1月27日
「賢人」『ベリサマ』『スクナ』《フギン・ムニン》『クエビコ』「タケちゃん」『エミール』『エイル』
「おはようございます桜木様、今日はどうしますかね?」
「取り敢えずは、鍛冶神達かな」
「はい、了解っす」
クーロンは随分と遅くまで頑張ってくれていた様で、泉の周りには沢山の魔石の原石が転がっていた。
それをストレージ6に収納し、エイル先生の朝食を食べた後、鍛冶神達の元へ向かう。
「おーっす!魔石持って来たー」
『大量だー!』
『何回かに分けて競うしかないな!』
『おう!』
大会の副産物である、小さい魔石。
それを更に研磨し、出来上がった指輪等の宝飾品を今回の優勝者にと。
残りは全て頂いた。
この量なら、行商で生きていけそう。
「行商で生きていけそうな量とクォリティ」
「魔石は市場に流しちゃダメっすよ」
「ですよねー」
『やぁハナ!』
「ベリサマ、お邪魔してます」
『でね、ベルトは出来たんだけど武器がまだで…白熱しちゃってて』
「あ、何かリクエストとかした方が良いですか?」
『良いの良いの、まだ大丈夫。揉めだしたら頼むよ。さ、ベルトに魔石を付けてみて』
黒の鞣しは以前より少しスマートになり、ランダムに穴が空いている。
その穴に魔石を取り付けるワケだが。
宇宙の魔石は、黒い魔石かと思い光に翳すと濃い青であったり、紫であったりと寒色系が中心。
グラデーションがある物もあり、翳して眺めては取り付け、また1つ取り翳しては、魅入ってと作業が進まない。
「迷う、今日中に終わる自信がない」
『地の魔石も加わったらもっと大変じゃない、赤や緑に黄色も加わるんだから』
「黄緑とか黄色は好きじゃないんだよなぁ、緑色とかは好きなんだけど」
『なるほど、何かノームがごめんね。地の魔石の宛はあるの?』
「あるにはあるんですけど…」
我が国だと、女性嫌いと噂の島根のカナヤコ様か、タマノオヤの神。
他国だと、インカ神話のウルカグアリーさんが候補。
『アナタの国の神様が最初ね、ダメなら答えてくれないだけだろうし、大丈夫。うちのノームみたいのは早々居ないでしょうよ』
背中を押されたので早速、賢人君と眠るクーロンを連れ、島根の山奥にある金屋子神社へ向かった。
雪降る山道の1つに、石造りの鳥居発見。
「お邪魔します、桜木花子です」
お辞儀をし、くぐるも特に何も返事は無い。
そして進んでも進んでも、本殿の影すら見えない。
中つ国の様に奥にあるのか、又は、来るなと言う事なのか。
黙って30分程歩いていたら、ようやっと小さな祠がある場所に着いた。
案内によると、池の真ん中にある金儲神社には、白蛇さんが居るらしい。
中々趣のある風景、お参りし暫く眺めていると、祠の後ろから1匹の白蛇が出て来た。
《かの神は今日は余り機嫌が良くない、慎重にな》
「こんにちは白蛇さん、ありがとう。日を改めた方が良いですか?」
《どうだろうかな、さっぱり読めんのだ》
「ありがとうございます、温泉玉子どうです?」
《ん、頂こう》
ストレージの食料から温泉玉子を1つ、白蛇さんの像の横に置くと、玉子を咥え祠の後ろに帰って行った。
無理っぽいと忠告を受け、いよいよ気が重い。
取り合えず階段を登り、2つ目の大きな鳥居をくぐろうとお辞儀をした瞬間、頭上から男とも女とも分からないしゃがれた声が聞こえた。
『帰ってくれ、今日は日が悪い』
怒ってはいない、寧ろ、全く興味が無い様な雰囲気。
「お邪魔しました」
そのまま振り向き階段を下りると、帰り道はあっと言う間に鳥居の外に出れた。
相当相性が悪いのだろう。
そして、その足でペルーの大使館へ。
インカの世界樹は、ペルーとイースター島の間に浮いている。
荒涼とした大地に潮風、低木と黄土色の土の風景は、少しだけハバスの滝に似ている。
《いらっしゃい、私はパチャママ。この島であり世界樹、ようこそ召喚者》
「お邪魔します、桜木花子です」
それから驚かせまいとの配慮なのか、1人1人現れてくれた。
『初めてなんだ、召喚者が来てくれたのは。どうか歓迎させてくれ、私はインティ』
『私はママキジャ。連なる者がコチラに何度か来ていたのは知っていたのだけれど…来るのが難しかったみたいで』
《もうよしなさい、泣きそうな顔をさせてどうする。私はビラコチャだ、宜しく》
田舎の親戚のおじさんやおばさんの様に、穏やかで優しい。
来訪者に滅ぼされかけた由来があるのに、どうしてこうも、穏やかで居られるのか。
『すまないね、余り辛気臭いのはよそう。アマルやおいで、他の竜だよ』
『そうね、アマル、ご挨拶なさいな』
《こんにちは》
「こんにちは」
『こんにちは、クーロンなの』
《アマルだよ、あそぼ》
「いってらっしゃいクーロン」
『あい!』
クーロンとアマルは大きな翼を広げて大海原へ飛んでいった、2匹とも久し振りの同種に嬉しそう。
《ふふ、所で、誰に用事だったのかしら?》
「ウルカグアリーさんなんですが…地の魔石を少しだけお願いしようかと」
『まぁ、珍しい、あの子もきっと喜ぶわ。おいで、ウルカグアリー』
伝承では鹿の頭で体が蛇、尻尾には金の鎖を着けてるらしいと書かれていたが。
実際は鹿の頭とは角の意味だった様で、東洋の龍の様に角を持った蛇だった。
黒い瞳の龍が、藪から白い体をくねらせ出てきた。
《こんにちは、ウルカグアリーです》
「こんにちは、白い龍に見えますが、蛇さんですか?」
《竜ではありません、地中に住む角を持った蛇です、空は飛べませんから》
「なるほど、でも東ではそれを龍と呼びますよ。翼が無くても飛ぶらしい」
《そうなんですか?不思議ですねぇ》
「全くです。所で、地中で角は大丈夫なんですか?」
《大丈夫ですよ、広い洞窟に住んでいますから》
「なるほど、何かお困り事は無いですか?」
《……お嫁さんが欲しいです》
《あら》
『まぁ』
『年頃だからな』
《あぁ、無理も無い》
「お約束は出来ませんが、東のでも良いですか?」
《え、是非、お願いします。皆さん、行っても良いですか?》
『勿論よ!』
《この者の国は平和で強いと聞いてますから、賛成です》
『うんうん、良い国の者が来てくれた』
《行ってこい、ウルカグアリー》
《ふふふ、楽しんでらっしゃいね》
ウルカグアリーを連れ、再び島根の山奥に戻る。
クエビコ杖経由で仮許可を貰ってから、金屋子神社の1つ目の鳥居をくぐる。
ものの5分もしないうちに金儲神社に着いた、今回はココが本命だからだろう。
「白蛇さん、ご用があります」
《なんだ、また来て》
「このウルカグアリーさんのお嫁さんを探しています」
《異国のか、遠く嫁にやるのは悲しいな》
「ですよね」
《ご許可戴ければ1年に1度、コチラに返します》
《そもそも、なんの由来の神であるのか》
《金属と宝石です。ですが好みもありましょう、蛇でありながら角を持ち、白い肌ながら黒い目を持つ僕を受け入れ、僕が愛せる嫁が欲しいのです》
《おい、そこの。見合いを都合してくれても、カナヤコ様にはどうにも出来んぞ》
「それはもう秒で諦めたので大丈夫です、このお見合いも無理そうなら他に回しますんで」
《待て待て、承けぬとは言って居ない。ただウチのは幼いのでな、ソチラのお眼鏡に敵うかどうか…》
静々と祠の後ろから出て来たのは、幼いとは言っても1メートルはある白蛇さん。
だが確かにウルカグアリーさんの半分も無い。
後はお互いが好みかどうか。
『初めまして、後で伺っておりました。もし宜しければ少しお話を』
《宜しくお願い致します、では池の案内をして戴けますか?》
池を1周して帰ってくると娘さんは、お返事はまた今度と祠に帰っていった。
白蛇さんの溜息、ダメっぽ。
《すまんな、気に入らんかった様だ》
《いえ、初めて似た姿のモノに出会えただけでも嬉しいです。ありがとうございました》
「すまんね」
《そのモノの由来が金属と宝石だったな、お主の願いは鉄か?宝石か?》
「お、あ、地の魔石です」
《そうか、では折角だ、すぐそこの知り合いを紹介してやろう》
同時刻同県、池から池へ。
玉造神社の裏手の池へと移動した。
そこで紹介されたのは白蛇さんの遠縁の親戚だそうだが、色もサイズも全然違う。
ウルカグアリーさんより大きい、そして艶っぽい蛇さん。
『久し振りに何だと思えば、異国のお見合い相手と召喚者を連れてくるなんて、やるじゃない』
《いやただの道案内だ、そもそもコチラに来た目的、お目当てとが少し違っていてな、タマノオヤ様を頼るべき内容だったんだ》
『そうなのね、人の口伝は直ぐに変質しちまうから迷うのも無理無いわ。ようこそ召喚者さんや』
白蛇さんが紹介してくれた大蛇さんは、目も鱗も斑模様の緑色。
全てが翡翠で出来ている様な、光沢と透け感が美しい。
「宜しくお願いします、桜木花子とウルカグアリーさんです」
『あらイケメン、ウチの娘達がお眼鏡に敵いますかどうか…』
池の社からスルスルと出てきた蛇達は、赤瑪瑙に透き通る様な琥珀色、斑模様の濃い鼈甲、白い鱗の子達は赤い目、緑の目、黄色に茶色。
最後には、目も鱗も白地に虹色輝く綺麗な子。
一際大きな艶めく子が後方にそろそろと、どうやら全員が出揃った様だ。
「きれい」
『赤瑪瑙は外が好きなお転婆、琥珀はおっとり、鼈甲はしっかりモノだ。白い妹達もその性質でね、虹色は…目が悪くて、日陰が無いと生きられない子なんだ』
ウルカグアリーさんを見ると虹色ちゃんに釘付け、わかる。
その釘付けのまま、虹色の前にうねり寄ると真っ直ぐ目を見つめ話し出した。
《僕の棲みかは洞窟です、外敵も居ません。他の神達も陽気で明るく踊りが好きで、とても優しいです》
「うんうん、確かに頗る明るくて優しくて、世話焼き」
《夏は少し暑いですが、洞窟は涼しいです、綺麗な水場もあります。外敵は殆ど居ません、万が一の時は僕が守ります》
『ふふ、そりゃ頼もしい。虹色や、ちょっと様子を伺いに行ったらどうだい?』
黙って頷くと、ウルカグアリーと共に池の中へ消えていった。
早い、話が早すぎる。
《後は若いのに任せて、そちらはそちらの目的を遂げると良い》
『そうね、さぁいらっしゃいな』
振り向くと、そこは既にお社の中。
靴は脱がされ、正座させられていた。
後ろを向くと賢人君は外、クーロンは傍らに居た。
「お邪魔します、桜木花子です」
『クーロン』
《良く来たね、スクナから聞いていたから、てっきりスクナと来ると思っていたよ》
「あ」
『そうだ、何故言わなかった』
「おわっ、スクナさん…紹介して貰っても相性が悪かったらアレだなって、気まずいじゃん」
『そんな気遣いは無用だ、もっと甘えて欲しい』
「神様に甘えるって、加減とか距離感とか分かりません。難しい」
《うんうん、そうだよね、甘えるってのは難しいよね》
『クーロンは甘やかされてるの』
「甘やかすのは楽しい」
『その逆をしたら良い』
「そうはいかんのよ」
『なんで』
《甘やかすのと甘えるのは違…あぁ、本来は何だったろうか》
「あ、魔石をお願いしようかと」
《もう既に、宇宙のを持っているんじゃないのかな?》
「足りる量が分からんので持っておきたいのです、仲間にも分けます、平和になれば還します、宇宙にも地にも」
《そうか、魔石だけで良いのかい?》
「はい、今はそれだけで充分です」
《よし上げよう、役に立たないのが1番だけれど》
タマノオヤ神の手からポロポロと荒削りの魔石が出てきたので、急いでストレージを開いて入れる。
先程の蛇達の様に、翡翠や赤瑪瑙の様な魔石がとめどなくポロポロとポロポロと。
「あ、と、とりあえずこの位で」
《と、もう良いのかい?》
「足り無いと思ったらまた来たいと思ってます」
《ふふ、良いよ。それにコレはご祝儀だ。礼は今度、貰うとしよう》
「ご祝儀?」
《あぁ、話が纏まったみたいだから。ほら》
タマノオヤ神が指差す方向へ振り向くと、再び蛇達のお社の前に居た。
姉妹達が運び出している結納品の前で、白蛇さん、翡翠蛇にウルカグアリーと、虹色が待っていた。
『タマノオヤ様、ウチの子のお嫁入りが決まりました』
《うんうん、美しいお似合いの夫婦だ。仲睦まじく過ごす様にね》
《ありがとうございます、僕の様な異国のモノを受け入れて頂き、感謝しています》
《君の国と同様に、異国のモノを歓迎するのが我々だから。君もだよハナ、遠慮は無用だからね》
「はい、努力します」
《ふふ、またおいで》
一礼するとタマノオヤ神は既に消えていた、優しい感じの綺麗なイケメンは、最後まで物腰も柔らか。
こう対応が2極化するのには、意味でもあるんだろうか。
『そうそう召喚者や、私達の代わりに娘を宜しくお願いしますね。流石にココを離れるワケにはいかないの、あのホヤホヤしてる方を守らないといけないからね』
《頼むよ仲人》
「はい、任されます。白蛇さん、ありがとう」
《良いさ、ワシも鼻が高い》
結納品をストレージに仮置きし、池を渡りインカへ。
着くと既に宴の準備がされていた。
洞窟の入り口が花々で飾られ、その前では神々が酒や食べ物を囲い、歌い踊っていた。
《お帰りなさい、まさかこんなに早くお嫁さんが来てくれるなんて。流石は召喚者ね》
『そうね、世界は私達を見捨てていなかったのね』
《落ち着きなさい、お嫁様のお名前を伺わなくてはいけないだろうに》
『そうだな、お嫁様や、お名前は?』
《真珠です、宜しくお願い致します》
「綺麗な名前」
《僕が付けたんだ、気に入ってくれてると良いのだけれど》
《嬉しいです、とても気に入っています》
虹色こと真珠蛇はモジモジと、人なら頬を赤らめているであろう態度は、なんともいじらしい。
《素敵な名前ね》
『ぴったりだわ』
《そうだな、これ以上ない名だ》
『美しいお嫁様に似合う名だ。さぁさぁ、結婚式の始まりだ。世界の御遣いよ、どうか参列しておくれ』
「はい、喜んで」
チチャと呼ばれるお酒を呑む前に、先ずは1滴、地面に垂らしてから呑むのが礼儀だとインティさんが教えてくれた、パチャママへの感謝の儀なんだそう。
食事はお肉や魚貝も揃っていて、カラフルなのに馴染み深い味のものも。
お酒もだが、どうも親近感が湧く感じ。
《辛くないかしら?お味は大丈夫?》
『お酒はもう良いの?』
「ありがとうございます、美味しいです。まだ用事が少しだけあって、お酒は1口だけ頂きました」
《あら、でしたら少し持って帰って頂きましょうよ》
『そうね、それが良いわ。仲人のお礼です、どうぞお持ちになって下さいな』
《僕からもお礼を、どうか望みを言って下さい》
「ありがとう、もうこのお酒で充分ですよ」
《でしたら、この袋をどうぞ、少しばかりですが》
《私からも、コチラをお持ち下さい》
パチャママからチチャの入った酒壺を1つ、ウルカグアリーからは白蛇柄の小さな袋。
真珠からは良く磨かれた真珠色の2枚貝を贈られた、開くと美しい真珠が入っている。
「ありがとう…今さらだけど嫁いで良かった?大丈夫?」
《うふふ、一目惚れでした…ですから今、とても幸せです》
(そっか、イヤになったら言ってね。里帰りは手伝うから)
《ありがとうございます、ご心配痛み入ります》
「いえいえ、お幸せに」
インカの世界樹から鍛冶神達の所に戻ると、再び魔石研磨大会が行われた。
景品は昨日の買い出しで追加したお酒、特に強い原酒がお好みらしい。
いっそ、どぶろくでも造ろうか。
『目出度い話は酒の肴に最高だな』
『で、その袋と貝を見せてはくれんのか?』
『そうだそうだ、その2枚貝を見せてくれ』
『まぁまぁ、落ち着け。ワシは袋を拝みたい』
《ふふ、私達はお嫁さんを見たかったわねぇ》
《真珠だなんてロマンチックだわぁ…》
《洞窟に輝く真珠…ちょっと機織りしたくなってきたわね》
『はいはい落ち着いて、ハナが出し難そうじゃない』
タイミングがね。
ストレージから袋と貝を出す、貝を開け真珠を取り出し、隣に居た神に手渡した。
『コイツは良い海水真珠だ、巻きも照りも良い』
『あぁ、まさに虹色だ』
《私は貝が見たいわぁ》
「はい、どうぞ」
掌サイズの大きな蛤に似た貝を渡すと、驚いた顔をして直ぐにコチラに貝を返してきた。
《ねぇ、コレ凄いわ。開けてご覧なさい》
開けると再び真珠が出て来た。
1個目と同じ様なデカい真珠が。
そもそも海水真珠って、池は淡水じゃ。
『ハナ、蛇神は池の子なのよね?』
「その筈なんだけども」
『フギン!ムニン!ちょっと来て頂戴な!』
暫くして、バサバサと大きな音を立てながら、森からフギンとムニンがやって来た。
マジで耳が良い。
《参上ですぞー》
《参りましたぞー》
『池の子が海の物を持っていたのだけれど、どうしてかしら?』
《海にも蛇がおりますぞー》
《海蛇ですぞー》
『そうだけれど…海が近いのかしら?』
「いやー?山中だった様な」
「ちょっと良いっすかね?」
「おう?どした賢人君」
「あの、蛇神様は、海蛇、海神様の親戚なんじゃ無いかと、あの地域は海の方に海神様の神社があるんすよ。で、隔世遺伝で真珠様が生まれたんじゃ無いんすかね?ほら、ココ」
上の海までの川筋を地図で辿ると、確かに海蛇を海神様として祀る神社が有った。
コッチに行くべきだったのかも。
「あら、だったら海蛇さんとこに嫁がせた方が良かったかな」
『大丈夫よ、理屈じゃ無いわ。結婚はハート』
《そうそう、一目惚れだと身を捩らせたんなら、それが正解なのよ》
《うふふ、いじらしい姿を一目見たかったわね》
《そうね、ちょっと織ってくるわ》
「神様達もこう言ってますし、大丈夫なんじゃ無いっすか?」
「うーん」
《もう良いか?この袋も中々だぞ。ひっくり返してみろ》
言われた通り空っぽの白蛇袋を逆さにすると、黄金と、宝石の原石や何やとポロポロと落ちて来た。
「おごっ」
『がははっ!変な声上げやがって、やっぱり気付かなかったのか』
『憎い仕掛けだ、やるじゃないか』
『手の込んだプレゼントだな…ちょっと俺も作ってくる』
『そう絶句しないの、遠慮せず貰いなよ?返すのは失礼になるし』
『コレ磨くぞ』
『俺はコレだ、どう出るか楽しみだな』
「あー、えー…はい」
ポロポロと出てきた大きな原石を、今回は競うでもなく各々が手に取り、黙々と磨き上げていく。
《この淡いピンクのも、赤く透けてるのもインカローズなのよ》
《コレもコレもアメジスト、コッチはフローライト》
《それにコモンオパールと、似てるけどコレはジェムシリカね》
「きれい」
『試しに何か作ってみるか』
『だな』
『おう』
淡いピンクのインカローズとフローライトは、薔薇の髪飾りに。
真珠とブルーのコモンオパールからは、蝶々のピンが造られた。
真珠貝を入れるのにぴったりだとしか思っていなかった白蛇袋から、こうもまぁ宝がザクザクと。
「なんか昔話みたい」
「そっすね、まじで」
『気にいらんかったか』
「いや、ごめん、好きだけどビックリして」
『まぁ、神の礼に慣れるしか無いな』
『だな、気に入らなければ売っても良い』
『コレは、お前個人への贈り物だからな』
「売るのは何かちょっと」
「気が引けるっつーか、罰当たりそうっつー感じっすよね」
《うふふ、じゃあ着けて頂戴な》
《そうよ、ジッとしてて、直ぐに終わるから》
《良い子ね》
髪を編まれ、薔薇の髪飾りを着けられ。
マフラーに蝶々のピンが着いた。
《うん、良いわ》
《黒髪に映えるわね》
《蝶々の髪飾りもあると良いのに》
《そうね、夜空の青い蝶ね》
《薔薇のピンもどうかしら》
《あら、それも良さそうね》
『よし』
『やるか』
『おっし、ちょっと待っとけよ!』
2つのセットが出来上がったが、やっぱり青色を選んでしまう。
蝶々の髪飾りはフローライトやコモンオパールが組み合わさり、青い乳白色で幻想的。
「幻想的で好き、ずっと見ちゃう」
『ほらなー?お嬢ちゃんにピンクはまだ早いのさ』
『だが悩んでいたから大差じゃない、僅差だ』
『だな』
「予定に無いのにありがとうございます。薔薇は好きだけど、ごめんなさい、ピンクはまだ恥ずかしい年頃で」
『良い良い』
『面白いモン見れた礼に受け取れ』
『着けるも売るもお前の自由だ、気にするな』
《そうそう》
《ふふ、お土産話しも楽しいし》
《そうね、うふふふ》
『うんうん、今日の予定が無いなら1杯呑んでかない?』
「ありがとうベリサマ、残念だけどもう1ヶ所だけ行きたい所があって」
海神様の神社に行かないと、勝手をして怒ってないか一応確認したい。
3度目の島根へ、海沿いの海神神社を訪れた。
『構わんよ、寧ろ礼を言いたい位だ。先祖返りで山の蛇に海の子が生まれたと聞いていてな、心配しておったんだ』
「賢人君ナイス的中だ。あの、異国なのは心配しないんですか?」
『しておらん。海はあらゆる異国へ繋がっている、流されるモノを見送るのも、受け入れるのも我が役目。例え不幸な婚姻になっても、蛇神の子孫は、おめおめとやられるばかりでは無い』
「良かった、うっかり越権行為や不味い事をしたかもと心配で心配で」
『そんな肝っ玉の小さい神なんぞ気にするな、それにお主には蛇神の加護が付いたのだから、胸を張れ』
そう言って、海神様は夕陽と一緒に海へ消えて行った。
肌寒い暗い海辺に腰掛け、今日1日で溜まった疑問を杖のクエビコさんに問い掛ける。
「クエビコさん、蛇神様の加護ってなんだろうね」
『そのままだ、この国の全ての蛇神がお主に力を貸すと言っている』
「わぉ…プレッシャー」
『昔にしてみれば良くある事だ、気にするな』
「な…皆、優しいけど、あっさりしてるよなぁ」
『古い神程、良い悪いなんぞは直ぐに分かる。そして悩むまでも無く行動する、行動して悪くいけば挽回させるだけだ、それだけの力を持っている』
「神様いっぱい居るもんなぁ、この国は特に」
『あぁ、八百万だ』
「はぁ」
『疲れたか』
「人見知りなんで、クソ疲れた」
「桜木様って人見知りなんすか?」
「おう」
「アレで?」
「アレで、マナー知らんし、長い付き合い程ボロが出る」
「そうは見えないんすけどねぇ」
「努力の賜物、もう帰りたい、眠い、お腹減った」
「じゃあ、帰りましょっか」
「おう」
ヴァルハラに付くと、丁度夕飯タイムだった様で、タケちゃんもエミールも食卓で待っていた。
「お帰りハナ」
『お帰りなさいハナさん』
「ただいま、疲れた」
『食べてからじゃないと寝ちゃダメよ』
「はい、いただきます」
「「『いただきます』」」
エイル先生に促され、頑張って食事を頬張る。
お肉にお米と言う禁断の組み合わせは、タケちゃんにも合った様で、
エイル先生に促され、頑張って食事を頬張る。
お肉にお米と言う禁断の組み合わせは、タケちゃんにも合った様で、お代わり合戦となった。
眠気を我慢し歯磨き、お風呂に入る前に、ソファーで休憩を。
《金儲神社の白蛇》
『金屋子』
《パチャママ》
『インティ』
『ママキジャ』
《ビラコチャ》
《アマル》
『クーロン』
《ウルカグアリー》
『翡翠蛇』
《タマノオヤ》
《真珠》
『海神』




