1月26日
翌朝になって、漸くエイル先生に目の報告が出来た。
朝食の準備を手伝いながら、エンキさんの話をした。
『うんうん、やっぱ治し方が違うよねぇ、私は物理的に治す感じだから勉強になるわー』
「こんな、ほやーんとした説明で分かるもんです?」
『そりゃね、ちょっと見れば、どれどれ』
「ちかい」
《エイル殿のお勉強タイムですな》
《久方ですな、このキラキラお目め》
『あ、ハナ、ごめん、つい』
「いえいえ、喜んで貰えるとは」
『ふふ、勿論、患者が治って喜ばないワケ無いじゃない。さ、食べましょ!』
「「『いただきます!』」」
「ストレージもゲットとは、羨ましいぞハナ」
「タケちゃん必要?身体1つでイケそう」
「備えあれば憂い無し」
『ですね、僕も早く治ってストレージゲットしたいです』
「じゃあ沢山食べないとね」
ポタージュスープ、各種サンドイッチと、例え朝でもステーキ食える派の要望で、ステーキとパンが用意されている。
今日のお気に入りはミックスベリーのヨーグルト。
『ストレージって、どんな感じなんすか?』
「頭の中から声がして怖いが」
《外部出力も可能です》
「お、妖精か?」
『え、どんなですか?』
「青白い光、姿形が見えないのよね」
《器を頂ければお見せ出来ます》
「器って」
《マニュアルが御座いますが、閲覧なさいますか?》
「うん」
『マニュアル有るんですね』
手元にあったタブレットに、小さな精霊ソラちゃんが触れると再起動し、扉のアイコンが現れた。
タップすると絵付きの優しいマニュアル、1枚1枚絵本の様。
「へー便利」
「俺には読めないぞ?」
《はい、仕様です》
『こら、ごはん食べ終わってから』
「はーい」
「「『ごちそうさまでした』」」
『じゃあ早速ストレージに収めて貰うよ、ハナ』
「はい」
エミールを泉に戻し、ミーシャとカールラと魔王を配置。
タケちゃんと賢人君を訓練所に見送った後、食後の散歩がてらクーロンと倉庫置き場へ向かった。
『ハナ、この倉、何個有ると思う?』
「100位?」
『それ以上なのよねぇ』
「ま、何でそんな」
《戦が無くなって余っているのですぞ》
《神も人も争わなくなったからですぞ》
『それに、人にあげるには強すぎるし、医学の進歩の妨げになるから迂闊にあげられなくて。平和な今じゃ特にね、そもそも緊急用だし』
《そうですぞ、自粛ですぞ》
《因みに奥の倉庫はハーブ類ですぞ》
「それも?」
『もちよ』
《泉の周りが倉ばかりでは美観が損なわれるのですぞ》
《もう数年で破棄の予定でしたぞ》
「そうなったら、どうなってたの?」
《投票の結果、エジプト周辺の砂漠に撒く予定でしたぞ》
《エジプトに反対されていたので、今朝まで武力衝突寸前でしたぞ》
「物騒な、有り難く全て頂きます」
緑化は賛成だけども、砂漠消えるのはちょっと。
神々の正義こわい。
【神とはそういったモノです】
ちょ、思考に急に介入は、疑問符ついてなさそうなら答えなくていいからね?
【はい】
ストレージの一般的な使用例は箱や枠に番号を振り整理、主に精霊に出し入れして貰う。
パッと見でレスポンスが遅そうだが、魔法慣れしていない人間にはコレが限界なのかも知れない。
ストレージ割り振って1にエリクサー入れて、5にハーブやエッセンスか?混乱しそうだ。
【目を瞑って下さい】
目を閉じると、更に一段薄暗くなり。
縦2マス、横5マスの簡素な項目が10個浮かんできた。
変な感じ、まだ説明書を読み切ってないんだが。
【後でタブレットで操作出来ます、カスタマイズも可能です】
了解。
【では5に素材、1にエリクサーで宜しいですか?】
うん、宜しく。
1のタイトルがエリクサーになり、5に素材(エリクサー関連)となった。
柔らかい風を受け目を開けると、倉ごと消えていた。
『わぉ、早い!良いなぁストレージ』
「ちょ、倉が」
《良いのですぞ!》
《撤去の手間が省けたですぞ!》
「ごめん、マジでいいの?」
《遠慮は無用ですぞ》
《ですぞ!》
『良いの良いの、倉も片してくれるなんて助かるー!』
ソラちゃん、このままいける?
【はい】
バンバン収納された後の景色を見ると、確かにスッキリして美しい森になった。
こんなに明るくて広かったのか。
「ありがとうございますエイル先生」
『いやー、スッキリした!こっちこそありがとう、他に何か要るモノは?』
「あ、だったら武器の事で相談が」
《ニーダベリルですな!》
《鍛冶屋が沢山居りますぞ!》
「遠い?」
《飛べば近いですぞ!》
《コチラですぞ!》
「クーロン、宜しく!」
『はい!』
『いってらっしゃーい!』
「行ってきまーす」
どんどん飛んでる内に、見た事のある景色が広がっていく、炭の匂いと水の匂い。
美しい川の女神に、鍛冶の神々。
《武器のご相談ですぞ!》
《野郎共!お仕事ですぞ!》
『おう!おう?この前の』
「どうも、あの、ユグドラシルに…?」
『あぁ繋がってんだ』
「マジか」
『マジだ。で、今日は何だ?』
「戦闘の、武器の相談が…あ、ベリサマ!お邪魔してます」
『やぁ、良く来たね、戦闘の相談?』
「うい、銃とかある?」
『あぁ、コッチだよ、おいで』
これまた山の麓に、沢山の大きな蔵がずらりと並んでいる。
作り手で分けるのではなく、種類で分けてるらしい。
入口に飾りの盾や剣が神々しく輝く。
守りの魔法が掛かっていて、許可なき者は開けられないそうだ。
「飾りカッコイイ」
『ふふ、拘りが無いならここのを持ってったら良いよ、イメージに合うのが無ければ作るし』
「かっこいい、なにこれ、どう使うの」
『ハナは撃った事ある?』
「無い」
『手を出して』
「へい」
『ちっさ』
「もー、なんすか」
『ごめんごめん、ハナに合う銃ならココからココまでだね、オススメはコレ』
「ありがとう、盾も出来れば選んで頂きたい」
『よし…コイツはどう?』
「んー、大きいのはやっぱり扱いが難しい?アレとか」
『それは大丈夫、アレは魔力を使ってサイズが変わるヤツだし、ハナなら楽じゃないかな。コッチは消費無しだけど、少し重い』
「重いのが盾じゃ?」
『分かってるね、でも軽いのも利点になるよ、吹き飛ぶ時にグライダーになる』
「いや、それは…戦った事無いから選べないです」
『なら、やっぱ全部持ってけば良いじゃない?』
「ん?」
『ココは、試作品置き場とは名ばかりで、全部死蔵品なんだ。使い手も貰い手も無い』
「全部?」
『作るのが仕事、蔵にこんなに有ったんじゃ白けるし。満タンの蔵を見るとテンションが上がらない…だから、こんな奥にある、飾るでもなく、隠してる』
「有難く、全部いただきます!」
『あいよ!』
蔵抜き、ストレージ2は盾。武器はとりあえず全部3で。
【了解しました】
色々な武器を見ても触っても、自分の戦闘スタイルが全く思い浮かばないので、いつの間にか来ていたタケちゃんと賢人君の戦闘を眺める。
タケちゃんは凄過ぎて、良く分からん。
賢人君の体術が見やすくて、楽しい。
タケちゃんがケガを負う度に、ストレージのエリクサーを霧状にしてぶっ掛けて遊んでみる。
普通に掛けるより、ケガの治りも早い気がする。
なにより素晴らしいのがソラちゃんの射撃精度、意図を酌んでくれて補正されている。
修正しないでも成功してしまう。
心強い。
ナイス、ソラちゃん。
【ありがとうございます。武器も飛ばしてみましょうか】
危ねぇなぁ。
【盾なら如何でしょう】
ん、良いかも。
『そうそう、武器は決まった?それともまだなら魔法の練習する?』
「ありがとうございます、魔法はまだ草木生やす位しか出来なくて。何か、攻撃的なのあります?致命傷負わせられるの募集中です」
『致命傷かぁ』
『あぁ、お嬢ちゃんは雷電だったな、ほら、アレだ、スタンガンだったか?ああいうのはどうだ?拵えてやろう』
『アレか、面白そうだな混ぜろ』
『人のオモチャか、お嬢は致命傷が良いんだろう?』
『だがいきなり危ないのはな、初心者なんだから』
『だが、雷電の練習にはなるだろう』
『まぁ触媒が杖だけではつまらんしな』
『まさかアッチに、銃が触媒ってのは無いだろう』
「あっちの創作にはある、魔法銃、浮遊したりしてた」
『良いな、作るか』
『浮く銃か、面白い』
『俺の魔法銃だぞ、俺が先だ』
「1人が複数扱ってたのもありました、マスケット銃だかなんか、古いのが人気だった気がする、オートのイメージあんま無い」
『弾丸は、弾丸はどうするんだ?』
『魔法で、魔法を発射か?!』
『材質は?!金属だけか?木と混合か?それとも何か他の…』
『浮いて複数?自動制御か?』
「分かんない、弾丸は両方あったと…魔法込めた弾丸とか…多分あったかと」
『中長距離か?』
『いや、スタンガンは近距離だぞ』
『仕様用途が』
『そもそも目的がだな…』
『ハナ、ちょっと、こっちおいで、ビックリしたでしょ』
「ベリサマ、これはいったいどうしたもんか」
『ふふ、要望をちょくちょく挟めば良いの、シンプルとか、盛り盛りとか』
「要望…超長距離も出来て、必中、一撃必殺のとか。それと護身用とか、威嚇出来るの…とか…位かなぁ…」
『おっし…じゃあハナの武器討論会ぃいい!!』
『『『ぅおおおおぉぉぉぉぉ!!!』』』
「なんか始まった」
『ふふ』
「桜木様?アレはどしたんすか?」
「武器作る相談」
「ひぇーうらやま!」
『おい!話す体力があるなら戻って来い!』
「あ!はい!じゃ、いってきますー」
「いってらー」
タケちゃんは集中力を切らす事無く、坦々と戦闘訓練をしている。
早すぎて良く分からないけれど、タケちゃんがミスると大きな音がして、アザや傷が出来ていくので。
正直見ていられない。
たまにチラっと見てケガしていたら、霧吹きする。
勝手にやっても何も言われないが、たまーにだけ。
賢人君は召喚者では無い普通の人間。
護衛が主なので、訓練の中身がそもそも違う。
危ない攻撃は無いが、大きく避ければ護衛している者に攻撃が当たってしまう。
かといって上手く避けなければ自身が致命傷を負う、その絶妙なラインをずっと攻撃されているみたいだった。
寸止めとダメ出しの繰り返し、思い切りイライラした表情、ショナもイライラするのだろうか。
『ねぇ、ハナ、他に何か作って欲しい物は無い?』
「んー…魔石を換装式に出来たら良いなぁとか」
『魔石だけ付け替えるって事?』
「電池って聞いたから、着脱可能が素敵かなって」
『なるほど』
『確かに石だけを付け替えられれば…』
『ピアスは小さ過ぎるな』
『指輪か』
「全部の指に付けるのは、ちょっと」
『腕輪!』
「もう一声!」
『足輪!』
「サイズ変わらなくない!?」
『首輪!』
「苦手!」
『くぅ…分かるぞ…俺も苦手だが…』
『だが…俺らの出番は無いのか…?』
『ベルトや腰飾りは、どう?ハナ』
『「『 そ れ だ 』」』
『あはは!例えばこんなんとかね?』
ベリサマが差し出したのは、既にある程度完成しているベルト。
杖も装着出来る装備品。
かっこいい。
「かっけぇ」
『でしょ、桜木1号、着けてみて』
軽く薄過ぎない、黒い鞣し革。
動きの邪魔にならない様にスタイリッシュにカッティングされ、艶消しがシックかつ機能的っぽい。
本体に繋がったガーターベルトの様な杖入れも、動きを邪魔する事無く右太ももの出し易い位置にあって、格好いい。
「素敵、綺麗、かっこいい」
『さっき話してた換装式も、直ぐに取り入れるよ』
「マジ良い、こう言うの好き、でも実は華奢で繊細なのも好き」
『じゃあコッチも?』
細く白い二重のベルト。
先や、留め具は繊細で美しい銀の装飾が施され。
整然と並んだ穴は勲章や、装飾品を飾る為の穴だそう。
アッチでならお洒落過ぎて手が出せないハイカラで、おしゃんてぃなベルト。
「たまらんです」
『なるほどね、お嬢はそういうのか』
『まぁ、これは日常用だな』
『だが改良すれば戦闘用にも良いだろう』
「日常には派手過ぎ無い?」
『そう?今の服装にちょうど良いと思うけど』
『控え目な方だ』
『そうだぞ、うら若き乙女が真っ黒で、おじさんは寂しい』
『寧ろ合う、問題無い』
「あざーす」
『ほらね?じゃあこっからが本番。色の希望はある?』
「戦闘用は黒だけど、白良いけど、汚れちゃうよねぇ」
『そこを気にするか』
『その汚れも味になる良い白を選んでやろう』
『だな、あの形も良いが…』
『ふふ、じゃあまた今度来て、ハナ』
「うん、ありがとう、また」
練習相手が居なくなったタケちゃんと賢人君と共にユグドラシルへ戻り、泉で少し休憩。
タケちゃんは再び賢人君とヴァルハラへ。
魔王とクーロンには魔石取りをお願いし、倉庫跡地の整地をドリアードと2人で行う。
《集中や分散のコントロールは良くなったんじゃがな、魔力の緩急が上手くいかんのぅ》
「不器用?」
《まだ魔力が低値だからじゃろうな。力の強い赤子も、特にマーリンの小さい頃は大変での、近くにあった城を茨で覆ってしまって大変じゃった》
「マーリンさんがまさか主犯とは、てっきり魔女が」
《そうじゃな、近隣の魔女には悪い事をした、逃がしたが魔女狩りが起きかけてな》
「マジか、セイラムでか」
《いや、向こうではその名が有名だそうじゃが。まぁ、我が拾うたマーリンが元ゆえ、逃がす手伝いを随分したもんじゃが、大変じゃったぁ》
「ドリアードは巻き込まれ体質か」
《我が巻き込んでおるのか、巻き込まれておるのか、周りはさぞ大変じゃろうて。ティターニアにもオベロンにも、随分と世話になった》
「優しいよね、みんな」
《全ては何人もの召喚者、転生者のお蔭じゃ。じゃが憤怒の様に大罪に呑まれた者もおった、悲しい事じゃ》
「本人に聞くの躊躇う」
《次に会う事があれば聞くと良い、語るのも大罪の仕事じゃ》
「虚栄心も?」
《大罪は人の善意の裏返りじゃ、強過ぎる力や意識は裏返って自身に降り注ぐ。力持つ者の果てじゃ》
「こわ」
《じゃろ?じゃからマーリンも隠居した、人が嫌だと言うておったが、世が嫌になったのじゃろ。あまり、良い世の中では無かったからの》
「そうは思えない位、今良いと思うけど」
《それでも軋轢はあるじゃろ?お主やノームの様に小さなヒビがの、大きくなる事もあったんじゃよ》
「戦争を見てきた?」
《半分位じゃろうか、我の加護する領地以外や、人同士の争いには関与せんかったから。関われば魔王の様に、終わりの見えぬ苦しみが待つしのう》
「あんまり介入するとバチが当たるのか」
《じゃの》
「でも手伝ってくれるの?」
《一線はある。それに人との繋りが欲しいんじゃ、愛や繋りが無くてはいずれ消えてしまうからの。じゃが耐えきれずに人を見放し、見放された神々もおったわな》
「愛しちゃうのか、マーリンさんとか」
《じゃの、我の腹から産まれておらんが、愛しい我が子じゃ》
「なるほど、子なのね、お腹へった」
《全く。もう昼じゃな、帰るかの》
エイル先生の手伝いを少しして、エミールやタケちゃんと昼食を食べながら、武器や防具、明日の事を話した。
エミールは今日と同じく、もう少し待機。
タケちゃんも同様に、ひたすら戦闘訓練だそうだ。
そして昼食後は少しだけエミールと一緒にお昼寝し、エジプト渡航申請待ち。
「桜木様、エジプト、大丈夫だそうっす」
「お、早速行くべか、宜しく魔王」
「はい」
クーロンを呼び寄せ、魔王と賢人君と共にエジプトに向かった。
神殿やピラミッドが聖域で、聖域が世界樹の役目を担っているそう。
危うく緑化されそうだった砂漠なのだと思うと、感慨深い。
結構寒い、砂漠寒い。
『いらっしゃい、召喚者』
「どうも初めまして、さk」
『ダメよ!真名は言うべきでは無いわ、こちらはあだ名で呼び会う習慣なの』
「あ、っとチェリコです。コッチは…マー君」
「ケー君で」
『クーちゃんなの』
『いいでしょう、宜しくお願いしますね。イシスです』
そして神々の守護を早々に授かった。
ペリセリド(足飾り)とアルミール(腕輪)、武器を数種類と香油。
自分はネフェルトゥムさんの青い蓮の花を貰った、悪夢を払い、寝坊しないお守りだそうだ。
「いきなりありがとうございます、でもどうしてこんな?」
『エリクサーを回収して下さったお礼です』
「あぁ…あの話」
『はい、戦闘態勢は解除されました。豊かになるのは良い事ですが、生態系を崩されるのは困りますから』
「マジだったのか…」
『えぇ、それに、大事なお話があったのでは?船上女子トーク、いたしましょう?』
「え、あ、はい」
言われるがまま二手に分かれ、夕暮れに染まる船に乗り、川を下った。
何を話せば、どれの事だろう。
『何を求めていらしたの?』
「人殺しと甦りの力を」
『ふふ、もう持ってらっしゃるのに』
「まだ上手く使えないので」
『我等とは術の方向性が違います、もっと適切な神々がいらっしゃいますから、焦らないで。他にもあるんでしょう?』
「体を変えたい」
『それならもう、出会ってらっしゃるわ』
「医神に我儘を言うのは失礼じゃなかろうか、治すのが使命なのに」
『大丈夫、ご相談なさい。一時的な事なのでしょう?』
「はい」
『神々が人体を変えるのも作り上げるのも、造作もない事、迷い悩む事はありません』
「…まさか0からも人を作れるんですか?」
『えぇ、ご紹介出来ます。ただし、悪しき者となれば大きな罰が下ります』
「ですよね」
『悪しき者となればですから、善き者に罰は下りません』
「そこがちょっと不安なんで、頼み難い」
『ふふ、慎重でらっしゃるのね』
「はい、か弱いんで」
『まぁまぁ、焦らず夕陽でも眺めては?ほら、綺麗でしょう』
本当にとても綺麗だった、水面や砂漠が濃い赤と紫一面に染まって。
カールラとクーロンが生まれた日も、こんな綺麗な夕焼けだった。
でも今は、それよりもっと柔らかで、太陽が川にとろける様。
「本当に、凄く綺麗です」
『でしょう、朝からずっと雨が降っていたのに偶々晴れた。運が良いわ、とても、だから自分を信じて。心が決まったらまたいらっしゃい、迷う時はお休みなさいな』
「はい、ありがとうございました」
魔王とクーロン、カールラも呼んで日本の町に行き、遅いオヤツに穴子丼とネギトロ丼を食べ。
追加の買い出しをたっぷりとしてから、ヴァルハラでエリクサー作り。
そして夕飯を食べ、クーロンに魔石取りを頼み、眠りについた。
『エイル』《フギン・ムニン》「タケちゃん」『エミール』《ソラ》『クーロン』『ベリサマ』「賢人」「魔王」
『イシス』