3.休息の裏
前回のあらすじ
ロウ国の蟲夢良李により宇宙海賊、邪眼族の情報が明かされるも現状打破の手にはならず塞ぎ込む政府国と本国。
その一方で平和のため邪眼族に立ち向かう堕悪達だったが邪眼族の夜多、弍参、泥発と未確認飛行物体ダイダーロムにより苦戦を強いられるそして長引く戦闘に怒りを覚えた邪眼・保打が巨大戦艦ラウメアの主砲!RED・レーザーで街を焼く
それを目の前にして堕悪達はただ、絶望したのであった
「先程の謎の赤い光、ここ人民国沿岸部からも観測されました空を埋め尽くすほどの赤い光は、遠くから見ると1本の線のように"ユウトピア"から続いていると見えますね。えー専門家によるとこれらはやはり侵略者・邪眼族との関係が大きいと見られ、また…」人民国の空でも確認された赤い光、その実態を知るもの達が今ここで呆然としていた
「砲身が光ったな、まず間違いなくロウ国近郊に構える巨大戦艦から放たれたと見るべきだろう」
「まずいですね、いよいよ相手も手段を選ばなくなってきたようです…」
「り…だよ。」
「む?」
「終わりだよ…もう!」仁羅祭が声を荒立て感情を露わにする
「久君も蟲夢っちも、もう呑気に話していられる余裕はないんだ」俯き訴えかける仁羅祭にたいして僅かな沈黙の後
「悪いが仁羅祭、わしは諦める気などないぞ?」そうつっぱねる蟲夢
「なら久君!君だけでも」
「仁羅祭様、久さんはまだ…」鈴木と黒田に抑えられた久は俯きただ心から祈っていた
「俺は、あいつらを信じて待つと決めた…それまでは」ただその一点張りで
「久君、もう猶予はないんだ刻一刻と時は迫ってる今すぐ決断するべきだ!こんなことを言うのも…なんだけど、彼らはもう」ギロッ 久の視線が仁羅祭に集中する、顔をしかめずとも伝わるその気迫に後ずさりする仁羅祭そして
「わ、わかった…こうなれば僕も己の道を行かせてもらうよ」そう言って歩み出した仁羅祭は帰り際に…
「久君、本当に…本当に考え直してはくれないんだね?」そう言い残し部屋を後にした
「久君殿、仁羅祭すら居なくなった今ここにいる必要はない…仲間を待つと言うならば一旦自国に戻ってはどうかね?」
「久さん…」考え込んでいた久に声をかけようと鈴木が動いたその瞬間
ガタッ
久は立ち上がると「ならば蟲夢、貴方も一緒でなければ」口を開いてそう言った
しかし、それを聞いた蟲夢は首を横に振ると
「それは厳しいのう、どうやらカセイ国国守官管理所には特別アクセスを阻害する措置が施されているようでな…わしの力でも及ばんわい」
「では、このデバイスに移れるか?」
(業務用の小型デバイス、市販の物であるこれなら大丈夫だろう)
「おお!これなら問題ないようじゃ、ちと描画サイズは小さくなってしまうがの…」
そうしてロウ国国守官蟲夢良李を連れ、鈴木の車で向かう先はカセイ国国守官管理所!というところまで来た久達
とここで、懐から携帯を取り出す久
プルルルル
「はいもしもし…えっ?……………」
ガチャッ
「あー失礼、少々つてに連絡をしていただけだ気にしないでくれ」
「ふむ、怪しさ満点じゃのう」笑みの混じる疑いの目を向ける蟲夢に久は一言
「…着いたら話す」そう告げた
〜カセイ国国守官管理所〜
「はぁ〜、一先ず安住の地って感じがしますよ〜」
(鈴木がため息をつくなんて珍しい、流石に長時間運転の疲れが出たか…)
「ああ、ご苦労ご苦労」
「ったく、久君殿は誰を相手としても随分と仏頂じゃのう」エントランスで一息つく一同に、迫る何か
「鈴木さぁーん!」
「ん、どうした?黒田」玄関で見張りを任せていた黒田が来た
「それが…」
「とっとっとっ…」ぐらっ どてっ ばたん
「げっ、はぁはぁ〜」「はぁやっと着いたか…」入口を跨いで最初に見た物は堕悪とボロボロの江美、そして…
「久さん、ただいまです」2人の後ろでどこか申し訳なさそうに佇んでいる隼と光
「大丈夫か?」
「へっなんとか…へへっ」そう言うなり座り込む堕悪と
「江美、その足は…」
「はっ、こんなもの先の葛藤に比べれば大したことはない…さ」
(強がってはいるが、どう見ても痩せ我慢だろう)
「待っていろ、今…」
「あらあらあら〜?」自動ドアが開くと同時に現れた人だかり、その正体は…
「お姉…ちゃん?」
「随分と無理しちゃってるじゃな〜い?」
「よ!」「ただいま久〜」「ラキュッ!」
突如、眼前に現れた邪族達と優に皆の視線が集中する
一方その頃
〜ロウ国近郊・巨大戦艦ラウメア〜
「こちら管制室、クァンタムとダイダーロムの接近を確認。これより収容シーケンスを開始する」ゴオオオオオン
艦を収容するべくハッチが開き、発光して箇所を示す
ビーッ ビーッ ビーッ ビーッ
「クァンタム収容完了!クァンタム収容完了!」合図と共に扉が開くと、雪崩のように船員が降り出す
ドタドタドタドタッ ぎゅーっ ぎゅーっ
「ぐにゅぅ〜お、押すでない!押すでないい!」
「あらら〜こーりゃまぁた遅くなりそうだなぁ〜」船員同士がひしめく入口でもみくちゃにされる夜多と泥発、そんな2人を尻目に…
グオオオオオオ
「ダイダーロム収容準備、ダイダーロム収容準備、ダイダーロム収容準備…」焦る管制の1人が通信機を手に取った
ジジッ 「弐参さぁん!収容シーケンスに従ってくださいよ、もう大分近づいちゃってますって!」
「あぁん?大丈夫だってぇ、俺の操作技術舐めんなよ?マイクロ単位でキッチリいれっから!」
「いや、舐めるとかそういう事じゃなくて…マニュアル!マニュアル通りに!えちょっと待っ…」
「カタカタカタッタン!よしセット完了!最速で行くぜ!」
「ひいえええええ」耐えず近づく戦艦に為す術もなく怯える船員、しかし
キシューーーーッ
「ダイダーロム収容完了!ダイダーロム収容完了!」
次の瞬間、扉を開け颯爽と通り過ぎる弐参
怯える船員を横目に彼もまた仲間の元へと行く
「遅かったですね、また随分とっ。」
「きっ傷(️きず)〜!?いや、だってさぁ〜」時を同じくして外へとやってきた夜多は彼を慕う邪眼・傷に言葉責めを受けていた
「言い訳無用、でしたよね?」その容姿に似つかわぬ威圧感を出す傷
「ふっ」
「ちょっ、何笑ってんのさ泥発!」すると
「よそ見ですか?」「ひっ」ギロリとした眼差しで傷に見つめられた夜多はたちまちたじろぎ
「ご、ごめんよ傷〜」申し訳なさそうに謝っていると
「ほほ〜う、また司令殿は傷坊にこっぴどくやられているご様子。」
「っ、冷やかさないでくれよ弐参〜」
「ハハハッ」困り顔の夜多をよそに歩みを進める弐参だったが…
「おやおや弐参、どこへ行くおつもりで?」
「ギクッ」傷の声を聞きたちまち冷や汗ダラダラとなる弐参
「な、なにか…?」恐る恐る振り向くと
「弐参!また管制を困らせていたでしょう?」
「ぎやあああああ!」弐参の叫びが辺りに響きわたる中
「ん?…夜多さん?逃げようたってそうは行きませんよ?」
「ギクッ」(まずい、気づかれ…)
「ひげえええええ!」流れるまま2人の叫びが快晴の空に響きわたった
「なんだなんだぁ〜騒がしいと思ったら?」そこへ艦首から飛び降りる者が1人
「よっっと」ドオオオン
音の割に軽い足取りで向かって来た者は
「あ、爺符さん!」その場にいた全員の目がその者へ釘付けになり、隙をついて駆け寄る夜多
「あ〜えーと、保打から主砲発射の諸々で後で礼をしたい…と」傷に目をつけられんと慌てて話題を口にした夜多
「ははっ気にすんじゃねえ、俺はあいつと違って言われたことを聞くことしか出来ねえからな、咄嗟の判断が出来るやつは優先してやらねえと…」そうして硬い話をした爺符は担いでいた鎚を地に置き
「まぁでも、そう言ってくれるなら後で酒の1杯でも奢ってもらおうかねえ」と微笑みかけた
「わかった、伝えておく」そうして夜多は振り返ると、仲間達を見つめ
「まぁ何はともあれ、みんなご苦労さん!」
夜多の声を聞いて、それまで己が為に乱れていた仲間達も照れ臭そうに同調する
「よっし、ちと早いが今夜は宴と行くか?」
「この星に昼夜の概念はないだろ」
「ったくなんだよそれ、人口太陽ぐらい作ればいいのによ!」
「ハッハハハハハハハ!」
「まぁいいじゃないか、細かいことは飲みの場でなぁ〜?」そうして艦内に戻ろうと移動する仲間達
「あっ、ちょ待ってくださいよ〜」そんな中、なにか言いたげだった傷はタイミングを逃したようで慌てて仲間達を追いかけていった
時は、邪族達と優が久達の目の前に現れた瞬間
「なっ…」驚愕し、固まる一同
「な、何故…?」そんな中抜けた声で問う江美
「何故?って…増援よ増援、そうでしょ?伝永久さんっ」
「ああ、よく来てくれた。早速それぞれでみてやってくれ」正直に指示を出すとぞろぞろと邪族達が入りだし皆の元へ集まる
「久君殿、これは一体…」完全に硬直していた空気の中、最初に意を発したのは蟲夢だった
「見ての通りだ、正直!例の解析は済んだか?」
「ええ、あれの事ね私も一応れっきとした科学者だからあれは技術的に…」
蟲夢は辺りを見渡した
(第二次属性戦争、邪族戦争と呼ばれたそれの代名詞ともなった"邪族"、それが今ここに集い恨むべきものを助ける…)しかし疑念は最も安易な物へと噛み砕かれていく
(久君殿は邪族?協力者?或いは悪の…)
「しかし、偶然とはいえ仁羅祭に退いてもらえたのは助かった。彼にはこの現状を容認することは厳しいだろうからな…」
「久君殿!」か細かった蟲夢からは予想もつかぬ強靭な声が発せられた。あまりの衝撃に周囲の動きが止まる
「わしとてまだ、君のことを図りかねている…意を汲ませるには少々伝えるべきことが不足しているのではないのかね?」
背筋が凍る、思考が滲む、欲を張り、互いの領分に踏み込みすぎたかと焦る…しかしそう思っていたのは蟲夢だけだった
「いや、それはない」1度たりとも表情を変えず久は、ただそう突っぱねた
「な、何故言い切れるのじゃ?そんなふうに…」再び訪れる焦燥、しかし今度は短く…
「何故なら、言わなければならないことがあるのはあなたの方だからだ!」蟲夢の神経が強ばる。
「違うなら、宇元とあんなに対立したりはしなかった。違うなら、もっと率先して皆を引き止めたに決まっている。そうしなかったのは俺と同じ、後ろめたさがあったからだ!」
「カハァ!?」確信を突かれたかのように仰け反り、指の隙間から恐る恐る久を見つめる蟲夢
「今、現状に焦りを感じ協力を最も欲しているのはあなたの方だ、ならばこそ今ここでハッキリと!それを打ち明けてくれ!」
「うぐっ…」顔をひきつらせ必死で抑えようとしていた蟲夢もついに感情を露にした
「邪眼族を、彼らを助けたい…」蟲夢の心情、その場の全てに伝わるほど猛烈な気持ちであった
「確かに…不可能かもしれない、じゃがわしは!長きに渡る支配から解放してくれた希望である彼らを信じたい!侵略の理由じゃって、きっと深いわけがあったんじゃ!わしはっ彼らをっ…」
(わ、わしとしたことがこんなに取り乱すとは…) そうして言い切ると、久に目を向ける
「よく言った、これからよろしく頼む!」と蟲夢の手を取るように久が返事をした
「ワァー!!!!!!!!!!」その光景に辺りの全員が歓声を上げた
「久君殿…」
「さて、話もまとまったようだし本題に戻るわよ!」そうして久に駆け寄ろうとする蟲夢を正直が遮った
「行っくよ〜」プスプスプスッ
優の触手で皆の傷が癒されていく
「優殿、いつもかたじけない…」申し訳なさそうに頭を下げる江美
「へーきへーきっ、じゃあ次!だーくもっ」
「邪力譲渡!」振り向くと堕悪は既に邪族の手で治療されていた
「あ〜悪い優、俺はもう平気だ…」
「むぅ〜」優は不満げに頬をふくらませた
「それでこの超巨大レーザーだけど…」正直達と共に対邪眼族戦への作戦会議が進められていた
「仮に邪眼族を捕らえることが出来たとしてもこれに撃たれれば一網打尽、だからこれをどうにかするかが肝なのよね」
「ま、まさかちゃんと生かす為の作戦を考えてくれてるのじゃ?」
「フンッ当たり前じゃないっ」
「ぅぅ感動じゃ…」蟲夢の目がうるうるとしだす
「あーもう、いいから続けるわよ!」そう言って皆に紙を配った
「超巨大レーザーの解析情報、特性:超高エネルギー波動砲…」
「って、いくらなんでも大雑把すぎるだろ…なんだよこれ」
「しょうがないでしょ!持ってきた機械だけじゃ正確な測定は困難だったのよ」性能不足を言い訳に正直が嘆いていると
「何を悩んでるんだ?うちにも超高エネルギー波動砲はいるぞ?」と現れたのは…
「ん?」「誰?」「誰だ?」「誰ですかこの人…」
「ハッハッハッ教えてやろう我は!ギガーン大魔王の真の姿、闇枝疑柿だ!」
「ああ〜」「そういえば。」その名を聞いて皆の頭にふつふつと少しづついつかの記憶が湧いてきた
割れた仮面の中に潜む、丸く整えられた赤髪
浅黒い肌にまだ若さの残る顔立ち
しかしそれでいてこのハイテンションである
「疑柿さん、それでうちにも超高エネルギー波動砲があるってどういうことなの?」
「フフフフ、それはだな…」普段より数段意味深な笑いを見せつつどこかへかけて行った
そして
「ほれギラン!皆に自己紹介してやれ、仮面を脱いでなっ」
「ギガーン様、これは…」ギガーンはギランを連れ戻ってくるや否や突飛なことを言い出した
「我らは今協力関係にある!とあらば、顔見せするのが礼儀ってもんよ」
「えぇぇ」なかなか状況の掴めないギランだったが絶え間なく急かしてくるギガーンの意を汲み、ひとまずはこの場を済ませようと仮面を脱いだ
「ギランもとい偽来定末、邪族軍1番隊隊長を務めております」
「ほぉ」「金髪だったとは…」
その言葉遣いとは裏腹に、目つきの悪さとメラメラとした黄色い髪に荒々しさを感じる第一印象だった
「あっえーと邪族軍、1番隊副隊長の…ギガントもとい疑業目目ですどうも。」
ギランの行動を見て慌てて合わせたのは小柄な少女、炭のように黒い髪と幼げな顔立ちでありながらもギランを見習い動きに気をつけている様子…しかしこの場にいるただ1人とは目を合わせることを避けているようだ
「ギラン…そうかつまり」
「伝永さん、どういうこと?」ギランのことを知らないのかいまいち掴めていない正直に説明する
「ギランの属性技、ギラングレファランドーラだ火闇混合のあれなら火力は申し分ない上連発も可能…か?」
「はい、一応回復無しで4発までなら」
「!?」(改めて聞いたがやはり、あの時退いてもらえていなければ危うく…)
「凄いじゃない!それなら使える策も出てくるわよ」正直は歓喜した
「ハッハッハッ流石はギランだな!」
「ギランすごーーい」
「で、その策というのはなんだ?」
「急かさずとも、今から話すわよ」
正直の進言で、状況を一から振り返り意見していくこととなった
「まず、私達が勝つにはあの超巨大レーザーを止めるしかない」
「うむ」「ああ」
「でも近づこうにも見つかればレーザーの発射は避けられない、だからあえて撃たせるのよ」
「撃たせる?それでは何の解決にも…」
「撃たせたところをそのギランなんとかで相殺するの!」「!?」それを聞いて一同ははっとする…しかし
「そこで隙を突いて戦艦をドーンとやってバーンとレーザーを無効化するのよ!」ギガーンに似てきたか、語彙力が低下しつつも饒舌に語る正直に
「それ、どうやって近づくんだ?」堕悪がふと、そう問うた
「え?それは普通に…」きょとんとした顔をする正直に堕悪が話し始める
「仮に1発目を相殺できても2発3発4発と次は来る、ギラングレファランドーラが尽きる前にどうやって近づくって言うんだよ」
「それはジャンボジェットとかで行けるでしょ?」
「じゃんぼじぇっと?なんだそれは」
「は?何言ってるの飛行機よ」
「飛行機?あんなものでどうやって近づくんだ?」
「はぁ?えちょっと待って本当に何?ふざけてんの?」
「お、落ち着いてお姉ちゃん私が説明するから」怒れる正直を宥めると江美が口を開く
「お姉ちゃんよく聞いて?いつこっちに来たか知らないけど、カセイはチキュウとは違って航空技術が発展していないの、だから先進国でもなければ大した速度は出ないんだよ」
「なっななななによそれぇ〜」それを聞いた正直は溶けるように机に突っ伏した
「先進国である本国は、本作戦に関与しない…いや待てよ?鈴木!」「無理です」即答であった
「…」「…確かに本国ならそれぐらいはあるでしょうが残念ながらドグマセンターにはヘリぐらいしか配備されていません、まぁ使い道ないですからね」鈴木はそう言って申し訳なさそうに苦笑いした
「あっは、隼!あの空飛ぶやつは?私乗せた時の」
「ウィンドウィングか」久達の視線が隼に向くも
「あーいやぁあれは無理だよ光、だって元々単独飛行用の属性技だもん。あの時はまだ行けたけど今度も大丈夫かどうかは…」可能性1つまた1つと消えていく中
「久君殿!」
「蟲夢、なんだ?」
「ふっわしを誰だか忘れたのか?カセイ1の技術先進国、ロウ国の国守官じゃぞ航空機など幾らでも持っているのじゃ」
「本当か?」
「うむ、じゃがそれを貸すには条件がある、小娘!」
「えっなに?私?」選ばれたのは正直だった
「先程、艦を破壊すると言っていたがそれは却下させてもらおう…無傷で制圧するのじゃ!」
「なっ、それはさすがに無理よ!」
「蟲夢、言いたい事はわかるがこの状況では」
「久君殿、わしは何も君達に全て投げ出そうと言うわけじゃない。わしも出よう」
「!?」
「久君殿はわしと同じ、そう言ったそれは守りたいもののために全力を賭す気持ちもまた同じなのじゃ…」
「邪眼族は、わしが何がなんでも説得する!力は貸す、じゃからわしにも…任せてくれんか」ほとばしる瞳で訴えかける蟲夢に
「わかった、敵主力はこちらが受け持つ貴方はあなたの正義を全うしてくれ」久は応えた
「ああ」
「ところで、戦闘機は誰が操縦するつもり?聞いたところロウ国からは人手としての戦力は出せないんでしょ?」
「そうじゃな、しかし操縦方法を教えることは出来る、無知であろうともわしの手にかかれば飛ばすことはできるじゃろう」曖昧な答えの蟲夢だったが今は他に思いつくものもなくこれでいくしかないと皆考えていたが
「いや…いるぞ、適任者が!」
〜ロウ国コロニー・格納庫〜
ゴゴゴゴゴゴゴゴ ギュイイイイイイン
巨大な音を立て蓋が開くと、内部のレールに沿ってエレベーターが上昇する
「オーライ!オーライ!」
乗っているのは戦闘機、過去ロウ国が作り上げた最新鋭のものだ
「おおおおおおお!」洗練されたボディとメタリックな塗装に優れた技術力で見る者の目を圧倒する武装
これを初めて目にしたカセイ国軍の兵達は興奮冷めやらぬまま蟲夢のマニュアルに沿って操縦のために励んでいた
「要請を受けて下さり感謝いたします。お久しぶりですね軍師三等。」
「国守官命令ですからな、断る選択肢など最初からないのですよ」顔をしかめ不満を垂れる三等はひと呼吸おくと
「ですが正直ありがたく思います、邪族共の侵攻に継戦願わず基地壊滅に追いやられ皆苦汁を舐める日々そんな我らにまた、輝けるチャンスを与えてくれたと…久殿、共に邪眼族とやらを打ち倒しましょうぞ!」
「ああ、そうだな」そう返し久はその場を離れる
「ふぅー」一息つくと
「だいぶ気張ってたようじゃの」デバイスから蟲夢が顔を見せる
「ん、なに貴方の気持ちに免じたまでだ…とはいえ少々危ない橋を渡りすぎた気もするが」
「邪族達とのことは大丈夫なのか?」
「ああ、俺の仲間とすれば素性を疑われることはまずないし万が一には正直も付いている、角さえ誤魔化せばあとは些細なことだ」
「角ねえ…」
____________________
「知っているか?実は、我と正直は邪族ではないのだ!」
「ああ、ん…え?」「マジかよ…」
「ハッハッハ、驚くのも無理はない!だがその証拠に我らには頭に角がない、しかし邪族であるギラン達にはしっかりと頭に角がある」「ラッキュもあるっキュ!」
「たっ、確かに…」ギラン、ギガントその他の邪族達を見回し納得する堕悪
「なんで知らないんですか?」
「堕悪さんも邪族軍出身ですよね?」
「全くだ」
「はぁぁ?隼と光はいいとしてなんで江美はそんなんなんだよ」
「何を言っておる、このくらい常識だぞ?」
「なっ…」常識、堕悪の身に最低限備わっているはずのそれを否定され崩れる堕悪
「なるほど、理解した」久は知識を深め
「どうでもいいわね…ズズズズ」正直はそう吐き捨て出された茶を啜った
____________________
「それはさておき、となると残る問題はあとひとつだけじゃな?」
「ああ、だがここまでこれたことで打つ手は見えてきていた…あとは最後の作業に取り掛かるだけだ」
〜巨大戦艦ラウメア内・居酒屋ウカ亭〜
「飲めや!歌えや!踊らにゃ損!損!」
「むはははははっ今宵は宴ぞぉ!」ここに集った邪眼族達は久方ぶりの贅沢、戯れ、休息に喧喧たる様を見せていた
「そこで俺が駆けつけたわけさ、泥発の代わりに撃ち出されたオリオンの一撃に…」
「ほええ〜」「よっ天才!ほらよっ」
「っとサンキュー、ったぁうめえ!」戦闘での活躍を嬉々として語る弍参は隅に佇む夜多に目をやると
「夜多司令〜たまには飲みませんかぁ?」
「司令〜こっちに来て一緒に飲みましょうよー」部下達と一緒に絡もうと呼ぶが
「いやぁ、僕は遠慮しておく〜!」
「けっw、せっかくの男前がもったいない…次は付き合ってくださいよぉ!」毎度の如く断られた弍参は、すぐに切り替え部下達と飲みに戻る
「夜多司令!あの…話があるんですが」再び1人となった夜多の元へ
「やぁ傷、どうしたんだ?」傷が話しかけて来た、夜多はその様子を見ると
(傷の様子が普段と違う…言葉がたどたどしい時の傷は決まって無茶を言い出す時だ。) 話を聞いた
「なるほど…次の作戦の時お前も同行したいと。」
「保打さんがいるのはわかっていますが、それでも夜多さんは時に身勝手な無茶をする人です!そんな貴方に惹かれたのも事実ですが…」「ん?」
「と、とにかくやはり私が付いていなければ信用できませんっ無茶なのはわかっていますがどうか!」
「お、おいおい落ち着いてよ傷、僕から言えることは…そ、そうだ!保打が言っていたんだ。REDレーザーの脅威は知れ渡ったから反抗勢力はもう出ないだろうって」慌てて聞いた言葉を思い出し言ってのけるも
「それは分からないじゃないですか!頭の良いあの人のことだきっと、こんな状況でも抗ってくる馬鹿を想定してない…だから!」
「ま、参ったなぁ〜」目を逸らす夜多に
「いいじゃねえか!」
「じ、爺符さん!?」
「へっせっかくの最高戦力を出し惜しみするなんぞもったいねえじゃねえか」
「いやしかし…」
「安心しろ、ここはこいつと俺でちゃんと守ってやっから好きにしてこい!」と言いながら爺符は泥発の襟を掴んだ
「むっ?な、なんだ私は宿命の相手と決着をつけるという重要な…おい!」
「へっこういう時は年寄りが負債を被るもんなんだよ」
「なっ、私はまだ20代だぞ!年功序列ならあんたの次は弍参だろ!」
「おっそうなのか、ま細かいこと気にすんな…」
「恩に着ます爺符さん!夜多さん?これで文句は言わせませんよ?」傷は振り返るとそう言ってきた
「は、はは…」(まぁ〜なにか起きたわけでもないし別にいいか)
ジィー ジィー ジィー ジィー 夜多が渋々納得すると突然警報音が鳴り響く
「なっなんだ?」「ど、どうしたっていうの?」
「し、静かに!メッセージが聞こえませんよ」
ジジッ
「保打こちら保打、夜多司令聞こえますか?」
「俺はここにいるどうした保打?」
「敵に動きがありました、REDレーザーの威力を知らしめるべく各地の重要施設らしき場所のデータベースにその旨をばらまいたのですが…その1つから返信がありました」それを聞いた全員に緊張が走る
「要件は交渉をしたいとの事でしたが、我々が駐留するこの付近に戦力が集中しつつある報告を受けました…ええ、わかりやすい罠です」
「わかった、それで俺達はどうすればいい?」
「すぐにREDレーザーの準備を、ですが念の為爺符さんはそこにいますか?」
「ああ、爺符!」「なんだぁ?」
「爺符さんにラウメア防衛を一任し、司令、弍参、泥発、傷は部隊を率いて出撃をお願いします。爺符さん…頼めますか?」
「へっお安い御用よ、その代わり後で1杯奢ってくれよ!」「…ええ。」
爺符は快く受け入れると
「渡りに船だな、あとは俺に任せて行ってこい!」
「了解しました〜各員!出撃準備!」
「アイアイサー!!!!!」
ゴオオオオオ
「来たか…」西の空にダイダーロムを筆頭に隊列を組んだクァンタムが飛んでくるのが見えた
「では早速、RED・レーザー」 ジジッ「よし来た!矮小な手を使う身の程知らず共にかましてやれ」保打の通信を受け爺符が命じる
ビオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオとてつもない音と衝撃波を引き起こし天空樹目掛けて赤い光が伸びていく
あとは一瞬にして全てが片付く、そう信じて誰も疑わなかった
「フッビンゴね…」
「闇・火混合属性技:邪炎咆哮波動砲!」
ゴフォアアアアアアアアアア
強大なエネルギー同士がぶつかり、互いに押し引けぬ状態が続いたかと思えば…ドファァァ
突然混ざりあい、爆ぜた
「ぐっ」
「きゃああああ衝撃波がぁぁ」
「押されるな、加速するのじゃ早く!2発目が来るぞ」
その意に応え蟲夢達の乗る飛行機は次第に加速しラウメアとの距離を縮める
艦内は起こった状況を飲み込めず静まり返っていた
「うっ、そだろ…?」
「ん?爺符さん?どうしました?爺符さん?状況を報告してください!」保打の声を聞いてたちまち我に返ると
「えぇとレーザーが消滅…した」
「え?なんですって?」「れ、レーザーが…」
(くっ混乱している…今はとにかく指示を出すべきか)
「爺符さん、次弾を!とにかく次弾を発射してくださ…」
「覚醒!!」
「変身:ブラッディクロス」「変身:パラグアイ」
ココァァオオォォォォォォォォォォ
「ぐあっ」「なんだ?」
「向こうは上手くいったようだな」
「ハッハッハ、行くぞ皆の者!」
(このタイミングでの奇襲、まさか陽動?本命は艦船の…!?)
「司令!クァンタム全機と至急ラウメアへ帰還を!」
「させるかよ!」「ブラッドクロス!」ガンッゴゥゥゥゥゥ 瞬時に引き返そうとするクァンタムを鈴木と黒田が遮り、落ちる一機のクァンタム
「保打、どうやら無傷での帰還は難しそうだな」残ったクァンタムから夜多達が降り立つ
「こうなれば早期決着で戻るしかないよな?」
「ええ、それが最良の選択かと」
「各員、戦闘準備!ここを片付けて必ず帰るぞ!」「ええ!」「はい!」「おう!」「うむ!」
「あとは信じて待つのみ!全力をあげ、ここで抑えるぞ!」
「だとよぉ!心して挑め皆の者!」
「ああっ!」「はい!!」「おー!」「行くぞ!」
皆が意気込んだところで天に放たれる弾丸
「邪眼光の影となれ!偽夜煙幕!」保打が掛け声と共に撃ちあげたそれはカセイの変わらぬ青空を暗闇で覆った
「邪眼・解放!!!!!!!!!!」
次回予告!
なにがなんでも必ず!今はただその言葉を信じ戦うのみ、明かされる邪眼族の真の力
両者1歩も引けぬせめぎあいが続く中
彼らはいかにして勝利するのか
次回 第3章 4.最初で最後の夜




