2.使命と目的
「フフ、流槍か伝永家固有の無属性能力により生成でき「5大属性」全ての能力を強化できる代物だったな…フ、だがな!」
次の瞬間伯爵は左手をこちらに向ける「無属性能力:透視」
「無属性能力…それは」 無属性能力は5大属性とは違い個人の技量や遺伝子的な物で見出される、流槍もそのひとつである
「フフ、見えるぞ流石伝永家の核 光闇風水火
全ての属性が混ざりあい輝いている」
核の色を見られれば手の内を知られたも同然
「厄介だな」
「フ、貴様の力量は見えた、その程度の力ではワタシを倒せはしない…潔く散れ!」
と言うと一直線に突撃してきた。
「くっ」 なんとか抑えるも体格差と力量に押され埒が明かない
するとビルからさらに軍服の者達が多数現れた
「伝永様、助太刀致します」
そう言って威勢よく伯爵にかかるが、
「無属性能力:別次元生物召喚」
そうして円錐形に尖った被り物から目を覗かせる腕が刃の生き物が召喚された
「フ、雑魚の相手までしてられん殺れい」
そして先程の惨劇と同様辺り一面がおぞましい光景となっていく
一刻も早く倒すべく魔術を発動させる
「火属性能力:灼熱」 攻撃力の高い火属性能力を使うが華麗に避けられる
「フ、隙が大きい火属性能力を使うとは、自身の力量を測りかねてるぞ」
「しまった、この隙に確実に攻撃を叩き込まれる」 と思ったが何とか無事だった ブシャー
と思いきや右腕が根元から吹っ飛んでいた
核エネルギー勢いよく吹き出し激しい痛みと共に腕を再生しだす
「フ、せっかく攻撃を当てても再生されてはかなわん、ならば全身切り刻んでくれる」
そう言ってさらに両足を切られた
「ぐっうぅ」
もはや手で体を支えるので精一杯だ、核エネルギーも無限では無い直に再生もストップするだろう
「せ、せめて」 必死で流槍をつかもうとするがその腕を踏まれ流槍を奪われる
「フフフ、貴様はその身の丈に相応しい最期にしてやろう」 伯爵はそう告げ、核に流槍を突き刺す
伝永久は動かなくなった
「フ、まぁこんなものか意外と呆気のないものだな、さて…醜くももがく雑魚共を片付けるとするか」
「待て」 振り返る伯爵の顔は被り物の上からでもよく分かるほど驚きを隠せていなかった
だがそれはまた自分も同じである。なんと胸を貫き背中までに貫通している流槍が変化し触手のように背中に生えているではないか、靱やかに伸び鋭利な先端を持つその触手はまるで自分の身体の一部のように自在に操れる。
「h…何故、まだ生きて…しかもそれは」
「流槍刃」
「聞きたいことがある、まだ死ぬ訳にはいかない」 (片足は再生できたが、もう片方の足は欠損したままか…) 立つことがままならず決していい状況とは言えないが新しく得たこの力を使い勝ってみせると意気込む
「ぐぬn、あっ…フ、流槍には核をも再生させる力があったのか興味深い、だがしかし貴様はまだワタシに一度も攻撃できていないこの事実はいくら核を再生したところでねじ曲がらないのだ!」
一直線に向かってくる
「なんだ、さっきと同じじゃないか」 流槍刃のリーチを活かし接近を許さぬ連続攻撃を繰り出す
「h…なんだと、まるで攻撃が追いつかんこの力!」 次の瞬間伯爵に攻撃が当たる!
被り物が外れかけ素顔が…
「見え…ないか」
「クッ「無属性能力:次元ワープゲート」今日はここまでにしておいてやる、貴様は必ずワタシが倒すさらばだ」
(…このままだと逃げられてしまう!) 急いで追おうとするも力尽きまた意識を失ってしまう
「ダメだ…」
次に目が覚めた時、ベッドの上にいた
「目が覚めたか」
「誰…だ」 目の前には白い白衣に身を包んだ老人がいた、だが妙に若々しく見える
「誰だって…酷いじゃないか10年来の友人だってのに再会の言葉がそれは」
「10年来の友人!?」 この老人が到底そうとは思えない、だが今は冷静に自身の身に起こったことを説明する
「実は自分には記憶がないんだ、分かっていることは伝永久という名があることと伝永雄司に対し強いなにかを感じていることだけで他は分からない」
老人はしばらく俯くと
「なるほど記憶に障害か、なら自己紹介も兼ねて改善に向けてこちらの情報を出そう、私は
「下倉・博士」 〜肉体成長年齢78 精神成長年齢21切りの永遠の21才、伝永雄司様亡き現在はその身に変わりここカセイ国軍国守官管理所で国主官代理を務めている〜」
「国守官」ということは一国の代表ということだ驚嘆していると質問を投げかけられる
「ところで、成長年齢についてはわかるかな?」
「はい、それはカセイ人は精神の成長速度にに対して肉体の成長速度が一定であらず個体によって肉体年齢にかなりの差が生まれる。また、生まれた時から精神成長年齢を優先されそれに見合った仕事を与えられる、カセイ人では一般常識ですよ。」
「解説ありがとう、これは大丈夫なのかならば失った記憶は主に他者との関係性か…」
博士が主な記憶の損失を確認する中でふと疑問を打ち明ける。
「下倉・博士、伝永雄司亡き今とはどういうことでしょうか?」
「下倉でいいよ、博士なんて硬っ苦しい」
「分かりました」
「ただしこっちも楽にさせてもらうよ久君」
かなり崩すと下倉は口を開く
「それはね久君、消えたんだよ君と一緒にね」
「消えた!?」
「数ヶ月前に起きた闇属性が邪属性へと変異した事件は分かるかね?」 下倉の言葉に頷く
「それが起きた日から君共々いなくなってしまってね、今日やっと君を見つけたって聞いたんだが記憶がないなら確認のしようがないか…」 俯く下倉に続けて聞く
「それでどうしたんです?その後」
「あぁね、いやはや大変だったよ統率者を失ったことで軍の指揮は下がり勢いを増した邪族とこの期に乗じた闇属性のテロリスト共に他国への転移装置まで占拠されてしまった、私も柄にもなく国守官代理なんかやってさぁ…だけど君が戻ってきてくれた!記憶がないとしても君は元々強くて優秀だ、カセイ国の全てを預けても問題ないだろう」
そう言うと下倉は頭を下げカセイ国を今しがた預かって欲しいと頼んできた
「分かりました、話の筋はだいたい理解できましたし協力致します。その代わり記憶を取り戻す手伝いをしてください」
言いたいことは山ほどあるが今は状況の改善が先決だろうと思いこう告げると
博士は頭をあげ、歓喜に満ちた表情を浮かべる
「ありがとう、もちろん全力をあげて補助するから安心してくれ、記憶の方もしっかり手伝わせてもらうよ」
そうして情報を円滑に知るため、国守官会議の準備、伝永久帰還の報告等等を手配する下倉
「とはいえすぐに発表すると軍の業務で手一杯になってしまうだろうから暫くは黙っておいて私が代わりに対応するよ、その間久君は記憶探しをするといい」
(早速動き出そう、下倉の計らいでここの人間はなんでも自由に動かせるようになったことだし…)
「こちらがご命じされた伝永家関係者様々の住所及び電話番号となっております」
記憶を取り戻すには身辺関係者に話を聞くのが1番と考え確認するも
「これは…」 ほとんどの住所と電話番号が現在使われておらず調べても確認が取れない状態にあったのだ…
もちろん使用状態にあるものもあったがその多くは下倉・博士や面会予定の国守官で有益となるものは無い、そんな中最後のページに一つだけ手書きで書かれていた名前を見つける
「水羅由美…」 唯一の手がかりと考えこの住所の元に行ってみることにした
「しかし…」 手書き故名前と住所しか分からず流石に胡散臭い、見当違いの予感しかしない
ビルを出てしばらく住宅街を道なりに歩いていると商店街の立ち並ぶ大通りのような場所に出た。
すると何やら人だかりができているようで向かってみると大柄で腕に刺青のある男と青い髪の女性が何やらもめている
「てめぇここに何しに来た」 「だから、夕飯の食材を買いにきただけって言ってるでしょ」ただのいちゃもんかと思い立ち去ろうとするが
「しらばっくれんじゃねぇ!闇属性の癖にそんな嘘が通用すると思ってんのか、今すぐ警察に出頭しねえならここで消えてもらうしか無さそうだな」
(闇属性…確かにそう聞こえた)
「そういえば下倉がなにか言っていたような…」
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「しかし、闇属性も難儀なものだね、ただでさえ核の色が邪属性に似ているというのに変異までする有様ならよりいっそう差別が激化するだろうね。生憎私も闇属性混ざってるから、ここ最近は驚かれることが多くて困るよ…」
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(となるとあの男がやっていることはれっきとした属性差別だ) だが観衆はただ傍観するだけで誰も止めようとはしない
「あまり問題は起こしたくないが…差別を見過ごした者に国の代表が務まるとも思えない、行くしかないか…」
「ちょっと本気?そんなことしたら取り返しつかないわよ!?」
男が能力を使おうとする「火属性能力:火炎、消えろ闇属性!」バシュッ
寸前でいなした
「ん?なんだお前闇属性に肩入れするとはどういうつもりだ」
「お前こそ、こんなことをして恥ずかしくないのかこれはれっきとした属性差別だぞ」
そう言うと男は嘲笑した
「ぷっw お前なんも分かってないようだなここは光属性の居住区だぞ、ここでの闇属性はいつ邪属性になるか分からない…居るだけでテロと同義なんだよ!」
男がそう言うと周りの人間もそれを肯定するかのように声をあげる
この状況をどうすれば覆せるものか、ふと女性に目をやると
「久?」 自分の名前を知っている様子だった
「誰だ何故自分の名を知っている」 それを聞き女性は動揺し慌ただしく喋り出す
「誰って私だよ私水羅由美、え久でしょ?」
水羅由美、この女性があの手書きの主であることを確信し思考を巡らせる
「そういえばあの時下倉がなにか言っていたような…」
「おい、俺を抜きにして喋ってんじゃねえ さっさと手を離せ消してくれる」 騒ぐ男にこう告げる
「お前こそ何もわかっていないようだな彼女は闇属性ではない「混合属性」だ!」
男や観衆がざわめき出す、やはり知らないようだ
「なんだ、混合属性?」
「そうだ、混合属性とは異なる属性が子を作る時遺伝子のバグで属性が混じり合うことだ、例えば火と光で「雷属性」、水と土で「氷属性」、闇と風で…「影属性」だったりな」男が動揺しだす「まさか!?」
「そうだ、彼女は影属性であり光属性の居住地にいてもなんら問題は無いはずだ」
「ぐぬぬ…」
「それとも、これ以上いちゃもんつけると言うならカセイ国守官としての権限によりここでお前を塵にしてやってもいいんだぞ…」そう言い切ろうとすると
「ストーップ!久もういいよ、お相手さんも悪気があったわけじゃないしほら早く行こ」
ソソクサー
手を引っ張られ大急ぎでその場を立ち去ることとなった
「なんだったんだ?一体」
大分離れたところで立ち止まると
「もー久!ボケてんのか知んないけどあれ以上のブラフは禁物だよ!」
(自分は叱られているのだろうか?助けた人から…)
「助けてくれたのは感謝してるけど、影属性は同時に光属性も入ってないと太陽光を受けられないの相手が博識なら見透かされてたわよ」 (下倉が影属性のことを話していたので使わせてもらったがまさかそんな穴があったとは…)
「それに、国守官とかそんなのテレビつければ誰でも分かる簡単なことなのにバカじゃないの!?」
「いえ、それは…」 誤解を解こうとするが手で口を塞がれてしまう
「それに、助けてもらわなくても暴漢として警察に突き出してちゃんと説明すれば問題ないし、私見かけによらず結構強いから」
「そうでしたか、すみませんボケているわけではないのですが、いかんせん記憶が無いもので」その言葉に驚愕する由美
「今はとにかく情報を得ることに専念したく貴方を訪ねようと思っていたのですが…丁度よかったです、伝永久のことについて知っていることを教えて貰えますか水羅由美さん」
「記憶喪失かぁ〜了解あ、由美でいいよ元々そういう関係だったし」 (そういう関係とは一体…?)
「知ってることかーとりあえずその自分っていうのはなんなのかなー?」
(今気づいた確かに自分は一人称がない、毎回言葉に詰まり自分に頼るのだ)
「なるほど〜じゃあ一人称から教えてあげる久のはね〜」 新たな記憶にありつけると思うと気持ちが昂る
「それがし!」
「そ れ が し?」 いくら自分を知る人だとしても流石に疑う、イメージが全く湧かなかったからだそれどころかそんな一人称初めて聞いたまである
「あれー?信じてないなー、ホントだって」
「…分かりました、由美さんこれからもそれがしに協力してください」
「あっはははははははっ、今の話し方だとやっぱ合うねwやば傑作すぎ」
キツネにつままれた気分だ
「ごめんごめんw ちょっと試したくて
いつもの久は普通に俺って言ってたよ」
「ありがとうございます、由美さん俺のこと教えてくれて」 そう言うと由美ははにかむ
「やっぱりその方がいいね、あとはその敬語もやめて私のことは呼び捨てにしてくれたら完璧かな〜」 少し間を置いてから由美に告げる
「わかった、これからも俺に協力してくれ由美」
「よし!戻ったねこの調子で記憶取り戻そー、あそうだせっかくだしこのままうち来なよ!記憶を取り戻すためにも!」
「もちろん!はなからそのつもりだ、ありがとう由美」
そうして俺達は由美の家へと向かった