偽仁羅祭はついにその正体を明かす…!衝撃の事実と偽仁羅祭の猛攻に久達は耐えられるのか?

次回 第3章 13.彼の才能(最終回)

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