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3月21日

ショナの視点から。

 どう辿り着いたのか、起き抜けにロキ神から訪問を受け、桜木さんへの日誌をと。

 紙を渡されると同時に、緊急連絡が入った。


 例の国から面談の要請、悔い改める機会をと。


 桜木さんなら、お互いに悔い改める良い機会だと面談を受け入れた筈、ただ、桜木さんは眠ったまま。


『大丈夫?ショナ君』

「絶妙な文言で面談要請が来ました。悔い改める機会を、と」


『あぁ、本当に絶妙だね。じゃあ日誌は他に回そうか?』

「すみませんが、お願いします」


『何か手伝おうか?』

「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」


『うん、じゃあ、頑張って』

「はい」




 とは言ったものの、誰にこの日誌を書かせようかな。

 取り敢えず浮島まで戻って考える。


 出来たら面白い子が良いんだけど、クーロンは泉で待機中で、面白く無さそうだし。

 被らない方が良いけど、ヘルには拒否されたし、コンちゃんはまだ書けないし。


 武光君もエミール君もまだ知らないみたいだし、って言うか知らなくて、本当に大丈夫だろうか。


『ドリアード、エミール君達は知らなくて大丈夫かな?』

《なんじゃ急に、不穏な気配でも感じたか》


『いやぁ、万が一にも急に見ちゃって、面食らわないかなって』

《おぉ、お主の分際でマトモな事を言いよる》


『いつもマトモな事を言ってるつもりなんだけどなぁ』

《そうか?まぁ、それは置いておくが。面食らうかも知れんが、本人の意思を尊重し、ギリギリまで知らせんつもりじゃ》


『裏切られた感じに思わないかな?大丈夫そう?』


《大丈夫じゃと思うが、なんじゃ、やっぱり不穏な気配がするか》

『いやね、絶妙な文言で面談要請が来たって聞いたから』

『あぁ、ショナ坊が洩らしたか』


『家まで押し掛けちゃったし、不安だったんだろうね、寝起きにミミズって感じだった』

『あぁ、さぞ不快だろうな』

《皆、良い子達じゃよ、本当》


「あのー、ロキさん?」

『おー、スーちゃんだっけ?』


「はい。あの、誰に話せば良いか分からなくて、ご相談に乗って頂きたいんですが」

『うん、どうぞ』


「まだココに残ってる者の中に、夢で、予知夢を見たりするお婆さんが居まして。ぶっちゃけ言いますと、桜木花子は大きな蜘蛛と共に眠ってるが、大丈夫なのかと」


 あー、ヤバいかも、不味いかも。

 どうしようか。


『へー、予知夢かなぁ』

《ロキや、コレはココだけの事では無いじゃろうし。話を持って帰ろうぞ》


『だね、興味深いね、ちょっと相談してくるよ』

「はい、宜しくお願い致します」




 緊張したぁ。

 めっちゃ誂われるかとおもったけど、普通に優しかったわ。

 フランクで、イケメンで、しかも日本語だったし。


『アポロさん、どうでしたか?』

「興味深いね、ちょっと相談してくるよ。だって、日本語通じたわ」


 そうしてアンちゃんと共に神様に相談したから大丈夫だと、お婆さん含め周りに説明。

 そうして、蜘蛛の説明に移行した。


 凄い苦手なので、賢人君に翻訳機を使って説明して貰い、自分は補足程度。


 マジムリ。


「“益虫、利益になる虫。逆は害虫、害悪になる虫”で、大丈夫っすかね?」

「害悪の説明は多少コッチでもするけど、補佐お願い」


「うっす」


 第2の良い所は、その虫が限られてた所。

 必要最低限しか居なかったけど、ココには普通に居る。


 ただ、虫除けの魔道具が有るから助かってるけど、マジでこのまま一生遭遇したく無いわ。




 スーちゃんさんと共に蜘蛛の説明と、害悪と利益の説明。

 情報を音声と文字情報で共有。

 同時に、中つ国とイスタンブールの人間に送信。


 そうして、この人達の知識と辞書に共有されていく。


 ぶっちゃけ、楽しい。

 働き甲斐ってこういう感じなのかなって気がする、それにスーちゃんさん。

 性別は違うけど、良いお姉さんって感じが凄く良いんすよねぇ。


 別に桜木様が悪いとかじゃな無くて、姉ちゃんが居たらこんな感じなんだろうなって。


 今じゃもう、すっかりコッチに馴染んで。


 あ、で、独自のお祈りを編み出したらしいんすよ。


 桜木さんが関わった神様や精霊の名前を羅列して、感謝とお願いを、毎晩寝る前に祈りを捧げてるらしいっす。

 桜木さんと自分の為にって、内緒だとか言われたけど、良い事だと思うんで、この業務日誌に書いときますね。




『で、サクラちゃんが大蜘蛛と眠ってるって、孤島の難民のお婆さんが見たって言うんだけど。ついでに日誌もどう?先生』

《そんなに暇に見えますか》


『いや、けどいつも何か読んでるだけじゃない?』

《報告書ですよ、今時点での、ドリームランドのです》


『あー、えー、じゃあどの位で終わるのよ』

《紙媒体で、この位の厚さです》


『へ、そんなに?大丈夫かな』

《最初は問題有りません、案内のシバッカル神が居るので。問題はその後、ただ楽しんで帰るなら良いんですが。この夢の世界の持ち主は誰か、そう考えてしまうと崖に足が向き、深淵の霧の向こうを覗く、そうして大蜘蛛と黒い繭を目撃し、目覚める》


『あー、不味そう』

《じゃから、何か不穏な気配が有るのか聞いたんじゃな》

《何か、感じますか》


『んー、ちょっとソワソワする気はしなくも無いかもしれない』

《無くは無いんじゃな》

《面談要請、調節中だそうです》


《はぁ、代理で行える条件が揃えば良いんじゃがな》

《かと言って、余り跳ね除けては状況が周りにバレてしまいますし》

『ねぇ、俺に何か出来ない?何も無い?』


《余計な事は一切しないで頂きたいですね》

『えー、ずっとして無いじゃん、何も』


《こう、桜木花子への日誌集めはどうなんでしょう》

『余計な事に入っちゃう?』


《他人の、見て見ぬ振りをする権利を、侵害しそうですよね》

『そうなりそうなのには頼んで無いよ、エイルとかアレクとかだけだし』


《それなら良いんですが、思いが強過ぎると告解や懺悔に繋がるので、程々にお願いしますよ》

『懺悔?本人はただ寝てるだけなのに』


《アナタと違って人間は情報量が多いんです、見て下さい。ニュースを》


 都市伝説として広まった、夢の中の黒い繭と大蜘蛛の噂。

 それに伴う召喚者達の未帰還についての特番。


 桜木花子が眠りに付いて暫くの間は、一般人がドリームランドへ行く事も無かったが。

 桜木花子にとっての主要人物の映画館訪問後、突如として一般人への広がりを見せた。


 そして何よりシバッカル神、その名を覚えて居たものが検索を行い、何も出ない事で、ネットの匿名掲示板へ情報提供を募った。


 オモイカネ神の配慮で、桜木花子の第2世界の絵本が出発目前なのだとの書き込みがなされ、沈静化と強制出版が行われる事になった。


 同時に、クトゥルフ神話の解禁へと繋がりかけたが、他国の転生者の改訂版が出される事で、かなりの無力化が叶った。


 もう、本人が何もしなくとも、物事が確実に進んでいる。


 桜木花子は、コレを望んでたのだろうか。


『先生、この絵本、そのままじゃん』

《一般への開放が行われた以上は、辻褄合わせが重要なんです。それに良い機会ですし、売上は桜木花子に行きますし。はぁ》


『先生も、悩んだり困惑するもんなんだねぇ』

《桜木花子はココまで望んでたのか、そこだけです》


『想定して無かったんじゃ無いかなぁ』

《それか、神々の誰かの思惑か》


『俺じゃ無いよ?』

《ソロモン神の事は、どの位ご存知ですか》


『凄い頭が良くて、少し生まれる時代が早過ぎって感じかな。魔王とか言われてた時代も有るみたいだけど、それは税だとか他の宗教を受け入れたから。とか、人間とそう変わらないよ、両側面を持った神様、俺と違って良い面が確実に有る』


《アナタに良い面は無いんですか》


『俺が良かれと思っても、悪い方に行っちゃうから。ただソロモン神は、良いと思ったら何をしてでも実行しそう、あの手この手で確実に成功させる感じかな』

《そこの自覚は有るんですね》


『だからヘルや周りに聞いてから実行してるんだけど、気が緩むとね。アレ?カウセリングしてる?』

《いえ、世間話ですよ》


『そっか、でも何でソロモン神の事に?』

《どうやら、桜木花子の恋心を復活させようと画策している気配が有るんです。彼女の命を掛けて》


『え、いつ』

《期限は1年、しかも障害になりそうな人間の記憶をドリームランドで消してる節が有るんです。最初に気付き報告をくれ津井儺君から、嫉妬心を心配する話が消えたんです》


『あー、それが映画館かも知れないから、入らないんだね』

《そうです、私はあらゆる媒体で残しましたし。映画館に入らなかった事で、記憶は保持されたままですから》


『それか、先生に助力させる気か』

《目覚めない以上は保留にするしか無いので、起き次第、詰問予定です》


『ソレを俺に伝えるまでが、ソロモン神の思惑だったなら。成功してるよね』


《もしそうなら、桜木花子の気持ちが少し分かった気がします。所詮、媒介者でしか無いと》

『いやいや、多分先生の助力が無いとダメなんだよ。ただの媒介者なら、映画館で無くとも記憶が消される可能性だって有るんだし。あ、試せば?』


《書き記したモノは、どうなると思いますか》

『んー、ショナ君も日誌を付けてる筈だから。その特定の文字が認識出来なくなるか、概念が若干矯正されるか、かなぁ』


《なら、先ずは津井儺君の日誌を》

『そんなに映画館が怖い?』


《客観性が無くなる、失わせる行為は避けたいんですよ》

『そう?そんな馬鹿じゃ無いでしょ?』


《カウンセリングですか》

『世間話』


《知っていると桜木花子が知れば、親近感を感じる可能性が有るんです。私では無く、彼女の為です》

『キツい事を言うかも知れない未来に備えてるんだね、偉いねぇ先生は』


《もう、帰って頂けますかね》

『日誌』


《分かりました》

『ありがとう、じゃあね、宜しく』


 桜木花子もコレ以上の策略に嵌まって、嫉妬心を賭ける事を飲んだのか。

 或いは、死を軽視しているか、もうこの世界がどうでも良くなってしまったか。


 書くべき事が、決まった。


 桜木花子へ。

 今、一般人のドリームランドでの報告書を読む手を止め、コレを書いています。

 もし私と会う前にコレを読んでいるなら、嫉妬心とソロモン神についてのお話を、出来るだけ早急に、正直にお願いします。


 課題はクリア。

 報告書へ戻りましょう。


 今の所、崖を降りたり、大蜘蛛や繭に害を為そうとする者は居ないが。

 悪評の広まっている国の人間が、何をするか。


 安全装置として空鬼とバクの対が居る事は知っているが、ソロモン神が善で無ければ死人が出ても、帰還出来ない者が現れてもおかしくは無い。


 だからこそ、誰か昏睡状態に陥っていないか毎日確認している。


 それでも、もし、向こうで昏睡者が出たとなったら、向こうに行かざる負えない。


【失礼します、津井儺です】

「はい、なんでしょうか」


【昏睡者が出たので、直接面談をと。追加要請です】

「状態のデータは」


【はい、今、送りました】


 経過観察開始から24時間経過、体重は標準よりかなり軽い。

 当初、断食期間中であり、信仰心も強く厳格な断食を行っていた為の欠神だと診断された。


 だが、そのまま12時間を過ぎた事で、医師がネットで噂の夢の世界に囚われてしまったのでは、と教会へ相談。

 夢見の力の有る桜木花子への救援要請へと、面談の方向が切り替わった、と。


「具体的な、裏の面談の理由はなんと」

【桜木花子が今回の元凶では無いと証明しろ、ではないかと】


「先に証明すべきは、向こうなんですが。受け入れる方向ですか」

【はい、しかも、明日から更に厳格な断食が始まるので、出来れば今日にでもと】


「患者が増える事を示唆する雰囲気ですかね」

【はい、正直そう言った雰囲気だったそうです】


「あぁ、なら本人とも顔合わせをさせる気ですね」

【はい】


「桜木花子は断らない」

【はい、しかも、迎えに来るそうです】


「天使が、ですか」

【はい、啓示を受けたと】


「詰んだかも知れませんね」

【はい】


「同行者の制限は」

【いえ】


「なら、全員で行きましょう。私も、行きます」

【他の召喚者の方は】


「勿論、全員です」

【分かりました、相談させて頂きます】




 先ずはリズ様、次に鈴木様ににもご協力頂きつつ、サリンジャー先生もアレク君に連れられココへ来てくれたのは良いんですが。

 果ては国連内部でも意見が別れ始め、桜木様が眠りに付かれたのにも関わらず、まだ神託は降りぬまま。

 事態は悪化の一途を辿り、遂に小野坂様との面談が強制執行される事態になってしまいました。


 かの国からの矢継ぎ早な催促や裏での動きに、戦争回避の為だと国連が折れた形になってしまいました。


 それにしても、一切動きを知らせてはいないからなのか、子供騙しの言い訳に検査入院と言えば見舞いに行かせろ、買い出しだと言えば何処に行ったのか等々。


 最早、軽いストーカー案件ですね。

 どうしてこうも、桜木様に執着なされるのでしょうか。


「サリンジャー先生、どうしてマサコ様はこうまで執着なされるんでしょうか」

《柏木さんは、そう感じますか》


「はい、失礼かとは思いますが、はい」

《承認欲求でしょうね。正直、もう少し早い段階なら歓迎したんですが。こうもしつこいと、そう思っても仕方無いかと》


「それだけで無く、桜木様ならお受けになる案件なのがまた」


 我々が準備をしている間に、転生者様曰く、追撃メールが次々と届いてしまいました。


 しかも、マサコ様ご本人から。

 返信内容を考えている間に、ドミノ倒しの様に国連が賛成してしまい、国も同意へ。

 面談が決定されてしまいました。


 そして、皆様が繭と共に、教会に向かう事になってしまった。


 私は行った事が無いにしても、夢の力を侮り過ぎてしまった。

 ココまで、全世界規模で広がるとは、クトゥルフ神話を、魔法を、桜木様を。

 甘く、軽く考えていてしまっていたのかも知れません。


《柏木さん、まだ目覚めないと決まったワケでは無いんですから。そう深刻に考え込まない方が、心の健康には良いですよ》


「覚悟をしているんです、桜木様の万が一を」

《ソロモン神も付いておられるんです、本当に善神で有るならば、そう悪くは無いかも知れませんよ》


「何か、お知りになったのですか?」

《逸話を読んだ感想と、ロキ神が非常に知恵の有る善神だと仰ったんです、なのでそれを信じます。裏切られれば、ロキ神のせいにするだけですし》


「そう、気楽に捉えて良いのでしょうか」

《意外と、桜木花子は何とかして来ましたから。実際に窮地に陥った事は、第2地球での油断位なモノかと》


「桜木様をも、信じると言う事でしょうか」

《外部から何も出来ない以上、そうするしか無いかと》


「そうですね、魔法は何でも出来ると。岩戸では無く、繭に籠られた」


《しかも理由が、やはり神託の為。この世界の為ですからね》

「もう少し、この、自己犠牲精神を何とかして頂けないでしょうか」


《努力は、コレからもしますよ》

「はい、どうか、宜しくお願い致します」


《はい》


 そしてサリンジャー先生は、ショナ君、蜜仍君、ミーシャさん、アレク君と共に浮島へと向かってしまった。




『これで、全てですか?』

「はい」


 やっと手に入った、桜木花子さんの資料。


 得意な戦闘技能、向こうでの習い事は特に無し。

 高卒らしい。

 請われれば何でも渡すお人好しだとか、突拍子も無い行動が目立つとか。


 従者は男性を多く侍らせ、国の初顔合わせで見せしめにと女の従者をコテンパンにしたとか。

 イケメンが好きで、精神科医すら顔で選んだとか。


 日本が秘密にしたかった土蜘蛛族へ接触し、少年すら利用する我欲の強さ。


 魔法は雷電と治癒。

 しかも蘇生可能な治癒魔法、人理を乱す魔法。

 封印されるべき忌まわしい魔法だと。


 しかも悪神と言われているロキ神、ソロモン神とすら接触の気配が有るとも。

 人を籠絡する悪魔を使役すると言われるソロモン神。

 向こうの世界でも変わらない悪評なのに。


 桜木さんは一体、何をするつもりなんだろう。


『桜木さんは、一体』

《大変、申し上げ難いんですが……》


 魔王化、もしくは大罪化し、世界征服や統一や侵略の恐れもあるんだとか。

 最初は親切だったし、優しかったのに。


『でも』

「信じてくれなくても言いと、最初に仰っていたんですよね?」


『それは、いっぺんには私が』

「お優しいのは結構ですが、物品を与えられた程度で流される等とは低俗な女が喜ぶ事と同じです」

《しかも、向こうからの接触は無く、片や武光様やエミール様を独占してらしたんですから》


 独占する為に、あんな突き放した事を、でも。


「それに、あんなにも節操も無く神々へ接触しているんです」

《そうですね、もう何でもかんでもと品が有りませんよ》


 でも、それはココの。


「そんな低俗な女の表面に騙されてはいけませんよ」

《そんな、マサコ様は大丈夫ですよ、偏差値も素晴らしい学校で、聡明でらっしゃいますから》


 桜木さんは、私、桜木さんの事は。


「しかもアナタは、片や向こうは。だからこそ、私はアナタが心配なんです」

《そうですね、容姿も優れているんですから、是非、表面の出来事に流されずに。そう、ご判断して頂けると我々は信じていますよ》


 私は、この信頼を裏切ったら、また私は。




「なぁ、ドリームランド行かないか?」

「アレク、突然なんですか、何を企んでますか」


「いや、ネイハムとかも、皆で。もう、最後かもだし」

「桜木様は死にません」


「そうじゃ無くて、俺らが死ぬ方を心配してんの」


「あぁ」

「で、ミーシャはまだだろ?」


「まだですが」

「凄い綺麗で、楽しいんだぞ?死ぬ前に絶対、行った方が良いって」


「桜木様は」

「大丈夫だって、行けば分かる。アレは歓迎してくれてるって」


「じゃあ、少しだけ」


 楽しく過ごす気は無かったのに、何だか楽しくて、皆で遊び周ってしまった。


 そうして映画館へ。

 ネイハムは入らないまま、私は誘惑に勝てず入った。


 桜木様の世界が観れて、私は、とても嬉しかった。


 目覚めても、記憶は保持されたままな気がした。


 先に起きていたネイハムの問診でも問題無し、なにが基準なんだろうか。


《無い部分を探すのは、難しいですからね。違和感に気付ければ良いんですが》

「ネイハムが行けば分かるかもです」


《どうでしょうね》

『ていうか俺も教会に行きたいー』


《コチラでは既に許可は出てますが、入れるかは向こう次第ですよ》

「うん、無視されてる。ドリアードのも許可も」

《構わん、追い払われるならロキと待つでな》


 皆でユグドラシルの泉で待っていると、天使と呼ばれる背中に翼を生やした人型が現れた。


 意外、真っ白かと思ったのに、羽根は渡り鳥みたい。


《お待たせしました、それで、召喚者は?》

《この繭じゃよ》


《あぁ、お眠りになられてるのですね》

《そうじゃ、なので面談は拒否したいんじゃが》


《少し、触れても宜しいですか?》


『表面を少し撫でるだけにして、それ以上は加害と見なすわ』


 エイルはいつだって頼もしい、優しくて、桜木様の大好きな神様。


《分かりました、では、少し失礼致します》


 何分、何秒だろうか、どうしても少し脈拍が早くなって、時間感覚が狂う。

 桜木様になにかしたら、どうしたって殺す。


「髪だから、もう触らないで欲しい」

《あぁ、失礼しました。動かしても、問題無さそうですね》

『あ、俺が持ちたいんだけど?』


《どうぞ、では、ご案内致します》


 ドリアードもロキも自治区に行ける事になった。


 散々引き伸ばしても、まだ日本時間は24時前。

 向こうの時間は朝の6時前、どうしたって、復活祭までには終わらせたいらしい。

ショナ→ロキ→スーちゃん→賢人君→ネイハム先生→柏木さん→マサコ→ミーシャ。


視点の入れ替わりが多いので、読みにくいと思ったら良い方法の伝授をお願いいたします。

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