3月29日
天気は雨、容量は高値、体調良好。
だが、もう直ぐ試験だと言うのに勉強が足りない気がして来た。
6割りは越えるが、総合した勉強時間が少ない事が気に掛かる。
今日位は勉強しよう。
マティアスは出勤中。
カフェオレを作り、朝食も適当に盛り合わせで済ませてから蒸留器をセットし、勉強開始。
パッと見て分からないのは飛ばす、見返す時間を確保する為。
悩んでも飛ばす、問題用紙にマークを付けて飛ばす。
確実に即答できる問題だけを、確実に解く。
それから見直し、問題を改めて良く読んで選ぶ。
それでも選べない時は、また飛ばす。
2回見直せれば上出来、そこでも空欄なら全体を見て配置が良い感じに見える番号にマーク。
試験の内容は、基本基礎から応用まで、場合によっては歴史的事件まである。
この歴史が厄介だ、年表苦手なのに、この世界の新参に覚え切れるかと。
箱入りの致命的欠陥。
そして何より、ソラちゃんに音読されてから答えるので、どうしてもラグが出てしまう。
読み間違いが無い代わりに、耳と言うか脳が疲労する。
《終了でーす》
「ぬぁ、よし、先ずは蒸留器か」
蒸留器のチェック、少し炭を足してから自己採点。
カフェオレを飲みながらのチェックで6割りは越えている、一応。
《歴史や事件を覚えないとですもんね》
「マジでな、国や歴史に興味持てって事なんだろうけど、どうにも、情報の断片だけじゃ興味がね」
《マティアスに教えて貰っては?》
「それな、レーヴィが戻ったらって思ってて、こうズルズルしててね、しかも合格ラインは越えてるし、良いかなと」
《確かに、でもコレって逆にサービス問題なんですかね?》
「あー、コッチの人にしてみたらね、大きい事件は覚えたけどさ。常識がやっぱり分からん」
最悪はまた半年後、それまでは例の運送屋の子を巻き込むしかあるまい。
彼が受かってくれればだが。
だけどそう動く事があるんだろうか、このまま引きこもり生活でも問題は無いし。
つい現実逃避をしてしまう。
休憩したらもう1回、何度も解くしか無い。
2回戦目、結果は7割り越え。
まぁまぁ、だろうか。
再び休憩。
復習してから、蒸留を終える。
軽くオヤツ、カボチャマフィン美味し。
ストレッチし、3回目の蒸留をセットしてから模試開始。
時間いっぱいまで迷った、採点は後回しにし蒸留器を確認しつつ、盛り合わせを食べる。
そして採点、迷ったが7割りを越えた。
《お疲れ様です》
「疲れた、上で昼寝する。睡眠学習だ」
《ですね、雨ですし》
妖精も雨は気怠いのか、枕元には梅杏ズ、ユスラウメ、スズランが揃っている。
良い匂いに囲まれ、少しだけ瞼を閉じた。
自然と目が覚めたのはオヤツの時間。
カボチャプリンを食べ、蒸留器をセットして再び勉強開始。
外は雨が降り続いている、採点は7割り。
飽きた。
「飽きた」
《休憩しましょ》
「でもなぁ、試験まで後3日だし」
《そう詰め込んで、どうにかなるものか》
「するんですよぅ、折角だから合格したいんじゃあ」
《それでも、あんまり根を詰めすぎると知恵熱が出ちゃいますよ》
「なー、出ちゃうんだよなぁ、やめるか」
《そうですよ、雨も止みましたしプールはどうですか?》
「いいね」
それからバスに乗りプールへ向かった。
そこには妖精達も姿を隠して付いて来ているのか、着替え中も良い香りがした。
『久し振り!もしかして筋肉痛で大変だった?』
「ですね、ストレッチしてるんですけどね」
『最初はね、でも慣れたら楽になるから、それまで耐えるしか無いの』
「そっかー、じゃあ今日も少し頑張ります」
『うん、頑張って』
それからサウナへ行って、ストレッチを念入りにしてからプールへ入った。
長く速く泳げるのは楽しい。
塩素と花の良い匂い。
何度か往復し、お姉さんからオススメのフィンを借りて、再度泳ぐ。
そして休憩タイム。
残念な事に2人組のおじさん達は居ない、暖まって水分補給をして再度泳ぐ。
普通に泳げなくてもコレで良いや。
何度も往復していると、聞き慣れた声とお姉さんの声が聞こえた。
レーヴィだ。
「レーヴィ、帰ってたの?」
『はい、1度家に行ったんですが居なかったので、ココかと』
「おうおう、でも4日振り位だよ、勉強とかしてたから」
『偉いですね、進み具合はどうです?』
「7割りは越えてる。もう仕事は良いの?」
『少し、半日だけ休暇を頂けました。夕飯はどうします?準備しておきましょうか?』
「盛り合わせが嫌なら作るよ?デザートはマティアスのカボチャプリン」
『いえ、それでお願いします、じゃあ隣で待ってますから、帰って来たら呼び鈴を押して下さい』
「うん、後でね」
そこから更に何往復かし、そのままシャワーを浴びてバスへと乗った。
いつもの夕飯の時間の少し前に、呼び鈴を押す。
『お帰りなさい、向こうで夕飯にしましょうか?』
「このままで良いべ、食べよう」
待って居る間にスープを温めてくれてたらしい、そのスープと盛り合わせで夕飯を食べる。
『マティアスはどうでした?』
「寂しがってた、初めての事で動揺してた。そっちは?」
『楽しいですよ、こんな風に振り回されるものなのだと実感していますね』
「そんな大変か、注意しとこうか?」
『そこまで無茶な事は要求されてないので、まだ大丈夫です。もし大変な時は宜しくお願いしますね』
「どうにか出来るか分からないけど、遠慮せず言って」
『はい』
「所でさ、さっきプールのお姉さん居たじゃん?」
『えぇ、シオンがお世話になってると挨拶させて頂きましたよ』
「色気が無いなぁ、気になってるそうですよ、レーヴィが」
『そうなんですか、残念ですけど好みじゃ無いので。どうお断りしましょうか』
「じゃあそのまま伝えちゃうよ」
『もし聞かれたら僕からも言うつもりなんですが、当分機会は無さそうなので、すみません』
「まだ掛かるのか。つかマティアス遅いな」
『そうですね、急患でも』
家の鍵が荒々しく開けられたかと思うと、マティアスがレーヴィを呼びながら入って来た。
《レーヴィ?》
『はい、ただいま帰りました』
《わぁー、久し振り、元気だった?》
『はい、良くして貰ってますので心配いりませんよ』
「夕飯食べる?」
《うん》
まるで何も食べてなかったかの様にモリモリと食べ、皿半分で落ち着いたのか、今日の事を話し始めた。
雨だからと言って暇と言うワケでも無く、そこそこ人が来るらしい。
特に関節痛、中には膝の水抜きで来る人が多いと。
雨で痛むらしい。
「リウマチ?」
《変形性膝関節症とかもね、置換手術が間に合って無いんだ。原因の殆どは加齢だから後回しになってるし》
「その位は何とかならんかね」
《ラウラなら出来たかもだけど、試験前だし。そもそも置換の予約が入っちゃってるから、治ったら目を付けられちゃうんじゃ無いかな》
『そこは、例の治療師様にお願いしては?』
《うーん》
「相談だけでも出来たら良いのに」
《そうやって、おいそれと動かしてたらラウラが忙しくなっちゃうよ?》
「そんなに多いか」
《それなりに、凄い多くは無いけど》
「じゃあ良いじゃん、きっと合格ラインは越えてるでしょう。勉強してるんだろうから」
《そう?なら良いんだけど》
「それとさ、折角プールのお姉さんと会ったのに好みじゃ無いって」
『断って貰う様に頼んでしまいました』
《まだ金髪を見慣れないの?》
『そうですね、どうも遠い存在に思えて』
「そんな事で?染めて貰えば良いじゃん」
『既に染めてらっしゃるなら良いんですけど、スタイルを無理に変えて貰うのも悪い気がして』
「まぁ、そこは、そんなん?」
《シオンは無いの?》
「あー、日焼けと筋肉凄いのは無理」
『ふふ、僕もそんな感じなんですよ、絶対ってワケじゃ無いんですけど』
《ウチの家系金髪多いから、そのせいも有るみたい、ごめんねレーヴィ》
「なるほどね、そして強い姉の存在か」
『ですね、お姉さんは強烈ですから』
「なら、赤毛なら良いか?知り合いに居るぞ」
『綺麗な色ですよね、でも流石に年下の神様はちょっと』
《居ない間にフラれて可哀想に》
「それな、折角肉体美を褒めて下さってたのに」
《結構五月蠅いんだよねぇ》
『マティアスもですよ』
ほんのりと雑談をしながら、まるでいつも通りの様に洗い物をしつつ。
サウナの準備を進めていく。
そして何事も無い様に、3人でサウナへ入る。
《それで、私達にはまだ何も言えない?》
『すみません、でも半分は過ぎたと答える様には言われています』
「どんだけ大物なのか、組織がデカいのか」
『それなんですが、僕は知れないんですよね』
「そこも配慮してくれてるのね」
《そうだね、少し安心》
「本当は1日でも早く抜け出して欲しいけどね」
『もし危なくなれば、命令に背いてでも逃げ出しますよ』
《そうしてね、お願い》
それからサウナを暫く出入りし、レーヴィがマティアスと洗濯をしている間にストレッチ。
途中で手の開いたマティアスがストレッチに加わり、いつもの光景になった。
そしてレーヴィがベッドへ入るまで、そのいつも通りの日は続いた。
「じゃあ、帰る」
《私もそっち行くよ》
『はい、じゃあおやすみなさい』
家から家へ渡り歩く。
薪を足し、お湯を沸かす。
「何で今日もコッチなの」
《赴任先が分かったら不味いかなって、それに、静かに寝かせてあげたいし》
「そうか、でも人の気配も悪くないと思うけどな」
《レーヴィは大丈夫、寝付きが良いし》
「そうか」
《うん》
下の階にマティアスを残し、ベッドへ入った。
本当にレーヴィは寂しくは無いんだろうか。
《スズランの妖精》《ユスラウメの妖精》『レーヴィ』《マティアス》




