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2月9日

「蜜仍君」「ショナ」「サイラ」『エイル先生』《フギン・ムニン》「柏木さん」『白雨』「アレク」

「タケちゃん」『イシス』『クヌム』《ヘケト》『クーロン』《ドリアード》『ベリサマ』  



 

 ゆっくりと地上へ落下する。

 周りは高速で地上へと落下し、潰れていく。


 その間にも自分の落下速度は上がり、死体はどんどん積み上がる。


 落ちる。


 その積み上がった死体の上に、自分が落ちた。

 助かった、死体によって、積み上がった死体の上で。






「っだぁぃ!」

「桜木様?!」


「悪夢」

「桜木さん、昨日も今日も、大丈夫ですか?」

「汗も酷いし、僕、心配なんですけど」


「昨日のは違うよ、可愛かったもの、印象が。今日は悲惨、本当に悲惨」


 陰惨な悪夢の説明を一通り終えてから、風呂場へ直行。

 大浴場へ入ると、サイラさんも入浴していた。


「おはようございますサイラさん」

「おはようございます、図柄は選べました?」


「忙しくてつい、まだ見れて無いんです」

「そうでしたか。あ、さっき白雨さんに刺青を入れたんですよ」


「ありがとうございます」

「いえ、大人しい方ですね。元大罪と言われても、何だか、疑ってしまいます」


「普通」

「えぇ、とっても普通ですね。でも少し、普通過ぎて違和感があります」


「違和感?」

「皆さん結構個性的ですし」


「そう?ショナも?」

「従者狂」


「ははは、アレクは?」

「おこちゃま」


「ふふ、エミール」

「桜木様大好きクラブ会員3号」


「ふふっ、なんじゃそりゃ」

「1号はカールラ、2号はクーロンです」


「タケちゃんは?」

「筋肉バカ1世」


「なっ、はっ、ひどっ」


「桜木様はネクラクティブ、アクティブと掛けました」

「いい!ナイスだ」


「因みに私はドリラー」

「自分も言っちゃうのか」


「はい、だから何も無い彼が不思議なんです」


「白雨は虚無だからなぁ」

「では、虚無僧にしましょう」


「ふっ、ひどい」

「ピッタリでしょう?」


「うん、ぴったり」




 お風呂から上がり、サイラさんと一緒に食堂へ向かうと、白雨も食事も揃っていた。


 焼き立てのパンに数種類の炊き立てライス、メインは熱々のハンバーグ。

 刻み野菜のポトフスープに、サーモンとイクラのポテトサラダ。


「「「いただきます」」」


 久し振りのサフランライスは香ばしくて美味しい、ハンバーグとも合うのがまた憎らしい。

 エイル先生は早々に食べ終えると、トルティーヤを温め出した。


「先生、何をしてるの?」

『皆のお弁当にね、オリジナルブリトーでも作ろうかと思って』


「あー好き、食べたい」

『色々作ってみるから、どれが良いか後で教えて』


 トルティーヤの生地はノーマルの小麦粉から、そば粉のガレット、米粉、トウモロコシ粉と用意され。

 材料は謎肉、サーモン、様々な野菜に、数種の豆とライス、チーズも豊富。


 サルサとアボカドディップは別添え、憎い配慮だねぇ。


「ハンバーグも食べたいけど一緒に作りたい、困る」

『沢山作るから、食べ終えたら手伝って』


「わかっぱー」


 様々な組み合わせを作り出しては巻き、包み、組み合わせを包み紙に書き込む。

 他のヴァルキュリア達も手伝って、あっという間に出来上がった。


『ふぅ』

「都度都度仕舞ってたから何種類あるのか分からんくなった」


『秘密』

「楽しみ、サフランライスシリーズ絶対美味しい筈」


『ふふ、サフランライス好きなのね、もっと早くに出しとけば良かったわ』

「言えば良かった、でも高級品で思い付かんかった」


『体に良いし、魔素多いからハナにオススメなのよ。あ、今夜はパエリアにしましょうか?』

「本場のパリパリのは苦手よ?」


『分かるわー、アジアのお米食べちゃうと変わるわよね。大丈夫よ、深めので炊く感じに作るから』

「手伝う」


『ありがと、でも竈がそんなに無いし、下拵えも直ぐ終わるから大丈夫よ。それより味付け、やっぱりイカスミは外せないわよね?』

「それも好き、さっき食べたのにもうお腹減った気がする」


『ふふ、色々作っておくわね』

「うん、いつもありがとうございます」


『良いの良いの!久し振りのお客様で、皆楽しんでるし』

「でもそろそろお礼を」


『んー、じゃあ…お土産。何処かの食べ物とか、何か。ハナの好みで良いわ』

「お土産」


『好きな場所に行って、好きなモノ買って来て、それを貢いで頂戴』


「ん、がんばる」


 好きと言うか、行ってみたい場所はある。


 ケバブの本場トルコ。

 でも、行けるのか?


 訓練所へ行き、皆が練習している間、エリクサーを撒きつつタブレットでトルコを検索。


 名称も特に変わっておらず、バザールも自分が知っている場所に存在していた。

 国としては中立国、召喚者の出現は大昔なのに、ずっと国連へ支援してくれている。


「桜木さん、次は何の悪巧みですか」

「エイル先生に貢ぎ物、お土産が良いって、好きな場所の」


《それは我ら動けぬ神々へのご褒美ですぞ!》

《かと言ってロキに頼むは対価が見合わぬ!ですぞ!》


「あぁ、アヴァロンでも言ってたね、捧げられないと受け取れん、大概地元のだって」


《そうですぞ》

《神と言えど出来ぬ事はあるのですぞ》


「神様なのに、不思議よね」


《ご当地料理!》

《お土産!所望!》


「何が良い?」


《《甘味ですぞ!》》


「あい分かった承ろう」

「じゃあ白雨さんの事もありますし、省庁へ向かいましょうか」




 ショナと蜜仍君、クーロンにコンちゃん、白雨にアレクも連れて省庁へ。

 柏木さんの執務室へ直接向かうと、丁度手が空いていたのか、そのまま話す事となった。


「おはようございます柏木さん」

「おはようございます、白雨さんの精査が終了しました、お聞きになりますか?」


「はい」


 魔力はアレク程度、魔法は特に使えない。

 溢れるフェロモンも無し。

 テロメアは正常、寿命予測は平均。

 国連は脅威から警戒へ格下げした。


 まさに無、虚無僧、出家でもするか?


『出家はしないし、ハナの心は読める』

「あ、今読んだ?」


『ハナだけ』

「はぁ、でも聞くな」


『がんばる』

「おう、練習しろ」


「それで、どう致しましょうか、国籍等や従者補佐になるかどうかです」

「補佐?」


「蜜仍君、アレク君がそうですよ、期間限定の桜木様専用の従者補佐です」


「特例作らせたならごめんなさい」

「いえいえ、特例ではありません。過去にも例はありましたので、問題もありません」

『なる』


「早い、死ぬんじゃ無かったのかよ」

『恩は返す』


「なら今死ね、楽になれ」

『楽に死ぬ為に恩を返す』


「んー…補佐って何が出来るの?」

「それは僕が!あのですね、ストレージは使えませんし、武器や危険な物は制限されてほぼ持てません。単独での移動や点滴の交換も不可能ですが、協力関係にある神々や精霊が付き添う等の条件があれば、可能になりました」


「出来ない事が多い」

「一応、監視対象ですので」

『それで良い。武器は要らない、使えない。ストレージも』


「じゃあ点滴上手なら点滴係だな」

『練習する』


「では、国籍は自動的に日本帝国となります。次に戸籍ですが、桜木様の親戚関係ですとどの位置になりますでしょうか?アレク君は遺伝的にも従兄弟ですし、白雨さんも従兄弟程度の遺伝子の繋がりはありますが」


「は、なにそれ」

『俺も知らなかった』


「はい、報告に有りませんでしたので、エジプトへ問い合わせた所。既に言付けがなされてまして『言い忘れたが、従兄弟程度の関係にしておいたので、変更する際は訪ねて来て欲しい。クヌムより』と」


「こわいわ、全部読まれてる」

『あぁ、こう怖いのか』


「良く有る事だそうなので、気になさらなくても大丈夫だそうですよ。それで、どうしますか?変更されますか?」

『従兄弟で良いか?』

「早いなぁ、何か問題ありそう?」


『無い』

「早い、ちゃんと考えろ」

「4親等ですから、親戚である恩恵等も特にありません。向こうでの親戚関係と同じと考えて頂いて、差し支え無いかと」


『親戚とは、具体的に頼む』

「アレク、虚栄心位離れてる感じ?」

「だな」


『ならそれで。従兄弟で、良いか?』

「どうぞ」

「俺とはどうなる?」


「あ」

『兄弟になるんだろうか』

「えー、何か違和感」


「そこも従兄弟で良いんじゃない?」

『あぁ、そうする』

「じゃ、それで」


「はい、ではその様に。白雨さん、諸所の契約も御座いますので、向こうへ。皆様はコチラでお待ち下さい」


 親族が増えたね、やったね。

 家族とも違うし、なんだろう。




 向こうの従姉弟達は元気だろうか、良くしてくれたのに恩を返せないのか。


「恩を返せないのは忍びないね」

「向こうのご家族にですか?」


「いや、親戚、従姉弟達に。良くしてくれたから、夏休みに嫌な顔せず面倒見てくれたし」


「俺の面倒見るのは嫌?」

「別に、面倒見てないし」


「構ってくれないもんなぁ」

「ワシ戦闘タイプで無いもの」


「そうか?加われば良いのにって、皆言ってるけど」


「マジか…でもなぁ、不用意に怪我して心配掛けるのもなぁ、運痴やし。迷惑掛けそう」

「エイル先生が居れば大丈夫だろ」


「痛いの見るの嫌」

「痛いのは良いのかよ」


「遮断教えて貰ったし…練習してないな、やべぇ」

「勝手に練習しないで下さいね」

「なー」


「エイル先生かスクナさんに相談してやります」

「よろしい」

「絶対ですよ」


「へい」


「お待たせしました、終わりましたよ。他に何かございますか?」

「痛覚遮断の練習で近々戦闘訓練に参加しようかと、ヴァルハラで行う予定です。それとトルコのバザールに行きたいです、北欧のエイル先生から、旅行命令とお土産を貢げと言われたので」


「はい、では確認して参りますので、暫くお待ち下さい」


 審査は直ぐに通った。


 何なら、もう向かって良いらしい。

 国連的には無害認定の国、そして自治区や中つ国的に警戒しないでも良い国なんだそう。

 そして何より北欧神話の医神の命令、なので疎かには出来ないとスムーズに話しが通ったらしい。


「ありがとうございます」

「痛覚遮断の練習、戦闘訓練への参加も許可されました。イスタンブールはまだ早朝ですので、15時以降ですと店も開いてるかと。因みに私のオススメはバクラワ、美味しいですよ」


「じゃあ、沢山買って来ますね」

「はい、いってらっしゃいませ」


 お昼にはまだ早いし、どう時間を潰したもんか。


「あ、タケちゃんに相談しに行くかね」




 ヴァルハラの訓練場に戻り、白雨をサラッと紹介し、タケちゃんを呼び出した。

 汗はかいているものの、痣は少な目で安心。


「どうした?」

「相談がある」


「どうした」

「あの白雨、大罪の嫉妬だった。実質人造従者に近い、どうする?」


「やるか」

「早い。小野坂さんが反対しそうだなって、そして国にはまだ何も話してないのがポイント。ホムンクルスも反対する国連も信用出来んし、魔王候補がやったら、いよいよ規制が掛かりそうかもなって思って」


「なら良い手がある、俺が元魔王、元大罪への対抗手段として人造従者を作ると提案すれば、少なくとも中つ国は反対しないだろう。内々にその権利をハナが辞退し、譲ってくれたとなれば、国としても顔が立つだろうしな」


「そのセリフがあれば日本も賛成し易いか」

「後々の言い訳にはなるだろう。後は自治区だが、何でも反対していれば自分の首が回らなくなる事は分かっているだろうし、談合している中つ国の召喚者を規制するとも思えん。1体だけなら、何とかなるだろう」


「でもさ、生き返った人が前と同じって保証は無いかもだよ?」

「あぁ、だが信じれば良いだけだろう、そいつだ、と」


「でも、そいつが間違ったら殺せる?」

「あぁ。試しに1体だけなんだ。何かあれば俺がちゃんと始末する」


「それはダメ、提案した責任があるからやらせて欲しい」


「なら側に居たどちらかが、始末しよう」

「分かった」




 タケちゃんが皆に事情を話し、中つ国にも連絡してくれた。

 そして幸いにも、中つ国は直ぐに飛び付いた。


 そのまま一路エジプトへ飛び、イシスさんへと引き合わせる事となった。

 あぁは言っても、きっとタケちゃんが始末する事になるかも知れない。


『いらっしゃい』

「はい、お邪魔します。こっちはタケちゃん。タケちゃん、コチラ、イシスさん。ココ、本名禁止なのよ、あだ名オンリー」


「そうなのか、宜しく頼む」

『えぇ、それでクヌムの事かしら?』


「あぁ、1体だけだが頼みたい」

『分かりました、さ、コチラへ』


 真夜中のエジプトは実に寒い、暗くて静か。

 ヘルヘイムが懐かしい。


『おう、来たか』

「お邪魔します。何でそう未来が分かる感じなの?」

『ふふふ、短く小規模で限定的であれば、どの国の神々にも先読みは居りますから』


「あー、なるほど」


『で、そいつの従者か?』

「うん、タケちゃんです、宜しくお願いします」

「丈夫で賢い男を頼む」


『わかった、容姿はどうする?』

「んー、少し俺に似せてくれ。影武者に使えそうな程度」


『ん、任せろ』

「宜しく頼む」


《内側は私が、ヘケトです》

「タケちゃんだ、宜しく頼む」


《はい、どの様な者がお望みで?》


「従順さはそこまでなくて良い、俺が始末出来る程度の強さが良い。影武者として振舞える程度の知能は欲しい、そして人を守れる男が、俺の理想だ」


《はい、分かりました》


 側で話を聞く間に、クヌムが泥人間を完成させた。

 そしてヘケトが息を吹き掛けると呼吸し始め、目を開けた。


 白雨同様に川で泥を洗い流すと、ゆっくりと動き出し、起き上がった。


「良い感じだ」

『しなやかさも、丈夫さも兼ね備えている。きっとお前の役に立つだろう』

《名前はココを離れてからお付け下さい》


『それから、予備は作っておくから安心すると良い』


「ありがとう」

「ありがとうございました」

『あ、お礼は先払いでもう貰ってあるから大丈夫よ、ホラ、うふふ』


 イシスさんとヘケトさんが見せたのは、この前の腕輪。

 何処まで先が見えているのだろうか、羨ましい。


 アレクの予備の服を着せ、浮島へ。




「ふむ、タケちゃんよりイケメンやな」


「うーむ、俺よりイケメンか?」

「は?イケメンじゃん」

『似てるのー』


「白雨、コッチの方がイケメンよな?」

『似ている、そこまで違いは無いと思う』


「君らは目が悪い」

「この前まで悪かったハナに言われてもだな」


「視力は良いし、魔力的ピントが合わなかっただけだしぃ」

「で、名前だが、自分に名付ける様で無理だ、さっぱり思いつかん」


「話変えやがった」

『不毛だから』

『白雨はハッキリ言い過ぎなの』

「で、候補は何か無いか?ハナ」


「エンキドゥ」


《ハナ、おタケ、そいつは誰じゃ?》

「あぁ、新米従者だ」


《ほう、名は?》

「名前はまだ無い、エンキドゥにしようかと」


《洒落ておるが、既に存在しておるぞ?》

「あー、居るか」


《うむ》


「ガネーシャさんも」

《おるのう》


「じゃあー…ドゥシャ」

「合わせたな」

《良いでは無いか、ロシアの言葉で魂や核心と言う意味じゃな》


「そうか、では、ドゥシャ。俺は李 武光、宜しく頼む」


《はい、私はドゥシャ、お2人に忠誠を》


「あら」

《ハナも名付けに加わったからかの》


「あららー、ごめんタケちゃん」

「うむ、計画通りだ」


「まじか…ドゥシャ、ご飯食べる?」

《いえ、暫くは結構です》


「人間なのに?」

《まだ今暫くは完全な人間ではありません、少し時間が掛かるのです。その間は武光様の魔力を戴くので、食事は要りません》


「そっか、良い子にね」

《はい》


「よし、エイル先生に一応診て貰うか」

「うん、だね」




 ヴァルハラへ戻り、診察室へ。

 エイル先生は既にドリアードから聞いていたらしく、スムーズに診て貰えた。


『うん、異常無し!にしても似てるわねぇー、遠くからパッと見たら分からないもの』

「先生まで目が悪くなった」


『あら、もしかしてハナには違う?』

「うん、なのに皆似てるとしか言わんし、何。騙そうとしてる?」


『見え方が違うのよ、ハナはオーラを含んだ見え方をして無いだけ。普通はオーラ含めて見てるから似てるって思うのよ、似たオーラは早々居ないから』


「うん?タケちゃんオーラ見えてるの?」

「俺は目が良いからな、コッチに来て数日で見えて来たぞ」

『エミール君は直ぐに見えたから、ココの事も信じたのよ』


「なんで、みえない」

『癒しの魔法が使える人は見えないのが多いんですって、治療の妨げになるし』


「えー、なにそれ」

『文献が少ないみたいだから、知らなくても仕方ないけれど、常識よ』


「そんなに見え方変わる?」

「ハナもアプリで写真を取るのにフィルターを使うだろう、それが常時だ。最初は煩わしかったが、慣れると忘れる」


「えー、良いなぁ、見たい」

『ちょっと待ってて……はい、掛けてみて』


 良くある感じの眼鏡を渡され、掛けた。

 そこには後光差すエイル先生の姿が。


 緑の炎の様な大きな揺らめきに少し白が混ざり、赤い数本の線が走っている。

 エフェクトが凄い。


 タケちゃんを見ると、赤に包まれ黄色が穏やかに揺らめいている。

 ドゥシャも確かに似ているが、身体の周りに白が小さく揺れ動いていた。


 クーロンは青紫に黒が少し混じり、白雨のオーラは黒と白が揺れ動いている。


「な、自分は見れ…る!」


 緑と白のベースに端がたまに黒く揺れる、紫の線が何本か細く揺らめいていた。


『どう?』

「まさか、黒は魔属系?」


『そうね、そういうカテゴリ分けも昔はあったけど、気にしなくて良いわ、良い悪いじゃ無いから。単なる才能、個性。オーラは大半が先天的なの、早々変わらないわ』


「でも例の候補もコレが関わってるんじゃ?」


『その差別は撤廃された筈なんだけど、まだ古いのが生きてれば影響されてるかも知れないわね。ま、配色が特に重要なのよね、昔はその色で雷電も癒しも両方使える者が多かったの。だから、どうせ何もしてなくても候補認定されてたわよ』


「あらー、なら気を付けて行動してたら良かった?かも?」

『でも運命にまで抗えないでしょう?魔王も嫉妬もほっとける?』


「んんー…もう少し上手く、後手に回した、かも?」

『遅かれ早かれよ、ある程度は同じ道を辿るし、ツケを後に回すとデカくなるわよ』


「うーん、そう思っとく」

『そうよ、そう思っといて。さ、お昼食べに行きましょ!』


「うん、コレ借りて良い?」

『ダメー、1個しかないから。ふふふ、作って貰いなさい』


「うん」


 眼鏡の魔道具かぁ。

 色んな意味でロマンが有る、白雨も眼鏡とかで個性付けすべきか?


『眼鏡で個性付けか』

「直ぐ聞く、聞くな」

『鍛冶神達に相談したら?道具でどうにかするか、白雨君が努力するか、縁を切るか』


「親族辞めますか」

『暫くは道具に頼らせて欲しい。声と音量が同じで、どうしても答えてしまう』

『ずっと独りだったんだものね、聞こえ無い様にするには、道具か何かの補佐が必要なのかも』


『あぁ、そうさせて欲しい』

「しかたないなぁ」




 訓練所に行き、ドゥシャの紹介もそこそこにランチにブリトーを頂く。


 1位は米粉とトウモロコシ粉を混ぜた生地、謎肉にサフランライス、キドニービーンズと細切りレタス、玉ねぎにチーズが入ったアメリカンスタイル。


 2位はトウモロコシ粉と小麦粉の生地に、サーモン、スライス玉ねぎとレタス、サフランライス、サワークリームのヘルシーシーフード。


 3位は米粉と小麦粉のモチモチ生地、謎肉ハム、チーズ、卵のハイカロリーブリトー。


 きっと、順位は新しいブリトーを食べる毎に更新されるだろう。


 たっぷりのサルサを付け、たまにアボカドディップを大盛りに付けたりと、無限に食べれる気がしてくる。


『やっぱガレットシリーズは落選かぁ』

「すんませんが、残念」


「後は海老入りがどうなるかですね。いつも僕らの分までありがとうございます、エイル神」

『良いの良いの。皆の、其々の好みの味が分かった方が楽しいでしょ』


「うん、確かに」

「はい、助かります」




 食べ終えた後、蜜仍君にショナと白雨を連れ、ニーダベリルへ向かった。

 先ずはドリームランドでの成果物、蜘蛛の糸や龍神様の鱗、真珠等など。


 糸車の3女神が手を止め、向かって来ると蜘蛛の糸を掴み上げた。


『立派な糸ね』

『縦糸と横糸に分かれてるわ』

『やっと私達の出番かしら?』


「この子が取って来てくれたんです」

「山之蜜仍です、桜木様の従者です」


『良い子ね』

『上手に下準備したわね』

『偉いわ』


「えへへ、ありがとうございます」

「どうにか出来ます?」


『勿論よ、じゃあ始めましょう』

『さぁさぁ編みましょ』

『しなやかに』


『丈夫で』

『軽く』

『美しく』


 3人の女神によって作られた紐は、光沢のある黒いリボンだった。

 3メートルはありそうな細長い物が3本、別珍、シースルー、正絹。

 ローブにもベールにも合う真っ黒なリボン。


「綺麗ですね!」

「うん、ありがとうございます」


『いつか一緒に撚って編みましょう』

『そうね、色々作りましょう』

『楽しみね、お願いよ?』


「うん、いつか一緒に」


 果物籠を受け取った3人の女神達は糸車に戻ると、再び糸を紡ぎ始めた。


 貰った3本に魔力を通してみる。


 地面すれすれに人を追い掛け回すその姿は、まるで蛇の様。

 本気で叫びながら逃げる蜜仍君は、本当に、単なる少年の様に見えた。


「何でー!僕なんですーーあぁーーーー!」

「ショナじゃ面白く無いと思って」

「ですよね……僕もそうやって良く兄に遊ばれました、蛇のオモチャで」


「…弟ってこんな感じなのだろうか」

「多分、そうなんだと思います」

「もう!何処まで逃げれば良いんですか!」


 影に潜んでなお影に潜り追い掛ける紐蛇が、目視出来ない程に遠くに逃げた蜜仍君を捕まえたらしい。

 その手応えを頭のてっぺんで感じると同時に、大きな叫び声が遠くから木霊した。


 暫くして紐蛇にグルグル巻きにされた蜜仍君が、うねうねと蛇の様に這わされながら連行されて来た。


『あははははははは!』

『なんだありゃ!あはは!』

『ご丁寧に運んで来たぞ!あははは!』


『良く動く紐だなぁ、本当に蛇でも混ぜたか?』


「いや?混ぜて無いと思う、髪の毛は入ってるけど」


『それか!』

『メデューサの紐か!あははは!』

『おい、まだ髪の毛と蜘蛛の糸は残ってるのか?』


「うん、どうぞ」


『おう、鞭だ!俺は鞭を作るぞ!』


『その紐に針も仕込もうぜ!』

『ガブっと一咬み卒倒だ!』

『あははははははは!』


「魔力溢れちゃってるのかな」

『ハナが面白いモノ見せるからよ、ふふふふ』


「あ、ベリサマ、お邪魔してます」

『うんうん、ふふっ』

「もう解いて下さいよぉ、桜木様」


「ごめん、おいで蛇紐ちゃん」

『そのリボンが、運ぶ姿がもうね、ぶふぅ』


「お仕置きには完璧ですな」

「ですね」

「僕何か悪い事しました?!」


「して無い、凄い良い子。お仕置き以外にはもう使わないから安心して」

「悪さをしなければ大丈夫ですからね、蜜仍君」

「しないのにー!」


「桜木さんは用心深くて有名なんです、諦めて下さい」

「僕が里の出身だからですか?」

「いや、人間全般信じてないだけ」

『ふふ、その気持ちが髪にも宿っちゃったのかも、うふ』


「あ、蜜仍君、向こうで君への凶器が沢山製造されちゃってるんだわ」

「もう!もう僕に使わないで下さいよ!」


「桜木さん、初めて親に弟を頼んでみたくなりました」

「甥を望んだ方が早いと思うよショナ君」


『おい、そのリボン貸しな、守り針を仕込んでやるよ、ぶふっ』

「はい、お願いします」




 それから直ぐに、競馬で良く見る短い1本の鞭が手元に来た。


『お前に合わせて持ち手は細くしてあるぞ、持ち手の魔石は取り替え可能だ。どんなモノも裂く鞭だぞ。んで、お前以外が触れば3日は眠り続ける』


 次には、長い鞭が手元に来た。


『伸縮自在の長鞭だ、少しのコツで巻き付けたり裂いたり、先には必中の魔法が掛けてある。お前以外が触れば、毒針で3日は動けなくなる仕掛けだ』


 次に来たのは多分、網。


『無限に大きくなる網だ、お前の魔力なら使いこなせるだろ』


 最後に、3本のリボンが返って来た。


『守り針が仕込んである、お前に殺意のあるモノに噛み付き即死させる。3本共に仕込んどいたぞ』


『全部に、不可視の魔法が使えるが、扱いは難しくなるから、練習するんだぞ』


「はい、ありがとうございます。それとオーラ見える眼鏡の在庫あります?」

『おう、無いけど作るからちょっと待ってろ』


「それと、この人、人の心の声が聞こえちゃうんで、どうにか出来る道具を」

『待ってろ、良いのがある』


 色々な神々が我先にと作り、探し、持って来てくれたのはフチ無し眼鏡とふかふかの白い耳アテ。


 なんそれ。


「かわよ」

『雪兎の毛皮だ、聞こえない様にしてくれるぞ』

「暖かそうで良いですね!」


『それは、そうだと思うが』

「選り好みするかぁ、親戚辞めるかだぞぅ」

「流石に酷ですよ桜木さん」


『少し、考えさせて欲しい』


『ふふ、それは彼の冗談だよ。コッチをどうぞ』


 そこでプタハさんから手渡されたのは、銀のアメリカンピアス。

 先には水色の縞瑪瑙でチューリップの様な蕾が掘り出され、キャッチにも同様の蕾が付いている。

 耳たぶにグルグルと巻き付けるそうだが。


「この花は?」

『花はアイスプラントの蕾のデザインなんだ、石はブルーレースって言うんだよ』


「なんか、耳もげそう」

『大丈夫、こう付けるんだよ、ほら』


 そう言って髪をかき上げ、耳を見せてくれた。

 先の飾りとキャッチが僅かに揺れ動き、チェーンは耳たぶにピッタリと巻き付けられている。


 おしゃかわだ。


「おしゃかわ」

『君が付けるのもあるよ、はい』


 ピンクの縞瑪瑙で蕾の小花が彫られたバレッタ、ピアスのキャッチと同じ小花が沢山付いている。

 可愛い過ぎる、無理。


「可愛い過ぎる」

『じゃあコッチは?』


 同じく水色の縞瑪瑙の小花がまばらに付けられ、細い銀で編まれた髪飾り。

 どうも可愛いのしか無いのか。


『ハナも選り好みしている』

「ぐぬぬ…ほら、訓練で壊すとアレだし、ねぇ」

『そうか、それもそうだね、じゃあコレはどうだろう?』


 水色縞瑪瑙に蕾の小花が彫られた幅広の耳飾りと、銀の留め金が付いているチョーカー、黒く薄いレースにはうっすらと控え目な蔦柄が刺繍されている。

 プタハ曰く、壊れ難い魔法が施されてるんだそう。


 コレなら、うん。


「うん、ありがとうございます」


『良かった。そうだよね、戦うかもだものね、うん』

「いえいえ、我儘で申し訳ない。ありがとうございます」


『うんうん、じゃあ君、耳に穴開けないとね』

「白雨、痛覚切る?」

『練習か?』


「うん」

『なら、どうぞ』


 耳を触り感覚神経を探ると、上行性に走る神経を見付けた。


 ベリサマから新たに貰った簪で少し刺し確かめると、特に活動が活発になった神経が見えた、その神経節を阻害する。


 改めて耳を刺すが、そこから先への神経活動は見られない。


「痛い?」

『いや、でも感覚はある』


 簪を刺したまま、皮膚を治し、水で血を洗い流して引き抜く。


 そうしてまた刺す、もう1つ、もう1つと開けていく。

 両耳に3つづつ穴を開け終わり、神経活動を元に戻した。


 今度は白雨が自分でピアスを付け終えた所で、思い切り念じた。


 耳アテ付けろ白雨、付けろ、きっと似合うぞ。


「どうよ」

『静か』


 面倒掛けやがって、耳アテ付けさすぞ。


『面倒、耳アテ』

「聞こえてんじゃんか」

『足り無いのかも、チョーカーも付けてみて』


 おっさん、バーカ、アホー、虚無!虚無僧!


「まだか?」

『成功しているらしい』


『その読心術は少し特殊みたいだね。慣れるまでチョーカーを付けて、定期的に外して訓練してあげてね』


「沢山、ありがとうございました。お礼の品なんですけど、この」

『水くさいぞお嬢!』

『んなもん別に気にすんなよ』

『そうそう、楽しかったし』


『面白いのも見たしな!チャラだ!』

『だな!あははは!アレは良かったぞ!』

『今日はずっと笑ってられらぁ!あははは!』


「いやいやいや、鱗、この鱗あげます」


『コレ全部か?』


「うん、デカいし使い道が分からんので」


『使い道が無いなら加工してやる』

『だな、欠片を賞品に貰おう』

『で、今回のは充分だ』


「はい、お願いします」


『おいオチビ、従者なのにカバンがねぇな?小さいカバンをやるから、ちゃんと守ってやるんだぞ』


「はい!ありがとうございます!」

「じゃあお酒も追加だな」


『『『おー!』』』


『ほれ、何でも3種類だけ入れられるカバンだ、ただし生き物はダメだぞ』

「はい!」


「僕の隣の席の子が、机でカマキ」

「やめてショナ」


「すみません、つい思い出しちゃって」

「その先は言わなくても分かる」


「そちらでもそんな事が」

「うん、惨劇がね」

「どうしたんです?」


「カマキリは危ないって話ですよ」

「うん、アレはヤバい」


 そして竜の鱗と髭は、ピアスや髪飾り、そしてモビールになった。

 悪夢避けだそうだが、悪夢にも意味が有るかも知れないので3日連続で悪夢を見るか、平和になってから使う事に。




 あっと言う間に時間が過ぎたので、白雨とアレクを自主練の為にヴァルハラに残し。

 ショナ、蜜仍君、おチビクーロンと共にトルコの大使館前に移動した。


 既に話は行っているお陰か、守衛からして歓迎ムード。

 身分証を提示し、門の中へと入ると綺麗な日本人女性の姿があった。


「ようこそ召喚者様、雨宮マキです。宜しくお願い致します」


「はい、宜しくお願いします」


 ヒジャブ着用は特に強制されておらず、治安も良好、物価の価格差も殆ど無いので、日本からの旅行者も多いらしい。


 バザールは観光地でもあるので、ボッタくりが稀にあるそう。

 なので各国の大使館員等、国の関係者が見回りしつつ取り締まっている。

 今回はマキさんがガイドと見回りを兼ねて、一緒に来てくれるらしい。


「お邪魔で無ければ、なのですが」

「いえいえ、案内助かります」


「はい、では何から案内致しましょう?」

「ケバブ!牛か羊で、お願いします」


「はい!」


 先ずはグランドバザールから。

 結界が張られているので、少し離れた場所に転移。


 グランドバザールは外から既にアメ横の様な雑多な通り、青果やショール、多くの商店が並んでいる。


「見た事ある風景」

「あ、ソレ、日本の転生者様も言ってるって聞きました。有名な場所なんですか?」


「まぁ、都心では最大の商店街みたいなもんなんで」

「そうなんですね」


「です、良い匂いしてきた」

「はい!この先にサンド屋がありますけど、立ち食いなんですよね、どうします?」


「おー!買います」


 中々の混雑、5人で並び即収納。


 バザールに向かいながらも出来立てのピザやケバブサンド、テイクアウト出来るお店の物を片っ端から購入し、収納した。

 後で好みの味かチェック。


 バザールの外は綺麗に区画整理され、外国人街として日本、中つ国、インド等のアジア商店。

 欧州地区にはイタリア、フランス、イギリス等の商店が並んでいる。


 江戸時代の寿司同様、屋台では大き目の握り寿司や太巻きが売っている、人気らしい。


 イタリア地区のパスタ屋台では、大きなチーズの中でフィットチーネを絡めていた、眺めていると試食させてくれた。

 勿論、全種類、人数分買った。




 そんな、車も歩行者も入り乱れる脇道を通り抜け、警備兵が構える門の中へ入った。


「ここからがバザールになります、先ずはオススメのお店を紹介しますね!」

「うひょーい!」


 思った以上に綺麗、こまめに修復されているらしく、天井や床は古いながらも美しさを保っている。


 大理石の床、青と黄色で彩られた天井、通路の角には蛇口が有る。

 無料給水所だそうで、その先の道のど真ん中にある謎の建物は警備室だそう。

 建設当初からある設備で昔から使われているんだとか、中の警備の人達は自前のお茶を飲み寛いでいた。


 そして商店には地元の物が溢れている、シーシャ、香水瓶、茶器セット、絨毯、貴金属、何でも有るらしい。


 値段設定は高めだそうで、先ずはココで目を養ってから色々と周りつつ買うのがオススメだそう。


 お店は無限にあるので、ショップカードなる物が店頭に置いてある。

 気になったお店で少し見ている間に、マキさんが特にオススメするお店のショップカードが手元にどんどん増えていった。


 柏木さんの言っていたバクラワ、ロクムを試食し購入へ。


 甘過ぎないやつにまだ出会えていないが、この世にあるのだろうか。


「ここのドライフルーツ、オススメですよー」

「いや、嫌いじゃ無いんだけど、貰い物で果物いっぱいあるんだわ」


《お客さん、いっぱいあるなら少し売ってくれないかねぇ》

「良いけど…何で?」


《孫の悪阻が酷くてねぇ、色々食べさせてやりたいんだ、特にイチジクがあると助かるんだけどねぇ》

「いいよ、家近いの?届けてあげようか?」


《そうかい?ありがとう、じゃあ夕方には店を閉めるから、また来てくれないか?》

「いいよー、じゃあまたねー」


「1日でバザール巡りは少し大変ですし、お泊りになって行かれます?お宿をお取りしましょうか?」

「折角ですから、泊まりましょう」


「うーん、高く無いのでお願いします」


「はい!では、少し休憩しましょうか」




 バザール内部の少し薄暗い喫茶店、モザイクタイルの素敵なお店は落ち着いた雰囲気。


 チャイやトルココーヒー、ストラッチと呼ばれる牛乳粥プリンぽいもの、カザンディビといったミルクプリンをモチモチにしたスイーツを頼んだ。

 バクラワより甘さが控えめで助かる。


「甘さ控え目で良いですね」

「うん、コレは良い感じ」

「場内1の甘さ控えめ系ですから」


「たすかる」

「あのカップ入りの、お土産に良いんじゃ無いでしょうか?」

「はい、オススメです。観光シーズンには売り切れちゃうんですよ」


『クーロンはあのお酒、気になるの』

「あー、酒は人気だしね」


「強いけど美味しいですよ、後でご案内しますね」

「ありがとう」


 そして休憩を終え、ウインドショッピングを続けた。


 奥の骨董品では流石のマキさんも不得手らしく、一緒に蘊蓄を聞く側に回っていた。


 そんな中で目を引いたのはレース屋、細く細かいカラフルなトルコレースが施されたハンカチ、現物だけで無く初心者キットも売っていた、そそられる。


「私もココでメキッキオヤのキット買ったんですけど、挫折して友達に上げちゃいました。今はセミオーダーしてます」

《あはは!マキちゃんは堪え性が無いからねぇ、イーネオヤから始めたら良かったんだよ、あははは》


「イーネオヤ?」

《布と縫い針と糸が有れば出来るのさね、ほら、見ててごらん》


 修理に出されて来た物なのか、端のレースが無くなっているハンカチを棚から取り出し縫い編み始めた。

 かぎ針代わりの縫い針に糸を巻き付け結び、編み、結び、編む。


「嵌りそう」

《編み物やった事が有るなら、シルクの糸が良いよ、高いけど仕上がりが違うからね。旅行者にはこの色が人気だよ》


「ターコイズ!良いなぁ」

「買いましょうよ、物があれば何時でも練習出来るんですし」

《そうそう、慣れりゃぼんやり編んでても勝手に出来ちまうしね、編み方付けとくよ》


「わぁ、本だ、良いんですか?」

《紙が1番目が疲れないからね、最初は長く見るから紙が良いよ、動画は探しゃ何でもあるからね》


「ありがとうございます。それと、これも、買います」


 ホクホクしながら少し歩くと、今度は洋服屋で足が止まった。

 民族衣装のカフタンはゆったりしていて好み、マキさんのGOサインもあり数枚選んだ。


「ワンピースなんて珍しいですね」

「肌触り良いし軽くて柔らかくて体型出ないし、パジャマとか夏用にね」


《生地が気に入ったか、すまんね、それは夏用だから今は数が少ないんだ》

「あら、でも気に入ったので、これ下さい」


《あいよ、暖かくなったら沢山出るから、その時にまたおいでね》

「ありがとー、また来るね」


《待ってるよ!》




 時間はもうお昼前、そろそろバザールも混んできた。

 お茶を運ぶお兄さん達が増え、値下げ交渉する観光客もちらほら。


「休憩します?それとも早めのお昼にしますか?」


「お昼にしましょか」


「ライスにケバブが乗った物が出るレストランがあるんですけれど」

「行きます!」


 そのレストランに行くとショーケースの中に食べ物が並び、野外に水色のテーブルと椅子が並んでいた。

 内部も白と水色のやわらかい色合い、カジュアルなお店で助かった。


 サイドメニューはマキさんに任せ、ケバブプレートとコーラを注文。

 直ぐに出て来たのは赤ピーマンの炭火焼、温かいトマトスープ。

 そしていよいよメイン。

 肉、白米、グリーンサラダが盛られたケバブプレート。

 塩気があって芳ばしくて、シンプルで美味しい。


「もうコレだけで良い、3食コレ」

「今日だけですよ、お代わりします?」


「もち!」


 買い食いの事も考えお代りは1回のみ。

 デザートにはクリームチーズと桑の実ジャム、甘酸っぱくてさっぱりして美味しかった。


 食べ終わり店を出ると、次はエジプシャンバザールへ徒歩で行く。


 道すがら、ひき肉とほうれん草とチーズの入った薄いパイ、ギョズレメ。

 ムール貝の殻にお米と具を詰めたミディエ・ドルマス、ピーマンに具やお米を詰めたビベル・ドルマスを買い込んだ。


 ストレージ便利。




 辿り着いたバザールはスパイスの香りでいっぱい、モノクロカラーのバザール。

 先程のバザールより混んでいて、地元の人やヒジャブ姿の人が多い。

 凄いのがキャベツ、クソデカい、赤ん坊2人分。


 向こうとは違い、食料品や日用品が多く揃っている。

 試しにサフランの値段を見ると、値は下がっているのだろうが、どうしても高いなと思ってしまう。


 次にカラスミ、キャビア、安いのか分からん。


 ロクムは安い、でも包装がとても簡易なのでココの物は殆ど自宅用になりそう。

 ピスタチオやピーカンナッツがキャラメルコーティングされたのは、思わず即買いしてしまった。


 他には、お土産と自分用にチャイとコーヒーの茶器セット。


 ローズウォータとオイルは、マキさんにゴリ押しされて買ってしまった。


 そして石鹸屋の前に着くと、突然マキさんから提案が。


「ハマム!お風呂行きませんか?!」

「え?!行きます!」

「え!?」


 ショナの要望の結果、混浴、全ての施設が屋内との条件が付け加えられた。

 安全対策に、その条件は曲げられないそうだ。


「では、高級ハマムは除外ですね、男女別ですから。ですがその条件に見合う場所があります、行きますよー」

「何か用意する物は?」


「お金があれば大丈夫です!」




 旧市街と呼ばれる地区、問屋と住宅街の隣接する場所にあった。


 その半地下で奥まったお店に入ると、直ぐ横に受付、先ずば3人分のお金を払う。

 真ん中の広い空間には椅子やテーブルが置いてあり、休憩所なのかおじさん達が水たばこを吹かしながら、お茶していた。


 案内されるがまま更に奥へ入ると、今度は真ん中に噴水と広い休憩スペース、そして螺旋階段。


 そこの螺旋階段を上がり、鍵付きの個室更衣室の中へ。

 小さなベッドに鏡やアメニティが揃っている。

 おチビクーロンと2人で入り、着替えた、というか全部脱いだ。


 そして、用意してあったタオルを巻き付け外へ。


「全裸なんだが?」

「大丈夫ですって、ショナさんもタオルだけですよね?」

「あ、はい」


「体験したら分かりますから」

「ほう」


 お昼直後だからか、中はガラガラ、熱気ムンムン。


 広い大理石の浴室の真ん中には大きな台が1つ、天井に空いたいくつもの穴には色ガラスが填め込まれ、陽の光が入ってくる。

 取り敢えず促されるがまま、壁沿いの洗面台で掛け湯をし蒸されるのを待つ。

 ショナは斜め前の絶妙な位置に居る、隣のマキさんに配慮しての事だろう。


 本当に良い子だ、そろそろ身体の事をバラすべきか。


「桜木様、クーロン様、熱くないですか?」

「大丈夫、スチームサウナ的で良いね」

『うん、きもちいの』


「ですよねー!のぼせそうになる前に仰って下さいね」

「あいよ」

『あい』


「あの、不躾とは思いますが、プライベートな時間が作れる様に何処かへ進言しておきましょうか?」


「あ、それは大丈夫、もう慣れた」

「そうなんですね、失礼しました」


「いえいえ。ありがとうございます、色々と」

「いえ!あの、楽しんでらっしゃいますか?たまに難しい顔をしてらっしゃったから、心配で」


「え?ハチャメチャに楽しいですよ?」

『サフランとか、生地を見て難しい顔をしてたの』


「あー、色々終わったらサフランとか綿で商売しようかと思ってて。市場を荒らさない程度に、生活費を稼げたら良いなって」


「恩給は受けられないのですか?」

「それはどっちの意味だろう?」


「え、あ、お受けになら無いのかどうかです。例え候補となられた方でも国は支払うかと」

「あー、でも税金でしょ、遠慮しちゃうよね。でも、稼げなかったら貰うかも」


「成程、そういった将来設計をしてらっしゃるんですね」

「うん、適当に、程々にね」


「で…いきなりなんですけど、ご兄弟っていらっしゃるんですか?」

「ホントに急、姉と兄が居たよ。従姉弟とかハトコは多かったかも。因みに両親は共働き」


「そうなんですね、私も両親が働いていて…その、学校も共学じゃ無かったので男性が」

「苦手?」


「苦手と言うか…緊張してしまって、少しキツく対応してしまうんですよね…それで、桜木様はショナさんと普通に対応してますし、慣れたとおっしゃってたので、その」


「対応方法?習うより慣れろとしか…美人なのに勿体無い、美人でも悩みがあるなんて想像も出来ませんなぁ」

「もう、誂ってらっしゃいます?」


「かもー」

「もぅー」


「人と関わるの苦手だからちょっと分かる、ちょっとだけど」

「そうなんですか?普通に見えますよ?」


「頑張ってるの。精霊とか神様とかなら楽なんだけど」

「そうなんですか?」


「分かり易い、素直、裏が無い、今まで会った神々はそんな感じです」


「私は畏れ多くて、緊張で吐いちゃうかもです」

「ロキなんてもう普通のおっさんよ、子煩悩なパパ」


「北欧の?」

「うん。もうね、娘に弱いパパ。あ、もう男は皆パパとか思えば良いんじゃね?」


「!でも、同い年はさすがに」

「じゃあ、喋る犬」


「それ良いかも!犬、お好きですか?」

「嫌いじゃ無いけど猫派」

『あちいの』


「じゃあ、私と出ましょうね、桜木様はショナさんとご一緒に垢すり受けて下さいね」

「お言葉に甘えます、クーロンゆっくり涼んでて」

『あい』


 少ししておじさんとおばさんが入って来た、片手に道具を持った屈強なおばさんと細身のおじさん。

 2人とも水着。


《お嬢ちゃん達!暖まったかい!》


「「はーい!」」


 先ずはその場で豪快なシャンプー。

 そして半個室へ移動した後は、おばさんが肉壁となりつつ上手にタオルを取られた。

 そのタオルを敷いた台の上に寝転がると、素早くミニタオルをかぶせてくれた。

 台は暖かく、垢すりも痛くない程度の心地よさ。


 少しウトウトしていると、次は後ろ側。

 引っ繰り返る際に見えた自分の垢は、中々凄かった。


 そうしてお湯を掛けられ、泡で洗われ、再び洗い流される。

 また豪快に頭を洗われたのは面白かった、けど気持ち良い、楽しい。


 最後に新しいタオルを巻いて、垢すりが終わってしまった。


 カサカサになると思ったけど、お肌トゥルントゥルンになった、たまんない。

 半個室から出ると、大きな台にマキさんとクーロンが寝転んでいたので一緒に横になった。


「ヤバい、マジやばいわ」


「ふふ、どうでした?」

「さいこう」

「僕まで受けさせて頂いて、ありがとうございました」


「いえ、私は昨日受けたばかりですから」

「ありがとう、凄い良かった」


「ふふふ、この後、ハマムグッズや石鹸買いに行きませんか?」

「行くー」


 再度体を温め直し、バスローブを羽織り噴水前で休憩。

 搾りたての冷たいザクロジュースは、少しブドウの様で美味しかった。




 軽く休憩してからハマムを出て、大きな橋を目指す。


 途中、鯖サンドを買い込み橋を素通り。

 橋は上下に分かれ、上は車や路面電車、釣り人が大勢居る。

 下はカフェやレストランが立ち並んでいるらしいが、それを素通り。


 最後のバザール、アラスタバザールへ空間移動した。

 こじんまりとした商店街にはお店が真っ直ぐと並んでいる、広々と開けた感じ。

 人も少なく、少し疲れた体に丁度良い。


 入って直ぐのお土産屋でアイスを買い、ぶらぶら歩く。

 猫が居るトルコランプ屋で吊り下げタイプのランタンとキャンドルホルダー、青と白、クリアタイプ、薄いピンク色と其々購入。


 次にチョコレートショップでビターを買い漁り、民族衣装を着て写真が取れるフォトショップを横目に、ハマムの垢すり、タオル、バスローブ等を揃えた。


 そしてマキさんオススメの石鹸屋さん、何処よりも小さく掌サイズ。

 種類も豊富、外で匂いが篭らず嗅ぎ分け易いのが特に良い。


「私も来たかったので助かりました、ちょうど昨日でストックが切れちゃって…洋服ダンスに仕舞ってたのを使ったんですよー」


「おー、分かる、ワシもやってた。良いね、コレ」


「良いですねー、爽やかで可愛い匂いですね」

「好き、探したけど日本に無いんだよねぇ、この匂い」


「イランイランですね、セクシーな香りですよねぇ」

「そう?」


「イランイランの効能がセクシーなんですよ」

《ヤル気、元気が湧くんだよ》


「わぉ」

《憂鬱な時に嗅ぐと気力が湧くんだ、まぁ毎日嗅ぐのは新婚時代位なもんさねぇ》


「セクシー」

「ですよね」


「ん、コレも良い匂い」

《カモミールだね、あんたどんだけストレス溜まってるんだい》


「お姉さんよりは溜まって無いよー」

《はーっは!帰ったら旦那の世話もしなきゃならないからね!はーっはは!》


「のろけちゃってー、お姉さんみたいな綺麗な肌になるやつは?」


《全くあんたって子は!そりゃこの高いやつさね、まぁ、あんたは若いんだからコッチで充分さ》


「コレ、ピスタチオ?美味しそう」

「コッチもお菓子みたいな匂いですよ」

『たべれる?』


《こら、食べるんじゃ無いよ。お茶を頼んでやるから、ゆっくり選びな》

「ふふ、いつもありがとうございます」

「ありがとうお姉さん、イチジク食べる?」


《あらありがとう、良いイチジクだねぇ》


「でしょー」


 自分用にイランイランにカモミールとピスタチオ、マキさんオススメの月桂樹にローズ。


 後はもう全種類、余れば自分用に使うから大丈夫だろう。


《こりゃまた大量だ、オマケしてやらないとねぇ》


「ありがとー、じゃお姉さんにもオマケのイチジク」

《はーっは!じゃあもっとオマケしないとねぇ!あはははは!》




 少し早いがグランドバザールへ戻り、休憩する事にした。

 好みを完全に理解されたのか、とても素晴らしいカフェに案内された。


「まだ暫く時間がありますし、ココでお茶にしましょう」


「中庭に、木が、植わっとる」

「ココは、ハンと呼ばれる隊商宿を改築した場所なんですよ」

《よう!休憩か?》


「はい、今日は友人も一緒です」

《そうか!ゆっくりしていきな!》

「どもー…真ん中に木があるって素敵、良いなー、住めるのかな」


「はい、居住用に改築されたものもありますよ」

「こーゆー建物、全体含めて好き、中庭に木パネェ。開放的で素敵」


 カフェイン過多なので、今回は人参ジュースを頼み、飲み干してからフラフラと中庭を散策した。


 寒い風がそう吹くでも無く、穏やかで静かな場所。


《お嬢ちゃん、中も見て行くか?》

「行く!」


《おーい!案内してやってくれ》

《おう!こっちだお嬢ちゃん》


「わーありがと」

「あ、桜木さん、僕も付いて行きますよ」


 少し急な角度の階段を登る、土壁は何度も塗り直しされているのか凸凹している、曲がり角は丸くなっていて年季が入った触り心地。


 使い込まれた手摺の位置は少し高く、新しく塗り直された黒いペンキで艶々。


 電動の研磨器の駆動音に、古い電話の鳴る音。

 下からのコーヒーの匂い、たまに漂う古い紙の匂い。


 廊下には植木鉢と猫。


「にゃー」


《ミャオ》


《こいつはチコだ、おいでチコ》

《ミャウ》


《ココは宝飾品を作ってる、隣はデザイン事務所だ。よう!異国のお嬢さんを案内してるんだ》

《やぁ!》

「どもー」


《ココも事務所、税理士だ。コッチは倉庫。アッチは俺の家》

「素敵な場所で羨ましい」


《風邪で寝込んでると煩くて敵わんが、知り合いがいて世話してくれるから、おあいこだな!ははは》


「あー、病弱だからココに住むのは無理かも」

「本当に気に入ったんですね」

《何だ、あのコミュニティの人間か?ワクチンは打って無いのか?》


「いや、打ってるよ、病弱な箱入り娘だった」

「お嬢様なんですよ」

《そうか、大変だったなぁ。付き人も居るんだし、そうだよな。疑って悪かった、海外旅行は初めてか?》


「初めて」

《そうか!ナイスチョイスだ!そういや、ハンに住みたいらしいが本当か?》


「マジマジ」

《お嬢さんは日本だよな?もっと住みやすい家があるだろうに》


「バザールが好きなの、青色が。でも特にケバブが好き」

《ケバブ!そうか!このごった煮もケバブも気に入ったか!》


「うん、お兄さんもこうやって案内してくれるし、そういうの好き」

《お兄さんて!おっさんおだてても何も出ないぞ!あはははは》

《悪いな嬢ちゃん!注文が入っちまった!》


《あいよ!じゃあお嬢さん、戻るか》


「うん、ありがとうございました」

「ありがとうございました」

《おう!》


「お待たせー。ネコ居たし、もうマジでココに住みたい」

「ふふふ、気に入って頂けて何よりです」


「うん、すき、良い所を紹介してくれてありがとう、マキさん」

「いえいえ」


「そうだ、終業時間とかあるよね、送るよ」

「でも、さっきの場所、分かり難いですよ?」

『クーロン分かるの』


「お、凄い」

「では、お願いしても良いですか?」


「うん」


 マキさんを大使館に送り届け、今度はクーロンが道案内。




 日が翳り始めた道を、右へ左へ歩く。

 店に着くと、ちょうどエプロンを取るお婆さんの姿があった。

 真っ青の服と灰色の髪とが相まって、とってもお洒落でかっこいい。


《お待たせしたね、さぁ行こうか、直ぐ近くだよ》

「あいよー」


《どうだいココは?》

「良いね!とっても良い」


《食べ物はどうだい》

「美味しい、ケバブ大好きよ!でもデザート甘過ぎなのが多いよね」


《あぁ、バクラワだろ、アレは甘過ぎるねぇ。わたしゃストラッチが好きだ》

「ね、優しい味で好き。サバサンドも好き、でもケバブが1番好き」


《あははは、そうかいそうかい、さ、着いたよ、入っておくれ》


「お邪魔します、綺麗な家、素敵」


《あぁ、手入れしてくれる人が大変だがね。この籠に入れてくれるかい》

「あいよー」


《ありがとう、良い香りだ》

「いえいえ、食べられると良いね」


《夕飯はどうするんだい?》

「ケバブ!」


《あはは、旨い店は沢山あるからね》

「牛か羊が好きで、だから探すのが逆に大変」


《そりゃ大変だ、所でハマムにはもう行ったかい?》

「行ったよ!凄く良かった」


《そうかいそうかい、でも、ハマムは太陽が出てる間だけにするんだよ、悪いお化けが来るからね》

「ん、わかった」


《もう遅い。あの子達に道を案内させよう、気を付けて帰るんだよ》

「ありがとーじゃねー!」


 家の外にはお婆さんと同じ灰色の髪をした初老の男性が立っていた、どうやらケバブを出すレストランの近くまで送ってくれるらしい。


《ケバブプレートに付くピラフが上手いんだ、キョフテも上手いぞ》


「あ、ご親切に、どうもありがとうございます」

《それと、他の店への案内と、ナザールボンジュウのフィンガーブレスレットだ。ココでは付けておけ、お守りだ》


「魔除け?」

《あぁ、婆さんからだ》


「ありがとうございます、お子さん落ち着くと良いですね」

《あぁ、ゆっくり食べてくといい。じゃあな》


 お土産屋で良く見た青い目のお守りが、ナザールボンジュウらしい。

 ちょうど手の甲辺りに目があるデザイン、言われた通り直ぐ着け、店内へ入った。


 何であれ、お婆ちゃんの言う事は聞いておく、亀の甲より年の功。


 ココのケバブプレートは確かに美味しかったが、キョフテの方がもっと美味しかった。

 勿論お代わりしつつ、テイクアウトもお願いした。


 そしてホテルまでの道程でも、テイクアウト出来るものを片っ端から買った。


 ホテルは水色と白のヨーロッパ風な外観、家具やバスルームも青くて可愛い素敵なホテル。


「たまんねぇなおい」

「お風呂どうします?」


「軽く浴びとく」


 軽くシャワーを浴びて、早々に就寝。

《ドゥシャ》

「雨宮マキ」

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