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3月15日

マサコ・リタ・小野坂の視点。

『天使様、おはようございます』

《おはよう》


 島から帰って来た直後に、補佐さんは辞めてしまった。

 良い方だったのに、黒い地球の消滅以降、他の役職の方の大半が交代して、不安だったのに。


 浮島から帰って、そのまま直ぐに自治区を周ったのだが、桜木花子が魔王で無いなら、何故神託が終わりを告げないのかと聞かれ、何も言えなかった。


 国の偉い方にも、折角、国の二分化が統一された状態なのに、桜木花子が魔王で無いとなれば、再び二分化してしまうと。


 補佐さんに相談したかったのに、何も告げずに辞めるなんて。


 他の方に相談しても、孤島で何1つ成果を上げられず、呆れられてしまったのだろうと言われ、何も反論が出来なかった。


 本当に、何の成果も上げられなかったから。

 私が悪い、私は何もしてない。


 黒い地球も、私はただ見ているだけだったし、何も出来なかった。


『私は、何で呼ばれたのでしょうか』

《アナタにはアナタの役目、役割が有る筈、見付けましょう》


 探した、でもこの世界は平和で、解決すべき問題は既に解決策が出され、改善中で。

 そして道具も、魔道具も揃っていた。

 桜木さんが手を回してくれてたらしく、異教の神々に会いに行くと、既に魔道具は用意されていた。


 後はもう、出来る事は調べるだけで。

 それでも、調べても調べても打開策は既に有るか、途方も無い歳月が掛かるか。


 一応、残る為にもと常識や歴史を調べても、特に問題は無かった。


 なのに、桜木さんは。

 対処が出来ないと言われていた魔王を、大罪の悲嘆を人間にし、無力化させた。

 そして他の大罪とも関わりを持ち、死の女王や悪神ロキ、様々な良くない噂の神々と繋がりを持った。


 悪評ばかり、良い噂は無いのに。


 それを愚痴ってしまったら、朱に交われば朱くなると言われ、確かになと思ってしまった。

 私は天使様達だけで良い、これで充分だと思っていたのに。


 桜木さんは使節団に選ばれ、第2地球に呼ばれ、難民を連れ帰った。


 私が行っていれば、少しは挽回出来たかも知れない。


 結果的に内通者の様になってしまったけど、もう少し穏便な結末に出来なかっただろうか。

 関係者は処罰され交代され、もう、誰とも連絡が取れない。


 私が無能だから、何の成果も上げられずにいたから、大人が責任を取った。

 どうしたら上手く出来たんだろうか。


 挽回するには、どうしたら良いんだろうか。




「マサコ様、お口に合いませんでしたか?」

『あ、いえすみません、美味しいです』


 肉が食べれないのだが、過剰な加工は美食の大罪を犯す事になるので、豆腐とチーズとサラダとパンとスープ、果物。

 コレを毎食。


 もっと早く帰れると思った、料理ももっと技術が進歩しているのかとも。


 ただ、ココでもかなりの工程が掛かるし、製品は他国にしか無いし。

 ココでは美食の大罪を犯す行為になってしまう。


 向こうの自分がどれだけ大罪を犯していたか、良く身に沁みた。

 戻れば私はまた、大罪を犯す悪人に戻ってしまう。




 禊ぎをし、教会へ。

 皆さんとお話を聞き、会議へ。


 ココには天使様も入れない、人間の会議。

 好きじゃない。


「私達も辛い、苦しいんです、分かって頂けてますよね?」

『はい、ありがとうございます』


「それで、今日はどうされるおつもりですか」

『その、誤解かも知れない以上、桜木さんと話し合いを致したいんですが』


「そうですね、そろそろ暴くべきかも知れません」

「では、準備致しますので、お部屋でお待ち下さい」


 今日は怒られなかった。

 ミーシャさんやカールラが居た時は庇って貰えたし、加減もして頂けていたが、最近は私がダメだから叱咤が多かった。


 私の為に厳しい事を言って頂いている。

 私の為に、果ては国の為に、仕方無く叱咤激励して下さっているのに。

 私は、辛くて。




 結局面談は断られてしまったと聞かされた。

 だが、タブレットを通してなら良いと。


 開始は14時、向こうは日本時間なので朝7時、ちょっと失礼な時間帯かも知れない。


【どうも】

『お時間頂きありがとうございます』


【いえ、本題をどうぞ】

『あの、噂はご存知でしょうか』


【はい、魔王候補の事でしょうか】

『はい』


【はい、それで】

『魔王になるつもりは』


【無いんですけど、どうしたら信じて貰えますかね】


「その事について少し宜しいでしょうか、まず」

【小野坂さんの口から聞きたいんですが】

『あ、はい。魔道具を全て取り払い、自治区にて嘘発見機へ。結界を貼り、魔法も全て禁止させて頂きます』


【噂では、もう殺そうと思ってる人間が居るんですよね?そちらって】

『そこは警備も万全にしておりますし、天使様も』

《私は見守るだけ、一切介入は出来ませんよ》

「ご信頼頂く他に」


【疑っているのはそちらでは、第3国では不可能なんでしょうか】

「可能ですが、自治区の人間が納得するか、ですので」


【それはアナタ達の仕事ですよね。それから、小野坂さんの口から聞きたいと言いましたが?】

「失礼しました」

『最後に、信じて頂くワケには参りませんでしょうか』


【アナタは出来ますか?と言うか、カールラ】

「通信不備ですね、暫くお待ち下さい」

『あ、え、はい』


 結局、通信は再開されるのに数十分掛かるらしい。


 休憩にトイレへ、帰って来て漸く、再開された。


「失礼しました、未だ妨害する勢力の起こした事だそうで。では、再開します」

【はい。それで、カールラを帰して頂きたいのですが】


「既に帰された筈ですが」

『はい、私もそう聞いています』

【そうですか、まだ、帰って来て無いのですが】


『え』

「それは、ソチラが気に入らないので他に行かれたのでは」

【どうしてそう思いますか】


「男性ばかりを侍らせて居るからでは、非常に常識的な方達でしたし」

『シスター』


「真実を指摘して差し上げるべきなんです。アナタが言えない事を言っているんですよ、子供だから分からないのかも知れませんが、異常なんです。男性ばかり侍らせて、本来は同性と居るべきなんですよ」

『それは私がカールラをお借りし、ミーシャさんもお借りしたからで』


「ミーシャさんもコチラは返しました、そしてこの現状が事実。ミーシャさんはどうされました」

【彼女は夜勤で眠っています】


「コチラは帰したんです、コチラの神獣をお返し下さい」

【無理でしょう、その状態ではどうなるか】


「やはり。神託に大罪、女性、魔王化、と出たんです。もう諦めましょう」

『そんな、女性なんて人口の半分なんですし』


「大罪と魔王と関連する女性なんて、最近だとアナタ位では」

【そうかも知れませんね】


「交渉決裂でしょうか」

【そうですね】

『桜木さん、私』


【内通者紛いの事をして、謝罪も無し。しかも魔王、大罪認定ですか。失礼過ぎですよ、もうお話しは結構なので、内政を収める努力をして下さい】

『すみません、ごめんなさい』

「では、失礼します」


【はい、さようなら】

「良く謝罪出来ましたね、偉いですよ、立派です。頑張りましたね、途中で厳しい事を言って申し訳ございません。最初から出来る方と信じて居たんです、期待通りです、良く出来ましたね」

『え、あ、はい、ありがとうございます』


 不調に終わってしまったけど、久しぶりに褒められる事が出来た。




 そして会議へ向かい、神託の精度上昇と、より信仰を集める為にと禊が行われる事が決定した。

 外界と謝絶し、祈りを捧げる時間を増やす。


 そうすればより神託の精度が増し、問題解決の糸口になると。


 剣道の練習と並行し、禊と剣道だけに集中出来る。

 そして司祭様はとても良い方で、毎日会える事を神様に感謝しています。




 そして昼食、神父様とコレから毎日お食事をご一緒出来るのがとても嬉しい。

 真面目で誠実で知識の有る憧れの方、召喚者と特別扱いする事の無い数少ない方。


 穏健派と言われる方で、唯一残られた方。


『どうですか?』

『はい、とても美味しいです。ご一緒して頂けて感謝しております』


『コチラこそ。それで、どうでしたか?』

『私が至らず物別れに。真っ先に謝罪すべきでした』


『向こうは、大人なんですよね?そしてアナタは子供、少し位、向こうが配慮すべきなんですよ。アナタは優しいから、それに気付けなかったんですね』

『いえ、何度もお話しする機会があったのに、出来なかったんです』


『それこそ向こうが配慮すべきだったんです、怯えるアナタにしっかり向き合わなかったのは大人気ない。アナタなら、進んでお話を聞きに行かれたでしょう?』


『は、はい』


 嫌われたく無い、もう期待を裏切りたく無い。

 この方だけには褒められたい、せめて、この方だけに。

 怒られたく無い、叱られたく無い。


『あぁ、泣かないで下さい。悔しかったんですね、きっとアナタは優しいから、反論もせず聞いていたんでしょう。大丈夫ですよ、アナタは悪く無い、良くやっています、大丈夫、大丈夫』


『私、私は』

『良いんですよ、何も言わなくても私には分かります。大丈夫』




 久しぶりに沢山泣いてしまった。


 嬉しい、優しい人が居てくれて嬉しい。


 嘘でも、私だったらもっと救えてたかも知れないと言ってくれた。


 そして、もし自分だったらどうしていたか考えるべきだとも。


 私なら、私が第2地球に呼ばれていたら。

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