8.父の帰り
前回のあらすじ
久達の前に現れた男、水羅炎男は雇って欲しいと懇願してきた。始めは疑っていた久も料理を美味しそうに食べる仲間達の顔と、彼の姉である由美の味を思い出したことで打ち解けるが
炎男の真意、由美の核を追求され核再生装置へと案内した。終わりを悟った久だったが、何故か乗り気な炎男の提案で由美の再生を再び決意することとなったのであった
「うまい!」朝の食卓に食への条件反射が響いた
「いやぁやっぱりうまいな、炎男の料理は」
「2人も食べてから行けばよかったのに」
この場に並ぶのは江美と優を除く5人
今日は魔王城にて正直と由美復活のための話をしに行く日、先に姉と話しておくとの事で早めに出た江美に元々行く予定だった優が付き添ったのだ
「そうだよな、こんなうまいの1日3食の1食足りとも逃すのはもったいないぜ」
「気に入って貰えて嬉しいです、ですが1日3食と言わず何食でも振舞いますよ!」
「まじ?最高じゃんか」隼は喜びの表情を浮かべ炎男に向かって合わせるように手を挙げたが
「あ…でも今日はいいや、ごちそうさま」
「ん?もう食わないのか?」
「はい、今日ばっかりは時間をかけてられませんから!」隼が立ち上がった
「今日は待ちに待った対戦ゲームを3人でやる約束でしたよね!ほらほらっ堕悪さんも光もさっさと食べていきましょう!」
「なるほどねっ!」
「そういうことなら、炎男には悪いが急がないとな!」堕悪と光は急いで食をかきこんだ
「ごちそうさま!!」
「お粗末さまでした」炎男が残った皿を片付けに入る
「ありがと…!?そうだ」
「隼?」
「炎男!一緒にゲームしようぜ」
「えっ?私は構いませんが…お2人は?」
「いいよな?光、堕悪さん!」
「いいわね!」
「いいと思うぞ、なにせ推奨プレイ人数2〜12人だしなっ」
「で、ではよろしくお願い…します」
「それじゃ!早く行こうぜ」
「えっ?皿はどうするんですか」
「へっせっかく食洗機があるんだから今日はそれに肖っておこうぜ」
「は、はぁ…」3人に連れられる途中、炎男は振り向いてこちらの顔を伺ってきた
心配せずに俺に任せておけと目配せする、炎男の怪訝な眉はたちまち安堵した
「俺も行ってくる、留守は任せたぞ」聞こえるはずはない、久は虚空へそう言葉を送った
決意を胸に扉を開く
「澄んだ空だ」あの日目覚めた時と同じ光景
彼の記憶は未だに雲がかかっているが、なにも問題はない、彼の心はこの空のように澄んでいるのだから
「おーい久ー!」
「!?」外に出た途端、自身を呼ぶ声がした
どこか懐かしげのある声を追ってみると伝永久家の家に着いた
家の前に誰か立っている、後ろ姿だが青い髪に背広を纏った男のようだ。しかしどこかで見たような…
「ん?」男がこちらに気づき振り返った
「っ…父さん!?」記憶にはないはずだった
だが人目見た瞬間、この男こそが伝永雄司であり自身の父であると確信した
「はっ」そして父の後ろに立ち並ぶ人影が目に入った
「っ…伝永知子!伝永生遠!伝永住子! 」 紛れもない、家族の皆だった
「ど、どうし…」「久ぃ会いたかったぞぉ!」
状況が呑み込めず、頭の中が疑問で溢れ困惑する久を雄司はただ抱きしめた。その心地がよくつい何を聞こうとしたか忘れてしまった
「おかえりなさい、また会えて嬉しいわ久」
「ワッハッハ、流石はワシの孫じゃ」
「久、元気にしてたかい?」
「ああ…ああああ…」皆の声が響き、心が安らいでゆく (これが〜平和か〜)
ガバッ 抱きしめていた手が振りほどかれ心地よい時間は終わりを告げた
「さて、あとは中に入って近況報告といくか」
「ああ…はい、父さん」言われるがままに家に入ろうと足を進めた
「待て!」
声がした方へ振り返ると自身と同年代ぐらいの紫髪の青年が、同じく同年代ぐらいの赤髪の少女を連れてそこに立っていた
青年が久達を見つめる…目が合った
「クソッ遅かったか…」悔しそうな表情を浮かべたかと思えば
「久!お前は騙されている!そいつはお前の父親なんかじゃない!」
「おいおい、突然何を言い出すんだ?なぁ久ぃ」
「そうだ、その通りだ!」(なんだこいつは…父さんが父さんでないわけがないだろう、しかし何故俺の名前を知っている?)
「きっ…どうにかしなければ」 青年の表情に焦りが見える、髪が逆立ち雰囲気が変わり始めた
「まぁまぁ落ち着いて、そうか君もしや久とお友達になりたいのか?そうかそうか…」
そう言いながら父さんは俺の肩を掴むと…
ドゥッ 飛んだ
体を見回しても羽の類はおろか機械もなく、ただ背広の裾をなびかせて父さんと俺は空にいた
「なっクソッさせるかっ…!?」
「こらこら〜いけませんよ〜」
青年が跳ぼうとしたところに、母さん達が立ち塞がった
「親子水入らずを邪魔するとは」
「少しお痛しなきゃいけないかね?」
「ちっ…」
「ふふふ、久とお友達になりたければまずは私達とお話しましょうね〜」
「さて久、あとは母さん達に任せて先を急ごうか」笑顔で青年と向き合う母さん達を後にして、父さんと俺はカセイの空を飛んだ
「ふぅ〜これぐらいでいいか?」ある程度行ったところで父さんが止まった
「さて、近況報告にしよう」
「はい、父さんまずは…」ギチュィィィン
「デバッグモード:近況報告」
「デバッグモード、速やかに情報を伝達します」
「ほぉほぉほぉ、ほぉ?ほぉほぉほぉ…モード解除」 「モード解除」ギチュィィィン
「はっ?」
「と、父さん?今…なにが?」意識を失っていたことに気づいたその間虚空に意識だけが移動したような感覚だったことを朧気に覚えていた
「さて、行くぞ!」
「え?行くって…どこに?」
「ふふん、お礼参りにさっ!」
「フ、はぁフ、はぁ…」(クソッカセイ国海岸まで飛ばされるとは、その上中途半端に人型サイズに戻ったせいで転移すら儘ならん始末…くっ憎き伝永久!次完全形態に戻ったら必ず殺してくれる)
「フ、フフフフフ、フハハハッフハッフハハハッハァハァ…」(フ、ひとまず今は一刻も早く都市部に向かい経口摂取でエネルギーを吸収しなければ)
宙に復讐を誓った伯爵が再び歩みを進めるところだった
「最優火炎」
「フなっ!?」ドバァァン
完全な不意打ちだったものの、伯爵はこれを避けた
しかし…
「ほぉ、最優火炎!」ドバァァン
「フぎっ!」
「最優火炎!最優火炎!最優火炎!最優火炎!」
(すごい…火属性の最上位に位置する属性能力をこんなに連続で撃てるなんて)
「フがっ」「フぐっ」「フげっ」
始めこそ何とか避けられていた伯爵だったが
威力もさる事ながら範囲の広い伝永雄司の連続攻撃を浴びせられるうちに軽度の被弾を繰り返しその身はボロボロとなっていた
「フ、はぁフ、はぁ…」
「最優火炎!」ドボバァァン
ついに直撃した、煙が上がると全身黒焦げ、被り物は塵となり白目を向いた伯爵がそこにいた
(すごい…本当に倒してしまうなんて)
「父さ…」「トドメだ、最優火炎!」父雄司は既に瀕死の伯爵に攻撃を行おうとしていた
「待っ…て父さん!」ガッ ドバァァン
久が雄司の腕を掴んだことで、放たれた攻撃は軌道がそれ伯爵の横に墜ちた
「久?」雄司が顔に疑問を浮かべたが
「父さん、奴にはまだ聞きたいことがあるんだ今ここで仕留めるべきではないと思う」
「…そうかそうか、まぁなら仕方ないな」久の言葉を聞いて雄司は笑顔に戻った
「ありがとう父さん、じゃあ早速…」
「さて、次の場所に行くか〜」そんな言葉には目もくれず久を抱えた雄司は再び空を飛んだ
「えっ父さん?奴…伯爵は?」
「ふっ歩けるようになるまでは時間がある、早々に居なくなりはしないさ」
「あっ、そうだよね…父さん」
「…ところで、次はどこに向かっているんですか?」
「時期にわかる」「…?」(この地形、方向、海岸からの距離を考えると…えっ?)
「着いたぞ!」
「こっここは…!?」2人がやってきたのは天空樹、雲の上にそびえ立つ魔王城だった
「父さん、どうして…ここに?」
「ん?決まってるだろ邪族を滅ぼすんだ」
それを聞いて戦慄した
「え?何言ってるんだよ父さん」
「邪族戦争は停戦中なだけでまだ終わってないだろう?」
「そ、それは…だからって!待ってよ父さん」
「ちっなんだ久?せっかく停戦させたのは父さんを待つためだと納得してやったというのに…」久と話す雄司の顔が険しくなった
「父さんに逆らうというのか?父さんに!この父さんに!」
ドスンッ ドスンッ
「なんですか全く騒がしい!」2人の声に苛立ってか音を立てながら奈落神が現れた
「な、奈落神…」
「伝永久と…誰ですか貴方は」
「奈落神だと?久、今そう言ったのか?」首を傾げる奈落神を他所に雄司はしきりにそう問いかけた
「え?ああうんそうだけど、父さん奈落神と知り合い?」
奈落神が首を横に振った
「まさか、私と貴方は初対面のはずですが」
「そうか、ここにいたのか…神器発動!」雄司がいつの間にか付けていた、蒼い籠手のようなものを奈落神にかざした
「と、父さん…急になにを?」
「…発動しない、何故だ?」
「じ、神器使い!魔王様…ええい暗黒魔弾!」ドォォォン
宙に向かって放たれた暗黒魔弾は大きな音を立てて爆発した
「魔王様ー!至急私の元へー魔王様ー!」
奈落神が大声で叫んでいる
「ちっ」「父さん?…はっ!」魔王城から人が出てきたことが見て取れた
(あれは…非武装のギガーンと正直に優と…江)
「美"ッ!?」ギャギギィィィィィン
江美の刀と流槍刃が鍔迫り合う
(…あれは確実に父さんを狙っていた、何とか間に合って良かった…ぐっ)
ガガガガガガッガガガガッガガガガガガッ
「江美!どうして父さんを狙った!説明してくれ!」
「悪いが話してやる暇はない!この刃をのけろ!」
ガガガガガガガガッ
「ぐっ…」江美の力がさらに増す、久は雄司を気にかけ振り向いた
「と、父さん…!?」雄司はこの世のものとは思えないものを見たような顔で立ちすくんでいた
「くっ…だ、誰か江美を止めてくれ」
「魔王様ー!魔王様ー!早く私に命令を!」奈落神の叫び声を前に久の声は届くはずもなかった
「奈落神?って久と江美さんが何故…」
「ちょっと待って、2人の後ろに立ってる人もしかし…あちょっと優ちゃん!」ギガーンと正直が状況を把握しかねていると優が飛び出した
ガバッ 優が背後から江美に抱きつきその動きを封じた
「くっ、邪魔するな優殿!」
「ケンカダメー!仲良くぅー!」思った以上に優の力は強く必死なはずの江美を完全に制していた
「助かった優、落ち着いてくれ江美きっとなにか誤解があるはずだ、父さんは…父さん?」
「優?優だと…なぜここにいる失敗作!」
「なぜお前が!お前がこんなところにぃる!」雄司の瞳孔が見開き、この世の負も悪も知らぬ純情の少女を睨みつけた
「そこまでだ!」 その声は皆の視線だけでなく雄司の眼光までもを移した
「あれは、先の紫髪の青年に少女…と堕悪!?」
「話は全部聞かせてもらったぜ、久の親父さんよ!」
「ふぅぅぅぅぅ」雄司が深く息を吐いた
「堕悪…」
「久!とくとして聞いとけよ!今までの負債、きっちり返してやるからなぁ!」
____________________
ピコンピコピコピコピコッピピンッ
「よしっ溜まった、アバン相撲ラッシュ!」ドグガガガァン
「おわあっ」隼が衝撃で天井に埋まった
ピコンッ「こっちも溜まった!行くわよ」
ピコンッ「おっ、こっちも溜まったみたいです!」
「なにっ同時に!?」
「はぁぁ、クロノドリラー!」
「ファイヤー炎舞!」ドグゴキンゴワァァァァン 「あうっ」「がぁぁっ」爆風によって光と炎男も壁に埋まった
「くっやりますね」ドグガガァン
「いえいえ、お2人こそ」バァンバババァン
「ふふっ、まだまだこれからよ!」ドッグワァンドガドガドガッドガガガバッシャァーン
「…いやどう考えてもおかしいだろ!」ドガァン
「…どうしたんですか堕悪さん、いきなり大声なんか出して」ドンドンドンドンドンッ
「ん、それより堕悪さん少しも動かしてないじゃないですか」バシャドガバシャァン
「そうだよ、ほらゲージも溜まってるしほら早く撃って」バゴォーン
「いやこの揺れと爆音、どう考えてもゲーム音じゃねえだろ!外で戦闘が始まってんだ!ほら、早く来い!」ドググァガァン
「えーっ全くもう…」3人は渋々堕悪とともに外に出た
「くっ」ババババババッ ボォォ ポポポポポンッ バシャッバシャボワァァ ドグガァン シュッシュッシュッシュッ ガガガガガッキィン ボウッ ドゴグワァーン
「…本当に、戦いが始まっているなんて」目の前の光景を前に唖然とする3人
「だから言っただろ、全く少しは俺の話も聞けよな…」
「まあそれはそうと、人の家の前で騒がしくするやつは一刻も早く沈めませんとね」
「待て炎男、沈めるにしてもどっちに加勢する気だ?」(…戦っているのは青年と少女対女性と老人2人、戦力差は分からねえが…ん?そういやあの女性優に似てるような…)
シュンッ シュバッ
「ん?」「どっちに加勢するかですって?」「え?お前ら何を…」「そんなの!少女を守って戦う青年に決まってるじゃないですか!」
「ちょ、あっ待てお前ら!」
「加勢するぞ!」 隼と光が勢いよく青年達に近づき叫んだ
「誰だぁ?」
「誰かはどうでもいいことです!」
「おや〜お仲間さんですかー?」
「ワッハッハワシの槍の錆になりたいようだな!」
「ふっふっふワタシの毒を味わいな!」 3人の視線が2人にも向けられる、それと同時に
「うふふ〜煉獄火炎、離岸流、暴風嵐、聖光剣撃、暗黒覇道」 ドドブワァァァ
「ぐっぐわぁー」ガシッ ガシッ 吹き飛ばされた隼と光を鎖のような触手が掴まえた
「君ら!加勢はいいが、生半可な属性能力では奴らには敵わん…属性技が使えないなら引っ込んでいろ!」 ジャジャジャジャジャジャジャジャラッ
「ぐわっ」地面に降ろされた隼と光は紫髪の青年の首から3本の鎖が伸びるのを目にした
「鎖連刃、ワープゲート、無限刃!」空に大量の黒い穴が現れたかと思えば穴達から鎖型の触手が飛び出す ガガガガッガガガガッガガガガッ
ドグゴキンゴワァァァァン
「うふふ、無属性能力の掛け合わせですか、通りで攻撃が通りづらい筈ですね」
「理解頂けましたら退いていただけますか?」
「うふふそれでは…お義父さん、お義母さんお願いします」返事のつもりか、女性が退くと老人2人が前に出た
「無属性能力:流槍!」シュキンッ
「無属性能力:劇薬精製」
シュババババババッ ポポポポポンッ
「死ねえ!」
「ちっ…!?」シュッ シュバッ
「隼大蝸聖風!」
ヒュゴォォォォォ
「ぬううう」「くぅっ」パシャッパシャッ 今度は老人2人が吹き飛ばされた、女性が2人を支える
「君ら…」
「えへへ、さっきのお返しですよ!」
「要するに、槍使いと毒使いってことですね俺達の敵じゃありません、まあ女性の方は属性能力の最上位前を連発してきて厄介ですが…堕悪さん!」
「んあっ?」
「何ボケっとしてるんですか!さっさとこっちに来てください!終わらせますよ!」
「お、おう…」
「くっ、これで終わるとでも?」
「まだ、まだまだこれからよ!」
「援護します!お義父さんお義母さん!」
「はぁぁぁぁぁ堕悪死手!隼大旋風!聖光大剣!無限刃!」ヴォォォン ゴオオオオオ ジュキジュキンッ ガガガガッガガガガガガガガッ
「ぐわっ」「ぎゃぁぁぁ」「くっ…うぁぁぁ」
「よし、赤根!今のうちだ」
「はーいっ!」赤根と呼ばれた少女はとても収まりのつくようには思えないほど大きなコルセットを取り出し力尽きた3人に取り付けた
「加勢ありがとう、おかげで先に進める、それじゃあこれで…」ガシッ 去ろうとする青年の肩を堕悪が掴む
「ん?どうした?」「どうしたじゃねえ、手を貸してやったんだからなんで人んちの前で戦ってたかぐらい教えろ」
「うぐっ、そうは言ってもこれは秘密の…ん?人んちの前?君らここに…国守官管理所に住んでいるのか?」
「ああ、そうだが」
「正確には、伝永久さんの家族ですけどねっ」
「家族?」
「あっこら隼、余計なことを言わなくていいんだよ」「何を気にしてるんですか?もう軍の人とも折り合いついて公言するのは自由になりましたよね?」
「だからって、出会ったばかりの人間なんだから迂闊に言うもんじゃ…」
「家族…家族…」
「あっいやなんでもないんですちょっと…」
(家族…こいつらも雄司の手先か?いやそれはないこの加勢の意味がなくなる…なら一か八だ!)
「なるほど伝永久さんの家族でしたか、これは失礼、私は久さんの親友の毒闇と申します。こっちは彼女の…」
「彼女の赤根赤根ですっ!よろしくねっ」
「もうあまり時間がないので急いで伝えますね」堕悪達が言葉を返す暇を与えぬうちに
毒闇は語り出した
「久さんの父、伝永雄司は悪人なんです。久は洗脳によって悪に染まろうとしている、それを止めるために伝永雄司を追っていたんです…先の彼らも洗脳によって家族という認識を植え付けられた伝永雄司の忠実な下僕で…」
「何を言っているのかしら?私は伝永久のお母さんの伝永知子よ!」
「そうじゃ!ワシも伝永久の爺ちゃんの伝永生遠じゃ!」
「私も伝永久の婆ちゃんの伝永住子よ!」
「騒がしいな、赤根!念には念だ」
「は〜いっ!」赤根がコルセットをさらに重厚に仕上げてみせた
「存在否定に対する激しい拒絶、このように彼らは洗脳状態にあると言えます。では説明も終えたことですし私達は伝永雄司を追います。ご加勢、ありがとうございました」早口で場を占め早足で立ち去ろうとする2人
「待…て」
「なんですか?」
「宛はあるのか?伝永雄司を追うと言っていたが」
「確かにありませんが…!貴方はあると?」
「ああ…毒闇、お前は伝永雄司が悪人だと言ったが俺達邪族に近しい者達からすれば、闇属性への差別意識を強め支配ではなく根絶を目指していた奴は悪以外の何者でもなかったんだよ、奴の所業が…」
「それで?急いでんだが、早くしてくれ!」
「…邪族戦争は伝永雄司が居なくなったことで結果的に停戦を果たした、奴が戻ってきたということは…」
「はっ!そうかつまり奴の目的は…」
「魔王城!」ズコッ「光ぃー!」
「なるほど…方角はどっちだ?」
「ん?どうしてそんなことを聞くんだ?」
「っ…ワープゲートは視認した場所にしか出せない写真でもあれば別だが、今は反復で行くしかない!」
「…待て、それならいい方向がある!ここの屋上にワープゲートを出せ!」
「今度はなんだよ?」
「いいから!急いでんだろ?」
「っ…わかった!」バンッ
「よし、入れ!」5人は急いで中に入った
「うわぁ高い…」地上30階からなる国守官管理所の屋上は街を一望するのに最適であった
「ここで何をする気だ?」
「まあ黙ってあっちを向いてな」堕悪が指さす方向に毒闇は目を向ける
「邪力譲渡!」ゴワァァァァ
「なっ何を…」「今だ!邪力解ホーを」
「邪力解放!」するとみるみる視野が広がる
「はっ!なにか見える」「よし!それは天空樹だ、魔王城に繋がっている…あとはわかるな!」「ああもちろん!」バンッ
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「前に江美に教えてもらったのが役に立ったぜ!」
「邪力譲渡による身体能力強化法…か、真面目に聞いていたとはな」
「俺の事なんだと思ってんだよ…」
「何はともあれやっと追いついた、見たところ多勢に無勢だし大人しく久を渡してもらおうか!」久を傍に寄せる雄司の周りには彼にに睨みを効かせる者達が集まっていた
ジャ キ ゴ キィーン
「うぉぐっ!!!!!!」
(なんだ?) 久の目には皆が一斉に突き倒されたように見えた それ が認識できていなかったのだ
「うぅ…」江美が盾になり、優は顔を上げることが叶った
「な…に?」雄司の背からは流槍刃に似た6本の触手が生えていた
ガシッ 「うっあっと、父さん?」
雄司が久を掴み上げた
「そうかそうかそうかそうかそうか、チキュウで日常モードにしていたお前は真の意味で感情を失い、こいつらとの生活で感情を取り戻し、命令の実行が困難になっていたということか!」
「父さ…?みんな!」ギチュィィィン
「デバッグモード:初期化」
「デバッグモード、速やかにデータを消去致します」「…」
「ま、日常モードはもう不要か…汎用モードのバックアップデータを移行…」「させるかぁぁぁ!」ギュウウィン ガッキィィィン
久の背から出た龍槍刃を雄司は自身の龍槍刃で弾いた
「ぐっなんだ?」久の体が青白く光っている
「フーフー、デバッグモード中、フー意識が移されたことに気づかなかったな!フー流石に2度目は逃さない!フー接点作っといて…よかった!死ね伝永雄司!」
「ぐぬっ」ギィンガギガギガギガギガギガギガギガギ
1本しかないにも関わらず激しくうねり雄司を圧倒する龍槍刃
「ぐっぐぐぐぐぐぅなんだ?お前はぁ」
「伝永雄!あんたに虐げられた娘の怨みだ!」グギギギギィンギィンギィンィン
「雄?ははっそうか!余った核が再生されたというわけか、そして元手となった核を分離し勝機を狙っていた!つまり、お前の弱点はそれだー!」ガキキキキィン
雄司の龍槍刃が広がり久の龍槍刃を絡め込もうとする
「なっ!」守りに徹していた龍槍刃が突如展開されたことに対応が遅れ、久の龍槍刃は5本の龍槍刃に抑え込まれた
グィィィン 残った龍槍刃が優に向かって伸びていく
「はあっ」 (駄目、駄目駄目駄目駄目駄目駄目…もう二度と壊させない!)
「がぁぁぁぁぁ」龍槍刃を伸ばし、体を前に進めた
「ぐぅっ」龍槍刃が久の背に突き刺さり、直ぐに抜かれた
「はぁっ?」振り返ると雄司は空高く飛び上がっていた、こちらを見向きもせず高速で
「ぬぁっぎげるな!」ガバッ
追おうとした体に優が抱きついた
「久、行っちゃダメ。その怪我、治さないと…」
「ははぅ…うぐっくっ…」
「わかった、優」
「うっ…あっ」堕悪が起き上がると優と奈落神とギガーンと正直が立っていて、他の皆は優の触手に治療されていた、そして…
「起きたか…堕悪…」
「うぇっ久?雄司は?伝永雄…」堕悪の言葉は聞き届けられなかった
「じゃあ…話をするね」
次回予告!
伝永雄司は何者なのか、毒闇達ですら測り違えていた彼の本当の顔そして数々の所業が伝永家と夜暗家の過去を今、皆が知る
次回 第3章 9.過去に失ったもの達




