表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/204

3月19日

 悪夢で目が覚め、ソファーへ移動。






 少し大きめのドアのノック音で目が覚めた。


 ドアを開けるとトールとマティアス、レーヴィも居る。


『嫌疑は張れた、入っても良いか』

「どうぞ」


『大昔に徽章を持ってった奴を仲間にしたぞ、マーリン派だ』

「何を勝手に」


『マーリンの指示だ。それにまぁ、変わってて面白い奴だしな、今はウツヨキに滞在させている』

「それだとシーリーの病気が」


『バレ無い様にとの見張り役でもある、シーリーの良い話し相手になってるそうだ。厄介な変わり者が、お節介にも運送屋を使って治して回った。それを貴族のガキ共が知り真似た。そういう事になった』

《だから制御具も外して良いって、腕出して》


 先ずは傷を診てみる事に。

 やたらに肘と手首が痛いと思ったら、手首は捻挫で肘は少しヒビが入ってたらしい。


 色々と不便なので、ヒビだけは治した。


「ちょっとサウナ行って良いか」

『よし、行くか』


 来るとは。

 まぁ良いけど。

 先ずは自分から、男に変身すると一気に怠さが消えた。




 そして暫くして、先ずはトールが入って来た。


「どうなったか詳しく」

『大きく目星はついた、内部調査部だ。だがまだ細部に至ってはいない、なんせ最低でも2人以上で徒党を組まれての事でな、バレ無い様に動くとなると、どうも動きが遅くてな。すまん』


「ある程度掴めたから、嫌疑が晴れたって事で良い?」

『あぁ、前と変わらず国連の伝書紙でやり取りさせているが、裏でロウヒの紙を使っている。それと並行し、偽造防止印も作らせているが、炙り出しにもう少し掛かる。なので表立った活動は控えてくれ、代わりに黒い妖精と徽章は継続だ』


「動いて良いのか」

『他国でも貴族のガキ共が実際に真似て動いてくれてるんでな、便乗だ。ただ、相談の上でだからな、ウツヨキの治療師との連携もあるんだ。それに、シーリー家への介入の事もある、今は2人共に家で休暇を取らせている。そして直近だが、お前からルーカスへ国連の伝書紙で恋文を出してくれ、出来るだけ憐憫を誘う文言でな』


「もういっそ指示してくれよ、書けないんだから」

『その手筈も整えた、既にマティアスに頼んで有る』


「恋愛要素なのに、トキメキ0の恋文か」

『文章はトキメキ満載だったぞ』


「なんと虚しい」


 謝罪の時間として今回の面会時間はたっぷり取ったそうなので、新作のシャリシャリエリクサーと、蒸留エリクサーをサウナストーンに掛けて出た。

 サムズアップしてくれた。




 リビングへ戻ると、妖精と仲良くお喋りするレーヴィと、キッチンでパイ生地を作るマティアスの姿。


 凄い極端だ、静かだったのが一気に賑やかになった。


『テラスで火を起こしてありますから、バーベキューにしましょうね』

《コレはね、キッシュと桃缶のパイ用ね》


「カスタードクリーム多めに作って、後、生クリームも」


 テラスでシャリシャリエリクサーの試作品を試飲しながら改良しつつ、ソーセージから頂く。

 炭酸が欲しくなる、炭酸シャリシャリエリクサーも、どうにかして作れないだろうか。


『ふう、外に出れんのが惜しまれるが、この凍ったエリクサーは良いな』

「炭酸も欲しいんだけど、何とかならんかね」


『アヴァロンの泉の1つが炭酸泉らしいが』

「行かないとな」


『今行けば良い、顔を見せて来い』

「おう」




 妖精と共にアヴァロンへと向かった。

 妖精の挨拶もそこそこに、即座に妖精女王からの長いハグ。


 そしてマーリンの助言により、何とかハグからは解放されたが。

 美しい瞳をウルウルとさせ、誰もが勘違いしてしまいそうになる綺麗な顔が、眼前に据え置かれたままとなってしまった。


『ティターニア、その位で、お話が出来ませんよ』

《あら、ごめんなさいね、容量も心配で》

「ワザとなので大丈夫ですよ、余り多いと目立つんで」


《それもそうね。ご飯は?お菓子は如何?》

「実は食べてる途中でして、炭酸が飲みたくなったのでトールに話したら、良い泉があるって」


《炭酸泉ね。私アレ苦手なの、ツブツブが気持ち悪くて》

『じゃあ、案内してあげましょう』


 ティターニアに腕を組まれデートの様に泉までの道を案内される、程よい胸が右腕にガンガン当たる。


 痛みから幸福の感触へと急展開した脳味噌がビックリしてそうだ、ご褒美だな脳味噌よ。


 そうして直ぐに、炭酸泉へと辿り着いた。

 無色透明な炭酸泉は噴水の様に、円形の真っ白な大理石から湧いている。


 しかも2つ、片方は飲水用の強炭酸で、片方はぬるめのトロリとしたお湯。

 双方共に、すり鉢状の底から小さな気泡が細かく浮かぶ。


《好きなだけどうぞ》


 ソラちゃんに噴水に貯まっている分を汲ませたが、数秒で満たされてしまった。

 どんなに汲ませても、また数秒で元に戻る。


 遠慮無しにストレージ内の泉と同量を汲ませて貰った、試しにエリクサーの炭酸割りを飲んで貰ったが、シュワシュワが嫌だと。


 マーリンには受けが良かった。


「ありがとうございました」

《もう良いの?他には大丈夫?》


「はい、今の所は」

『お食事の途中でしたしね、また来て貰いましょう』

《そうね、またね》


 見事に炭酸泉をゲットし、帰路へ付いた。




 そのまま外のピッチャーへ入れ、凍らせながらバーベキューを再開。

 トールは酸っぱい炭酸エリクサーが気に入ったそうで、効果が弱いのにも関わらず喜んで飲んでいる。


 レーヴィは変わらずトールへ接しているが、マティアスはまだ遺恨が残っているらしい。


「いい加減に機嫌を直してくれませんかね」

《だって、凄い長く騙されてたんだもの》

『そんな事を言うなら、僕もですよね、マティアス』


《それはだって》

『そう違いませんよ、僕にしてみたら似た様な事なんですから』

「まぁ、知ってても疲弊するしね」


《本当に大丈夫?》

「おう、現に生きてるし」


《そういう事じゃなくて》

「殴って貰ったんだから良いの。本来は、トールをフォローすべき」


《ラウラも》

「もう充分です、ハグはオッパイが有る者からしか受けません」

『胸筋は』

『胸筋はどうなるんだ』


「除外でしょうよ」


 このシオンの身体は低値向きなのかも知れない、驚くほど気分も体調も良い。

 本当に、このままで過ごしたい。


『所で、容量はどうなってるんですか?』

「あぁ、これだと低値は抜けてるみたい。この身体だと快調で、このまま過ごしたい」


『それなんだがな、その戸籍、作るか』

「え、作る」

《ほらぁ》


『本当だな、こうも返事が早いと、確かに不安になるかも知れん』

『良い所でもあると思いますよ』

「なんだ、試しただけか」


『いや、本当だ、本当に作るならだが』

『暫くラウラには居なくなって貰うワケですけど』

《人間関係全てを捨てる事になるかもなんだよ?》


「巻き添え少なくなるし、良いじゃん。他に何か有る?」

《ココだって、折角やっと住めたのに》


「別に、仮の住まいだし。引っ越しは慣れてる、親の別居とか、自分のせいで別居とかあったから」


『次は、近くに来てみませんか?フォローし易いですし』

「フォローする理由は?」

『お前と同様に生活のフォローだ、アヴァロンに帰ってしまったラウラ同様に、フォローする』


「ドイツかイギリス滞在はダメか」

『ロキの事があるんだ、出来るならロウヒの庇護下に居て欲しい。狙うには充分な素質と言えるんだ、その兄弟が例え無能でも、囮としようと接触が来るかも知れん』


「囮か、万が一にも国連がロキに情報を漏洩してるなら、ココに来るって事?」

『来る保証は無い、ただ来ない保証が確約出来るまでは庇護下に居て欲しい、そして協力して欲しい』


「する、どうしたら良い」


 先ずラウラはアヴァロンへ帰る、入れ違いにシオンが来る。

 来た理由はラウラとの同居を提案され、逃げる様に社会見学に来た、と。


 そして今回の伝書紙の行き違いを正式にマーリンが訴え出る、その序でに来るので、尋問官も無しでイギリス国籍を取得可能。

 そしてココへ同行し、暫く生活する事になる、と。


 大丈夫かね。


『ですから、今まで会った人に会ったとしても、他人として新たに接しなければいけませんし、会わないままで終わる事もあるかと』

「リリーちゃんが安心出来るね、このまま発症しないでくれると良いんだけど」

《だとしても、感情転移があると困るから彼女とは接触しない方が良いかも。シオンに執着されたら困るでしょ》


「おう、基地には行く事が無いと願いたい」

『そこで黒い妖精と徽章の話しになる、マーリンが例の治療師に褒美を与える為にココへ来る、そこでコレからも自由に動けと伝える。そうしてお前が、公に動き回れる手筈だ』


「その治療師ってどうなんよ」

『気の良い爺だ、そしてマーリン派らしく変化と治療の魔法が使える。そこから分かると思うが、表面や皮膚の治療のみ可能なんだそうだ、他の病気は上手く言い包めて、医者や看護師に任せるか、逃げて過ごして居たらしい。だから本人の為にもなるんだ、お前が動くのは』


「良いなぁ変化、相性悪くてまだなんだよな」

『これ以上は止めてくれ、本当にロキだと疑ってしまう』


「おう、それでそれで」

『後は敵次第、ラウラがたまに出て来たり、お前が何もしなかったりだ』


「何もしないのは前提か」

『あぁ、無能で体たらくである程良い』


「運送屋はどうなるの」

『場合によっては妨害も有り得るんでな、そこは辞退も念頭に入れて欲しい』


「使えそうな運送屋も欲しいんだけど」

《そこは、望まないかも知れないけど、例の運送屋希望の子を巻き込もうと思ってる》


「若い子にはちょっと、嗄れた老人とかが良いんだけどな」

『では、一応その方向で探してみましょう』

《そうだね》

『では、今日でココを離れるワケだが、準備は良いか?』


「少し、休憩に行くだけって事にして欲しい、直ぐ帰るつもりでアヴァロンに帰ったと」

『あぁ、そうしよう』


《僕を置いて行ってしまうんですか》


「どうしたい」

《一緒に行きます、トレードマークなんですから》


「人に沢山接触する、危ないよ」

《大丈夫です、もう魔法がありますから》


「花と離れて生きてられるの?」

《生きてられますけど、出来たら一緒に連れてって下さい》


「そこまでするか」

《はい。だって、先が気になるじゃないですか、偽造伝書紙やロキだなんて》


「そうか、それは確かにそうだけど、命を掛ける程かね」

《ココは借り手が居ないんですよね、そしたら僕はずっと1人なんです、誰かが借りてくれるまで、妖精が増えるまで》


「生んだ責任だよな。連れてくけども、死んでくれるな」

《勿論ですよ》


「よし、マティアスに預けるわ」

《えー、あんまり眠ってくれなくて忙しないんですよ彼って、レーヴィが良いです》


「2人は同居だ。どうだい、落ち着くまで預かって貰っては」

《預けっぱなしにしないで下さいね、姿を現したままで探しに出ちゃいますから》


「それが真の脅し文句か、置いてくにしても言う気だったろ」

《はい》


 長い時間を生きていたからか、何枚も上手だ。


 顔の持ち主より、凄く上手い。


『妖精とはこうだったか、人間より上手だ』

《えぇ、年季が違いますから》

「それな、丸め込まれた」

『マティアスも見習わなくてはいけませんね』

《そうだけど、なんでレーヴィは聞こえてるの?》


『秘密です』


 妖精が耳打ちするには、妖精の粉を飲んで貰ったらしい。

 万能かよ、妖精の粉。


《誰でもじゃ無いんですからね》

「そうか、凄いなぁ」

《んー、ダメだ、分かんないや。幻なのか概念なのかな、良く分からない》

『ふふ、訓練の賜物ですね』

『あぁ、本当にな。騙されかけたよ、敵側の協力者かって位にラウラの嫌疑に異を唱えなかったしな、疑って悪かった』


『逆らったり異を唱えると、逆に事態を長引かせると思ったので』

『例の治療師の件が片付いてな、真っ先に看護師長の事で相談させて貰ったんだ、どう話せば信じるか、とな』

「マティアス、内心とか聞けば良かったのに」

《神様の心を聞くなんて無理だと思ったし、最初に試しても無理だったから諦めてたんだよね》


『面会の際にマティアスに最初に謝って頂けて感謝しています、アレでもかなり怒っていたので』

「怒ったんか、回路細いのに」

『凄かったぞ、殺されるかと思ったわ、あはははは』

《大袈裟な》


『どう殺すかずっと考えてたろう。だがな、俺が怪我をしたらお前への裁判が行われる事まで考えて欲しかった、ラウラが悲しむ』

《どう逃げ出すか考えてただけです》


『どう俺に怪我をさせて逃げ出すか、だろう』

「そんな物騒な事を考えられるのか、凄いぞマティアス」

《違うって》

『そう言う事にしときましょう』


 あの殺気を出せるから察知出来るんだろうか、あんまり殺気を察知する事が無いからか、マティアスが殺気を出すなんて考えられんが。


 冗談かしら。


「まぁ良いか」

《そうしといて》

『じゃあそろそろデザートですかね』

『お、甘い物も好きだぞ』


 トールと2人でデザートを楽しんでいると、水抜きや暖炉の処理が着々となされていった。

 妖精は倉庫へ鉢を選びに行ったし、自分もデザートをソコソコに2階へ上がり物をしまう。


 最終的な片付けは2人がしてくれるらしいが、こうも早く出るとは。

 ラウラの寿命は2ヶ月も無かった、死ぬんじゃ無いにしても、今後使えなくなるかも知れないんだ。


 成仏してくれよ。

 ベッドに手を合わせて下へと降りると、奥へしまっていた食器や鍋が表へ出されている。

 トールも手伝っていた。

 使えるモノは神様まで使うかレーヴィ、凄いなレーヴィ。


《ゆっくりしてて、後は私達が片付けるから》

「リタに、なんで、どうして引き止めなかったのかって言われそう」


《直ぐに帰って来るって言ってたから、そう思ったからって言うつもり》

「もう全部マーリンのせいにしちゃおう、過保護だから帰してくれないとか、妖精女王がとかさ」

『確かに、帰さないのは妖精女王だろうな』


「それは勿論許可を得てからね、怒られたく無いし」

『だな、アレは怒らせたら不味い』


 後はスズラン。

 先ずはラウラに戻り、鉢を選び終わった妖精の指示で、庭へ出てシャベルと鉢と底石を清浄魔法で綺麗にし、指定されたスズランの周りを丸く掘る。


 ゆっくりと鉢へ移動させ、何度か地面に軽く落とし、均すと引っ越しは完了。

 お水は落ち着いたらで良いらしい。


 カバンを持ち、鉢と鍵をマティアスへ渡す。

 そうしてトールと共にイギリスへ渡る。




 場所は国連の支部、マーリンも居るが、少し緊張する。


『直ぐ済むよ』

「是非お願いしますよ」


 事前に通知が行っていた様で、コレはスムーズだった。


 排除出来るから邪魔が入らなかったとするなら、ロキの琴線には触れていないのだろうか、そもロキは無関係なのか。


 トールも同じ思惑だったのか、少し残念そうにも見えた。

 そのままアヴァロンへ飛び、事情を説明する事に。


『向こうで少し邪魔されてるので、一瞬預かりますね』

《そんなに短くて良いの?》


『ラウラと言う子はココにずっと居ますが、今すぐにシオンとして新たに地上へ行く予定です』

『すまないな』

《良いのよ、この子の為になるなら何でもするわ》

「ありがとうございます」


《それで、生き易くなるのね?》

「はい」


《じゃあ、いってらっしゃい》

「いってきます」




 ティターニアから少し離れた場所でシオンになり、怪我を完全に治している間に、染めた部位をマーリンに適当に切り落として貰う。


 そして再び3人で地上へ。

 再び国連支部へ。

 先程とは違う場所へ向かう、コレは厳重な感じ、魔道具禁止にストレージ禁止。


 空調は完璧、緊張感は最高潮。

 何度かのセキュリティを受け部屋へと入ると、非常にざわつかれた。

 そしてそれを最奥の上等なスーツを着た年配の女性が制した、人間の女王だろうか。


 前の2人に倣いお辞儀をする、女王だなコレ。


『落ち着いていますねその子は、流石ティターニアとマーリンの秘蔵っ子と言う感じかしら』


『シオン、ご挨拶して』

「シオンです、宜しくお願いします」


『名字はないのね』

「はい」


『フォーサイス、モラレス、サリヴァン、どうかしら』

「ありがとうございます、フォーサイスを頂きます」


『良い子で過ごして頂戴ね』

「はい」


 かつて女王同士融合していたとは思えない、真反対な感じ。

 口調は優しいのに圧が凄い。


 その後の手続きもスムーズに終わり、トイレを間違えかける以外は何事も無くいった。


 気を付けないと、焦る状況は避けよう。

 それとパンツとか服、買い出しに行かないと。

 また適当な普段着で謁見してしまった、スーツを揃えるべきか。


『よし、終わったね』

『じゃあ、俺は先に帰る』

「お疲れ様でした」


『さ、買い出しに出掛けよう』




 先ずはマーリンとしての偉功を最大限に利用して、金を売り払う。


 それから下着、服も何着か買い、後は食料。


 フランスパン、マジうまい。

 生ハムサンド最高、そしてマーリン目立つ。

 視線凄い。


「おじいじの姿が見たかったのに」

『今度ね。あ、コレも』


 ミートパイにシェパーズパイ、スコッチエッグにフィッシュ&チップス。


 方々の店の商品をあらかた買い漁り、今度はチーズ。

 何種類か味見をして、好きな味を塊で購入。




 そしてそのままマーリンの魔法でフィンランドのヘルシンキ、国連支部へと移動した。

 作られたてホヤホヤのパスポートながらも、こちらも事前通知の為かスムーズに入国出来た。


 もう未成年では無いので、観光での入国となる。

 期限は3ヶ月、就労するなら就労記録で延長出来るし、公的な学校へ入学となった場合も在籍記録で修学用の延長が可能。

 ただ、何か有れば即刻国外退去にもなる、未成年は大目に見られてた事も、気を付けろとの事。


 そのまま基地の上層部らしき場所へ行く。

 ここまで付いてく必要があるんだろうか。


「まだ居ないとダメか」

『うん、偉い人に付き人は必要だからね』


「あぁ、さよか」


 円卓には偉そうな感じの人がチラホラ、突然の事にざわついてる。

 さっきもだが、ココも急襲か。


『イギリスのマーリンだ、ラウラ・エリクセンを知ってる?私の愛弟子なんだけれど、何か知ってる者は?』


 魔道具もストレージも禁止の中、誰もが動揺しているせいか読み取れない。

 焦りより純粋な動揺、知らないのが不味いのでは、といった感じだろうか。


『あの、申し訳ありません、手違いでしょうか、コチラに話は来ておりませんが』

『そう、なら伝書紙の偽造はどう?』


 場が一瞬で凍り付いたのを感じ取れた、動揺と緊張。


 先程話し掛けて来た進行役らしき人物が意を決したのか、更に口を開いた。


『申し訳ありませんが、それも初耳です』

『行き違いが生じてるって話を聞いたんだけど。まぁ良いや、何か無いか調べたいから、ココの内部調査班に暫くお世話になるから、宜しくね』


『あの、本国へは』

『イギリスにも本部にもまだだよ、噂だけだからね。でも万が一があるといけないから念の為、それにこの子も地上に来てみたいって話でね。ご挨拶して』


「シオン・フォーサイスです」

『この子は世間知らずなんでね、トールに任せようかなって思うんだけど』


『生憎、今はソダンキュラに行ってらっしゃるそうですが』

『あぁ、ウツヨキに近いよね、じゃあ先にコッチを済ませてくるから、また後でね』


『はい、申し訳御座いません、急いで資料を集めておきます』

『うん、じゃあね』




 支部から出て再び買い出しへ。

 魚や野菜、調味料等を買わされ、ソダンキュラへ向かった。

 基地の出入り口で酷く驚かれつつ、内部には入らずにトールを呼び出すマーリンの尊大さよ。


 凄いな。


『来たか』

『待った?』


『あぁ、それでその子は』

『買い出しはさせたし、お金も持たせたから、次はちゃんと任せたよ。これからウツヨキに行ってくるから、じゃあね』


 流れる様に押し付け、流れる様にウツヨキへ空間移動して行った。


 門番のおじさんはあ然としてるし。

 ダイナーのオバちゃんはガン見だし。


 そうか、この為の基地外部でのやり取りだったのか、完璧やんな。


『名は』


「シオン・フォーサイスです」

『そうか、ココで少し待っててくれ』


 横目に驚く門番のおじさんが見えてるが、ココはムスッとすべきかニコニコすべきか。


 ラウラは愛想笑いはほぼしなかったし、ココはニコニコしとこうか。


「こんにちは、もう暗いから、こんばんはですかね」

『あぁ、こんばんは。一瞬、治療師様かと思ったよ』


「ラウラですか?」

『あぁ、大変な怪我をしたらしいが、兄弟かい?』


「らしいです、似てます?」

『凄い似てるよ、髪も、そのコートも』


「じゃあもう少し切りますね、見間違えられても困るし」

『あぁ、すまない、街に良い床屋があるから行ってみると良いよ』


「ご親切にどうもありがとうございます、僕はあの子と違って無能なので、何にもお礼が出来ませんが」

『いや良いんだ、気にしないでくれ。それより、あの雷神トールの世話になるってのは本当かい?』


「らしいですね、急に決まった感じで実感が無いんですけど」

『無いとは思うが、何かあったら基地に来ると良い、衣食住は保証するよ』


「はい、ありがとうございます?」


 殴られる心配だろうか、優しいな。


『待たせたな。生憎だが俺は忙しい、代理にこの人間達の世話になる様に、何かあればこの伝書紙で連絡してくれ』

「国連の、私用で使って良いんですか?」


『仮にもマーリンからの客人だ、何かあっては困る。まぁ大量にあるんだ、気にせず使ってくれ』

「はい、ありがとうございます」


 コチラが深くお辞儀をするやいなや、そそくさと飛んで行ってしまった。

 そして後方では車の前で2人が待っていた。


《じゃあ、先ずは私達の家を案内しますね》

『どうぞ、直ぐ近くですから』


 車に乗り込み門番を見ると、少しホッとした様に表情が緩んで手を振ってくれた。

 魔道具も不審な音は奏でていなかったし。

 優しいな。




 そのまま車は走り出し、一軒家へと辿り着いた。


 ただ無言のままにサウナを準備し、順番に入って行く。

 慣れ過ぎ、早過ぎ。


「優しいよね門番さん」

『そうですね、あの方は都市部で警官をしてますから』


「ふふ、知ってる。ダメだな、もう少し感情を抑えないと」

《良いんじゃない?ニコニコしてるの、違いがあって良いと思う》


『ラウラは少し張り詰めた表情でしたからね』

「わざとわざと、舐められない様に虚勢を張ってたんでしょう」


《そうなんだ、残念》

『緊張はするでしょう、一応異性なんですし。きっと、気を付けてくれてたんですよ』


「そうそう、僕は酒も飲めるし同性だし、もう気兼ねなくサウナもお酒も付き合える」

《レーヴィが同性が好きならどうするの》


「んー、ごめんなさい、オッパイあって柔らかいのが好きです」

『告白も無しにフラれましたけど、僕も異性愛者ですからね』

《私も、オッパイは何でも良い》


「尻派?」

《背中とかかな》


「ドガと一緒だ」

『画家の?』


「異性が苦手で優しいんだって」

『まるでマティアスですね』

《後者だけ聞いた事にする》


 コチラのドガが違うなら大変に失礼な事だが、居るとは知らなかったワケで、後で画集を見させて貰おう。


『ふふ、アイスは如何ですか?』

「是非、チョコミントで」

《今日は疲れたし、キャラメルナッツかなぁ》


 同性といえども下半身を隠してくれるのは有り難い、この先も誰かと入るのかも知れないが、モロ出しは出来るなら遠慮したい。


 其々に大きいサイズのアイスを食べながら、夕飯の話になった。

 どうやらシオンは、このままココに泊まるらしい。


「買い出しはして来たよ、シェパーズパイにフィッシュ&チップスとか」

《料理も出来ないの?》


「いや、マーリンなりの気遣いだと思う。ヘルシンキで食材とかも買ったし、店員に少し驚かれた」

《バレてる感じ?》


「いや、東洋人珍しい、似たのを見たなって感じだと思う」

『門番さんもですか?』


「うん、似てるって。ただ区別は付いてるっぽいけど」

《警官だもんねー、他がどうかだね》

『東洋人を見慣れていないと、似てると思ってしまいますしね』


「苗字は違えど、一応兄弟ですし」

《お酒は飲めるし》

『背も少しありますもんね』


 実際、視界が本当に高く感じる。

 人混みではまだ小さい方だが、ラウラよりは遠くが見渡せる。


 夕飯の準備の為に、最初に上がらせて貰い、つぎにレーヴィ、マティアスと上がった。


 問題は寝間着だ、折角着ようにも丈が足りないし。

 諦めて今日買った普段着で過ごす為に、洗濯機を借りた。

 パンツ慣れないなコレ。


 そして夕飯はイギリスフェア。

 ミートパイとフィッシュ&チップスを食べ比べ、1番は生地がサクサクのお店の。

 2人は衣厚めのお店が好きらしい、こういう所が似るのが不思議、長く居れば似るんだろうか。


 妖精は窓辺に置かれた葉の上で眠ったまま、持って帰ってからこうなんだとか。

 試しに色々見るが植物には異常無し。


 試食会も程々に、今日は早めの就寝。

『トール』《マティアス》『レーヴィ』『マーリン』《ティターニア》《スズランの妖精》『門番さん』


『女王』

『シオン・フォーサイス』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ