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2月1日

「ショナ」《ドリアード》「ミーシャ」「賢人君」《カールラ》『クーロン』『スクナさん』「魔王」『おじさん』『マーリン』《【ソラちゃん】》『ロキ』

 まだ真っ暗。


 起きてから直ぐにバイタルチェック、魔力は低値。


 ショナに勧められエリクサーをコップ1杯。

 それからトイレ、洗面所と巡り。

 カールラ、クーロンも連れて1階に降りると、魔王、ミーシャ、賢人君、小ドリアードと勢揃い。


 ただ先ずは朝食を、ガッツリと。


 茶碗蒸しから始まり。

 中華粥、サンドイッチ、合間にクラムチャウダーとお漬け物、焼おにぎりは味噌と醤油で芳ばし旨し。


 デザートは島産の果物ゼリー。

 ジュラが初陣勝利のプレゼントに作ってくれたらしい、種類毎に舌触りや歯応えが違ってて美味しい。


 手が込んでる。

 有り難い。


「桜木さん、先生はどうでした?」

「ミーシャみたいな先生だった、顔も似てるかも」

《名前は聞いておるのか?》


「ネイハム・サリンジャー先生、儚げイケメン」

《あぁ、ネイハムか。無愛想なのはエルフ特有じゃから我慢しておくれ》


「ドリアードは愛想しか無いバカ」

《はぁ!バカじゃないわい!》


「桜木様の魔素酔いしたバカ、無能」

《我に効くと、誰も思うておらんかったじゃろうが。なんなら我もじゃし》


「ばか」


《なんじゃ八つ当たりか、仕方無かろう。お主は休暇で里帰りしておったんじゃから》

「まぁまぁ、全員無事だったんっすから」

「秒殺賢人」


「ちょっと格好良い感じにディスるの止めて下さいよ、アレも予測出来なかったんすから」

「ミーシャ」

「お休みしてごめんなさい、もう休みません」


「休むのは良い、死なない為のお休みなんだから。逆にタイミング良かったと思う、今回は偶々だ、ね。ちゃんと休んで」

「そうっすよ、俺もそろそろ休みますけど、最後まで気を抜かない。抜くのはお休みだけって決めてんすから」


「カールラとクーロンはずっと一緒で、凄く羨ましい」

《カールラ、ちゃんと寝るもん》

『ご主人の魔力で元気だしぃ』


《ハナは2人の魔力容量も共有しておるからの、お主1人の体では無いんじゃから、良く良く気を付けぃ》

「まるで妊婦。でもどう気を付けんのさ、まだまだなのにいきなり溢れちゃうし」

「エイル神やスクナヒコ様達の見解では、初めての膨張で早めに漏出したんじゃ無いか、慣れればまだまだ容量は大きくなるのではと」


「初めての満腹で、ちょっとゲロっちゃった感じか」

「ですね」


「所で、何で賢人君もミーシャも居るの」

「エミール様にアヴァロンから従者が1人付いたんすよ、で、武光様が昨日の今日で戦闘訓練はさせられ無いからコッチに行けって」

「私は桜木様に会いに来ました」


「ミーシャ、じゃあ会ったし、お帰り」

「いやです」


「それじゃショナを怒れないでしょうが。過労ダメ、絶対」

「桜木様が倒れるのがいけないんです」


「それな、向こうじゃ倒れた事無いのに、初失神やで」

《緊張と魔力の大きな落差にやられたんじゃろ、また湯治じゃな》


「それなんですけど、ネイハム先生からは好きにさせろと言われてまして」

「桜木様、一緒にお昼寝しましょう」

「今は甘やかしても誰の為にもならんです、湯治とエリクサーする。散れ散れぃ」


 カールラとクーロンはまたヴァルハラへ修行に、従者達は島で戦闘訓練。


 自分はスクナさんとエリクサー&湯治、そして魔王はその見張り。




『今日は程々が良い、魔力酔いをしてしまうかも知れない』

「なんで」


『昨日は魔力を沢山使って失神した。今度は、急激に増えても同じ様に何かしら影響があるかも知れない』

「血糖値みたい」


『うん、念には念を。急激な増減は膜に負荷を与える、また破れてしまう可能性が高い』


「はい、気を付けます」

『うん、無事で良かった』

「本当に、私を盾にしてくれても良いんですからね、無理しちゃダメですよ」


「魔王も、あんな風に不死身なの?」

「もう少し回復速度は遅いですが、似た様な感じですね」


「じゃあ殺せるかもじゃん」

「ですね、今殺しておきます?」


「今度試す、今はなんも集中出来ない」

『低値の弊害。入浴はもう切り上げ、今度は万能薬と昼寝』


 苦いエリクサーを栗羊羹で流し込み、軽く足湯に浸かる。


 が、眠気に勝てそうも無かった。

 露天風呂の横にある長椅子に肌触りの良い毛布と枕を敷いて、横になった。






 そこは白昼の迷いの森。

 案内板近くの木陰には、おじさんが待っていてくれた。


「おじさん!もう会えないと思った!」

『待ってるって言っただろう?空飛ぶ道具の事は調べたかい?』


「見たよ!ロキの、踵に小さい羽が付いた靴だった、普通だった」

『じゃあ、お嬢ちゃんのは可愛くないとね。コレはどうだい?』


 おじさんがカバンから取り出したのは青い羽の付いた靴で、履かせて貰うとサイズはピッタリ。

 軽くて、動くと羽がフワフワと動いて可愛い。


「良い!色も良い、最高」

『幸運の青い鳥が落とした羽で出来てるんだよ、じゃあ飛んでみよう』


「わ!」

『大丈夫、落ちる速度も自由に変えられる』


「本当だ、ゆっくり落ちてる」


 ゆっくり着地すると、森の少し奥の方に動物が4匹立っていた。

 梟と猪豚とビーバー2匹、何やら話し込んでる様子。


『アレは基本無害だから心配無いよ。それよりアッチのガグだ、人を襲う、気を付けるんだよ』

「うん」


 ソレは森の奥の洞窟に住んでいるが、最近では洞窟から出て人を襲う様になったらしい。

 少し開けた場所に着地し、おじさんに言われるがまま茂みに身を隠した。


『最近になって特に、良く人が迷い混んで来るらしいんだ、それをコイツらが嗅ぎ付けてしまってね。そろそろ多めに狩ろうと思ってたんだ』

「うん、手伝うよおじさん」


 その巨体には腕が4本生え、縦に裂けた口には牙。

 顔は少しだけ人に似て異様では有るけれど、アイツよりマシ。


『怖く無いのかい?』

「うん、これより怖いの倒した」


『頼もしいな、初撃は任せたよ』

「うん!」


 盾と杖を持ち先ずは魔力を探った、思ったより簡単な構造、試しに化け物の腕を細胞減数で1本切断する。

 叫び混乱するガグの様子を見ていると、再生能力は無い様なので次は足を落とした。


 ガグは匂いを探ったのか、片足飛びで真っ直ぐ走り出してきた。

 すかさずおじさんが飛び出し、一太刀で首を切り落とす。


『良い切れ味だ』

「おじさん強い!」


『この刀のお陰さ。昔はね、コイツらに追い掛けられて、よく逃げ回ってたもんだよ』

「じゃあ、イッパイやっつけないとね」


『あぁ、森の見回りを一緒にお願い出来るかい?』

「うん、行く!」




 それから暫く歩いていると、ガグの大きな争いに巻き込まれた。

 鞘から剣を出し逆手に持ち、呪文を唱えながら勢い良く水平に振り抜く。


 風圧が光りながら拡大し、木々を薙ぎ倒した。

 哨戒に立っていた巨大な怪物達の足は切断され、四足歩行の怪物となり、ただ這いずり叫ぶだけ。


 そのまま畳み込む、様々な獣の声で絶叫する怪物達の頭めがけて重い盾を垂直に射出。

 何体も、何体も殺していった。


『おじさんビックリだよ、あの技は何なんだい?』

「勇者の必殺技、きっとおじさんにも出来るよ!小さくて弱かった人間が勇者になって、魔王に勝ったの!」


『それは凄い!それなら僕にも出来るかも』

「そうだよ、練習すれば大丈夫」


『そうだね、練習しておくよ』


 数体のガグの死体をおじさんが洞窟近くの崖に落とし、ガーストを1一ヶ所に誘き寄せた。

 その隙に薄暗い洞窟へ入ると、変わった眼鏡を掛けたおじさんに抱えられ進む事に。


 螺旋状の1本道をぐるぐると下る、もうすっかり日の光も届かない。

 かつては蝋燭が置いてあっただろう抉れた場所には、燃えカスだけ。


『そろそろかな、明かりを何か持ってるかい?』

「蝋燭なら」


 蝋燭屋で買った満月型の蝋燭を台座から外し、おじさんに見せる。

 眼鏡の端を2回叩き、蝋燭を良く良く観察している。


『燃やすのが惜しい、可愛い蝋燭だ。欠けさせないから大丈夫、ちょっと借りるよ?』

「うん」


 満月蝋燭におじさんが大きく長く息を吹き掛けると、どんどん膨らんで大きくなり、浮かび上がった。

 おじさんに、明かりの為にソラちゃんに入って貰えないかと提案された、直ぐにソラちゃんが了解してくれたのには少し驚いた。


『あいつらは光に弱いが、ガグより強い。今のうちに奇襲をかけるよ』

「うん」


『何体か魔法で殺したら、満月を明るく輝かせて欲しい。良いかな?』

「うん、わかった」


 杖を手に真っ暗な闇に目を凝らすと、魔力の流れが直ぐに見えたので、そのまま人の形に良く似た巨体の心臓を止めていく。

 混乱し動揺するガースト達の魔力を掻き乱す、何体も、何体も。




『騒がしい。お前、ココで何してる』

「マーリン?狩りだよ、おじさんのお手伝い」


 杖から聞こえたマーリンの声は、少し困惑している様だった。

 だけれど、前よりも少し優しい気もする。


『そこの変…まぁ良い、今日は魔力を吸い取る練習だ』

「手伝ってくれるの?」


『あぁ、少しだけだぞ。相手の魔力を満月に集めるんだ、繋げて流せ』


「うーん…」


『もっと早くだ、回復されてるぞ』

「んー…むずかしい」

『なら、花火みたいに魔力を打ち上げたら良いんじゃ無いかい?』


「花火みたいに?流星みたいに?」

『そう、花火みたいに、流星みたいに』


 怪物の心臓あたり、ど真ん中にキラキラを集め、一気に打ち上げるイメージ。

 打ち上げ花火の様に、流星の様に。


 生き返らせる時の逆、ハイスピードな逆再生、それを満月へと導いていく。

 そして怪物は花火の筒の様に大きく口を開け、勢い良く光を吐き出した。


 遠い敵程やり易い、花火会場から花火が打ち上がっている感覚、そしてその風景そのままに。

 ドンドンどんどん、打ち上げる。


『悪くは無い』

『凄いぞお嬢ちゃん、とっても上手で綺麗だ』


 光を吸い込み輝きを増した満月は煌々と輝いて、辺り一面に倒れ込む化け物の死体を照らした。

 夥しい数の怪物の死体は、少し気持ち悪い。


「あの月はどうしたら良い?」

『掴んで持って帰ると良いよ、触れば元に戻るから』


「わ、すごい」

『良く頑張ったね。さぁ、森に帰ろう』


 おじさんに抱えられ、一足飛びに洞窟を抜ける。

 ふとマーリンの杖を見ると、既に光は消えていた、拗ねられたのか嫌われてしまったのか。


「ありがとうマーリン。おじさん、死体はあのままで良いの?」

『大丈夫、光になって空に還るから』


 おじさんが空を指さすと、洞窟から銀粉の様にキラキラした光が夜空に還って行く。

 星へ、月へ舞って行く。


「綺麗だね、お月様は三日月だ」

『そうだね』


「おじさんは、ヨグに会った事ある?」

『勿論さ、君ももうすぐ会えるよ』


「マジか!楽しみ!」


『そうだね、上を見てごらん…銀の鍵だ』


 おじさんが自分を地面に下ろし、空を指差す。

 さっきまで舞っていた銀粉が固まり、鍵の形になると、ゆっくりと手元に落ちて来た。


 その鍵を触ると突風が吹き、思わず目を瞑った。

 直ぐに目を開けると、そこは海の上、前に見た扉の前に居た。


「良いの?」

『あぁ、良いって。扉に触れてごらん』


 そっと触れると、ゆっくりと扉が開いた。

 開ききる前に扉が勢い良く後方へ移動し、音も無く閉まる。


 そして目の前の椅子には、1枚の薄いベールを被った少年が1人。

 透けて見えるのは真っ白い髪と身体、見覚えがある様な、白濁した瞳を持つ少年。


「前に、夢で、学校の階段で死体だった?」

《うん、暑い真夏の夜の夢で》


「何でか目を逸らせなかった、怖いのに」

《興味が強いんだね》


「そう?あ、ソラちゃんをありがとう」


《名を呼ばれ、相性が良ければ力を貸すのが、この世界のルールだから》

「そっか。前は程々って言ったけど、もうちょっと強くなりたい」


《じゃあ対価の話をしよう。君の夢を使って良いかい?》

「悪く使わないなら、今いる世界の為になるなら」


《あぁ、勿論。ココのドリームランドを拡張するんだ、楽しくて美しい安全な場所に》

「うん」


《魔物を排除する探索者としての役割も担って貰う、時には戦いにも参加しなくちゃならない》


「実生活に弊害が無い程度なら」

《勿論。ありがとう、呼んでくれればいつでも行くよ。僕はウムル・アト・タウィル》


「うん、ウムル、またね」


 言い終わる瞬間、後方の扉が開き、再び勢い良く自分を通り過ぎた。

 最初の位置まで戻ると、扉はそっと閉じ、隣にはおじさんが居た。


『帰ろうか』

「うん」


 おじさんに手を引かれ再び空にジャンプ、雲一つ無い夜空に、月と星が満天に輝く。

 落下する感覚に下を見ると、また迷いの森に戻っていた。


《ハナちゃん、迎えに来たよ》

「だれ」


《僕はヒュプノス、ロキに言われて迎えに来たんだ。心配してたよ》

「大丈夫、もうちょっとしたら自分で帰る」


《そうかい?それなら良いけど…困った事があったら、僕かモルペウスを呼ぶんだよ?》

「うん、ありがとう」


《じゃあ、気を付けて行くんだよ?》


 翼の生えた優しい青年は、後ろ髪を引かれるように飛び去って行った。

 綺麗な天使さん。


『本当に良いのかい?その鍵があれば、いつでも夢に戻って来れるよ』

「まだマーリンにお礼が」


『きっと忙しいのさ、他人の夢が好物だそうだし。きっと他の』

『おい、人聞きの悪い事を言うな』


 白いローブを羽織り、大きな杖を持った人が発する声は、聞き覚えのあるマーリンの声。

 綺麗な赤毛のウェーブ、長い髪の隙間からチラリと見えた目は濃い緑色で綺麗。


『どうも、初めまして。君がマーリンかい?』

『おう、何しに来たんだアンタ』


『旧友を手伝いにね』

『そうか、そのチビっ子を余り危険な目に会わせるな』

「マーリン、助けてくれてありがとう。さっきね、ウムルと会って探索者になった」


『何か約束したのか』

「うん、戦う、それと夢を使って良いよって」


『はぁ…ちょっと来い、話がある』

『行ってらっしゃいお嬢ちゃん、また森の入り口で待ってるよ』

「うん」




 次はマーリンに手を引かれ空を飛ぶ、フワフワと浮く様に緩やかで、柔らかい飛行。

 夜明けの様に空が紺から青へ変わる頃、大きな高い塔のてっぺんに着地した。


 下を見回すと一面花畑、泉や森のある美しい景色には、塔以外の人工物が一切無い。

 塔の中は中世的なレトロな家具が数多く揃っていた、そしてマーリンは怒っている、確実に。


『そうだ、少し説教だ。お前は、ココで死んだら実際に死ぬのは分かってるのか?』

「お邪魔しま…え?死ぬの?」


『高確率で死ぬ』

「戦う約束しちゃった、力の対価に探索者になるって」


『バカか』

「すんません、戦闘訓練したくて」


『…本気で、探索者になるつもりなのか』


「そんなに危ない?」

『今の現実よりは危ないだろうな』

《なぁに、お主が守ってやれば良かろう?》


「ドリアード?なんで?」


《我の本来の寝城じゃ。マーリンや、どうせ暇じゃろ、手伝わんか》

「たんま、無理強いはダメ。でもせめて…嫌な理由を少しだけ教えて欲しい」


『人間嫌い、崇め奉られるのも嫌だ』

「おう、わかる」

《我は崇め奉られるの好きじゃぞ》


『…俺は嫌だ、最高に嫌いだ、虫酸が走る』

「ごめんよ?誰か粛清してこようか?」


『もう、全員死んだ、だからもう良い』

「杖、返そうか?」


『杖はいい、持っとけ…そろそろ帰った方が良い、外が騒がしくなってきてるぞ』

《すまんのハナ、またアチラで会おうぞ》


「うん、お邪魔しました。今までありがとう」


 塔のてっぺんに登り跳躍、空に向かい高く飛び、木の先に着地。

 何度目かの跳躍で森の入り口に着くと、木陰におじさんが立っていた。


『もう良いのかい?』

「うん、もう帰れって」


『そうか、じゃあ鍵の使い方を教えよう。起きたくなったら、鍵から手を離せば起きられるよ』


「こう?」






 目を覚ますと、ショナやロキに囲まれていた。

 寝ていた場所も変わっていて、見慣れた暖炉、眠っていたのはソファー。


 外は、明るい。

 どんだけ経ったんだ。


「大丈夫ですか?お昼寝から6時間ほど経ってます。身体に違和感は?」

「トイレ行きたい」


 温泉の魔素を浴びてもなお魔力が増えず、念の為にとした点滴にも、痛みにも反応が無い。


 そのさなか秘密の良い案を持って来たロキが異変に気付き、娘さんに相談、娘さんがヒュプノスさんはどうかと提案してくれたらしい。


 バイタルチェックを終え、エリクサーを飲みながら話を聞いたが。


 大変な事になってますやん。


「寝るのもヤバいって、どうなってるんすか桜木様の身体」

「すまん、なんだろうな…銀の鍵を触らなきゃ大丈夫だと思う、多分」

「あるんですか?」


「ソラちゃん、ある?」

《はい》


「薔薇の剣は?靴は?」

《あります》


「わお」


《コレじゃ、具現化じゃな、魔力が消費した理由の1つじゃろ。それに、戦闘もしておったらしいな?》

「した」


《それ、それじゃよ、探索者の契約もしおってからに》


 ソラちゃんの能力も強化されてるかなぁ。


【はい。ストレージ機能の拡張。自身も無機物への憑依、発光を獲得しました】


「おめでとうソラちゃん」

《はい》

「とりあえず、桜木さん、何か食べて下さい」

『うん、合間に万能薬、飲んで』


「おう、いただきます」


 牡蠣とホウレン草のグラタンと、今朝リクエストしたタラコとイカのパスタ、レモン添え。

 箸休めにネギトロ丼を挟んで、キノコクリームソースのハンバーグオムライス、エビフライサンド。

 ハイカロリーメニューが出された。


「胃腸を心配して優しいメニューにしてましたけど、体重も落ちてるみたいですしガンガン出しますからね、桜木さん」

「はい喜んで」


 そして次はエビドリア、ミートボールサンド、キノコリゾット、野菜不足はスムージーで補われ。


 デザートは島産フルーツのムースパフェ、可愛い、美味い。


 正面の観覧席には、神々や精霊達。

 ロキがキラキラしとる。


『凄いねぇ、面白いなぁ』

《じゃろう?》

「見られてごはんイヤ、緊張する、汚く食えないじゃんか」


『えぇー、汚いのも見てみたいかも』


「納豆丼飲むの見る?」

『え、なにそれ見たい』


 丼にごはん、納豆、温泉玉子軽く混ぜ、飲んだ。

 文字通り飲んだ。


 やっぱ納豆旨いな。


『くさぃ』

《なんと、本当に飲みおったぞ》

『嚥下は才能だけど、胃にはあまり良くないから素直に喜べない』

『だが止めんかったな、スクナヒコや』


「どうだ、汚いくさいだぞ」

『美味しいの?』


「旨い」

『じゃあ今度は大きい器で!見たいー見たい』


「今度ね。もうムリ、物理的に無理」


 まだ食べれるけれど皮膚がパンパン、物理的限界が無ければ無限に食えるのに。


 次は、何をリクエストしよう。




 そして少しの休憩の後、歯磨きだ何だと終え、寝る寝ないの話しへ。


「毎回、夢に行っちゃうんすかね?」

「んー、鍵に触れなければ、行きたく無ければ大丈夫じゃん?」

「そんな、適当な感じなんですか?」


「言語化されて無いけど、そんな風に感じた覚えが無くも無い」


「じゃあ、今度こそ、本当に眠っても大丈夫なんでしょうか」

《試しに眠らせてみれば良かろ、ヒュプノスの加護もあるんじゃし》


「それでもです。低値を抜け出す迄は、その夢の国に行かないで下さいね?また点滴する事になりますから」

「手の甲なら構わんよ、腕はズレて痛くなるから嫌い」


「行く気ですか?」

「いや、念の為に言っただけ」


「因みに今は、どんな状態ですか?」

「寝過ぎで頭痛い感じ」

『柔軟しよう』


「じゃあ解散してくれ。ありがとうロキさんや」

『うん、じゃあまたね』


 スクナさん式のガッツリストレッチから、泉での休憩後にエリクサー、湯治へと移行した。


 久しぶりの頭痛と肩凝りは新鮮だった、束の間の、いつもの体の不調に少しだけホッとしたが。


『どうだろうか』

「凄い、もう、頭振っても痛く無い」

「連獅子みたいっすね」

「長いですからね」


『うん、もう少し湯治を繰り返してみよう』




 エリクサーと湯治を繰り返した結果、やっと体もそれに馴れたのか順調に低値は抜け出したのでお布団へ。


「眠れませんか?」

「あんなに寝たしね」


 だが、低値馴れした体のせいか、やけに元気になってしまい全く寝付けない。

 ましてベッド脇に人が居るんだし、眠気のねの字も無い。


 それから眠る為にと、ショナ監修のストレッチも効かず。


 今度は暖かな午後の陽射しの木陰で、糸括り。


「いっそコチラの時間に合わせますか?」

「いや、大丈夫。その方が楽なら合わせるけども」


「いえ、こちらも大丈夫ですよ」

「すまんね、どうも漲る感じに慣れてなくて」

『やっと膜や魔力が馴染んだのかも』


「そうなんかね?良く分からんわ」

『膜はいつから破れていたか不明だけれど、魔力もほぼ無かったとすると。今やっと膜が定着し、安定して、魔素の処理が効率的になった可能性がある』

《うむ、やっと成長期が落ち着いたのかのぅ》

『クトゥルフの恩恵か』


「かね?ソラちゃん」

《いいえ》


「違うんかい、馴染んで効率上がった説が濃厚か。低値抜けたし、向こうに行って良い?」

「起きて貰う手段が無いので、出来るなら止めて欲しいんですが?」

《お呼び出し頂ければ、主にお伝えする事は可能です》


「お、便利、じゃあお願い」


「少しだけですよ、気を付けて下さいね、桜木さん」






「おじさん、お待たせ」

『お帰り。じゃあ行こうか、新しい場所に。森を抜ければきっと見えるよ』


「うん、でもどんな所なんだろ」

『洞窟、海、山、村や街に王都、何でも有る』


「海が良いな、白くて綺麗な漁村とか」

『よし、じゃあ行ってみよう。この怪物達を倒しながら』


「うん!」


 おじさんに他の必殺技も教えながら、沢山の怪物を倒して行く。

 そしてふと振り向くと、森だった場所は重機が暴れ回った様に荒れ果て、血と生木の臭いが充満していた。


『よし、もう終わったね。ご苦労様でした』

「うん、でも死骸や木を片付けないと、もう変な臭いがするし」


『それなら大丈夫。モルディギアンを崇拝するグール達よ!出ておいで!』


 ヌルっとした質感の白いグール達が、どこからともなく湧いて出てきた。

 よく見ると倒れた木の陰や、切り裂かれた岩の影から音も無く、するりと湧いてきたかの様。


「ぬるってしてる、悪い子?」

『生きた人間を襲わない良いグールだから大丈夫、死体処理のプロだ。その彼らを、少し住まわせても良いかい?』


「良い子なら良いよ」

『ありがとう。彼らは木を利用して納骨堂や墓地を建ててくれる、そこを家として大人しく住むだけだから、安心しておくれ』


「そっか、じゃあ良いグールだ、許可します!」


 後処理を良きグールに任せ、細い獣道を行った先、道が途切れかけると再びガグ擬きが争っていた。

 ガースト擬きも魚の様に目をギョロギョロとさせ、ボロボロの鱗は今にも剥がれそう。


『海が近いんだね、だから顔が魚に近くなっているんだ』

「両方倒す?」


『あぁ、頼むよ』


 再び逆手に剣を構え、今度は違う呪文を唱えながら水平に剣を振る。

 本来は両手の掌から出すものだが【波】を【刃】に変えて撃ってみた、成功してくれて嬉しかった。


「やった!撃てた!」

『まだ喜ぶのは早いよ、止めを差さないと』


「うん!」


 次は杖と満月ソラちゃんを出し、打ち損じた怪物から魔力花火を打ち上げる。

 小さな満月に打ち上がった魔力が吸い込まれると、煌々と輝いて、とても綺麗。


『上出来だ、ココもさっきのグール達が片付けてくれるだろう。きっと、君にも感謝してるよ』

「そっかー、良い子で居てくれればそれでいいや」


『そうだね。さぁ、漁村が見えて来たよ』

「海の匂いだ!食堂とかあるかなぁ」


『そうだなぁ、病院は有るだろうし、ノードンスは知ってるかい?』

「ううん」

『ケルトの神の事かな?』


「ん?だれ?」

『モルペウス、父のヒュプノスから見て来いと言われてね。僕の知ってるノードンスは医神、漁業の神なんだ』


「何かゴリゴリに刺青の入った町医者か、漁師っぽそうな名前」

『そうかもねぇ』

『じゃあ、先ずは食堂か病院を探してみようか』


『なら僕は遠くで見てるから、何かあったら呼ぶんだよ』

「うん、ありがとう」


 港の匂いを嗅ぎながら、濃い霧が立ち込める村をおじさんと2人で散策。

 海臭くて、霧が濃くて、カモメが鳴いてて、どの建物も白い木造家屋で、山の方には畑もある。


【主、お呼び出しです】

「え、なんの」


【お試しは終了、起きて下さい。と】

「心配症め」

『良いじゃ無いか、僕は探索してくるから、ゆっくりしておいで』


「うん」


 銀の鍵を手放すと、真っ白い霧の奥が光った。






「良かった、ちゃんと伝わったんですね」

「本当に1時間半?」


「はい、時間にズレがありますか?」

「今思えば3時間は経った感じ」


「そうですか…お腹減ってませんか?違和感は?」

「食べる、そして寝る、今良いとこ」


 エリクサーと食事の後、ようやっと本格的に夢の中へ行く許可が降りた。


 点滴と、時間制限付の夢の国へ。






『やぁ、おはよう』

『おう、お嬢ちゃん具合はどうだ』


「うーん…ノードンスさん?」


『おう!魔物の出る森を抜けて来たんだってなぁ、小さいのに大したもんだ』

『そのせいか少し疲れてしまったみたいで、お世話になりました』


『そうだな、まぁ、気を付けてさっさと帰れよ!』

「はーい!ありがとうございました」

『少し急かされてしまったし、次の街に行こうか』


《あら、旅人さんかい》

「うん」

『ええ、どうも。もう次へ行こうかと』


《勿体無い!新鮮で美味しい魚を食べないなんて!あそこの定食屋で少し食べて行きなさいよ!美味しいわよぉ》

「食堂!」

『食べてみるかい?』


「うん!行こう!ありがとうおねえさん!」


 かなり年のいったお姉さんが指さした方向に向かうと、定食屋の看板が掲げられたお店が開いていた。

 埃を被った古い食品サンプル、色褪せているが種類は多い、船盛に丼にビールに徳利、飲み屋も兼任しているらしい。


『本当に、タコを食べるんですね…』


「うん、美味しいよ?活き造りの丸呑みはまだ食べた事無いけど」

《あんた刺身は苦手かい、そしたら煮魚なんかどうだい、今日のは特に味が沁みて美味しいよ!》

『あ、はい、頂きます…』


「骨取ってあげるよ、お姉さん海鮮丼大盛り!」

《あいよ!》


 これまた白髪交じりのお姉さんが、元気よく厨房のオヤジさんに注文を伝えた。

 それからお茶を2つ、そしてもう注文の品が出来上がったのか、綺麗で美味しそうな食事が直ぐに届いた。


「いただきまーす…うまー」


『確かに美味しいですね…』


「骨取って丼にしてくれるなんて優しいね。あ、タコあった、食べてみる?」

『やめときます…』


《あんた達は旅行か何かかい?》

『はい、私は町から町を旅するしがない物書きでして』

《はー、物書きさんか、そりゃ良い。ここらの面白い話をしてやろうか》


『是非』

「怖いのはやだな」

《バカ言うなって、ちょっと怖い位が面白いんだ》


 横のテーブルの赤ら顔のおっさんは、言い終えるなり表情をスッと変え。

 真面目な口調で、静かに語り始めた。


 月の無い真夜中になると、水に濡れた鯰みてぇな人間が海から上がってくるんだ。

 ひた、ヒタ、ヒタ、1匹、2匹、3匹と、ぞろぞろと群れで陸に上がってくる。


《そりゃあんたみたいな顔かい!》

《うるせぇ!》


《あはははは!》


 そんで町をウロウロと歩き回り、ガタガタと戸を揺さぶるんだ。

 運良く鍵が開いてる家を見付けると、大勢で押し入って、人間を襲うんだ。


《そりゃ、あんたの母ちゃんじゃないのかい!》

《おめーよう!水差すなー!》


《あははは!》


 襲われた人間はな、最初は何とも無いんだが、次の月の無い真夜中に、その鯰人間と同じ姿になって、海へ帰って行くんだ。

 そうして沢山仲間を増やして増やしてだ、村や町を乗っ取るのさ。


「その鯰人間て、話せないのかな」

《いいや、話せるぞ、実はあの食堂のおばちゃんが鯰人間なんだ》

《ちょっと!聞こえてるよ!》


《わりいわりい!ちょっと誂ってるだけだってのなぁ?》

「じゃあ嘘なの?」


《今日が月の無い日だ、確かめてみな》


 外を見るとさっきまで昼間だった筈なのに、もうすっかり暗くなっていた。

 霧は晴れていたが、街灯は薄暗い。


『お嬢ちゃん達、まだ帰って無かったのか』

「うん!美味しいねココのお魚」

『えぇ、どうも、今晩はノードンス先生』

《おい兄ちゃん、もう遅いんだし、ちょっと晩酌に付き合わねぇか?》


『すまないな爺さん、お嬢ちゃんは具合が良くないんだよ、な?だからな、少し付き合ったら、2人はウチに泊まるんだ』

『え、あ、はい』

「うん。いいなー、お酒」

《お嬢ちゃんにはアイスをあげようね、リンゴ味だよ》


「ありがとうー」


 ウサギリンゴの飾られたシャーベットを食べる間に、大人達はお座敷に移り早々に晩酌大会を始めた。

 すっかり寂れたこの町に、久しぶりの来客だと皆が喜んでいる。


 そしてアイスもジュースも尽きた頃、暇にあぐねて外を見ると、街灯の当たらない道の真ん中に誰か立っている。

 視線をそのままに出ようと向かったが、戸を開ける音で気づかれてしまった。


 ヌルッとした後頭部、鯰人間なのか聞こうと追いかけるが、謎の人物の逃げ足が思いのほか早い。

 青い靴にまかせ徐々にスピードを上げる、鯰人間も早いが、こちらの靴の方が一枚上手。


 靴に足を持っていかれつつ、仰け反りながらも何とか上体を立て直す。

 更に態勢を変え、前のめりになり地を這うように低く飛んで追い掛けると、海沿いの洞窟に逃げ込まれてしまった。


《何だお前は!どうして追い掛けて来る!》

「いや、鯰人間なのかと思って」


 洞窟の奥から反響する声に答えつつ、満月蝋燭を出し辺りを照らした。

 最奥には、大きな口と離れた目の鯰人間が沢山居た。


《そうだ、鯰人間だぞ、分かったらさっさと帰れ》


「うーん、人間襲うの?」

《襲わねぇよ。寧ろ、アイツらが襲って来たんだ》


 町も家も奪われた、そして呪いを掛けられた、海の神様を崇めてるから。

 自分達と違う神様を崇めるから、呪うんだと。


 私は娘を殺された。

 私は妻を殺された。


 すり替えられた。

 奪われた。


 この洞窟で決まりを守れば、これ以上は殺さない。

 魚を、貝を、海藻を納めれば、もう殺さないと。


「ノードンスさんも悪い人?」

《いいや、あの人は俺らを庇ってくれた、戦ってくれた》


「そっか、あなたは何しに村に出てたの?」

《洞窟の見張りが居なくなって心配になったんだ》


 アイツらは来る者を騙し、酔わせて全てを奪うから。

 気を付けろ、酒は危ない。


「おじさんヤバいじゃん」

《脅かして逃がそうと思ったんだが、まさか追い掛けられるとは思わなかった》


 お嬢ちゃんは金か銀のネックレスをしてないから、危ない。

 きっとアイツらが目をつけてる筈だ。


 気を付けて、ネックレスをしてるヤツは信用しちゃダメ。

 危なくなったら、もし危ない時は、海に飛び込みなさい。


 俺たちが。

 私達が助けてあげる。


「うーん、とりあえずノードンスさんとこ行ってくる」

《気を付けろ、危なくなったら直ぐに村から逃げるんだ。その足なら逃げ切れる》


 来た時の様に地面すれすれに駆け抜ける、おじさんが心配だ。

 町の人は悪い人で、鯰人間は悪くなさそうだって、教えないと。


 定食屋に入るとお姉さんが1人、片付けていた。

 おじさんも先生も居ない。


《あらお嬢ちゃん、兄さんなら上で休んでるよ》


「ノードンスさんは?」

《診療所に帰ったよ、さぁおいで、お風呂に行こうかお嬢ちゃん》


 エプロンを脱いだお姉さんの胸には、金色のネックレス。

 しまった、嵌められたかも。


「まだお風呂はいい」

《じゃあ絵本を読んで上げようね。さ、おいで》


 後ずさりし定食屋を急いで出ると、診療所への道と海への道を人間達に塞がれた。

 其々の胸には金や銀のネックレス、思い出せば、確かに皆がしていた。


「ノードンスさんとこ泊まる」

《もう寝てるさ、さぁ、帰ろうお嬢ちゃん》


 気持ち悪い声色と、気色悪い口調、張り付いた作り笑いに思わず横に飛び退いてしまった。

 そのまま定食屋と民家の細い脇道に逃げ、診療所とは反対になる山に逃げた。


 真っ暗な山へ凄いスピードで走ってる筈なのに、定食屋のおばさんが猛スピードで追い掛けてくる。

 もう追い付かれそうになると思った次の瞬間、犬の吠える声が聞こえた。


 おばさんは少し怯んで止まると、そのまま村に引き返して行った。

 周りを見渡すと既に山に入っていたらしく、大木に大きな犬が繋がれていた。


「いぬ」

「ワン!」


「助けてくれた?」

「ワン!」


「何でこんな繋がれてるの」

「ワン!ワン!」


「んー、ご飯いる?」

「ワン!」


 前に作っておいたヴァルハラのステーキプレートから、肉だけを取り近くの湧き水で洗ってから、目の前にお皿を置いた。

 芋も米も特盛のステーキプレートを空にした犬は、鎖をブチブチと引きちぎり、身震いするとコチラを向いた。


「どうしたら良い?」

「ワン!」


 そう吠え猟犬の様に駆け抜ける犬に着いて行くと、あっと言う間に山を抜け。

 診療所の裏手に着くと鼻で茂みに追いやられた、そして犬は周りの匂いを嗅ぐと再び大きく吠えた。


「ワン!ワン!ワン!!」


《あの犬!逃げ出しやがったな!》

《近いぞ!》

《捕まえろ!》


 診療所の裏手に居た人間は、犬を追い掛け消えて行った。

 そのまま茂みから出て勝手口から診療所に入ると、頭を抱えるノードンスさんが独り。


「ノードンスさん、大丈夫?」

『あぁ、お嬢ちゃんか、無事だったか』


「鯰人間と話した、どっちが本当?ネックレスの人達は悪い人?」

『あぁ、鯰人間の言う事が本当だ、俺は何もかも奪われ、力を失った。残されたのはこの診療所だけだ』


「アイツら強いの?」

『いや、人質を取られてな、虐殺を止めるので精一杯だったんだ』


「じゃああの人達殺してあげるよ?」

『ダメだ、子供がそんな事するもんじゃ無い。それに、あの兄ちゃんが捕まってるんだ、何をされるか分からないぞ』


「んー、ノードンスさんは、どうしたら力が戻る?」

『大きな光る貝殻を、定食屋の向かいの教会に置いてある…それがあれば…』


「取って来てあげる、犬の為に窓を開けて待っててあげて」

『あ、お嬢ちゃん』


 診療所の階段を駆け上り、2階の窓から屋根に跳び上がり、そうして教会を目指し屋根伝いに進む。

 村では人が松明を片手にウロウロ、あちこち探し回っている。


 教会の窓に張り付き中を覗くと、人が2人警備の為なのか歩き回っている。

 どう殺そうか迷っていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。


《ハナちゃん、何かお困りかい?》

「お、ヒュプノスさん、あの警備をどう殺そうかなと思って」


《ワイルドだねぇ。殺すのは後にして、静かに眠らせるってのはどう?》

「どうやって?」


《この角貸してあげる、中身を1滴垂らせば眠るんだ》

「便利、ありがとう」


 教会の2階の窓から侵入し、上から警備に1滴垂らす。

 ゆっくりと崩れ落ちるのを確認して、もう1人にも垂らすと直ぐに崩れ落ちた。


 そのまま1階に飛び降り、貝殻をカバンにしまってから警備を隠し縛り上げた。

 そしてまた2階に上がり静かに窓を締めて、診療所の屋根に飛んだ。


 診療所の回りにはまた人が戻って来ていたので、1滴1滴垂らし眠らせ。

 診療所の中に隠し縛り上げてから、2階のノードンスさんに貝殻を渡した。


『お嬢ちゃん!持って来てくれたのか。ありがとう』

「未だ気付かれて無い筈だから、合図したら何処かに逃げて」


『いいや、ワシも戦う、コレがあれば無敵なんだ』

「おじちゃん、本当に大丈夫?」


『おう!こう見えても強いんだぞ、先ずは撹乱だ、その隙に兄ちゃんを助けるんだぞ』

「うん、分かった」

「ワンワン!」


 貝殻を受け取った先生を良く見ると、確かに1回りは大きくなって、なんだか強そうに見えた。

 そして中央通りへノードンスさんが勢い良く飛び出すと、犬と共に大きく吠えた。


『我はノードンス!偉大なる旧神!深淵の大帝である!』


 混乱する捜索隊を尻目に定食屋の屋根に急いで飛ぶ、騒ぎを聞き2階から顔を出していたお姉さんに1滴垂らした。

 部屋に入り布団ごと簀巻きになったおじさんを確認、顔を真っ赤にしながらスヤスヤと眠っていた。


「おじさん、おじさんてば、大丈夫?」


『やぁ、おはよう……あぁ、すまない、どうも酒に弱くて』


 おじさんの縄をほどき、代わりにお姉さんを縛り上げ階段を降りた。

 慎重に覗いたが、1階は明かりはあるものの無人。


「おじさんは森に逃げて、ノードンスさんは海へ行くから」

『いや、着いてくよ、名誉挽回させて欲しい』


「うん、じゃあ鯰人間の所に行こう」


 2人で新月の夜を駆け抜ける。

 ノードンスさんの大活躍で、鯰人間の所にまだ人は来ていない様だった。


『本当に、鯰人間が居たんだね』

「うん、ひどい目にあったって。先ずは話を聞いてみてよ」


『そうか、じゃあ…』


 おじさんが鯰人間の話を聞こうとした丁度その時、背後から定食屋で鯰人間の話をしていたおっさんの声が聞こえた。

 振り返ると胸には金属のネックレス、鍬を携え、怒りで顔を真っ赤にしている。


《おい!何してる!》


「あ、おっさん。ねぇ、何で呪いを掛けたの?」

《ふん!海の神なんぞを祀るのが悪いんだ!!》


「それだけ?悪い事したと思って無いの?」

《俺らと同じ神を崇めないのが悪い。異教の異形の神を崇めるなら、それに似合う姿にしてやっただけだ、何が悪い!》


「いや、ダメでしょう」

《俺らこそ正義だ!逆らう方が悪い!》


 ダメだ、話が全く通じない。

 凄いムカつく人種だコレ。


「ダメだ、ヒュプノスさん居る?角返すからもう帰ってて」

《え?どうして?》

《おぉ!天使様!あの小娘に天罰を!!》


「天使に血を見せるのは良くないかなって」

《ふふ、僕は違うよ。神様だ、古い古い死の神の血脈、そしてこの子こそ天罰、お前達を殺しに来たんだよ》


《ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい》






 目を覚まし周りを見渡すと、少し驚いた顔のショナ。

 魔王、ロキとヒュプノスさんまで居た。


「桜木さん、笑ってましたけど、何か面白い事でも?」

「不謹慎で言えん」


「ダメですよ、条件として夢の内容を報告する事になってるんですから」


 漁村の最後は悲惨なものだった、ノードンスさんの雷が雷鳴と共に人々に落ち。

 ヒュプノスさんが呼んだ兄弟、悪夢の化身イケロス、死そのものであるタナトスが人々を恐怖に陥れた。


 天使の姿に似た彼らに懇願と悲鳴を上げる住人達が、何だかとても面白くて可笑しくて、どうしても笑いが止まらなかった。


 ぶっちゃけ、ざまぁ、と思ってしまった。


「まるで時代劇を見てるみたいにスカッとして、ついね」

《あははは、本当、ね。久しぶりに大暴れして、イケロスもタナトスも楽しかったってさ、ニュクスもそのうち遊びにおいでって言ってたよ》


「お世話になりました、ヒュプノスさん」

《良いの良いの、少ししか手助けできないけれど、これからもどうか僕らに見守らせておくれ》

『そうだねぇ、その方が良いと思うよ。死ぬリスクがあるなら、味方は多い方が良いと思う』


「うん、宜しくお願いします」

《よしよし、じゃあまたね》


 有翼の美青年はまた何処かに飛び立つと、直ぐさま雲間に消えてしまった。

 眼福。


「こう何度も来て貰うのもなんだか、1度挨拶しに行こうかな」

『じゃあ先ずは俺の所に来てよ、前に良い案があるって言ったじゃない?それに、ヒュプノスに繋いだお礼もして貰いたいし』


「おう、何処に行けば?」

『ユグドラシルのヘルヘイム』


 指定されたユグドラシルの泉へ空間を開けると、直ぐに荷物でも持つ様に抱えられ、ショナも魔王も置いたまま泉へ飛び込まれた。




 飛んだ先には川が流れ、黄金の橋が掛かっている。

 その橋の前には、大きな少女が1人、橋にある門を跨いで座っていた。


『モーちゃーん!ロキだよ、友人とヘルの館に用がある』

『モズグズとお呼び下さいロキ、何をしに?』


『召喚者様がヘルに挨拶に来たんだ、断る理由は無いでしょ』

『嘘はありませんね、ではどうぞ。お気をつけて召喚者』

「あ、はい、お邪魔します」


 門を潜り見えた先には、小川に囲まれた高い垣根。

 真っ白で豪奢な門、門の前には巨大な黒い犬が伏せて待っていた。


『ガルム、この子は生者だから、襲わない様に』

《ヴァン!》


 小さく低く吠え、門から退くと扉が開いた。

 真っ先に香ったのは病院の匂い、消毒液や薬品の良い匂いが漂ってきた。


『邪魔するよヘルー、召喚者様だよー』


 ズカズカとロキが進んだ先には、何枚もの白い覆いに囲まれた王座らしき何か。

 そこでやっと床に降ろされると、王座らしき場所に薄っすらと人影が見えた。


《攫うみたいに運んで、物騒じゃないのロキ》


「どうも、先日はお世話に、ありがとうございました。桜木花子と申します」

《どうも、ヘルよ、ロキの娘でありユグドラシルの冥界の主。死者の国は初めてかしら?》


「初めてです、お邪魔します」

《…そう、ならココの物には触れない様に、ココで食べ物を口にしない様に》


「はい、あのザクロもダメ?」


《…ココで食べなければ良いわ、この母屋では何もダメ》

「はい、了解です」


《では…ラティ、レト、ご案内してあげて。ロキ、少し話をしましょ》

『え、え?なに、なんで怒ってるの?』

「おや」


『桜木様、コチラへどうぞ』

『ロキ様の事はどうぞ、お気になさらず』

「そう?お邪魔しますね」


 建物は白い大理石だった、家具も白いツヤツヤの大理石。

 そして真っ白なレースカーテンと、月明りだけの真っ黒な土の庭。


 簡素どころか物寂しい。


『こちらの庭でお待ち下さい、離れもどうぞ』

『私達も、いつでもお呼び下さい』

「あの、ヘルさんは潔癖症?」


『…そうですね…少しだけ』

『少し綺麗好きなだけですよ、ご安心下さい』

「本当にココ使って良いの?負担なら門の外で待つよ?」


『いえ…母屋を汚されるのがお好きで無いだけですし』

『少し人を選ぶ方ですが、お心は広い方ですから』

「ほう、選ぶのね」


『オーディン様があの様な事をしなければ…』

『本当に…』


「何かあったの?」

『それは…』

『それは又いずれ。兎にも角にもです、かのバルドル様をお救いになった偉大なお方なんですよ』


「ほー、バルドルさん」


『あぁ、バルドルね、アイツはラグナロクを戦い抜けそうも無かったんで保護したんだ、偉いでしょ』

『おかえりなさいませロキ様』

『では、失礼致します』


「バルドルの話、詳しく」


『オーディンの愛息子。頭が良くて優しくて美しい、良い奴なんだけど、優柔不断で…とにかく優し過ぎて』

「ほう」


『演舞と言えど皆が本気で殺し合うんだ、そんなのを見せられないからね。一時的に、冥界に逃がしたんだ』


《私はあの子は嫌いよ、純真無垢なんて反吐が出るわ》

『ヘルちゃん、折角可愛いんだから、汚い言葉は良く無いよぉ』


《好きで女に産まれたんじゃ無いわ。それに、他に的確な言葉が見付からないんだもの、仕方が無いじゃない》

『本当に他に無い?』


《…虫酸が走る》

「ウザイ、マジ無理?」


《それ、そう言う感じよ》

『え、俺に言って無いよね?』

「いや、言って無い、と思う」


《本当に、自意識過剰って言うか。それに私は可愛く無いわよ、可愛いなら、とっくに結婚してると思う》


『それは、ヘルちゃんがあんまり神々しいから』

《ウザイわ》


『ヘルちゃんは可愛』

《パパもう止めて。それより、用があったんじゃなかったのかしら、ロキ》


『うぅ…サクラちゃんの相談相手になって貰おうと思ったんだけれどね?ヘルちゃんが嫌でなければなんだけどもぉ』

「サクラちゃんて」

《私なんかより、もっと、良い神々が居るじゃない。私に出来るのは死者の管理位よ》


『いやね、現世で殺して蘇生させてって物騒じゃない?だからココで練習させてあげられないかなぁって。ほっとくとこの子、自分の手を切り落として練習始めちゃうからさ、ね?魔王とか殺して蘇生させてを繰り返すとか、楽しそうでしょ?』


《それは面白そうね、良いわ、蘇生ならいくらでもしてあげる》

「魔王はまだ殺さないよ?一旦人にして活躍させてから、周囲に審判を委ねるつもりではあるけれど」


《あらそうなの、人に成らせるなんて面白そうね、宛はあるの?》

「んー、ホムンクルスに分離した魂を入れさせて、それでも何か残ったらぶっ殺そうかと。ホムンクルスの方も酷使して、代理で罪を償って貰う。とか」


《そう、それならそのホムンクルスが逆らえない様に契約させると良いわ》

「契約って血の盟約の?」


《いいえ、もっと古くて強い魔法。ギアスよ、人によってはゲッシュとも呼んでいるらしいわね》

『過激だねぇ、有無を言わせない強い魔法だよ。神に誓いを立てるんだ、それを破れば死ぬ』

「良いねぇ」


《でしょう。だから、それはどの神でも良いのよ、何かしらの庇護を受けられるから。でもオーディンだけはダメ、やったらココには出入り禁止》

「多産の神も浮気性もダメだね、自分にその加護は微妙だ」


《そうね、それが良いわ》

「ヘルさん、良い?」


《何をよ》

『加護?』

「うん」


《え、なんでよ》

『全部クリアだし、良いんじゃないかな?』

「具体的にはどうやるの?」


『神の名に誓って、その誓いを破った場合の罰も誓う。それから、欲しい恩恵は言ったり言わなかったり』

《そう、本人の前でなくても良いし、その神が見合うと思えば叶うから。だから、あんまり無茶な要望は、私には無理よ》

「謀反しなきゃ良いかな、逆らったら地獄行きとかだと、なお良い」


《それ位なら出来るけれど、でも、本当に大して加護なんて無いわよ》

「謀反しないのが大事、それ以外はまた考える」


『嫌?』

「あ、嫌なら全然」

《良いわ、今日からあなたは死の庇護者》


「ありがとう…お礼と言えるかあれだけど、桃とか上げたら嫌がる?」


《いえ、好きよ》

「リンゴは?」


《好き》


「いる?」

《1個で良いわ、ソコに植えるから》

『ヘル、サクラちゃんは植物を育てるのが上手なんだよ、手伝って貰おうよ』


《そう、分かったわ、出来たらで良いからお願い。ラティ、レト、来て頂戴》


『はい』

『お呼びでしょうか』


《ハナが桃やリンゴを植えてくれるんですって》

『それは素晴らしい』

『華やかになりますね』


「何処に植えたら良い?」

《何処でも良いわ》




 それぞれの実を適当に置いて、芽を出させる。


 少し手こずったのは最初だけ。

 果肉を栄養分に種はスクスクと育ち、水を撒くと花が付いた。

 でも妖精が居らず受粉させられないので、様子見の為に途中で中止。


『凄いです!』

『こんなに早く、育つなんて』

「実を付けてあげたかったんだけど、虫も妖精も居ないから受粉出来なくて」


『それは我々が!』

『はい!』

《ありがとう、でも暫くこのままで良いわ。それに…そろそろ帰った方が良いんじゃ無いかしら、きっと従者が心配してるわ。ねぇ、ロキ》

『あ、うん、帰る帰る。お邪魔様、またねヘルちゃん』


「お邪魔しました」


 来た道を辿り、橋を渡る。

 今度は普通に手を引いてくれている。


 余程自慢の娘に引き合わせたかったのだろう、何だかんだで帰りもウキウキして。


『良い子でしょ?今度はフェンリルとヨルムンガンドにも会わせるね』

「良いけど、ヘルさん終始不機嫌じゃなかった?」


『俺が突拍子もない事したから怒ったみたい、直ぐ不機嫌になるんだ。本当の事を言っても、褒めても。女の子って難しいよねぇ……あ、サクラちゃんの事は気に入ったみたいだから大丈夫だよ』

「本当に?果物とか実とか、本当は嫌じゃ無かったろうか」


『そりゃ喜んでるさ、ここは不毛の土地と言われて呪われてるんだから。育つだけでも凄い事なんだ』

「…ヘルさんは、何か悪い事したの?」


『いや、肌の色が少し違うのと…ただ、病弱だから。俺が産褥で苦しんでる合間に浚われて、ココに捨てられた』

「オーディンな?殺す?」


『まぁまぁ、一応反省してるし…役に立つしね』

「えー」


『またあそこに来られる方が、ヘルはよっぽど嫌がるよ。実際に追い返したし』

「そっか、じゃあ殺さない」


『本当に君達は過激だなぁ、うんうん』

「どの感情よりも、怒りが1番強いって聞いた」


『でも怒りに呑まれちゃダメだよ、憤怒君だっけ?君のとこのさ、あぁなっちゃうよ』

「そしたら憤怒が、2人になるの?」


『いや、君が憤怒になる、かな』

「なら元の憤怒は人間に戻れる?」


『どうだろうねぇ、俺らって召喚者に歓迎されなかったから良く知らないんだ。そもそもだ、憤怒を越えたら神に近くなっちゃうかもよ?』

「神に近いのは嫌だなぁ、崇められる様な人間じゃ無いし。気軽にフラフラ遊びに行けなさそう」


『俺はフラフラ遊び歩いてるよ?』

「それは北欧のだからじゃ?日本の神様は、真面目なのが多そうだし」


『だね、じゃあ魔王化しない様にしないとね』

「つか、練習って誰の身体をやんのさ、魔王は嫌だよ」


『ホムンクルスを酷使するんでしょ?そいつをヤレば良いじゃない』

「貴方も大概過激だよ」


『そう?』




 来た時と同じ様に泉で戻ると、ドリアードがメンツに増えたものの、ショナと魔王が変わらず待っていた。


 ショナちょっと怒ってる。


「ロキ神、どうして我々を置いていったんでしょうか」

『ヘルは人間があまり好きじゃ無いからさぁ、君を説得するのも、サクラちゃんに説明するのも面倒で、つい』


「もうしないで頂けませんか」

『考えとく』

「こういうのは程々で頼む、ロキさんや」


『えー、呼び捨てにしてくれて良いのに、もう家族ぐるみの付き合いなんだしさ』

「娘さんに会っただけじゃんか」


『つれない』


「あ、ウザいかも」

『え、やめて、ウザいとか思わないで、ごめんね?』


「ヘルさんのアノ憎まれ口、分かってきたかも知れん」

『えー、なんでー、こんなにも親しみを込めて接してるのにー』


「距離が近い、距離を縮めるのが早い」

『ごめんね?お国柄かな』


「いや、貴方自身の問題では。現にヘルさんがあんなんだし」

『ぅううん…相性の問題も有ると思わない?』


「どうかなぁ」

『難しいなぁ』

「戻りましょう、桜木さん」


 ユグドラシルから浮島に戻り、入浴、食事を取る。


 ロキリクエストの納豆丼は、柔らかく炊いた雑穀米にひきわり納豆、温泉玉子、ネギ、シラス、長芋や山芋まで入ったネバネバ丼へと変化した。


 実に飲み易い。


 汁物は大根のお味噌汁、漬け物はゴボウの醤油漬け。

 デザートはカステラ。


 余りの食べっぷりと高栄養な為に、週1での納豆丼が許可された。

 お祖母ちゃんの、消化は胃に任せると言ったのをふと思い出した。


 頑張れ消化器。




「御馳走様でした」

「あの、桜木さん、僕も一緒に連れてって貰えませんか?」


「ヘルヘイムに?」

「ドリームランドにです」


「えぇーやだ、恥ずかしい」

《きひひひ、なんせお子ちゃまじゃからのぅ》


「それそれ、天真爛漫ぷりを見られるのは恥ずかしい」

『え、サクラちゃん本当に子供の姿なの?』


「そうじゃよ、何でか知らんけど。つか誰かを連れてくって、どうやるのやら」


【鍵に触って頂ければ可能です】


 あら、マジか。


【主が許可した場合に限りますが】


「桜木さん?」


「鍵が鍵らしい、誰も入れちゃダメな」

「ちょっと、待って下さい。せめて誰かをお伴に」


「えぇー、おじさんもヒュプノスさんもモルペウスさんも居るじゃんか」

「国としては従者を連れてって欲しいんです、でなければ以降のドリームランド行きは許可されません」


「えぇー…分かった、候補者を選んでおいて、普通に寝るから準備してくる」

「はい、お任せ下さい」


 歯磨き、軽めの入浴。


 良いタイミングで帰って来たカールラとクーロンをモフモフ。

《ウムル》

《ヒュプノス》

『モルペウス』

『ノードンスさん』

『モズグズ』

《ガルム》

《ヘル》

『ラティ・レト』

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