11.心境の変化
前回のあらすじ
マーズの力剣士、速蔵霧牙とƵに相対する久は戦闘のさなかマーズに迫っていた脅威、蝕地虫に気づく。しかしマーズの敵ではないと評す政府の男、伝永雄司は既に別の星"ギンガ"に逃げそれを追う手段も現状ないと知った久は行き場のない怒りを蝕地虫にぶつけ、独断行動で職を失った力剣士達と共にカセイに帰ったのであった
「では、改めて…赤根です!毒闇です!2人揃ってカップルです」2人が手と手を合わせハートを作った
「よろしくお願いしまーすっ!!」
「わー!!!!!!」
「今日は、皆さんのためにチキュウ産の料理をご用意しましたっ!」
「おおーすげえ見たことねえもんばっかだぜ!」
「あ、あれはすすす寿司か?また出会えるとはな…」
「うわぁー赤いですよー」
「光、俺にも取ってくれ!」
「むぐむぐむぐ、んむー!」
「美味いか?優」
「うまいー!」
賑やかな食卓の縁で優の笑顔を見つめていると毒闇が近づいてくる
「本当に、いいんですか?雄さん…」
「…久でいいと言っているだろう?どの道蟲夢にはこちらから口を出しづらい状態だ、このまま大人しく待っていた方がいい」
「そう…ですか、そのすいません」
「そう思うなら話し方を崩せ、俺達は親友なんだろう?」
「久ー何の話してんだー?」そこへ堕悪が寄ってくると
「ほら、こいつを見習ってシリアスな雰囲気なんてぶっとばしなよっ」ガツンッ
「痛えっなんで殴るんだよ?」
「いや、なんとなく」
「なんとなくで殴るなよ…」
「ははっそうだな久」毒闇の声が虚空に響く
「ところで、お2人の部屋は決まってるんですか?」光が何気なく聞いてきた
「あぁ、話し合いの結果マンションではなく俺の家に住むことになった、部屋は一通り揃っているし生活には問題ないだろう」
「なるほど、まぁ色々ありますしねー」
「そうだな…色々あるからな」光と江美が穏やかに頷く中…
「ん?なんだ?色々って…」
「!!!」
「堕悪さん!俺だってなんのことかわかりますよ、どんだけ鈍いんですか!」
「い、色々というのは…」堕悪に罵声が飛ぶ中赤根が口を開いた…
「なっ!」「しまっ!」「きっ!」
「色々…というのはまぁ…その排泄…というか…」
(そっちかぁ〜!!!)
「…わざわざ手間をかけずとも、俺が食べてやるんだけどな〜」(毒闇〜???)
「な、何言ってるの毒闇君?」(そうだ!当然だ!) 毒闇の言葉に困惑する赤根に頷く3人
「そういうのは…ベッドの中でだけだよ!」
(ん〜???)
「はっ、そそういえば…赤根殿はチキュウ人なのにカセイ語が話せるんだな?チキュウ暮らしの私や久はともかく堕悪にも通じているということは」
「普通は通じないのか?」
「チキュ」
「え?なんだ?」
「チキュウチキュウチキュウチキュウチキュ」
「な、何言ってんだ江美?なんだよ?」
「チキュウチキュウチキュウチキュウチキュウチキュウ」
「やめてくれ江美!頼むから普通に喋ってくれえ!」
「それぐらいにしておけ…江美」
「ということだ、まるで分からなかっただろう?」
「あ、あぁ…すげえんだな赤根って…」
「ふふっ私、天才なので!」
(じ、自分で言ったー!?!?!?!?!?)
「…そろそろいい感じじゃないか?」毒闇の言う通り食事も終わりちょうどいいムードが流れている
「そうだな、皆そろそろ片付けるぞ」
「なんだ?久、なにかあるのか?」
「ふっ、今日は…アレに行くぞ!」
「アレ????」
「ユウタワーでは、食品・衣料・生活雑貨・娯楽・芸術・医療・軍事、全てが揃っています。また各国最新鋭の技術をいち早く皆様に体験していただくためのテナントも数多く展開、どうぞ心地よいショッピングをお楽しみください」
「うわー、アレってショッピングのことだったんですねー」光が目を輝かせる
「勿論、2人にカセイの良さを知ってもらうつもりで連れてきたがこんな機会は滅多にない、皆も今のうちに全力で楽しんでおけよ」
「わーい!!!!!!!」
「お、あの店美味そうだなぁ」
「…まだ食うつもりですか?」
「ふふっいいじゃないか、食は娯楽だ」
「では優殿、私達はいつも通り服を見に行こうか」「はーい!」
「意外、江美さんってお洒落したりもするんですね〜」
「ふっ当然、身を護るため上着の下に忍ばせているのさ、見よこの鎖帷子を!」そう言って襟を捲ってみせる
「あはは…」
「わぁ〜そんなのもあるんだね面白そう!」
「ん?毒闇と赤根は一緒に行動しないのか?」ふと疑問に思い問いかける
「そうだが?」
「なんで?」
「…久さん、互いに愛し合っているからといって常に一緒にいる必要はないの、時には愛と自分を隔絶して素の自分の視界で周りを見つめる、そんな時も必要なの!てへっ」赤根がおちゃらけた顔をした
「付け足すなら…俺達はまだ皆と出会って間もない、久が皆と俺達が親睦を深めるために用意してくれた時間はそのために使いたい。だろ?」
「相変わらず毒闇君には全部お見通しだね〜、じゃそういうことで」
「ああ、また後でなっ」
「…愛しているからと常に一緒である必要はない、か…」
「久殿!堕悪達と一緒に行動するのか?」
「あぁいや、すぐ行く」
「相変わらずここの品揃えはいいなぁ」
「ピシッ…」「あっそーそーそのまま、いいよー優ちゃんスタイルいいから似合うー」
「この服…隼好きかな?」
「…」店の外から遠巻きに賑やかな皆の様子を伺う
(あの場に入りたいのは山々だけどこの体じゃ場が悪いや)
「ねえ、そろそろ移動しない?」
「おっ?赤根殿から提案されるとは、これは無下にできんな」
「どこに行くんですか?」
「ふふっそれはね!」
「こ、ここは…」
「ランジェリーショップ!?」
「お、おい!」
「無下にはできないんでしょう?」
「ぐぬぬ…」
「わ、わースケスケーヒラヒラーピチピチーも、もうよくわかんなーい」
「形や形状、質はチキュウと変わりないだけどやっぱりここにあるのは、下の下着だけ!」
「よ、よせ赤根殿!」
「ここにはブラがないっ!」
「え?ブラって何?」
「き、聞くな光殿…それを聞いてしまえば感じなくていい敗北感を一生味わい続けることになるぞ!」
「え?どういうことなの?」
「ふふっ光ちゃん、カセイ人は自然成長だから乳房が存在しない…つまり、男も女も人類全てが"無乳"なの!」そう言い放つと赤根が胸を張る
「そんな世界で"貧乳"の私は唯一無二の絶対王者になれる!」
「うぅ…確かに、何故か負けた気がする…」
「くっ…赤根殿、何故こんな酷いことを!同じ敗者なら気持ちは分かるだろう!」
「確かに気持ちは分かる、でもね江美ちゃん…あなたならわかるはず、勝利の味は何ものにも変え難い至福だってことを」
「…くっそぉぉぉ」
「お、お客様どうされました?落ち着いてください!」
(目をやるつもりはなかったのに、僅かばかりでも気を配ったのが間違いだった。早々にこの場を離れよう)
「ゆ…!」(いや、たまには隔絶も必要だよな)
そう思い足を進めると
「ん?」通路の隅から飛び出した手がこちらを招く仕草をみせた
きっと、自分の方にいる誰かを呼んでいるのだろうと通り過ぎようとすると
「久くーん、ひーさーしーくーん」仁羅祭が小声の癖に異様に響きがいい声で呼んできていた
「なんだ!?いいから1回黙れ」
「あぁごめんごめん、珍しいね1人なんて」
「別で行動しているだけだ、少し行ったところにいる」
「なーんだ、僕の新事業を見に来てくれたわけじゃなかったのか…」
「新事業?」「まっいーや、ちょっと見てってよ」
「なっなんだ?」「いーからいいからっ」そうして裾を掴まれ黒い幕の中に引きずり込まれた
「くっなんだよ!」「みんなー!今日は集まってくれてありがとー!混合属性アイドルのはやみんと!」「かおりんでーす!」
「わー」狭い室内に歓声が響いた
「アイドル!?」(これが仁羅祭の言う新事業?しかし混合…) そんな思惑は次の瞬間掻き消された
「じゃっ1曲目!行っくよー!!」
「タッタラタッタラタッタタラララ
タッタラタッタラタッタラ
タッタラタッタラタッタタラララ
タッタラタッタラタッタラ
悲しい今の世界に
産まれた私達の長所は
心を照らし温めるはやみん
気持ちをほぐし傷を癒すかおりん
胸に秘めた力を使って人々を元気にするんだ
それが私達が産まれた 運命だから!
可愛いからアイドル♪
元気つくからアイドル♪
一生懸命生きることが人々を幸せにするんだ!
楽しいからアイドル♪
癒されるからアイドル♪
私達が愛するものは人々の喜ぶ笑顔だー!
タッタラタッタラタッタタラララ
タッタラタッタラタッタラ
タッタラタッタラタッタタラララ
タッタラタッタラタッタラ」
歌と踊りの中で雷と氷がステージ全体に広がり輝かしい演出になっていた
「わー」
「ありがとー!!」
「いいだろう」曲が終わってすぐ仁羅祭が語りかけてきた
「ええ、心が明るくなったよう」
「そりゃ良かった、今はまだ小さい箱だがここから伸ばしていってゆくゆくは星一のアイドルつもりだ」
「でも…混合属性アイドルなんて、人族の安寧の国…人民国にしては踏み込んだな?」(そうだ、この国は外面はいいが人族安寧の国と謳って遠巻きに亜人種を寄せ付けないようにしている。わざわざ入れようとすること自体稀なことなんだ…!)
「ふふっ久君、僕だって何も考えていないわけじゃない常にどうすればいいかで頭がいっぱいさ、考え方を改めることだってある。
それに君だって変わったじゃないか、それと同じことだ」
「…っそれはどういう」
「久君、人はずっと同じじゃない…変わるものだ」パァァァ
「…そうか」
「今日はありがとう、わざわざ付き合ってくれて」
「いやいい、おかげでいいものが見れた感謝する」
「おお、そんなに良かったか…」
「あっ居ました!」
「ひさしー!勝手にどこ行ってたのー?」
「あぁ、ごめんね優…」(やっぱり離れるのはよくないかも…)
「じゃ、僕はこの辺でおいとまするよ」
「あぁ」
「久殿〜…ん?あの背格好は…」
「どうした江美?」
「あっいや、なんでもない…」
「…皆楽しんだか?」
「良かったよ!」「えぇ…まぁ」「楽しんだ!」
「なら堕悪達と合流して帰ろうか…」
「は〜いっ!!!」
〜帰り道〜
「…」
「それでな、核の消化能力を低下させて腹を満たす?っていう料理があってよこーんなでっかい。で、一人で食べきったらタダって言う挑戦してみたんだよ」
「へぇーすごい!食べきれたの?」
「いや、ダメだったから隼に気体化させてこっそり食べさせた」
「なっ堕悪!それは犯罪だぞ、またドグセンに入る気か?」
「よくバレなかったね〜」
「いや赤根普通にバレてた」
「えっマジで?」隼が思わず驚く
「代金俺が払ったんだぞ〜後で返せよな〜堕悪」
「あぁまぁそうだな…」
帰り道からずっと考えていた、優は私を久じゃないと気づいていないのではなく考え方を改めた久だと思っているのなら…
それなら…このままでもいいのではないかという気持ちが…!
翌日
「さて、今日の予定は…」ピーンポーン
「これは…ピンポンラッシュ!?」ピーンポーン
(なんてな…今から行こう) そう考え、カメラに映る姿を見ることもなく玄関に向かう
「誰だ?」
「あっカセイ国守官様、どうも…月壊無倉です」
(知らない奴だ、接点構築前に久が出会った者か)
「何の用だ?」
「その、すみません仁羅祭のことで貴方以外にあの人親しい人物を知らなかったもので…」
「なんだ?仁羅祭がなんなんだ?」脳裏では柄にもなく心配が浮かんだ、しかし次に聞いた言葉には聴覚器官を疑った
「…今いる仁羅祭は偽物です。外見も口調も何ひとつとして変わりない、でも俺にはわかるんですあの人にはなにかと世話になってきた、感覚で"違う"と…お願いします国守官様、あいつの正体を暴いてください!」
「仁羅祭が…偽物?」
次回予告!
仁羅祭は偽物、月壊にそう言われ最初に抱いていた不信感と信じられない気持ちの中で交錯する久。そんな中、意外にも江美から仁羅祭に会いたいと言われ仲間達と共に会いに行く久、しかしそこには月壊もいて!?飛び交う疑念と真実に苦悩する果てに久は…
次回 第3章 12.悪魔の証明




