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永伝(エデン)   作者: ちがタニ
永伝(エデン) 第3章
33/36

10.マーズ

前回のあらすじ

雄司によって久へと変容させられた雄

雄司によって親を殺された正直と江美、復讐の手は雄に委ねられた。正直と蟲夢の協力により雄と優は逃げた雄司を追いマーズへ向かうが

2人の力剣士に行く手を阻まれたのだった


「マーズに蔓延る悪を穿つマーズの矛、速蔵霧牙が貴様らを逃がしはっ…!?」速蔵がなにかに気づく


「なっ貴様!奥にいる貴様だ!貴様Ƶか!」

「ああん?そういうお前はぁハヤキリかぁ!」

「貴様!その名で呼ぶなと言っているだろうが!」

「クッソォ、めんどくさいやつがいるなぁ」Ƶが指を噛む


「侵略者を討てないだろうがぁ!」

「ん?なんだƵ、侵略者と組んで俺の邪魔をする気じゃなかったのか?」


「んぁ?そういうお前こそぁ侵略者を討つ俺の手を止める気じゃなかったのかぁ?」

「ほぅこれは、珍しく意見が一致したな…だが!」速蔵が飛び出した


「侵略者を撃つのはこの俺だが!」2本の短剣を構え真っすぐ突っ込んでくる

「くっ!」

「秘技:遠遠連弐(えんえんれんじ)・改!」

シュババッ シュババッ シュババッ シュババッ


「龍槍刃!流槍刃!」ギギィーン キキキンッ

「なっ異形が!」「知っている!」ガキキィーン

「ぐっ…」(この衝撃、つい手を話してしまいそうになるんだが?)


「へっ!ハヤキリの野郎、たった一人に手こずってやがるなぁ」そうこうしているとƵも紫に光る剣を構え始め…

「秘技:Ƶ斬り!」ガギュリリィン

「ガハぁ…な、なんだぁ?」

「優には…指1本足りとも触れさせはしない!」「久!」パァァ


「ち、ハヤキリ!ここは一度停戦と行かねえかぁ?」

「ふっ、不愉快だが…ひとまず呑んでやるとするんだが?」


「後ろに下がっていろ優、連携攻撃が来る!」優に背を向け龍槍刃を構えた

「はぁぁぁ!秘技:硬破連参(こうはれんざん)・改」

「ぁぁぁ!秘技:Ƶ斬!」


(流槍刃はまだ使い慣れていない、龍槍刃は1本だけ…いや、思い出せあの時の感情を!)


ガギュリリリィン ガギュガギュリィン

「ぁが!!」

(1本だろうと、素早く動けば6本に対応できた!この程度…相手にもならない!) その瞬間だった


ギュイイン 背後から優に向かって伸びる刃

「龍槍刃ぁ!…!?」いつものように受け止めると…(龍槍刃が折れる!?) ピシッ

「ぐぅっ!」ギギィーン ガギガギガギュリリリリィン 激しい痛みを感じたものの、強引に巻き付き刃の起動を逸らした


「ぐっあれは…!?」振り返ると、その刃は天まで続いていた

「なにぃ!?」ギュイイイン 地面に刺さっていた刃が畝り始め…龍槍刃による拘束をものともせず高速で天に還っていった


「あれは、一体…?」

「嘘だろ!?蝕地虫(しょくじちゅう)が侵略者を攻撃したんだが?」

「…?」速蔵がなにやら騒いでいる…が、耳を傾けている余裕はない

「へっだからなんだと言うんだぁ?ハヤキリ!仲間割れしてくれて好都合ってもんだろがぁ」Ƶが再び攻撃の構えを取る


「やはり…まだか!」くたびれた龍槍刃を起こし臨戦態勢を取った

「こうらぁー!お前たち何をやっておるんだぁ!」

「!?」遠くから爆速で近づいてくる車両が見えた、上に乗っている人間がメガホンを使い叫んでいる


「速蔵!皿田(さらだ)!今回という今回はもう許さんぞ!」その声を聞いて2人の力剣士は青ざめはじめた

「やはり…何か間違いがあったようなんだが?」

「ちょ、おっちゃん!その名で呼ぶんじゃねーよ!」

「だぁれに軽口聞いてんだ!(そう)ガキ!」

「がぁぁ、下の名前までぇ!」


キキィーー ドサッ

車が止まると同時に立派な口髭を生やした男が勢いよく降り立ち

「ぜぇ、ぜぇうにぃぃぃ」ドカッ バコッ

「ぁが!!」2人の頭を殴った


「お前たち!この方はカセイから参られた国守官という一国の代表なのだぞ、それを…」憤っていた男はこちらの顔を見て場が悪そうな顔をし、ひとまず落ち着いた


「ご迷惑をおかけして申し訳ございません伝永様、私めにできることでしたらなんでも致します。勿論こやつらの処遇に関しましても如何程にも…」

「ならクビで」

「!?」その言葉に2人が驚愕する


「かしこまりました」

「えぇぇぇ!?」

大声をあげたのもつかの間、必死になる2人

「ちょ、待っおっちゃん!そりゃないって」

「じょ、冗談ですよね?冗談なんだが?ですよね?」


「わしはお前たちを甘やかしすぎた」

「おっちゃぁん!」「冗談ですよね?ね?」それに対しなにか告げられることはなく咽び泣く2人を置いて久達はその場を後にした


〜マーズ南北政府〜

カセイより少ない2つの大陸を除けば、他は海で満たされた大地を持つマーズ

ここはその片割れ、北と南に広がる大陸の中腹に建つマーズの主要都市だ


「この度は、わざわざ御足労いただきありがとうございました。」彼は外交官で他星との交易や関係を決める重要な役割らしい


「私たちとしましてもできればこちらから伺いたかったのですが…」そう言いながら空に浮かぶ虚ろな影を見上げた

「単刀直入に聞こう、あれはなんだ?」


「…例の宇宙海賊騒ぎの後、移動エネルギーに引かれてやってきたものだとされます。古い文献によれば蝕地虫というらしく、全長800m・複数本硬質の触手を伸ばし、宇宙空間から生命を捕えて捕食する。蝕地虫は神星系の生物ではないようですが一説に拠れば捕食行動を取ることでエネルギーを発生させる機関を有しているのではないかと言われ…」そこまで行うとため息をついて顔を下ろす


「ともかく、我々はあの対処に追われ、カセイに出向けなかった。なんと申し上げれば良いか…」

「気にする事はない、結果的にだが事が簡単に収まった。星間上の問題となれば収拾に今以上の時間がかかっただろう…それより、マーズへの被害は?」


「お咎めなしの上、ご心配ありがとうございます。確かにここ数ヶ月で数百人の犠牲を出してしまった、しかしようやく準備が整いました!今しがたマーズ外周基地より艦隊戦力が出発しております。これでひとまずは安息が訪れるでしょう」そう誇らしげに話していると

「さて着いたようですね、政府のデータベースならマーズからの出港記録ぐらい簡単に分かるでしょう。今は他星へのツアーや公共便は全て締め切っていますから調べる数も少なく済みますし」


「ああそうだな…優、着いたぞ」「うゅ?」


〜マーズ政府・星間交通省〜

「確認致しました、数時間前ギンガ行きの申告でその方が小型船にて出港しております」

「そうか…」(クソッ、やはり来ていたっ!だがこの時間…ちょうど足止めを食らっていた時に出港の準備をしていたのか)


「それでそのギンガってのはどこにあるんだ?」


「惑星国家ギンガ…近年、小惑星の吸収によってその面積を広げた星ですね…元々太陽に近く裕福だったギンガが他の辺境の星を迎えることでの大規模観光事業、さらには他星の船を襲う無法となっていた星を管理することにより宇宙全体の航路の安全性を高めたことはギンガが優れた惑星国家として他星に認められたのは有名な話でしょう」


「それで、その星への行き方は」

「伝永様、行くのはよろしいですが船はお持ちで?」

「あ?いやそれは…」

「マーズでは現在他星への交通手段は個人所有の船のみでとなっております。」

「マーズの船をお借りすることは…」

「…マーズとしては現在他星との関わりを絶っている状況、事前通告もなしにそれを今からというのは厳しい」

「なら…」

「それに、事前通告をしたとしても今すぐ出発できるわけではないのですよ!こちらにもこちらの問題がありますのでね」

「…」


「まぁ私たちも伝永様を引き止めたいわけではありませんから…蝕地虫の駆除が終わり、様々な問題がひと段落すればすぐにギンガへの便を解放しますゆえ、もしくはロウ国の技術力であればより早くギンガにゆけるでしょう。そう落ち込むことはありますまい」


「それもそうだな、ここまで助かった感謝している。それでは行くとするよ、優!」「はーい」


(思うところはあったがこれでいい、今は怒っても仕方ないんだ…堅実に慎重にこれまで通り耐えればいい…)

「久?」


「戦闘はもう始まっているだろうか…?」ふと空を見上げる

「…っダメ、迷うな…」(目的を忘れるわけにはいかないでしょ…)


「あぁ〜もうムシャクシャする〜!」

「わっ!?」突然のことに優は驚いて尻餅をついた


「いぃ〜あいつを逃がしたのも足止めを食らったのもマーズの対応が悪いのも全部全部結局!あの蝕地虫のせいじゃない!優のことも傷つけようとするし…許せない!」

雄はキレた

空を見上げ…叫ぶ

「見てなさい!緩い死に方させる気はねぇんだから!」




〜マーズ0-2星・近域〜

「ググゥゥゥゥ…」

「前方に沈黙中の蝕地虫を確認!」マーズを下に蝕地虫が静止している


「よし、今よりマーズ艦隊!全30隻の艦隊総力戦による蝕地虫の駆除作戦を開始する」

「全艦、主砲照準!目標、前方蝕地虫!」その声と共にの砲塔が蝕地虫に向けられる

「発射!」

ドン ドン ドン ドン ドドドン ドン!


「グググゥゥゥ!」

「クソッやはり動くか…」

「艦長!触手が」ガンッ ガン ガン ガンッ

放たれた触手が船を貫いた


「…!?」

「構うな!エネルギー炉をやられたわけではない!そのまま集中砲火!」

「ググググゥゥ!」


「よし、やはり効いているな…」

「ですが艦長、これでは船が持ちません!」

「3隻だ」「??」「せいぜい3隻だ、3隻失い蝕地虫は倒れる。それに我々が標的にされている間は国民に被害が出ない、嬉しいことにな?」


「か、艦長…」

「逃げたければ、それでもいい…1人でも残ってさえいれば標的は変わらないはずだ」

「いえ、最期までお供させていただきます」




「久!どっどこまで行くの〜!うわっ」急に止まった久にぶつかり優は再び尻餅をついた

「いったた〜あれ?ここは…」見渡すとそこは最初にマーズに着いた時の場所だった


「あっ!そっか、もう帰るんだねひさし〜」

「いや、まだよ!このまま帰ってあげると思うんじゃないわ!」

「ひっ久?」


「伝永家に伝わる無属性能力、龍槍!だったかしら?要は龍槍刃を分離したもの。これを蟲夢から貰った船で蝕地虫に飛ばす!恨みザラマシ、この想い全てぶつけてやる!」

「ひさし…?」(久…変だよ、いつもと話し方も感じもちがうし…でもなぜか今の久を見てると心がパチパチする、なんでなんだろう)


「ハァー」トボトボ

「ん?うげっ」2人が立ち止まった


「お?いい所に来たじゃないかお2人さん」

「けっ、んだよ侵略者ぁ!」

「お、おいƵその呼び方はやめた方がいいんだが?」

「黙れハヤキリ!どうせ俺達職なしにはもう関係ねえよ!」


「そんな君達に朗報だ、協力してくれれば新しい職を与えてやろう」

「はぁ?いきなり何言ってやがる、信じると思ってんのかぁ?」

「待てƵ、一応はカセイの国守官だ、雑用でもなんでも可能性は十分にあるんだが?」

「ちっ…んで用はなんなんだぁ?」

「今から蝕地虫を撃つ、お前達は核エネルギーをわけてくれ」

「!!」


「待てどういうことだぁ?蝕地虫を撃つって…いや、駆除作戦はもう始まってるだろ何を今更ぁ」「そ、そうだが?」

「関係ない、蝕地虫に腹が立つから撃つだけだ!お前達だって他星から来たと言うだけで侵略者呼ばわりするほど、あいつが嫌いなんだろ?」


「嫌いなんてもんじゃねえ、あいつのせいで俺の活躍を広める人間がいくら死んだことか」

「マーズの矛という異名が守る力のない能無しのレッテルを貼られることになったのは苦渋を飲んだが…?」

「あいつ、ゆるせねぇんだが!?」


「よし決まりだな、俺達の恨みを見せつけてやろう!」各自の意思が一致し、目的の材料が揃った

「ところで、一応聞くがお前達は核エネルギーを媒体に技を撃ってるんだよな?」


「そうだがぁ?」

「お前達ってマーズ人だろ?身体構造はどうなってるんだ?」


「…マーズはカセイ型惑星ですから、確かに俺達はマーズ人で人族ですが体はカセイ人と同じですよ」

「そうか、なら問題ないなっ優!」振り向いて優を呼ぶ


「なっ何、ひさ久?」

「2人の核からエネルギーを吸って俺に注入してくれ」

「えっ?」

「どうした優?やっぱり嫌か?」


「そうじゃなくて…いいの?」

「当たり前だろ?守るとは言ったが力を貸したい意志まで無下にはしない、俺は優のことを誰よりもわかっているつもりだ」

「ひさし!!!!!」優の触手が展開され、激しく畝りだした


「おい!こっちはもう準備できたぞ、仲がいいのはいいが早くしてくれ」服に穴が空くことを避けるため上着を全て脱いだ2人が呼ぶ

「よし、優頼む!」

「いっくよー!」ギュォン


(来る…!) 速蔵霧牙、属性:氷 皿田創、属性:風

2人の意思が優へと伝わり、雄へと繋ぐ

「無属性能力:龍槍!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

皆の総意が形を成した


「できた!」

「がはぁ…あとは任せたんだがぁ!?」それと同時に2人がエネルギー切れで倒れた

「ああ!発射だ!喰らいやがれ蝕地虫!」

「くらえーーー!」


〜マーズ0-2星・近域〜

「ぐっうあぁぁぁぁぁ」ドグブァァァン

「くっ3隻目大破…し、蝕地虫は?」

「グググググゥ!」ガンガンガンガンガツンッ


「蝕地虫健在!触手が…4隻目に!」

「読みが甘かったか…頼む間に合ってくれぇ」

ゴォォォォォ

「ググググゥゥ」ガッコーン

「グ…」ズジャァァァ


「な、何が起きた?」気がついた時には蝕地虫はその身を宇宙にぶちまけ沈黙していた

「ええー映像を分析中…突如現れた所属不明機によって蝕地虫が貫かれた模様、生命活動停止しています」


「…はっ!攻撃を受けた艦は?」

「無事です、引火は確認されていません」

「わかった、念の為避難を行う!蝕地虫は別命あるまで待機!」(神の思し召しか…艦長貴方はよくやってくれました)


「…手応えありだな」核が疼く、確かな感触を

肌で感じた

「やった!やったね久!」

「ああそうだな…ははっ」(やってしまった、これからが1番面倒だということが手に取るように分かる…まぁ、いっか)


その後、マーズ艦軍からの恩賞やなんやらで帰りの船や一刻も早い星間交通の再開等の有益なことがあった反面、軍事行動への介入や借りてた船をぶっ壊したことでの蟲夢からのお叱りもあり全てが丸く治まったとは言い難い状況に落ち着いた。


えっ?2人の力剣士はどうしたかって?


「…見ろ鈴木!新しい部下だ」

「マーズの矛!速蔵霧牙、全力で職務を全うするんだが?」

「俺の名はƵ!俺が来たからにはぁ、カセイの悪は俺1人だぁ!」


笑顔で佇んでいる久を見て鈴木はこう思った

(ああ…この人、面倒な事全部こっちに丸投げしてきたよ…)

次回予告!

新たに苦楽を共にする仲間となった毒闇と赤根

2人との親睦を深めるためショッピングに行くことを決めた久達、しかし久は皆に内緒でたまたま出会った仁羅祭に着いていって…

次回 第3章 11.心境の変化

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