3月2日
体中が痛い、引き籠りあるあるだ。
久し振りの外出に筋肉が追い付いて無い。
こうなる事を忘れてた、いい加減学習しないと。
先ずはタブレットで容量を確認、昨日とほぼ変わらず高値。
後は炎症と痛覚を抑え、最低限トイレに行ける程度にする。
ようやっと一息つけたので、試しに眠る妖精を触ってみるが普通に触れる、だが握ろうとするとツルツルとした何かに阻まれ、フワフワコロコロと移動してしまった。
これなら安心だが、ベッドから落ちない不思議が増えた。
楽しいけど、辛い、何事も無いなら今日はゴロゴロしたい。
何もしたく無い、何なら寝てたい。
それでもお腹は空くので、下階に降りた序でに盛り合わせと白米を頂く。
食べるのも辛い、筋トレの良さが全く分らない。
薪入れが猛烈に苦痛。
階段を登る気力も無いので、ソファーへ倒れ込む。
「もうダメだぁ、寝る」
《ふふふ、どうぞどうぞ》
妖精は元気いっぱい、髪の毛を編み込んで遊んでる。
勿体無いのでゴムで止めていると、ドアが開いた。
鍵、預けたままだったっけか。
《あ、居たんだ、おはよう。暗いから出掛けてるのかと思った》
「おはよう、そんな暗いかね」
《まだ少しね、朝食は?》
「何とか食べた」
《大丈夫?どうしたの?》
「筋肉痛」
薄暗い夜明けの中で笑われつつ、昨日の報告をして、次の作戦会議へと移った。
《ふふ、暫くはお勉強かな》
「おう、明日から本気出す」
《そうして、一応難しいって言われてるんだから》
「今日から本気出せとは言わないのか、優しいな」
《問い合わせが来てて活動量は把握してるつもりだから、無理言えないよ》
「バレてんのか、色々と」
《ちゃんと食事の誘いを断っててえらい》
「だろう。そっちは問い合わせで忙しいのか、すまんね」
《大丈夫、兵長と私に来るのが殆どだし、想定内》
「抜けて来て良いのか」
《顔見ないとね、どうしても心配になっちゃって》
「見たろ、レーヴィに宜しく」
《後頭部しか見て無いんだけど》
「引っ繰り返るのすら辛いんじゃが」
《体の下に腕入れて、引っ繰り返してあげる》
「たのむ」
《ほい、顔色良いね》
「ありがと、もうダメだ、動きたくない」
《治せば良いのに》
「コレでも軽くしてある、なんか、勿体無くって」
《我慢しがち》
「欲しがりません、勝つまでは」
《本当に戦後の世界から来たの?それ有名な標語だよね》
「ココまで轟いてるって何をしたんだよ、日本は」
《そっちこそ、どうなってるの》
「核兵器は知ってるか」
《核の開発初期で使用も保持も禁止されたけど》
「落ちた、日本に落ちた、戦争に負けた、曾お祖父ちゃんはそれで死んだ、お祖母ちゃんは苦労した。苦労させない様に頑張って育てた娘がクソ野郎と結婚して、自分が生まれた、想定外の子で、体の弱い子。仕事の邪魔になるって病院に行ったけど、止めたんだと。酔ってて本人は言った覚えが無いって、こちとら素面だ。しまいにはクソ野郎の不倫の言い訳にされるし、最悪だ。1番怖いのは、その世界に戻される事、最初の世界に戻される位なら神風にでもなってやる、そういう気概ですわ」
《向こうで、最初の世界で誰かに話した?》
「話したさ。本当に?って返しが1番キツかった、腹が立った。向こうはそんなつもりが無い返答だって気付いたのはかなり後で、もうすっかり引き籠ってた。復帰しようにも病弱だから上手く行かないし、我慢して復帰しろってのが定番だったけど、親は負い目からか過保護で、ぬるく生きさせて貰った。だから我慢の限界が分らんのかも、痛いと昔を思い出しておセンチになるな。治すわ」
《普通は、好きな音楽でも聞いてって助言も出来るけど》
「探しても無いしね、微妙に似てるけど違うとかイライラしそうじゃん」
《じゃあ、どうやって気を紛らわすの?》
「記憶の中の音楽とか映像を反芻して、また咀嚼して楽しんでる。後はそもそも紛らわさない、考えて考えて、何かして日が経つ。その繰り返しなので、気を紛らわすも何もねぇ、そんな時間が無かった」
《向こうでも、ココでも?》
「まぁ、何かそういう運らしい、予定が立て込むか、食って寝てしか出来ないか。だから穏やかに暮らすのは想像出来ん、役目を終えたら考えられるのかもだけど。もう、ずっと何処かに遡上する鮭、川長すぎぃ、他の鮭居なさ過ぎぃ」
《そんなんなのに、向こうが良いんだ》
「何かなぁ、ロウヒも君も不機嫌になるよなぁ、郷土愛?」
《こんなんでも多少は良い世界だと思ってきたからね。少しは良い世界だと信じちゃってる、ココ以外を知らないからかもだけど》
「悪い面を見せ付けられて、八つ当たりされてる気がする?」
《それもあるのかも、だから、不機嫌なつもりは無いんだけど、ムッとしちゃうのかも》
「ワシに向けられても困るんじゃが」
《そうなんだけど、ごめんね、出してるつもりが本当に無かったんだけど、否定が出来ない》
「ロウヒも、自分の世界を否定されてる感覚なのか、必死に守ってきた世界が受け入れて貰えないんだから、そうか。愛国心は無いつもりでも、過剰に否定されたらムカつくしな」
《否定してるんじゃ無いのは分ってると思う、私でもそう思うんだから》
「申し訳無い気持ちが先行してるのも分ってくれるか、諦めたり開き直るのが申し訳無いと。安穏と生きるのが申し訳無い。向こうが、大変な事になってるって思ってるから」
《それは…君が背負いきれなさそうなのに、戻ろうとしてるのが》
「あー、背負いきれなさそうか、やっぱり、そこまで分っちゃってるならそうなるのか」
《かもだよ、もしもの話し》
「地球だもんな、どうするんですかって話しですよ。戦力が拮抗してるなら、どっちかが壊滅するまでやるかもだし」
《そこは分らないけど、不安ならレーヴィに相談してみる?》
「あー、兵長だしな、聞く。でも時間あるかな」
《夕飯には大丈夫でしょ、オヤツにでも何か差し入れしてあげたら喜ぶと思う》
「リタのカレリアパイだな」
《送るよ、手伝ってあげたら?》
「うい、そうします」
まだ少し早いので、シャワーを浴びてからリタの家に向かった。
朝食の片付けも終った頃だろう、家に入るとリタが暖炉の前で珈琲を飲んでいた。
《おはよう、今日忙しい?》
「おはよう、何を頼むつもりかしら」
「おはよう、レーヴィが忙しいので、カレリアパイをあげたいのです」
「あら、なら作りましょうね」
マティアスは基地へ、自分達はキッチンへと向かった。
そして何で忙しいかの話しになったのだが、誤魔化せるだろうか。
「この基地の徽章を付けた治療師が魔力酔いを治してると、問い合わせの対応らしい」
「ふーん、この位のサイズの治療師様かしらねぇ」
「さぁ?妖精も連れてるらしい」
「あー、私にも見えるかしら」
「どうだろう」
「どんな妖精なのかしらね?」
「黒い羽根らしい」
「へー、良いなぁ、見たいなぁ」
お粥を混ぜつつも、凄い熱量の視線を感じる。
見えないフリなのか、見えてるフリなのか、頭上の妖精を見てる感じが凄い。
《凄い視線が合うんですけど》
「見えてるでしょう」
「えー?何がー?」
《凄いニコニコしてますよ》
「リタ、こわい」
「何でよぉ、一緒に料理出来て嬉しいだけなんだけどなぁ」
《あら、可愛らしい子ね、ラウラちゃんの妖精さんかしら?》
「あ、ムンモったら、折角意地悪してたのに」
《あらごめんなさい、つい》
「皆見えるのか」
「ウッキはどうかしら、私も初めて見えたから」
《見えると思うわよ。昔、ドイツに旅行に行って見た事があるの、それで結婚するって決めたのよ、心が綺麗な人だって》
「ノロケ最速記録」
「そうなるとウチの旦那がどうか、妖精とか信じない人だから」
《自分だけ見えないなんて、きっと拗ねちゃうわね》
「間違いなく拗ねるわね」
「いや、それは困るんだが」
《大丈夫だと思います、昨日聞きましたよ、祝福を分け合ったって》
「うーん?」
《どうにか見えないかしら》
「ね、あ、もう良いわね、冷ましましょ」
「へい」
《他の方には聞こえては無いですから、そのまま聞いてて下さい。隠す魔法には姿を表せる魔法もセットです、姿を意図的に見せられるんです》
「失敗した、そこまで考えて無かった、消せるだけかと思ったのに」
「え?どうしたの?家の火でも消し忘れた?」
《大丈夫ですよ、妖精女王が認めたからこそ、分け合えたんですから》
「いや、何でも無い、休憩、ちょっとトイレ」
困る。
折角の呪いが無効化されるんじゃ、それこそ呪いにしかならんがな。
そういうつもりじゃ無いのに、どうしてこうなった。
《あの、大丈夫ですよ、そう安易に魔法は使えませんし》
「それでもだ、折角の呪いが台無しじゃないか」
《それでも妖精女王の決断ですし、反対する妖精も居なかったそうですから》
「母数が前とは違うんだから、熟考してくれないと困る、死なれたら困る」
《今度は自分達の考えで隠れられるんですから、大丈夫ですよ》
「うっかり騙されて、姿を表しそうなんだが」
《それは、人間もそうじゃないですか、詐欺師や犯罪者に騙されるって聞きましたよ》
「それも母数が違う、人間は多いだろうが妖精は少ないんだ、過保護で丁度良いの」
《ラウラも過保護は好きじゃないのに、僕らにはするんですか?》
「なん、もう、大事にしたいだけなのに」
《情に訴えてもダメですよ、僕らには理性や個性があるんですからね》
「誰も信じるな、だと妖精は誰にも見えなくなるし、そうなると魔渦の解消に支障が、アレ?無いな、都合が良いぞ」
《追加項目は不可能ですよ、そんな事を許したら滅茶苦茶になっちゃいますから》
「個体に任せるしか無いのか、減って良いの?」
《妖精にも寿命はあります、病気とかで植物が死ねば僕らも死にます、植物の寿命が僕らの寿命です。上手く育たないで消える子も沢山居るんです、だから、死は当たり前で、生まれた瞬間に受け入れる事の1つでもあるんです》
「達観されると悲しいのな」
《産まれる事は選べなくても、生き方は選べるんです。呼んでくれて、選択肢を増やしてくれて感謝しています》
「なんだかな、ごめんな」
なんとも言えない気持ちになって、中庭へ向かってしまった。
ビニールハウスの中では、真っ赤なトンボ羽根の子が飛び回っている様子が伺えた。
中に入ると土には水やりの後がある、ウッキは知ってて家族にも黙って居たのだろうか。
妖精を心配して、妖精の事を黙ってくれてる。
でも、こうやって小さなウソや軋轢を生んでしまってる。
ロウヒでもマティアスでも、自分の世界の本来は見えない悪い面を、新参の赤の他人に突き付けられたら嫌になるだろう。
もっと上の立場なら、イギリスの女王が御使いを拒否するのだって独自の自己防衛かも知れない。
ココは既に、御使いを否定する世界線を選んでるのかも知れない。
無意識に無作為に、選んでる意識も無く、選んでる。
『その子に苛められたの?』
「あ、いや、違う。自分の不甲斐無さを噛みしめてる」
『不甲斐無さ?何か失敗でもしたの?』
「したかもって考えてる」
《あの、ココはどうですか?》
『うん、良い感じ。優しい人で凄い心配性なの、1日2回は会いに来るのよ。それでね、美味しくなるって知ってるから、元気に大きくなってくれって、赤ちゃんに食べさせるんだって』
「リタに赤ちゃんが」
『ううん、まだ分らないけど、いつかの為にって』
「視野が、長いなぁ、そう構えられたら良いのに」
『大丈夫よ、長く生きたら、きっとそうなるから。だからね、ゆっくり大きくなって大丈夫よ』
妖精の慰めの言葉で決壊してしまった、ダメだ、限界が来た。
限界だ、自分のせいで世界が動くのに耐えられない。
平穏に生きたいのに、無理なのは自分が1番分ってる。
どうしたってアラが目に付く、どうにかしたくなってしまう。
悪い癖だ、もう止めようないと。
それから瞼を治してキッチンへ行き、カレリアパイの作業に戻った。
レーヴィもマティアスも薄い生地が好みなんだそうで、切れない様に薄く伸ばすのが難しい。
そしてお粥が沢山詰め込まれてるのが好み。
焼き上がったらバター液に浸して寝かせ、合間に卵のスプレッドを作る。
固ゆで卵にバターと塩を混ぜて完成、コレは冷めないウチにしまう。
寄り分けた失敗したのや小さいのをムンモとリタと試食、まろやかで美味しい。
「ありがとうございました、手間暇が凄い」
《慣れれば大丈夫よ》
「そうそう、伸ばすのだって経験だし、普通ならお粥は朝食の残りを使うんだから」
《そうそう、リメイクなの》
「あ、オヤツには少し早いし、少しお散歩に行かない?」
「お、いくます」
泣いたのがバレたのか、気分転換にと誘われてしまった。
そうして車に乗り込むと、以前に紹介して貰った服屋へ着いた。
今日はちゃんとオープン中。
お客さんはチラホラ。
「おはよー、どう?」
《見ての通りよ。いらっしゃい、この前はどうだった?》
「褒められました、ありがとうございます」
《あら、中央の人に褒めれるなんて、私って凄くない?》
「知ってる、凄いから来てるんじゃない」
《ふふ、今日は何か探してるの?》
「ううん、ウィンドショッピング」
《あらやだ、買ってよ》
「良いのがあればね。あら、コレなんか良いじゃない、ほら」
「派手なんよ」
《もう、そうやって訛っても都会っ子だって分ってるんだからね。リタ、若い子こそシンプルイズベストよ》
「えー、でも、1回は見たいのよ、こういうの着たのが」
《あら、食わず嫌いはダメね。はい、試着試着》
お出掛け用の白と緑色の小花柄ワンピース、甘めのレトロデザイン。
胸元のリボンのお陰でパジャマ感が薄れてるが、寝間着っぽく感じてしまう。
「パジャマ」
《髪を纏めて上げたら良いのよ、ほら》
「うん、それね」
「マネキンが悪い」
「はいはい、好みじゃ無いの?」
「いや、別に」
「じゃあコレとソレと、春物買うんだから安くしてよね」
《着て周ってくれるならね》
「そりゃもう、これから基地にお出掛けなのよね?」
「この恰好で?」
《なら安くしたげる》
着ていた服は奪われ、リタの服も合わせての事なので断れず、購入となった。
オマケの髪留めは好き、服は可愛すぎる。
「じゃあ、私は他にも寄ってくから、行ってらっしゃい」
「リタも行くのかと思ったのに」
「ダメー、お使い位は出来るでしょう」
「むり、できない」
「もう大きいんだから、我儘言わないの」
「おっぱいはちいさい」
「気にしてない癖に、ふふ。大丈夫よ、似合ってるんだから胸を張りなさい」
「無い胸を張れと」
「ふふふ、そうよ、堂々としてたら周りは気にしなくなるんだから」
「気にしなくなるまで張らないとダメじゃん」
「そうそう、だから駄々を捏ねないで、レーヴィの為にお使いに行ってらっしゃい」
「はぁい」
取り敢えずコートのまま基地まで飛び、兵長の部屋へと向かう。
ドアは閉められていて人の声もする。
大した用事でも無いので、人が出て来るまで待つ。
パイプ椅子は固め、廊下の人通りはそこそこ。
ジロジロ見られるが、ココは我慢。
まだ服すら見せて無いんだ、耐えろ、妄想で耐えろ。
そうだ、旅館の離れを作ろう。
静かな離れ、物書きの缶詰に使われる様な個室。
川沿いで、1人用の小さいのが良い、マーリンに使って貰おうか。
《ラウラ?》
「げっ、マティアス」
《げって失礼な》
『髪をアップにして、どうしました?』
「服、ほら、リタに言われて着てる。差し入れ持って来た」
『ありがとうございます』
《ノックしたら良かったのに》
「大事な用なら悪いと思って」
『大丈夫ですよ、今度からノックして入って下さい』
「おう、パイをどうぞ」
《良い匂い》
『それで、今日は何処かへ行くんですか?』
「いいや、おうちかえる」
《折角のワンピースなのに?》
「買わざるおえんかった、服を奪われリタと合わせて割引された、基地を回るのが条件」
《それで》
『真面目に、着て歩るこうとしてるんですね』
「拷問」
《楽しませようとしてるんだと思うけど、拷問って》
『そう言う時は、服が良いから見られてると思い込むんですよ。軍服を着慣れて無い時に言われました、服を褒められてるんだから緊張しても無駄だって。マネキンは服を褒められた程度で動じるなと』
「透明なマネキン、服が良い」
『着て緊張する時は全部そうするんです、緊張を解すおまじないとして』
「透明マネキン服が良い、良い服着てる透明マネキン」
《それじゃあ標語じゃない》
『嫌にならなければ良いんですよ、ね』
「おうよ、余りは分けて、もう帰る」
《聞かなくて良いの?》
『似た戦力の国同士の戦争について、ですね』
「忙しいんじゃ」
『大丈夫ですよ、今はもう広報へ任せてますから』
《お礼が殆どで、後は関知してませんって答えるだけだし》
「すまんね」
『出来るのにしないのは嫌ですからね。でも、現に何もしてませんけど』
《そうそう、何もして無い。知らぬ存ぜぬ》
「歯痒いだろうか」
『いえ、有り難いなと思ってます』
《このパイとかね、朝食食べれなかったんだって、忙しくて》
「なら早く来たら良かった」
《好き嫌いなだけだし、気にしなくて良いよ》
『はい。それで、戦争の事でしたね』
「おう」
部屋に招き入れられ、先ずは皆でパイを頬張る。
そして一息ついてから、本題が始まった。
『結論から言うと、大きければ大きい程、戦火は大きくなります。協力国が多い程、長引きます』
「例えばロシアなら」
『協力国が後から出れば、同じ事になりかねません』
「小さく済ませるには」
『戦力に差が無ければ、強力な攻撃で先制。ただ、シミュレーションは細かな設定で変わりますし、特に情報の無いロシアでは振り幅が大きくなるでしょうね』
「ロシア対ロシアなんてシミュレーションは無理だもんな」
『そうですね、戦争の半分以上は情報ですし、情報が無いとシミュレーションしても難しいかと』
「それでも強力な先制攻撃で何とかなるかしら」
『人道的かどうか、そこを無視するかです』
「嫌だなぁ、考えたく無い」
『だからって、探りに行ったりしないで下さいね』
「しない、死にたく無いし」
『はい、宜しくお願いします』
「おう」
《でもさ、情報を得るにはどうすれば?》
『ピンキリですよね、亡命者の声から諜報部まで。そして精査も、専門家に任せるべきかと』
「ですよねぇ」
《何も解決しない》
『堪えて待つのも仕事のウチですから』
「ふぇい」
『本当なんですよ、特に…』
軍隊の中でもスナイパーが最も耐える能力が要るらしい、何日も同じ場所で耐えて標的を待ち、的確に撃つ。
無理だ、やっぱエミールは凄いんだな。
「じゃあ、後方で待機してますわ、昼寝でもして。ありがとうございました」
《うん》
『コチラこそ。気を付けて』
帰りはコートを脱いで基地を回ってから帰り、サウナへ石を投下する。
試しに泉の水を掛けると、倍になったかの様に魔素が立ち昇った。
ヤバい、自分だけの時限定だ。
何回か外へ出入りして、遅めの昼食。
今日は元気なのでケバブを食べながら、ごちゃ混ぜピラフを作り、皿に盛り収納。
後はエリクサー、蒸留器に雪を入れて火にかけるだけ。
生も乾燥も何とかなった。
ピッチャーに入れて急速冷却しても、臭みも無くてアッサリ美味しい。
雪は豊富にあるので、蒸留器でシャリシャリエリクサーを量産。
日が暮れるまで量産。
お腹が空いたので夕飯。
後はロッキングチェアで勉強。
常識問題を丸暗記する為に、読んでは問題へ行き。
答え合わせをしては暗記へ戻る。
ただ読んで解く、免許の勉強に近いだろうか。
夕飯を食べてから3時間、身支度をしてベッドへ入った。
《スズランの妖精》《マティアス》「リタ」《宿屋のムンモ》『レーヴィ』