3月19日
リズの視点。
待ち伏せていたロキ神から、桜木への日誌にと紙を渡された。
眠っている間の事や、他愛の無い走り書き、手紙形式でも良いから何か書けと。
俺には全くそんな余裕は無いのだが、ウッカリ受け取ってしまった。
恐ろしいな、あの神は。
「あ、リズさんの番でしたか」
「ショナ君、君もか」
「と言うか、僕がやってるのを見て思い付いたそうで」
「あぁ、そう言う事か、ついウッカリな、そんな余裕も無いのに」
「魔女裁判の資料ですか」
「まぁ、向こうとそう変わらんな、実にクソだ。問題は大罪の名が有る事だ、コレを知らなかった人間は、一気に傾くかも知れん」
「そうですね、何も知らない人は、ですね」
「あぁ、想像するだけで腸が煮えくり返りそうだ」
「弁護人にも、ドリームランドを見せるんでしょうか」
「あぁ、人となりは是非知って貰いたい、その為の映画館だろう。まぁ、逆に客観性を失わせる確率は高いが、誰かが調節してくれるだろ、72柱も要るんだから」
「全部じゃ無いですけどね」
「鳥系優秀だろう、もういっそそいつらに任せるのが良いのかも知れんな」
「起きてくれれば、ですけど」
「だな、現実には全く現れないんだろ」
「はい、今の所は全く」
「アレの動きは」
「何も、無いそうです」
「どうしたら起きるんだか」
「それなんですけど、神託を凄く気にしてらっしゃってたので」
「ウチのか、全くうんともすんとも言わんしな、可能性は有るが。何処かと違って乱発すらしてくれん」
「はい、慎重でらっしゃるそうで」
「ぁああ、急かしてぇ。繭をハサミで切り裂きてぇ」
「色んな意味で止めて下さい」
「お前も、変態途中だと思ってるのか」
「だとしたら、精々男性かと」
「紫苑な。アレ、違い過ぎだろ」
「ですね、肌の色も違いますし」
「な、同一人物と思えんわ」
「もし、魔王として出て来ても、僕は辞めませんのでご心配無く」
「いや、辞めさせられると思うぞ、不適格、エミールへ左遷って」
「映画館の内容、覚えてるんですね」
「あぁ、お陰で続きが知れた、また今夜も行くつもりだが。なぁ、誰かと一緒なら大丈夫かも知れないぞ」
「その根拠は?」
「アイツの願いだけが反映されてるんじゃ無いんだよ、多分、俺の願い、行く者の願いも叶えられる場所。しかも同行者の意思も反映される、なら、俺の願いでお前の願いを薄める。それに、俺の見るモノは大したもんじゃ無い、お前の罪悪感も薄められるかも知れん」
「僕の願い」
「それは知らんが、罪悪感はあるだろ、心を見るって事に。俺はあくまでも記憶、楽しい良い記録を見に行くだけだ、アイツとの情報共有の為にな」
「漫画だけですか」
「それこそ映画、音楽、本、それ位は問題無いだろ。まぁ、本当に娯楽の為だけに行くから、興味無いなら別にいいが」
「行きます、宜しくお願いします」
「おう」
ショナと映画館について話した。
真面目なのかウブなのかその両方なのか知らんが、お前の心を覗くって事に、やっぱり凄い罪悪感が有るらしい。
だから今夜どうかと誘ったら、意外にも来ると。
それとお前が魔王化しても辞めないとさ、アレはマジで強情そうだから、もし魔王化したとしてもちゃんと説得頑張れよ。
それとこの前、先生と一緒に初めてドリームランドに行ったが、面白い場所だな、今度はお前にちゃんと案内して貰おうかと先生と話したんだ、宜しく。
それと、桜が咲いたんだ、花見をしよう。
早く起きろ、出来たら普通の人間のまま起きて、現実で似た遊園地を探そう。
俺は絶叫マシンに乗れる方だし、皆で行こう。
それと、それと、ばっかが多いが、気にするな。
今生ではもう会えないかも知れんと聞いたんだ、許せ、目を瞑ってくれ。
話し合いも手紙も苦手なんだから、大目に見ろ。
直近の進捗は、向こうが魔女裁判の準備を始めたらしい、昨日怠惰と憤怒から聞いた。
確かに、アレはお前の好みじゃ無さそうだ。
出来るだけ努力する、絶対とは言えないが、出来るだけ阻止する。
非常時はロキ神に頼む事にした、召し上げには先生も同意してくれてる。
だから、目覚めても大丈夫だから、目覚めて欲しい。
皆が生きてるウチに。
「リズちゃん」
「お父さん、どした」
「ごめんね、こんな時にも仕事をさせて」
「いや、コレは違うんだ、ロキ神から桜木花子にって、日誌だか手紙を書けって」
「そうかそうか、邪魔してごめんよ」
「いや、もう書き終わったから大丈夫」
「それでもだよ。お友達なんだから、辛いだろうに」
「ちょっと趣味が一緒だからって、友達と呼んで良いんだろうか」
「難しい問題だね、友人だと想い合うには時間も必要だからね」
「それ、アイツの中ではもう4ヶ月、なのに俺の感覚はこの前会ったばかりで。この時間と感覚のズレを、どうしたら合わせられるんだろうか」
「もしかしたら、そのまま4ヶ月を」
「繭のまんま、誕生日を過ごす気か」
「いや、分からないけれど、もしね」
「有り得る、めっちゃ有りそう」
「若しくは、ただただ深く眠りたかっただけか。君にとっては、ちょっぴり弱い普通の女の子なら、そうなんだろう?」
「それは、少し前の感想。今は、マジで分からん」
「人も神も、そう変わらないものだよ。例え何があっても、変わらない部分が有る筈だからね」
変わらない部分が一切無い、連続性が失われた桜木花子は、もはや完全な別人と同じだし。
それは、お前であって、お前じゃないワケで。
この議論はお前が帰って来た時からされてた、お前は本物のお前なのか。
資料は勿論、俺はお前だなと思ったから、お前はお前だと言ったが、そこですら完全な納得は得られなかった。
もし、繭の中で完全な変態を遂げ、全てが変わったお前が出て来たら、俺は、どうすれば良いんだろうか。
「よし、仕事に戻るよ、父さんありがとう」
「うん、無理しないでね、背が伸びないよ」
「はい、気を付けます」
前はしなかったストレッチ、軽い運動をする様になった。
休憩は小まめに取るし、夜更かしもしなくなった。
お前が安心をくれたから、焦るのを止めて、毎日ちゃんと生きる様にした。
それから、今後の転生者における性転換法の改正案が通過した。
俺がアホみたいに働き過ぎたのも有るが、生前の記憶からの性別転換における規制が緩まる予定。
コレも、一応お前の功績だと思う。
心配しなくても、精神科医の診断はしっかり受ける内容だから心配するな。
母親とも順調だ。
お前が認めなくても、お前はちゃんと功績を上げてるから、胸を張って出て来て欲しい。
書き終え、気持ちを切り替え魔女裁判の資料に目を通す。
俺の生前の年齢ですら閲覧注意だろうって思うのに、コッチでも似た内容で、コレが現実なのが最悪だ。
魔王が生まれるのも少し分かった気がしたが、ただコレが、魔王出現後だから厄介なんだよな。
しかも大罪が生まれ出て暫くしての事で、彼らが目撃された後に、激しい魔女狩りが行われた記録も多い。
ただ、コレはあくまでも教会側が纏め、教会側が書き記したモノ。
他の人間の書き記したデータには、大罪の名が出ない事も有る、これは疑って考えるべき事だろう。
ベナンダンティの魔女狩り事件。
ぶっちゃけ俺はセーラムの名前しか知らなかったんで、向こうに有るかは知らないが。
本当に酷い。
ただ、ココで行われてた事は、凄く面白い。
良き魔女と悪い魔女の戦いなんだが。
トウモロコシの芯と、フェンネルの茎でしばき合うだけ。
コレ、多分、アイツ好きだコレ、書いとくか。
【ベナンダンティの魔女】
イタリア北東部の、良い魔女と悪い魔女の話。
収穫を確実なものにする為に、男の良い魔女はフェンネルの茎を、悪い魔女はトウモロコシの芯を武器や箒にして戦う。
戦うっても、ハーブの茎と野菜の芯だろ、半分遊びだったらしい。
しかも、眠ってる間に蝶や猫として体から抜け出て、動物の背に乗って野原で戦うんだと。
それで勝てば今年の収穫が約束される。
で、女は占いや医術、宴会を開き来年誰が死ぬかを知った。
羊膜に包まれて生まれた者が、主に成れるんだそうだ。
ただ、もう居ない。
魔女狩りにあって、全滅させられた、火あぶりだ。
その地区では教会も否定しないで平和にやってたらしい、なんなら悪魔もいなかったのに。
日誌に書いた部分だけなら、凄く良い世界だったのに。
それからはもう、桜木花子を脅かす資料で溢れていた。
黒いオーラ、治療師、雷電使いを標的にした魔女狩り。
それは当時の転生者や召喚者の仕業、それを御したのも召喚者や転生者。
コレは本当に極秘で、俺が資料を取り寄せて初めて解禁された情報だった。
だから俺は、転生者は無力なんだ、無力で当然だとも思った。
何せ、当時は転生者にすら魔力が有り、出現数も多かった。
しかも、魔女狩りをした理由は、医科学の発展こそ世界をより良い方向へ導くんだとの主張だ。
確かに、今俺はその恩恵を受けようとしてるが、こんな事で確立されたのかと驚いた。
そして、その召喚者は今でも、普通に英雄視されてるし。
やり方が極端じゃ無きゃ俺も賛成してた、過激な主張が大規模な魔女狩りに繋がらなければ、俺も受け入れた。
我々は暗雲の中で道に迷った、って謝罪が、余計憎らしい。
ただ、コレも非公式。
ちょっと日本の医療が遅かった理由が分かった気もする、こんな礎の元に築き上げられたモノを受け入れるには、かなり時間が掛かったと思う。
しかも、ココではそんな大規模な魔女狩りなんてのも無かったし、この事で国は揉めたのは想像に容易い。
どうやら、資料の消失は嘘臭い。
こうやって、情報制限を掛けてるんだろう。
ただ、これに関しては認めるしか無い。
潔癖な人間にはキツイ内容だ、こんなのと同列に語られるなんて、誰も許せない筈。
日本にも普通に黒いオーラの持ち主は居るが、雷電も治療魔法も継承して無い、してはいけないと国際化の為に制限が設けられた。
他国でも本人への迫害や障害になってはいけないと、国連間で決定された決まり。
本人には必ず他の素養も有るからこそ、その点で気にされる事も無い事だった。
全ては人間から人間を守る為、自国の人間が犠牲になる事を怖れて、どの国でも黒いオーラ持ちの魔法継承を断絶させた。
神々もその流れを汲み、それを呑んだ。
「お時間ですよ、休憩の」
「おう、ありがとうショナ君」
目の前の公園まで散歩、日光浴しオヤツを食べる。
桜がもう咲き始めた、見逃したら勿体無いのに。
「桜、お好きですか?」
「いや別に、ただ、見逃したら勿体無いのになって」
「そうですね、お名前にもありますし」
「あのロキ神もサクラちゃん呼びだしな」
『呼んだ?』
「ひぃっ」
「何を、してらっしゃるんでしょうか」
『お菓子、この季節の買い漁ってただけだけど』
「あぁ、なるほど」
「ちょっと噂をしただけで秒で出ないでくれないか、心臓に悪い」
『え、心臓弱いの?』
「例え話。なぁ、ちょっと聞きたいんだが、白いオーラの素養って何なんだ?」
『それって、俺よりクエビコ神じゃ無いかなぁ』
「それは後で聞く、今はアナタだ」
『ウチらの方は癒し、主に動植物への癒しかな。陽の光って感じ』
『聞かれる前に言うが、基本的にはどの国でも同じと聞くぞ』
「ありがとうございます。なら、なんで」
『君が思う通りのと、その他色々だろうね』
『考えとしては、どちらも潜在的に全ての色を持っているだろう』
「白も黒も、光りの三原色か、色の三原色か」
『ただ、白に雷電は無理な筈、方向性とか性質が違うから。ね?』
「僕ら人間は自分の素質の事すら、あまり話す事も無いので」
「あぁ、面倒だが安全装置でも有るんだよな、情報規制」
『そうだな』
マサコの、白いオーラも性質は同じなのに。
散歩と花見を終え、資料を読破する為に部屋へと戻る。
白黒の疑問を解くのに、次の資料で直ぐに答えが出た。
白と黒の決定的な違いは蘇生、白は蘇生は出来ないし、してもいけない。
片や黒は蘇生可能。
嘗ての信仰の対象は主に死の女神達であったり、夜を司る女神であったり、魔法そのものの女神でもあったかららしい。
異教排斥、魔女狩りにはこの要素も絡んでるんだろう。
更に追記されていたのは召喚者、転生者の言い分。
生き死にを人間が左右して良い筈が無い、何処かで境界線を決めねば均等が崩れ、不老不死者が闊歩する事になる。
人間の世界は、人間の範囲内、すなわち科学で囲われた範囲のみに限定されるべきだと。
分かるが。
厄介、実に厄介。
桜木は死の女神ヘル神、ニュクス神、ヘカテ神とも交流が既に有るし。
蘇生も出来るし、して来たし。
本当に、下手をしたら、世界が敵に周るかも知れない。
ただ、向こうも良い大人、もしかしたら魔女裁判と思われたく無い為に、資料を請求したのかも知れない。
楽観的に考えるなら、妥協案を探る為だとか。
呼び出すにあたっての、失礼にならない為の予備知識なだけか。
そう楽観的に考えるにしても、問題はいつか、だ。
「なぁ、クエビコ様、どうしたら良い」
『ワシらは何も出来ん、全ては人間次第』
「んな、民意、多数決かよ」
『あぁ、そうだ』
「不利じゃんか」
『あぁ』
「知ってたから、魔王化も考えてたのか」
『あぁ、そうだ』
「もー、機械みたいな返事しやがって」
『八つ当たりしても名案は浮かばんだろう、散歩でもしたら良い』
「さっきした」
『酸素を取り込め、医学的に良い効果が有るらしいぞ』
「あぁ、分かった」
だからって何も思い浮かばない、別に頭が良いワケでも、魔法も、生前の記憶だって仕事の事が殆どだし。
漫画だって、漫画喫茶で読めたら良い方で。
何も無い。
なんか、涙が出て来た。
コレだから、多感な時期は困る。
人前なのに。
「リズちゃん、どうしたんだい」
「どうしたら良いか、分らん」
「皆で考えよう、そうしたらきっと良い案も出る筈だ」
「アンタ、本当に、良い父親だと思う、でも、コレは言えない」
「じゃあ、言えないなりに聞かせて欲しいんだけれど、どうだろう?」
「裁判を、回避させたい」
もうダバダバと止まらない涙を流しながら話した、言える範囲で、言える事だけ。
正直自分でも要領を得ない感じなのに、うんうんと真剣に聞ききながら、部屋まで連れ戻してくれた。
「裁判になりそうで、不利だと思っているんだね」
「うん、かなり。ただ、俺から見たらだけど、まだ数年しか、ココに居ないから、分らん」
「嫌な事件、昔話を見聞きしたんだろうか」
「うん、まぁ、大罪とか、魔王の事も、調べてるし」
「人間の嫌な面に、困ってる」
「そう、それ」
「賢人君も、この前困惑しててね。国に不信感が出そうだから、良い話が聞きたいって」
「あぁ、アレの後か」
「だから、もっと落ち込む話を聞かせた、異国の魔女狩りについて。父さん若い時にね、定期的に魔女裁判が行われて無いか調査しに行ってたんだ。つまり、多少の閲覧権限が有る、それをちょっとだけ話した」
「それでアイツは」
「もっと凹んで、調べて、これから先どうなるか理解して、側に戻った」
「何処まで」
「検索する相当の理由、それに準ずる内容だ。まぁ、僕と同じ位の内容だろうね、召喚者と転生者の事も絡むから」
「それでもアイツは、なんで」
「どっちの面でも、こんな風にさせない様にするって、良い子だよ」
「ショナ君は」
「どうだろうねぇ、知らない権利も有るから。知れば悩みが増えてしまう」
「しかも、切っ掛けが無きゃ」
「知り得ようが無い」
「逆に言えば」
「切っ掛けさえあれば、知ろうとすれば知れる。それ相応の階級が有れば。万が一にも知る事になったら、正式な書類を提出する義務を国は受け持ってるからね」
「全部知りたい、教えてやりたい」
「質問、検索は的確に。そして、知らない権利も侵害しない様に」
「うん、分かった、ありがとう、本当に助かった」
「うん、ただ目は冷やそうね。氷嚢をショナ君に持って来て貰おう」
部屋からショナへと連絡が行き、氷嚢を持って来てくれた。
厚手のゴムの氷嚢、凄い下世話だが氷がゴロゴロとして、金玉みたいで懐かしい。
「そんな悲しい事件が有ったんですか?」
「まぁ。魔女狩りの事、どれだけ知ってる」
「桜木さんが失踪してから、賢人君から見るべき資料が有ると。召喚者と転生者が魔女狩りを先導した形になった、と」
「黒いオーラの話しは」
「その時に、桜木さんの従者なので」
「その、俺は魔力が全く無いから、全く知らないんだが」
「国によって違いますが、ココでは色は特に気にされないんですよ。青だから水、火は赤だなんて事も無いんです。青い火も有りますし、水は何色にも染まりますから。後は、努力次第」
「ファンタジーから急に根性論に」
「それ良く言われるらしいんですけど、リズさん達から見て、どんな感じなんです?」
「モリモリ木が生えてるのを見た時、ドリームランドの映画館、魔法を感じた」
「あぁ、映画館は僕もです。良く覚えて無いんですけど、凄い、魔法だなって感じしましたね」
「でも、それは桜木の感覚じゃ無いのか?」
「その感覚も有った気は。観ましたか?初めて木を生やせた時の事」
「あぁ、グッと来たな、自分のか錯覚しかけたわ。だから、誰でも入れて良い世界じゃ無いとは思う。先生も、そう言ってた」
「観ずに、ですか?」
「まぁ、出て来た俺の反応で分かったんだろ、若干思考も共有されるらしいし」
「不思議ですよね、桜木さんのだけじゃ無いのが」
「悪く言えば、俺らも1つの装置だからな。本来がそうなら、そうで有るべきだと思う」
「良く言えば、解釈違いや齟齬が分かり易い、良い世界ですよね」
「なぁ、アイツに知らせる気は有ったのか?」
「いえ。あの状況では、もう少し落ち着いてからと先延ばしにしたのは認めます。それに、もしかしたら既に知ってるかも知れないとも。それと、もし知られて、また何処かに行かれたら嫌だなと」
「あぁ、なら先生は、知ってるか」
「はい」
「それで、もし桜木が知らなかったら、皆が伏せてたみたいな事になるんだよなぁ」
「そうですね、魔王も大罪も知ってる事ですし」
「アイツ、監視されてたとか勘違いしないか?」
「それは少し懸念されています、繭化も、知っての行動かも知れませんから」
「下手に確認すれば」
「確実に興味を示すと思います」
「あー、話せりゃなぁ」
「話せたら、起きたら伝えますか?」
「反応を見てな、急には言えないだろう」
「最悪は、裁判的な内容で全世界に発信される事なんですよね」
「黒い繭と天使の対比じゃ、悪い何かに見えてもおかしく無い、物を言わんでも絵面が強い。ただ、向こうの世界での感覚ならだが」
「残念ですが、ココでもです。特に、正体不明の物体には恐怖を感じ易いそうですし。何とかなりませんか?」
「もうしてる、あの手この手で向こうからの召喚を断る文言は出まくってるが。来られたら、入国拒否も何も出来ない」
「でも今は」
「そこに行かれて、見た事をバラされたり撮られたら終わる。ただまぁ、結界も有るんだろうから、信用はしてるが」
「能力が不明ですもんね」
「そこだけじゃない、民衆に動かされて切り裂かれでもして。そこで桜木が蘇った日にはもう、不死性を持った魔王にしか見られないだろう」
「そこは体を張って守ります」
「それが出来ない様な状態にされるかも知れないだろ」
「それでもです、周りにも何人も居ますから」
「肉の盾が通用すると良いな」
「はい、通用させます」
安心させる為でも、コレは心強いが。
本人が許さんだろう。
まして目覚めた日には、蘇生不可能な状態でも無い限り、こいつらを蘇生してからの、お説教だろうな。
「おう、頑張れ。資料の感想文書くわ」
「はい」
ショナを見送り、感想文に全集中力を注ぐ。
強い人間の発言権の取り扱いは慎重にすべき、影響力を考えて、そも言わせない様にすべき時も有る。
歴史を踏襲する為にも是非開示すべき案件であり、特に転移者、召喚者と言われる人間に大して、絶対的に開示すべき案件だと確信している。
そして今度は対策案へ。
起きるまで、対面を絶対的に阻止すべき。
うん、コレさえ避けられば良い。
どう阻止するかは全く思い浮かばなかったので、今はコレだけ。
そしてそのまま勉強へ。
まだ非常時という事もあり、自分の好きな時間にタブレット学習。
飛び級は非推奨なので、同じ年の子と勉強。
ただ、クラスは地域全体に及ぶので、中には結構勉強が進んでる子も居て、疎外感は特に感じない。
それと、教える側に近いので、コレはコレで新鮮で退屈はしないし、勉強の内容自体はいくらでも先に行って問題無し。
内容の理解度とコミュニケーションが重要視されるので、そも飛び級はデメリットがデカくなるだけ。
基礎学習を終えた後、コミュニケーションの為にチャット欄で未解決問題を何件か流し見し、面白い質問の仕方や、惜しい質問にヒントを与えて一旦終了。
昼食、父親やショナと食堂で食べ、日光浴。
そのままうつらうつらしてから、タブレットで美術の学習。
コレも好きなのを選んで、好きな人間の解説で、動画で学ぶ。
それから実習、コレは段階形式、今回は動植物。
色紙を切り貼りし提出、絵本を思い出したので魚を描いた。
コレは実物の提出になるので、配送へ。
それから運動、コレは大人に見守られながら毎日。
父さんとショナと縄跳び。
今までサボってたし、運動不足で息切れしまくり、そして大人の肺活量の余裕よ、ムカつくわショナ君。
それから基礎学習の勉強再開。
面白いのでそのまま父さんの退勤時間まで学習。
帰宅、夕飯。
それから少し趣味の時間、ショナに教えて貰った映像作品を見てからお風呂へ。
就寝まで、親とお腹の弟妹とコミュニケーション。