3.夢魔見参!
前回のあらすじ
何とかハヤブサを封じ込めた堕悪どうするか迷った末、久の提案で自宅に連れ帰ることに
久の懸命な説得により、心を得た隼は
魔王城より想い人を連れ去るのだった
「ん?あの影は」 ふと空に目をやると、羽が生えた装甲車が高速で接近してきていた
「なんだ?」 ドーンッ
2人が落下した、
「ぐぅぅまさかエネルギー切れとは…」 風翼を重ねがけしたことがたたったようだ
「いたぁー、いきなり何よもー」 衝撃の割に光輝は無傷であった
「隼か?本当に戻って来るとはな」 俺はことが上手く運んだことを憂いていた
「はっひ、久さん!」 隼も相変わらずのようだ
「ところで、この装甲車はなんだ?それにその子…」 と隼に疑問を問いかけるが
「おーい!久、さっきの音は?」
「久殿〜」
「ひーさーしー!キーン」
落下の音を聞いて3人が駆けつけたようだ
「ん?風属性の邪族、戻ったのか」 途端に堕悪が警戒する
「待て堕悪、こいつの方はもう大丈夫だそれより隼、それはなんのつもりだ?」 先程の質問を再び行うと
「久さん…これは」 隼が後ろめたそうにしていると
「私は魔王軍駆動兵器:光輝 製造番号2618番、それを器とした精神体です」光輝、邪族戦争初期に敵軍の核を用いて作られた武器の1種、そしてその核の持ち主がこの少女…
「ってことは、光属性か!」 急に堕悪が距離をとる
「どうした堕悪?」 今までにない珍しい反応だ
「どうしたもこうしたも…属性の特性は知ってるだろ?光属性と闇属性は互いを蝕む、聖なる光瘴気と邪なる闇瘴気を身にまとっていると!力量差次第では命すら危ういんだ」 堕悪の説明を聞き、納得する
「そうなのか?」 光輝に気をかけると
「まぁ、流石に濃さはあちらの方が上みたいだからちょっとしんどいかな」 俺は堕悪の反応を鑑み自宅共同生活には限界があると悟った
「隼、悪いがこのサイズの光輝を中に入れるのは難しそうだ」 それを聞くと隼が…
「そんな、久さん言いましたよね困った時は絶対助けてくれるって」隼の必死さに結果が危ぶまれることを恐れた俺は堕悪に助けを求めた
「あぁもう、久に言われたら仕方ねえ」と堕悪は言い皆で安全策を模索することとなった
「なら、器を変えればいいんじゃないか」
「あー、私は光輝が核を流用することで存在できているので…他の器に移すとかいう概念じゃないんですが」
「それなら光輝の形を変えるしかないな…」
「形を」 俺は一瞬思った、核再生装置ならば光輝となった核を本来の姿に戻すことができるのではないかと…だがそれは悪手だ、あれを明かすリスクは大きすぎる
「えーなにー?どしたのー」 すると優が割り込んできた
「おい、ちょっと…あーすまん江美、優を抑えててくれ」 堕悪がそう言い江美は優を抱えようとする
「んー物理的に変形させられないか?例えば」
「そ、それはなんかこう…怖いです」 再び考えを巡らせていると優が暴れだし
「あーもう!優に任せろー」 と言い出すと江美の腕を脱し向かってきて
「生物再生:人型!」 優の背中から流槍刃に似た見た目をした数多の触手が出現する
「な、なんだ」 その触手は驚いた堕悪をくぐり抜け、光輝の前に来ると針の形に変容し
シュッ
刺した
「はぁぁぁぁぁ!」
「きゃーーー」 隼は慌てて光輝に刺されたものを抜こうとする
「ぐぬぬ、かっ硬い…」
「あれ?隼なんか私、変な気持ちに」 そんな光輝を見てさらに焦り出す隼
パアァァァ
すると光輝が精神体ごと光に包まれて
「やめろぉぉぉぉぉぉお!」 叫び出す隼に急いで離れようとする堕悪と江美
しかし、光輝は無事であった…それどころか
「あれ?私…」 装甲車であったはずの光輝は
目を開けると精神体と同じ姿になっていた上精神体の姿はそこになかった
「あぁっ?」
「あれっあれあれあれっうわぁー私の体だ〜」
光輝の体に精神体が入っていたのだ!
「なんで、はっ良かったぁぁぁぁ」
「やったね隼、私自由だよ」 泣きながら現状に喜ぶ2人に
「なんだ、びっくりした」 と身の安全を確認し安堵する2人
「これは…」
「えっへんw」 そして、微笑む1人と呆然とする1人
シュルシュルシュルッ
優の体に触手が戻って行った
「あなたがしてくれたの?ありがとう!」 光輝の少女は優に抱きついて感謝の意を示した
優はそれに嬉しそうに答えた
「なあ堕悪、どういうことだと思う?」
「ん?知らないな、まあ無属性能力と考えるのが妥当だろ」 優に対する疑念が深まることとなったが今はまだ…と心にしまった
「あぁっ優殿!やはりと思ったが背中が破れているぞ、せっかく買ったのに」 江美が優に言って聞かせる
「それと光輝のお嬢ちゃんもいつまでそんな格好でいるつもりかい?」
「えっ?あえぁぁぁ」 光輝の少女は自身が何も身につけていないことに気づき、縮こまって顔を赤くするそれに対し
「なあ、その光輝って言い方変えないか?」 と堕悪が進言する
「確かに、女性の名前にしては少々無骨すぎるな」 と江美も頷き
「なら隼、お前が名前をつけてやったらいいんじゃないか?ここまで導いてきたのも元はと言えばお前の意志だろ」 と俺は言った
「な、名前?俺なんかが…」 突然のことに驚くも
「いいよ隼、私もそうして欲しいと思う」 それを聞いた隼の答えは…
「光、お前の名前は…今日から光だ」
「ちょっと単純すぎない?」 光はそう払い除けた
「えええっ」 隼がたちまち驚くと
「まあ嬉しいけどちょっとねー光属性だから光っていうのは…」 と不満を零す光だが
「そっそんなんじゃなくて…俺は心を得て最初に掴みたいと思った光がお前だったから。そういうやつでっ」
「あーそう、じゃあそういうことにしとくわ」 と冷たく受け取りつつも頬を染める光そんな2人に俺達は今だけは何も言わないことにしたのだった
〜魔王城・王の間〜
「そう、ハヤブサが…脱走と」
「ご、ご安心を、私めは貴方様に絶対の忠誠を」
「ふぁぁねえ布団ある〜?」 事態を知りたちまち顔色が変わり出す夜白とそれをフォローするマオに惚けているサツキ
傷が治っておらず寝たきりのギランにそれを付きっきりで看るギガント、邪君の姿はなく奈落神は未だ無言で場にはあまりにも衝撃的な事態に言葉を失う配下達と培養液の中で眠るギガーン様
今回の被害を鑑み、謁見に来たギガースの見たものはそんな光景だった
「あら?なんの用かしら」 息が詰まる空気の中
ギガースが口を開く
「こっ今回脱走兵によって部下達の居住区に甚大な被害が出ておりましてそれの対処に…」
「ふっ、ちょうど良かったわ今いい作戦を思いついたの」
「はい?」 そう言って夜白が話し出す
「ハヤブサはまだ心が開いただけ、予兆はあったもの仕方ないわだけど今ならまだ取り戻せるはず…」 そうして不敵な笑みを浮かべ
「心だけなら好都合、ねえサキュバスさんあなたハヤブサを射止めてくれるかしら?」 と秘書のサキュバスに命じた
「えわ、私ですか?」 困惑するサキュバスに夜白は
「ええそうよ場所は、カセイ国守官管理所。
何も1人で行けとは言わないわそうね…ちょうどいい、貴方も女でしょ護衛も兼ねて頼むわ」 とギガースに同行を命じた
「なっ私に命令等っ」
「あら、聞かされてないの?」 そういうと夜白は自身が魔王代理であるという証明を見せた
「はっこれは本当に…」
「いいわね?」 ギガースは頷いた
「よし、後はサツキ貴方もついでに行きなさい
もしかしたら貴方を女型に作った意味があるかもしれないしね」 さっきまでたるたるとしていたサツキは命令を聞くと途端に様変わりした
「では行ってらっしゃい!ハニートラップ大作戦、成功を祈っているわ」 と夜白は3人を送り出した
〜カセイ国守官管理所・伝永家の家〜
「じゃあ説明しておくと」 俺は共同生活の上で守るべきルールを説明した
「そして部屋なんだが」 俺はこの家の密閉可能な部屋がこの居間と地下のプレハブ小屋しかないことを言うと
「てことだ、まあ6人だし男女で分ければちょうどいいだろ」 と堕悪が付け足した
すると光が
「わ、私は別に隼と一緒なら男部屋に行っても良いですよ!」 と言い出すが
「何言ってんだよ俺が嫌だわ、あの狭い空間で瘴気充満させ合うのはごめんだぞ」 と堕悪が異をとなえた
「うっ、なら…堕悪さんが女部屋に代わりに行くのはどうですか?」 うっかりしていたと思いながらそれを隠すべく言い返す光
「そ、それは皆が嫌だろ!な?」 そう言って2人の方を見るが
「だあくと一緒!良い!」
「私は別にそのぐらいのこと気にしないぞ?」
かなり意外な反応に困惑する堕悪だったが
「いやダメだ光、久さんを悪く思うわけじゃないけど男女が一緒なんて良くないよ」
「隼!」 そう言ってのけるも内心隼は、光と一緒なんて理性が持つわけないだろ と大慌てであった
「なら男女3:3で部屋決めは終わりだな、じゃあ次に敷地内の出入りだが…」
「ほお!道場があるのか?」 江美さんが久さんの説明に食い入っている間に俺は家の外へ出た
「はぁ〜全く光のやつ大胆すぎるだろ…心があることは嬉しいけど、どこまで持つかこれ?」 そうしてフラフラと管理所裏を歩いていると
「そ、そこの君!」声がした方を見ると
なんとも妖艶かつセクシーかつスケスケの…服を着た邪族2人が立っていた
「あぁえ…」 あまりにも衝撃的な事に言葉を失う隼
「あら?固まっちゃった…ギガース様もしかしてメデューサの血引いてたりする?」
「そ!そんなわけあるか!そんなことより何だこの格好は…この、言うまでもなくスケスケのヒラヒラのピチピチな格好は!」 ギガースは恥ずかしそうに体をよじらせる
「私達サキュバスの正装ですよ?やはり最大限の魅力をもって誘ってあげないと相手に失礼でしょ?」 その声を聞き少しづつ動き出した隼は
「お、お前サキュバスだろ?魔王軍の秘書の!」 それに反応する2人
「あら、ハヤブサ様お気づきでしたか!しかし、そのご様子では完全に自我を取り戻したわけではなさそうですね」 無属性能力:魅了、見た相手を支配下におく力、相手に欲情、または近しい意識時にのみ効果を発揮
感情が大きいほど我を忘れていく
「くっ…効果は認めるが、なぜ私まで?」
「ギガース様を選んだのにはそういう意も込められていたはずです、もっと自信もってくださいよ邪族の華さん!」
「茶化すな!」
2人の仕草一つ一つが心を狩り立てようとすることに悶える隼
(くっ…ダメだ光のことを考えようとしてもついさっきのことが浮かんで心が乱されてしまう)
「だいぶ弱っているようだな…サキュバス、お前お得意の技で仕留めろ。私は万が一に備える」
雰囲気が変わり冷静に指示するギガース
「わかったわ、じゃあハヤブサ様!今まで我慢してて辛かったでしょご褒美の時間にするわよ」 サキュバスの魔の手が差し迫るが
「ちょおっと待ったあああ!」
「とりゃあああああ」 光と堕悪が駆けつけサキュバスを払い除けた
「ぐっ何奴!?」 ギガースが目を光らせる
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「使ってるわけじゃないって…」 俺達は隼がいないことに気づいた
「どこに行ったんだ、あまり勝手な行動はして欲しくないんだが…下手すると軍のやつに見つかって面倒な」 それを聞いて光が慌て出す
「ちょっとそれ!早く言いなさいよどうしようすぐに探しに行かないと」 と飛び出していった
「おい待て、くっ」 それを見かねた堕悪もついて行ってしまった…後に残された俺は
「悪い江美、優を頼んだ俺も行ってくる」 と言って駆け出した
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「はっ貴様は堕悪か!?」 ギガースが声をあげると
「えっ嘘、まさか堕悪様まで離反してたなんて…」 サキュバスも驚いた顔をする
「サキュバス、ここはひとまず退かないか?流石に私も堕悪相手に切って掛かるほど無謀じゃない…」 そうして2人が少しづつ後ずさりすると
「待ちなさい!汚らわしい邪族がハヤブサに勝手なことしないでよ、許さないんだから」 するとそれに感化されたサキュバスが…
「ふっ汚らわしいですって、貴方だってここの誰もがそう思われてるって分からないのかしら光属性!」 光は周りを見た、ギガース、サキュバス、そして堕悪に至ってもその目は険しいものだった…だが
「俺はお前らとは違う!光は俺だけの光だ、なにがあっても傷つけたりなんかしない」 サキュバスが唇を噛み締めると
「ふっ、あら?そんなこと言えるのかしら貴方だって…」 すると
「堕悪死手!」
「ぐっ…」 堕悪が黒い手をサキュバスに伸ばしたがギガースが割り込んで抑える
「ギガース、サキュバス今日はこれで終いにしてもらおうこれ以上居座るつもりなら…命の保証はない!」 堕悪がそう言い放つ
「覚えてなさいよ」
「堕悪!、ハヤブサ!、次会った時は敵同士ですよ」 2人の邪族はそう告げてその場を去った
「大丈…」
「良かったぁ」 堕悪が言い切るより先に光は隼に抱きついていた
「俺、の方こそごめん心配かけたな」 涙を見せる光に対し少し申し訳なさそうにしつつも隼はその身をよせた
「ま、いいか…」 堕悪はそう呟いて邪族達の去った空へ顔を向けた
一方その頃
「2人ともどこへ行ったんだ」 誰よりも長くここにいる俺だが、敷地の全容を把握している訳もなく遅れて出てきたこともあり2人を見失ってしまった。すると突然…
「!?」 (奇襲か?)振り向くと目の前に邪族が
「ちっ避けたか、曲者め」 後ろに大きく飛ぶ邪族
「貴様こそ敷地内への不法侵入、見過ごせんな」 俺は邪族を凝視した、隼と同じく闇の瘴気が外側から纏っている状態…こいつも人造人間か
「何をっ」 その時だ、サツキが久を目にした途端
ドキンッ パアァァァ ズキューン
「あわ、わわわ」 (どうしてだろう?邪魔者を排除せよと仰せつかったはずなのに…彼の顔を眼前に収めたら…こんな気持ち初めてぇ!)
「ん?なんの真似だ」 目の前の邪族は丸腰で固まっていた、好機と思い恐る恐る接近してみる
「ああいや、ちょっとなんで近づいてくるわけ!こっ心の準備がぁぁ」 邪族は慌て出すと
「まだ、ダメえええ」 振り返り一目散に逃げ出した
「なっ待て!」 追いかけようとしたが
ドンッ
次の瞬間、邪族は撃たれその場に倒れた
「なんですか、この騒ぎは…」 そこにはカセイ国軍の者たちを引き連れた1人の男が来ていた
「っ…カセイ国軍師、三等!」
すると路地からもぞろぞろと軍人が集まってくる
「静かにしろっほらとっとと歩け!」
「はっなんだよ何しやがる!」
「ちょっと、どこ触ってんのよ」 どうやら隼達も捕まっていたようだ
「おい、一体今から何をするつもりだ?」 堕悪だけやたらと酷い仕打ちを受けたようだが当の本人はケロッとしている
「全員敬礼!」 1人の者に皆が従う中、軍師が口を開き
「伝永久殿今日までの一連の騒ぎ、全てご説明願えますかな?」 と俺に告げたのだった
次回予告!
伝永久の行動に疑念を抱いた軍師三等、軍を巻き込んだ事実上の決起に大ピンチの久
これまでの全てが暴かれてしまうのか?
一方魔王軍では隼、堕悪の離反を知り強力な助っ人を呼びつけた夜白正直、はたしてその全容は?
次回 第2章 4.非はいずれにもあらず




