??月??日
視線を戻すと、浮島の小屋の床。
そして暖炉に焚き火、コンちゃんにロキ、クーロン。
ミーシャに賢人君。
コレは、現実なのだろうか。
『ご主人様?』
「ただいま」
クーロンの肌触りは前のまま。
息苦しい程の包容はロキ、泣いて抱き付くのはミーシャで、賢人君は冷静に報告へ。
そしてコンちゃん、遠慮がちに大外からのハグ、変わらず良い子。
『サクラちゃん、大丈夫?』
「夢みたいで。取り敢えず計測するわ」
計測、低値。
移動したからこそ、低値なのだろうけど。
何が引き金?ほっぺのキス?なら大丈夫なんだろうか、せいちゃんは。
「ショナさんに連絡しといたっすよ」
「ありがとう、でも、ちょっと混乱してて、サリンジャー先生に会いたいんだ。ロキも来てくれるかな」
『良いよー』
『クーロンはダメ?』
「コンちゃんとクーロンも一緒だよ、ミーシャは休んでて、お願い」
「はい、待ってます」
北海道の病院前に空間を開く、そして受付にはネイハム先生が、車椅子と一緒に待っていた。
先ずは処置室に行き採血、点滴へ。
痛みはしっかりと有る。
そしてそのまま話が始まった。
《今がいつか分かりますか?》
「いいえ、ココの記憶は12日の夜、浮島の宴会で止まってます」
『今は2月20日、1周間、消えてたんだよサクラちゃん』
「向こうで、何ヶ月も過ごした、6月26日のお昼前だった」
『4ヶ月も何処に?』
「異世界、ココとは違う世界。ソラちゃん」
《コチラがデータになります》
《後で確認させて貰います、今は、どんな気分ですか?》
「悲しい、心配、不安。ココが本当に現実なのか、夢を見てたのか不安」
『大丈夫、現実だよ、その4ヶ月で何か物は得た?』
「原稿用紙、次の世界では本に、なった」
《預かりますが、良いですか?》
「はい」
『エリクサー有る?』
「ある、飲む」
《どうして、このメンバーなんでしょう》
「他に会いたく無い、心の切り替え、整理が出来て無いから、動揺させたく無い」
《分かった、面会謝絶にしておきましょう》
「お願いします」
『他に何か話しておきたい事は?』
「あ、向こうで抗体を得たから、それに気を使って欲しい。SARSの亜種らしいけど、ごめんなさい、ボーッとしてて」
《感染期間では無いんですよね?》
「うん、かなり前、1ヶ月は経ってるかと」
《5月9日発症です》
《なら大丈夫でしょう、ただ念の為に詳しい検査を、大丈夫ですか?》
「はい」
鼻粘膜、咽頭から生検を採取。
その他にも念の為にも紫苑の身長体重、レントゲン等を終えると、朝日が出て来ていた。
『ご主人、嫌な事あった?』
「大丈夫、寧ろ有意義でした。ごめんね心配掛けて、コッチは大丈夫だった?」
《はい。14日に第2の地球が出現しましたが、特に動きは無いです》
『不気味だけど、今は有り難いね』
「それでも直ぐ回復させる」
《向こうに居ますけど、無理しないで下さいね、見てますから》
「うい」
中庭の泉でケバブを食べながら、向こうで作って貰った仙薬を飲む。
苦い、現実らしい。
それからはエリクサーに切り替え一気飲み、明日、今日の午後にも戦闘になるかも知れない。
他の事は一旦無し、全力で回復へ。
しまいにはおつまみも無し、我武者羅に飲み込む。
『休憩しても良いんだよ、非常事態なんだし』
「大丈夫、もう慣れた」
どんどん日が登る。
焦る、でも焦る意味が無い、零さず飲んで、回復にだけ専念。
帰って来た意味を成さないと、本当に顔向け出来無い。
死なない様にしないといけない。
『うーん、もうダメ、休憩しよう?』
「分かった、ちょっと一服したいんだが、外よね」
『うん、聞いてくるね』
「おう、ありがとう」
『悲しいの?』
「そんな顔、してるのね。大丈夫、ごめんね」
『ちゃんと、後で、お話ししてね』
「うん、ごめんね」
『外ならって、車椅子はどうする?』
「もう大丈夫、ありがとう」
そして病院外の喫煙所へ。
神獣達を離れた場所へ待機させ、一服。
少しクラクラするが、良い感じ。
『魔素入りだね、お手製?』
「いや、貰った。ココの世界を1として、最初に居た世界を0としたんだけど、2、3と移動させられて、帰って来た。コレは3で貰った」
『一口頂戴』
「うん。ごめんね、2でロキを殺して、沢山の人を見殺しにして、3のヘルヘイムのオーディンまで殺した」
『凄い、流石魔王候補』
「怖くない?嫌じゃ無い?」
『理由が有ったんでしょ?それに、俺は俺で、他の世界のロキは別物と思ってるんだけど、似てた?』
「2は全然似てない。3は凄い似てて、1の俺は君を好きだろうって、だから悔しいから邪魔するんだってさ」
『あぁ、似てる、憎らしい俺だなぁ』
「愛情深い死人だった、バルドルとか以外は皆がヘルヘイムに居た」
『ラグナロクが起きたんだね』
「うん、2でも起きたのか、トールと2人ぼっちで発狂してた」
『そりゃ君も子供も居なければ発狂する自信しか無いよ』
「もし可笑しいと思ったら、殺すか召すかしておくれね」
『もう充分可笑しいよ、ずっと失恋したみたいな顔してるもの』
「失恋なのかしらね、良く分からん」
『好きな人出来た?』
「いっぱいね、良い人ばかりだったから」
『それって、物理的な失恋だよね、もう死に別れと一緒じゃない』
「そうか、死に別れか」
『もう煙、無いでしょ、クーロンも抱っこ』
「はいはい、抱っこしようね、コンちゃんもおいでやす」
《はい》
ハグハグし、中庭の泉に戻り、再びエリクサーの一気飲み。
ヤケ飲みだと思うと、少し楽しい気もする。
そして休憩には、中庭で先生との面談。
「死に別れを経験してるらしいです」
《関わった人の数だけ、死に別れを経験してるも同じかと》
「別の場所で生きてるのに」
《もう確認出来無い、どう生きてるか想像出来ても、もう確かめられない》
「ドリームランドに賭けます、いつか、繋がるかも知れない」
《そうですね、いつか繋がるかも知れませんね》
「体内時計を得ました、オヤツの時間に起きるらしい」
《便利ですね、オヤツを逃しませんし》
「男に変身出来る様になって、片玉置いて来た」
《今、違和感は?》
「無いけど、男の状態に成りたい」
《魔力消費はどうですか?》
「それ程は無い筈」
《では、どうぞ》
「見ないでいて」
《はい》
「ほい。シオン、鈴藤紫苑だった」
《ご苦労様です。何か、要望は有りますか?》
「この状態は、まだ秘匿しておきたい。情報の範囲は最低限が良い」
《分かりました、他には?》
「状況把握と、顔見せ」
《はい。結果、出ましたね、健康診断も問題有りません。ただ、定期面談をお願いしますね》
「うい」
《1日1回、いつでも構いませんので》
「先生の良い時間帯は?」
《暗い時間帯でお願いします》
「はい、ありがとうございました」
処置室で着替えを終え、浮島へ。
先ずは淡雪を出し、魔力を注ぐ。
不安ではあったが、再び綺麗な花と共に現れた。
《成功したわねハナ、愛してる》
「うん、良く頑張ったね、ありがとう」
《ゆっくりは、休めないのね》
「うん、2月14日に現れたって、今は2月20日」
《居なくなったのが、12日よね?たったの1周間なの?》
「ココではそうみたい」
《大丈夫、私が証拠》
「うん、死なないでね」
『ハナ、温泉に入って』
「うん、スクナさんだよ、コチラ淡雪」
《宜しくお願いね、他との自己紹介は自分でするわ、行ってらっしゃい》
「うん」
《にしてもじゃ、随分と疲れた顔をしおる》
「ドリアード見たら、少し安心したかも」
《もぅ、嬉しい事を言いおって》
『先ずは飲んで』
「うん。オパールみたいな青い温泉に入ったよ、綺麗だった」
『メタケイ酸の温泉かな、ほら』
「これ、ありがとう」
《ほう、美しいのぅ。じゃが、クエビコには声を掛けてやらんのか?心配しておったぞ?》
「あ、うん。クエビコさん、応答願います、どうぞ」
『無線機か、懐かしいな』
「なんか、まだ、夢みたいだ」
《ワシらもじゃ、ずっと探して居ったんじゃよ》
『だな、誘拐も疑った』
「大騒ぎよな」
『あぁ、まさか更に異世界に飛んでいるとは』
《じゃの、珍しい事じゃて》
「他にも有ったのね」
『そう言っていた者は居た』
《まぁ、今回はモノが有るんじゃし、どう考えても本当じゃろう》
「真偽不明なのか」
《発見されて直ぐに3日間の失踪じゃ、2周間程異世界に居たと、だがその者はストレージすら無くてな》
『なんせ大戦前の伝聞、精神鑑定もままならん時代だ』
「他は?」
《言わんかった理由はソレじゃよ、妊娠して帰ってきおったりな、まぁ大変じゃった》
『あぁ、異世界と分からず過ごした者も居たらしいが、移動は1回だけだ』
「共通してる所は?」
《優しい子らじゃって、そう力も無かったの》
『そう噂を聞いたが、居着くでも無く、帰ってしまっていたな』
「種の運び手かしら」
『あぁ、運び手か』
《有り得るかも知れんが》
『共通するのはそれ位かと思ったが、どうだ、変化は有ったかスクナや』
『うん、魔力量が増えてるし、雰囲気も変わった』
「男だし、ボーッとしてるだけじゃよ、大丈夫。そろそろ、ミーシャから話しを聞こうかね」
《ミーシャやー、呼んでおるぞーぃ》
「う、あ、はい」
「ワシじゃよ、嫌か?」
「嫌じゃ無いです、でも何故」
「居心地が良くてな」
「全然、違う人みたいです」
「まぁ、性別が違うし、無理なら変える」
「違くて、しなくても良いです。はい、特に動きも無いです」
「何も?例の国に接触しそうだけどな」
《勘が良いのぅ、マサコからの情報で把握はしておる》
『接触は有ったそうだ、少し前にな』
「それだと、どれで帰還出来たのか分からんな」
『先程、種の運び手と言っておったが』
「ストレージに冷凍庫が有る、その中に」
《おうおう、面白い事が起きたのぅ》
「桜木様」
「ワシは何もしてないから大丈夫よ、担い手の可能性を向こうで指摘されて、揃えて貰っただけ」
《じゃが、どう取捨選択したんじゃろか?》
《関係者から採取されたモノです》
「へー」
《へーって、何も知らんのか》
「おう、採取出来なかった人間しか把握しとらん」
『採取出来なかったとは一体』
「ウブで」
《くふふふ、ウブじゃからとな、まさか未成年は絡んで居るまいな》
「30近い」
《ふぉー、なんとウブじゃろか、たまらん》
「ね、ワシの嫁さん。また、戻る事になるかも知れん」
《そうか、好いておったか》
『すまんな、また呼び寄せてしまったらしい』
「いや、好きかどうかは分からんのだが」
「あの、嫁って、お相手は男なのでは」
「おう、女体化して妊娠予定。ココと時間軸違うみたいだし、もう妊娠出来てるかしら」
《あー、シオンはウブでは無いのか、残念じゃ》
「いやいや、バリバリのウブですお。取った玉から注射器で取った」
『取って、採った、と』
《なんとまぁ痛々しい事を》
「そしてまたくっ付けた、片方だけ」
「なぜですか」
「事情が色々有るのよ」
「そうでしょうけど」
「話し戻すよ。どういうスタンスなの、国の状況は」
《我の圏内は常時臨戦態勢じゃ、常に迎撃システムを稼働しておる》
『我が国も同様の状態だな』
「武光様は中つ国で待機、エミール様も同様に欧州での待機となっています、そして小野坂様も」
「そうだ、何でココにミーシャが」
「排されました、ノウハウの共有が完了したので」
「あぁ、お疲れ様。ごめんね」
「いえ」
《赤くなるか、まるで小娘じゃのぅ》
『色男だ、仕方無い』
「そこまででは無い筈なんだが、そうか、魔力が主なんだっけ」
「お顔は、嫌ではないです」
「ありがとう」
《ふぉー、久し振りに楽しいのぅ》
『寂しかったぞ、良く無事で居てくれた』
「怪我しまくったって言ったら、ショナに怒られそう」
「戦われましたか」
「まぁ、ちょっとだけ。そして普通の人間に、魔剣出しても普通に負けた」
「そんな強いですか」
「ワシの素体が弱いだけ。そうだ、皆に会えないかね」
《マサコには会えんよ》
「なぜに」
《まだ候補は外れとらんのじゃし》
「あー、しかも神殺しだしな。他は大丈夫なの?」
《行くなら、今のウチじゃな》
『動かせるか、スクナ』
『無理しなければ』
「ぶっ倒れてでもコレはする、頼む」
『分かった、配慮はするが』
《よし、準備じゃな》
「変、身」
『流して行って、髪が少しキシキシするだろうから』
花子になり、全身を流し、お着替え。
お洋服をお披露目しつつ、スクナさんと淡雪とクエビコ杖と共に、先ずはエミールの元へ。
《淡雪です、第2世界から参りました、宜しくお願い致します》
《まぁまぁ、可愛らしい子、どうか祝福を》
『おう、元気だったみたいだな、めかし込んで挨拶周りか』
「おう、可愛いだろう。心配かけたね、エミール」
『いえ、お元気そうで安心しました』
「そこで1つ、ワシは何色で、どんな武具のイメージだろうか」
『え、あ、緑色で』
「手を貸して、緑色で?」
『それで』
「お」
《あら》
『凶悪な面構えの銃だな』
《エレファントガン、らしいんじゃが》
『違うんです、強いって思ったら、コレが』
『魔道具、しかも魔剣の類か』
「おう、コレはエミールの、あげる」
《随分と消費したのうエミール》
《泉へどうぞ、エリクサーも》
「すまんね、エミールのを使って欲しいと願った。馴染んで欲しいから」
『ありがとうございます。僕より、ハナさんは大丈夫なんですか?』
『どうだスクナ』
『うん、補佐的に使っただけらしい、ハナは大丈夫』
「じゃあ、タケちゃんとこ行くから、またね」
『はい』
次は中つ国へ。
上空へ移動し、羽衣で仙人島へ着陸。
「天女かと思ったぞ」
「羽衣がね、ご心配お掛けしました」
《淡雪です、宜しくどうぞ》
「おぉ、妖精か。俺は李武光、ハナを宜しくな。元気そうで良かった」
「おう、手を貸して」
「おう」
「ワシは何色で、どんな武具のイメージか」
「白だ、そして盾」
「お花の盾って、可愛いなおい」
「おう。で、コレはなんだ?」
「タケちゃんの、タケちゃんを守るモノ」
「ハナにと思ったんだが、分かった。使わせて貰う」
「おう、じゃあね」
「おう」
そして浮島へ。
一服。
『それも、少し作らせるか』
「頼む、下界はどうなってる」
『まだ混乱している、人々は外出を控え、怯えている』
《じゃが、例の国は別じゃ、行動があからさま過ぎる》
「アホやなぁ、ほぼ敵で確定なのに」
『そう思うか』
「3の世界でイメージがチラ付いてた、で、目の前にして確信した、そうなるっぽいって」
《どんなのじゃ?》
「言わん、言ったら具現化しそうで嫌や」
『そうだな、言霊と言うモノもある』
「よし、覚悟した、馴染んで来たぞ。皆に会うべ」
『省庁だ、迎えに行ってやれ』
「うい」
ベールを付け、省庁裏手に向かうと、外でずっと待って居たらしいアレクが居た。
魔道具らしきコートは羽織ってるが、ウロウロしてる。
「なんか、凄く、久し振りな気がする」
「今だけしか許さんぞハグは」
「うん」
「で、どんな感じ」
「皆待ってる、何で会えないんだろうって」
「心の切り替えが、準備が必要だった」
「うん」
「もう良いかね、皆にも会わないと」
「おう、ココで待ってる」
魔王そっくりな笑顔。
今見ているのに懐かしい感じ、不思議。
そして玄関先で待っていたのはショナ。
本当に久し振り。
「ちょっとツネって良いか、現実か不安で」
「僕もです、ベール取って貰えます?」
「はい」
「つねらないんですか?」
「口開けて、仙薬あげる、向こうの」
「はい」
「ほい」
「っ、また、違う感じの、凄い、味で」
「懐かしいしか出ない、4ヶ月、異世界まみれだったのよ」
「お疲れ様です。概要だけ、少し聞きました」
「はー、何か安心するわ」
「安心頂けて何よりです」
「おう、次は柏木さんかな」
「はい、ご案内致します」
やっと帰って来た気がする。
何だろうな、不思議。
「お久しぶりです、桜木様、お元気そうで」
「ご心配お掛けしました、無事です」
「桜木様のせいでは無いのですから、どうかお気になさらず」
「どうも。それより、どうなってますか」
「例の国に使者が、そしてそれ以外には接触も動きも皆無です。国民は怯え、外出禁止令は出て無いのですが、人の動きは少なくなっております」
「召喚者が居ると知らせては?」
「はい、各国の放送にお3方と、勝手ながら桜木様の影武者に、表に出て頂きました」
「おぉ、影武者に会いたい」
「蜜仍君ですよ、良い働きをして頂けました」
「ひぇー、今何処に?」
「里に帰っております、なんせ」
「ワシが居ないからか」
「はい、監督責任者でも有りますので」
「あぁ、迎えに行ってきます。他に知るべき事は?」
「出来ましたら、国民を安心させるべく、いずれは表に出て頂きたいのですが」
「このベールで良いなら」
「はい、是非。可愛らしい衣装でらっしゃいますね」
「オートクチュールです、なので恩返しにと着てますが。初夏と夏用なのよねぇ」
「お仕立てをお願いしては?」
「あぁ、迎えに行ったら行こうと思います」
「はい、お気を付けて」
ショナとアレクを伴って、裏口から里の入口へ。
ベールを外し、小屋をノック。
《はいはい》
「蜜仍君を、迎えに来ました」
毎回、ココのお爺達は初めて見る様な態度をするから、不安になるのだが。
今回は奥から蜜仍君が飛び出して来た。
「桜木様、会いたかったです」
「今だけしかハグは許さんよ」
「お元気ですか?魔力切れは?嫌な目には?大丈夫ですか?」
「可愛いな、可愛いまみれか、大丈夫じゃよぅ」
「もー、ずっと待ってたんですからね」
「ですよね、長にも会おうと思うんだが」
「はい、ご案内致します」
竹藪をダッシュで抜ける蜜仍君に付いて走る、そして勢いのまま長の元へダイブ。
《おぉ、羽衣を使いこなしているな》
「おう、ナイスキャッチ」
《そして何か、良い匂いがするぞ》
「神殺しだからか、電界か」
《あぁ、両方だろうか、結婚しよう》
「重婚して良いのかね」
「へ、桜木様、結婚しちゃったんですか?」
「第3世界で、なんか、結納の形を取らされて、嫁が妊娠予定」
「へぇっと、お嫁様が?」
「淡雪、ご挨拶を。それと説明を、ソラちゃんもお願い出来る?」
《どうも、淡雪です》
《タブレットを活用させて頂きます》
「宜しくどうぞ、ワシはエリクサー飲んどく」
《では、順を追って説明致します》
第2世界。
冬のフィンランドで目覚めた事。
そこには魔獣がおり、僅かばかりの神々が支えていた。
そこで帰還方法を探し、いくつかの魔道具をゲットした事、妖精と出会った事、ロキを殺し、教会本部で天から授けられた衣装に着替えて直ぐ、更に世界を移動した。
第3世界。
瞬き1つで転移が起き、新興宗教団体の本部の祭壇に出現。
神と勘違いされるがままに、回復させた信者と共に教団を脱出。
以降、都心の警察庁本部へ行き、そのまま警察関係に所属、各国へ赴き魔素の循環を成立させ、帰還。
「そこに、どうお嫁様が?」
《循環の装置になる運命の、身柱を救うべく、子種を冷凍保存にて残されました。結納は神々の願掛けと配慮かと》
「それなりに神々が居らしたんですね」
《接触した神々のリストです》
「恵比寿様だぁ」
「寿老人様もですか」
《褒美にと衣服を頂きました。頂いたモノの一覧もどうぞ》
「コレはちょっと、凄いですね。何をしたんですか桜木さん」
「エロエロ」
《ほう》
『こら、誤解させては可哀想だろうに』
「クエビコさんは、もう、そうか」
『警察案件の解決、各国への繋ぎ、竜の孵化も有るだろう』
『竜ぅ』
「クーロン居なかったから、宇宙に行ける竜を探すの大変だったのよ、マジで」
《大気圏外にて、膜の切開、魔素の循環を成立させました》
「それを、数ヶ月でですか」
「大変でしたよね?本当に大丈夫なんですか?」
「おう、早く帰りたくて、でもたった1周間しか経って無いの、はちょっと驚きだわ。それで心の整理が出来なくてね、会えなかった」
《そうか、何が、1番怖かった》
「この世界に捨てられたのか、帰れても戦後だったらどうしようって怖かった。後は幽霊」
「桜木様、幽霊が見えるんですか?」
「1回だけ事件の時に、怖かったわマジで、女子高生の幽霊」
「大丈夫ですよ桜木さん、ココでは限られた方しか見れませんし」
「見えたく無いんじゃが」
「この、お地蔵様って、観音様の事ですよね?」
「ぽい、夢でね」
「ドリームランドでは?」
「違う、夢だった。前日辺りに、お寺でそれらしきお方に遭遇した、亡くなった小さいお子さんをお救いになってた」
「それも、見えちゃってますよね?幽霊」
「あ、2回だったわ。はい蜜仍君、見えるっぽい眼鏡」
「わぁ、ん?何にも見えませんね」
「ココには居ないんじゃね」
《居て貰っては困るよ、供養はしっかりしているのだし》
『だな』
「ですよねー。はい、ありがとうございました」
「事件目録も有りましたけど、良く過労死しなかったですね、警察庁に警視庁、夜勤もだなんて」
「悪い見本が近くに居りましたもんでね。ちゃんと休んだ?」
「休みましたよ、それなりに」
「はい嘘ー、嘘が分かる魔道具でーす」
「ちょっ、外して頂いてても良いですかね?」
「なに、なにが問題か」
「いや、業務的に、問い詰められたら困る事も有るかもなので」
「この1週間なにしてた、はい、従者達よ報告」
「俺はずっとココで鍛錬してた」
「僕も、修行して待ってました」
《ショナ君はなぁ、まぁ、許してやってくれ》
『だな。ミーシャは意外にも、きちんと魔法の練習をし、待って居たぞ』
「ショナ君以外は訓練へ戻ってどうぞ、長も」
『クーロンも居る』
「良いよ。ショナや、話しを聞かせて貰おうかね」
「はい」
「はい」
「……探して、回ってました」
「前例が有るのは知らんの?」
「聞かされましたし、捜索隊も出ましたが。第2の地球が現れたので、捜索隊は解散したので」
「どうやって回ったの」
「えーっと」
『ごめんなさい、もう1個の地球が現れるまでは訓練してたの。だけどクーロンが一緒に探そうって言ったの、ごめんなさい』
「はぁ、じゃあ仕方無い」
「すみませんでした」
『訓練しなくてごめんなさい』
「良いよクーロン、じゃあ訓練に行きなさい。ショナ君は、手を出せ、そしてワシの色と武具をイメージしなさい」
「ピンク色で、大太刀でしょうか」
『桜色の大太刀か、美しいな』
「何で大太刀なのよ」
「凄いなって、思ってなんですけど。コレは?」
「コレは君の魔剣です、大事にしなさい」
「え、でも」
「等価交換は、一生言う事を聞く事。先ずは仙薬を溢れる程飲め、苦しめ、罰です」
「はい」
『名でも付けるか』
「やっぱり、桜花ですかね」
「ニヤニヤして、マジで反省しなさいよ」
「はい、ありがとうございます」
「で、コレを飲んでもまだニヤニヤ出来るかな」
「すっ、ごい、お味で」
「おう、溢れたら魔石で吸い上げてやるから、じゃんじゃん飲め」
「はい、頂きます」
「口直し無しな」
「んー」
「頑張れ、ワシも酸っぱいの飲むんだから」
気付けのツモリで一気飲み。
噎せない様に上手に飲まないと、吹き出す。
ショナはコップ2杯、3杯、まだ飲めるか。
『ふむ、少し様子がおかしいな。スクナや』
『魔剣を得て、倍になったらしい』
「おぉ、地獄が続くか、ウケる」
「んな、こと、有るんですか?」
「魔法は何でも出来るからね」
『そうだな』
『うん、頑張れ従者』
「はぃ」
結局1㍑を飲み干し、大太刀から魔素が溢れ出した。
どんな原理やねんな、循環の摸倣か。
「まぁ、便利か」
「桜木さんの意図では?」
「さぁ、何も考えて無かったし」
『願いが干渉せず、良い様に作用したのかも知れん……来たか土蜘蛛、やはり興味をそそられるか』
《うん、良いなぁ、触っても?》
「無理だと思うよ」
「凄い、花弁が。でも、何処に?」
「ショナの中かと、胸に手を当てれば」
「本当だ、凄い」
《欲しい、全部欲しい、結婚して》
「蜜仍君にもやるから落ち着こうな」
《嬉しいけど、君は、大丈夫なんだろうか?》
「まぁ特に、補佐だし、スクナさん居るし。ただ、色が被らないのが前提なんだわ」
『ふむ、一応の制約は有るんだな』
「制約と言うか、お約束ね」
《じゃあ、蜜仍を呼んで来るかな》
「貰っておいて何ですけど、良いんですかね」
「タケちゃん達にも配ったから大丈夫、因みにエミールはエレファントガン」
「エレファントガンって、対戦車ライフルですけど」
「ほぅ、ドリアードが言ってたが」
「大太刀でも取り出すのが大変だったのに、よく出せましたね」
「普通に後退ってたわ、ピヨピヨと、可愛かった」
「桜木様ー、何でしょ」
「ワシの色と武具のイメージ教えて」
「んー、黒でー」
「お手を拝借」
「わぁ、柄が長いですけど」
「おぉ、デスサイズの、変形大鎌やんな」
「魔剣?魔鎌?」
「まぁ、そんな感じ、あげる、大切にしてくだせい」
「ありがとうございます、家宝にさせて頂きます」
《どれどれ、今度はどうだろうか》
「残念でしたー」
《なら、ハナはどうなんだろうかね》
「持てて欲しいんですけど」
「試すか。蜜仍君、流れに身を任せて下さいな」
「桜木さんでも出せるんですね」
「凄いぃ」
「よし、成功」
《実に倒錯的で良い、結婚しよう》
『この事象、説明出来るかハナ』
「ワシがベースだから、ワシも使えるが。ワシが死んでも消えない筈」
「それでも死なないで下さいね、桜木様」
「お願いします」
「勿論死なんよ、ショナはアレク呼んだら訓練で」
「はい」
「蜜仍君はエリクサーな、美味しいのをどうぞ」
「ありがとうございますぅ」
土蜘蛛さんは拗ねてるのかゴロゴロしてる、そう言えば影で皆を呼べるだろうに。
まぁ、良いか。
「来たけど、武器?魔道具?」
「ワシの色と武具のイメージを、どうぞ」
「白で、この体のサイズだけ?」
「いや、そこはご想像にお任せで」
「確か、こんな風にしたって」
『長鞭か』
「この格好は真似せんで良かったんだがね」
「僕のはデスサイズって言うんですよ、良いでしょう」
「ココの字も、知識も無いから困るんだけど」
「白虹、とかどうです?」
『太陽や月に浮かぶ光輪、良く学んでいるな』
「へー、凄いなぁ、偉いねぇ、蜜仍君」
「えへへ」
『お前も勉強せねばイカンぞ、仔犬や』
「する、白虹にする」
「後は、白雨か」
《1番弱いからねぇ、扱えるかな》
白雨は影から、真面目に訓練してるのか、弱いのか。
もうボロボロ。
「白雨、ずっと訓練してたのか」
『弱いから、足手まといだけど』
「でも何か、良い武具が有れば強くなれるかも知れないとしたら、なに」
『んー』
「手を貸して」
『出ぬか』
「じゃあ、ワシに似合う何か、もう何でも良い。願いでも何でも、何か無いかね」
『指輪、戦わなくても良い様になって欲しい』
「ちっさい、ピンキーリングか」
《青いのは魔石じゃないか?大丈夫か?》
『スクナや』
『ちょっと危ない、戻ろう』
『すまない』
「大丈夫、何でも良いって言ったし、元が少ないのは仕方無い。じゃあ、頑張りなさいな」
『うん』
「あ、酸っぱいの置いてくから、じゃあね」
「僕がお送りしますね」
少しずつ削られ、最後に大きく減ったらしい。
2人は極端に魔力容量が少ないのを、完全に忘れていた、失敗した。
今度はユグドラシルへ。
《淡雪です、宜しくお願い致します》
『あら可愛い子、私はエイル、宜しくね。ハナ、お帰り』
「ただいまです」
『さぁさぁ、遠慮せずに、どうぞ』
エイル先生の横で、泉に浸かりエリクサーをがぶ飲み。
無心で一気。
《何日掛かるかのぅ》
《頑張れば、前は1日位でいけたのだけれど》
『膜は問題は無いんだけど。もっとこう、効率的にいければ良いんだけけどね』
「コレでも充分、2は魔素が少なかったし」
《食事と、エリクサーじゃったか?》
「うん、食事と在庫のエリクサーをね」
『それそれ、エリクサー作っとくわね?』
「うん」
『お、釜の封印が解除されてる、向こうの私?』
「うん、3の」
『似てた?』
「全然、お淑やかで控えめだった」
『ふふ、猫被りしてるのを見られちゃったかぁ、ふふ』
「えへへ」
《色々と有ったんじゃろうなぁ》
『まぁ、言いたくなるまで我慢だな』
「別に、クエビコさん知ってるんだから、話しちゃって良いのに」
『いや、コレはワシなりの守り事、義理立てとも言うかな』
《格好付けおってからに、我は殆ど知らんと言うのに》
『大概の事を知っているんだ。偶には知らん事が有っても良いだろう』
《ふん》
『美味しかった話しは?』
「最後に食べたのはねぇ、アジサンドかな、パン柔らかめの。死人ロキの経営するホテルで」
『は、死人?』
「クエビコさん、コレは頼む」
『ラグナロクが起きヘルヘイムに居ったそうだが、ヘル神が領地を広げた際に、ウッカリ日本の黄泉と繋がってしまったそうだ』
《じゃからって、許可してしまうものじゃろか》
『スサノオが許可したらしい。確かに、コチラのもしかねんしな』
「クエビコさんはねぇ、雌のヒメサカキだった、しかも幼女」
《ほぅ、ほうほう、今日は美味い酒が飲めそうじゃな》
『小さきものは、何でも可愛いものね』
一気、ずっと一気飲み。
ちょっとしんどい。
「飲むの、飽きた」
『食え食え、そう飲んで満たすは不健康だろうに』
『お肉ならすぐに持って来れるけど』
「お肉食べる」
そこからは食っては飲み、食っては飲み。
固形物が腹に溜まり、漸く眠くなってきた。
《ねんねか、良い子じゃ》
「ちょっとだけ」
いつもと変わらぬ家。
そしていつもと変わらぬマーリン。
『お帰り』
「本物か、本物のマーリンか」
『どう証明する』
「んー、困るな確かに」
『それと、中庭の』
「72柱さんの一部が、どうしてココに?」
『それは私が説明しますね。どうも、コチラのソロモンです』
「すみません、ご挨拶が遅くなりまして」
『いえいえ。私もこの子達も、同じ名を持つ者に同調し、残滓に惹かれてこの場に現れる事が出来た次第ですから』
「ご迷惑をお掛けしまして」
『とんでもない、求められるのはもう、本当に久し振りですから、素直に嬉しいですよ』
「んー、マーリン、どう思う?」
『もう、魔王候補を降りるのは諦めてるんだろう、なら良いんじゃ無いか』
「ですよね。お願い致します、ただ魔力は暫くお待ち下」
『大丈夫ですよ。先ずはアナタと、他の私達との思い出を見させて頂くだけで、充分ですから』
「はい、では映画館で、宜しくどうぞ」
『じゃあ、少し上に上がるか』
2階に上がると、窓辺で膝枕をしてくれた。
何で優しいのかしら。
「なんか見たのか」
『偽物の俺の、綺麗な悪夢達』
「あぁ、踏み入られた。でも食い破られたしチャラよ」
『そうか、死ぬのはズルいな』
「ね、しかもワシが泣けなかったのが予想外のエラーで、それで、なんでワシなのよ」
『出来そうだからじゃ無いか、現に、成したんだし』
「なんで、出来るって分かるんかね」
『どうなんだろうな』
「あー、分かれば苦労しないよな」
2階から見る空には、既に第2の地球は無い。
あるのは青空だけ。
『面白い話が入った、お前のあだ名。魔道具製造機』
「どこが言ってんの」
『大罪国』
「あぁ、酷い名前で呼ぶなぁ」
『向こうが先だ』
「可愛い仕返しでらっしゃる」
『何で戻った、危なくなるかも知れないのに』
「少しは役に立てないかね?」
『それでも、安全な場所には居れただろう』
「結構危ない所だぞ?循環に巻き込まれて消えちゃうかもだし」
『他の人間を差し出せば良かっただろう』
「そこまでしたく無かったんよ」
『ならココでは意地汚く、生き残って欲しい』
「あ、マーリンは大丈夫なのかね、本体」
『ユグドラシルと同じ、狭間に有る。ただ、地球が終われば消える』
「頑張らんとな」
『そんなに頑張らないで欲しい』
「生き残るは最優先、大丈夫、問題無い」
『お邪魔したいんだけど?』
『本当に邪魔だな』
「ロキ、なに」
『いやぁ、シバッカルがまだかって』
「だけか?」
『下の子達、ヘルに紹介したいなって』
「おう、ならマインドパレスに行きましょか」
『俺は良い』
「ありがとうね、じゃあね」
部屋から出て階段を見ると、木の階段の先が白い大理石に繋がっている。
その階段を降りると、ひんやり冷たい空気が流れ始めた。
大理石の床に降りると、消毒液の匂い。
そしてココのヘルとシバッカルが談笑していた。
『中々の庭じゃろ』
《本当に凄いわね、何でも有るもの》
『おまたー』
「お久しぶりです」
『おう、何人ものワシと会った様じゃな』
『俺も3回、良いでしょ』
《私は2回だけなのよね、残念》
「それでロキを1回殺した、オーディンさんも1回」
《偉いわハナ、最高よ》
『違うモノとは言え、よく知り合いを、顔見知りを殺せた。偉いぞ、うん、良くやった』
『向こうの俺も喜んでるよ、きっと』
「優し過ぎでは?」
『お主は成すべき事を成しただけ、平和、人々、誰かの為じゃろ』
《見殺しでも何でも、ハナが自分の為だけにした事だなんて、絶対に思わないわ》
『まぁ、俺に関しては、例え君の為だけだったとしても、俺は許しちゃう』
《私も、なんせロキだもの。きっと禄なモノじゃ無いわ》
『何処へ行っても、悪名高いトリックスターじゃし』
『例えココの俺よりちゃんとしてても、君に殺されたんだから。向こうの俺が悪いに決まってる』
「詳しく話して無いのに」
『妖精の淡雪、あの子は良い子だし。そもそも詳しく聞かなくたって分かるもの、周りに居るモノ、今までしてきた事、貰ったモノ、皆に上げたモノ』
『それで充分じゃろ?』
《大丈夫、分からず屋が現れたら教えて頂戴ね、しっかり、教えて上げるから》
「なんか、ありがとうございます」
『それと、映画館もう2つ作らんか』
《2と3ね、お願い》
『カットしまくってダイジェストになっても良いから、ね?お願い、何でもするから、前借りでお願い』
「何でも?」
『するする、何でもする』
《死ねって願うのもアリよ?》
『それはちょっと勿体無いが、まぁ、仕方無い、ウザいじゃろハナ』
『あれ?シバッカルちゃんそんな?君には何もしてないよね?』
『毎日ココに押し掛けといて言うセリフか?しんどかったぞ?』
《もっとハッキリ言わないと、ウザい、面倒って》
「そんな通い詰める事が?」
『お主が何処に居るか探れと、そしてどんな夢を見ているかと。まぁ、実に曖昧な情報しか掴めんかったんじゃがな、何処かで生きて居るとは感じていた』
「繋がってる?」
『勿論じゃよ、夢は何処にでも繋がって居るでな。そして内容を教えたのはロキだけじゃ、生きては居ると。なのに、毎日確認に来おる』
『良いじゃん、どうせ暇でしょ?』
『それとコレとは話しが別じゃよ?暇でも毎日来るとか有り得んからな?』
『なんで?』
《ごめんなさいねシバッカル、もっとハッキリ言って良いのよ?》
『まぁ、それはな、うん。少し話しを戻すが、ワシからも頼む、ちょっぴり見させてくれんかの。お主が死ねば映画館も閉鎖させるで』
「いや、死後も見られて良い範囲なら別に、どうぞ」
《ありがとう。どうぞロキを好きにして頂戴》
『何する?世界征服?』
「平和になったら引き籠り」
目を覚ますと、オヤツの時間。
なに、マジで食いしん坊万歳。
『あら、大丈夫?』
「日本時間でオヤツの時間に起きる体になってて、ココでもかと」
『どう言った体質、いや、加護なのだろうか』
《オヤツか、何か向こうのモノは無いのかの?》
「はい」
《ふぉおおお、異界の酒じゃぞ!》
『バクラワも、最高なんだけど』
『良いのか、向こうの思い出でもあるだろうに』
「それは残して有るから大丈夫」
『お茶を淹れるわね』
《頂くぞーぃ》
『遠慮せんなコヤツら』
「こんなのも有る」
『え、蜂蜜酒じゃない、え?宴会する?トールも呼ぶわね?どうしよ、不公平は良く無いし』
《呼べるだけ呼んでしまうと取り分が減って困るわけじゃし》
『ちょっと落ち着くのはどうだろうか』
「あぁ、唯一無二だもんな、一応。国の機関に回すべか」
『勿体無いぃ』
《だが、美味い酒の量産には仕方の無い犠牲じゃ。少しだ、出来るだけ少量で解析させるんじゃ》
『懇懇と冷静に言う所がまた恐ろしいな』
「なら、見せびらかすだけのモノをおば」
『綺麗ね』
《愛らしいのぅ、よしよし》
『虫は嫌いでも、コレは良いのだな』
「虫じゃ無いもの」
『そこは治らなかったのね』
《まぁ害を成すのも多いで、近寄らぬのが1番じゃしな》
『それには同意だ。ハナ、省庁に行くか?』
「おう、行く、ついでにトイレも行く」
『じゃあ、点滴を足しておきましょうね』
満タンの点滴と共に省庁へ。
そしてリズちゃんの元へ。
「お久しぶり」
《どうも、淡雪です》
「おう。ハグは嫌いだったんじゃ無いのか」
「人間の成人以上限定でダメ」
「あぁ、で、なんだ」
「色々と向こうから持って来たから、それの提供に」
「あぁ、じゃあ向こうだ」
ガラス越しの容器に、空間魔法でモノを収める。
お金に食べ物、そして例の冷凍庫も。
「なんか、感想無いの?」
「何をどう、お前と話したら良いか分からない。関わった人間のリストだけでも結構有るのに、それと別れてきたんだろう。前ですら未婚で死んだ俺に、何が言えるよ」
「ドリームランドでいつか繋がれると期待してるから大丈夫」
「それでもだ、もうお前は子持ち(仮)なんだ。俺には何も、禄な事が言えん」
「拗らせんなよ、子供も確定じゃ無いんだし。ココに帰って来てるって事は、子供無しでも意外と平気なのかも知れんし」
「1人で、良く頑張ったと思う、本当に」
「ソラちゃん居たから1人じゃない。あ、解析させたよ、義体」
「おう、知ってる。メンテナンスしたい」
「資料読むの早く無い?」
「俺用のだから、ん?お前が個別に指定したんじゃ」
「無い無い、ソラちゃんが勝手にやってくれた。めちゃんこ優秀、天才、偉い、最高」
《ありがとうございます》
「人形、欲しい、観察したい」
「ダメ、ストックが無い。フィンランドに挨拶に行くべきとは思うんだが」
「あぁ、先方には言っておくが。先ずはメンテナンスだな」
「おう」
義体メンテナンスと並行し、提供品のスマホや携帯からもデータ抽出。
マンガを持って来れたのは、かなりの収穫だと思う。
「コレは終わった、返す」
「マンガ持って来たのえらくね?」
「だな」
「冷たい、疲れてる?」
「いや、不思議な位に落ち着いてる。お前が帰って来て、居てくれて安心する事が、情けない。年下の女子に業を背負わせるかも知れんなんて、全く情けない」
「戦争確定じゃ無いんだし、普通にしてくれないと生理痛を味合わせる」
「歳的にまだだろう」
「早期月経と言うモノが有ってだな」
「ごめんなさい、無理です」
「どっちが」
「どっちも」
「ダメ、心の憩いを年齢と性別を理由に奪うのか、最低だぞ、差別だ、パワセクハラだ。良いのか、男に性別変えたまま戻さんぞ」
「俺なんかと仲良くしないで、もっと、他の人間とだな」
「捨てるのね、酷い」
「もう、誰とでももう、仲良く出来るだろ」
「いやか?年下女子はいやか」
「お前はもう大人なんだ、普通に恋愛して結婚するのが普通だろ。俺は、早くお前に普通になって欲しい」
「気を使ってくれてるのね」
「あのな。昔なら、赤紙が配られたら筆下ろしなりするんだ、だから今は、お前の邪魔をしたくない」
「友達も居たらダメなのか」
「ただの転生者なんだ、もっと選べるだろう」
「リズちゃんを選んでる」
「偶々だろ」
「偶々でも、選んだは選んだ。ただ、嫌ならいい」
「嫌とは言ってないだろ」
「嫌と言い辛いのか」
「嫌じゃない」
「なら良いじゃんか、何なら今度からは男で会おうか」
「それは、まぁ、任せる」
「お試しな」
「おう。他のは結構データ量有るな、時間が掛かりそうだから休んどけ。連絡する」
「おう」
省庁からユグドラシルへ。
そして泉に戻り、エリクサーを一気。
じれったいのか、エイル先生がスクナ先生やら何やらと相談している。
『魔石、使いましょ』
地の魔石で回復。
泉にミード蜂蜜を流し込み、魔石を漬けて回復させる方向へと転換された。
魔石の沈む泉には、多重結界。
堅牢、ワシでも解錠に時間が掛かりそう。
《数日中には回復するじゃろう》
『さ、やっと自由よ。満タンになったら教えるわね』
「ふぇい、お世話になります」
『では、浮島に一旦帰るか』
そして浮島へ。
一服。
「はぁ、コレから虚栄心、フィンランドか」
『もう急ぐなとは言えんが、己の都合の良い様に動いても構わんだろうさ』
「なんか、前の方が忙しなかったよな、気が緩んどるんかな、ごめんよ」
『根を詰める心配が無いのは助かる、前は異常過ぎたんだ、気にするな』
「落ち着く、落ち着いたクエビコさん落ち着く」
『下手に焦がさんでくれよ、柄を入れるならしっかりしたのを頼む』
「うい」
そして単独で虚栄心のお店へ。
顔を見るなりハグ。
「元気そうね、良かった」
「うん、服を見せびらかしに来た」
「まぁ、まぁまぁ、まぁ、良い仕立てね。刺繍も」
「感情で色が変わるらしい」
「そうみたいね、ふふ、それで、どうしたの?」
「ちょっと、先走って初夏用なのよね」
「なら、必要なのは冬や春用ね、うん、良いじゃない、良いデザイン」
「お願い出来ますか」
「勿論よ、だってもう、作って有るんだもの。ほら」
お願いしようと思ってたモノが、既に目の前に有る。
しかも大量に、新品だし、仕立て糸付きの縫いたてもある。
「虚栄心と、心で繋がってたんかしら」
「コレ、アナタの案なのね、嬉しい」
「原案だけ、もうハグ禁止」
「ケチ」
「おう。どうしてこんな量を?」
「だって、不安だったんだもの、何かしてないと、凄い、ソワソワして落ち着かなくって」
「じゃあハグ解禁」
「ふぅ、怖いって、本当に久し振り」
「他のもかね」
「皆、出方が違うけど、反応はしてるわね」
「安心させる為に、表に出ろって言われてる」
「そう、着てくれる?」
「勿論、ただベールはするでな」
「うん、アナタの身の安全が第一よ」
「おう」
服を受け取り浮島へ。
そして着替えてフィンランド大使館へ。
ベール装着出来ないと、普通に恥ずかしい。
『お越し頂き、ありがとうございます』
「いえ」
『それであの、ロウヒ様とイルマリネン様なのですが、別々に居られまして』
「あぁ、はい」
『ちょっと、仲も良くなくてですね』
「何となくは存じております、気を付けます」
『はい、宜しくお願い致します』
ココのロウヒもイルマリネンも、前の世界と基本的には似た場所に住んでいた。
先ずはロウヒ。
初老の女性、綺麗。
そして風格も何もかも、大魔女に相応しい雰囲気。
「お初にお目に掛かります、桜木花子と申します」
《更に異界渡りをしたそうで、お疲れ様です。お座り下さい》
「はい、ありがとうございます。甘い物か何か、如何でしょうか」
《あら、大好きなのよ。ありがとう》
笑った顔は何だか懐かしい様な気もするし、何処か違う気もする。
それでも、同一視は良くないよな。
「どうぞ」
《あら、まぁこんなに、ありがとう。3つの世界の私は、どうだったかしら》
「全て違うお姿で、甘いものがお好きでした」
《ふふ、甘いモノが好きなのね、そう、ふふふ》
「はい。本当に、お世話になりました」
《ふふ、それで、私はどうすれば良いのかしらね?》
「ご挨拶をと思って」
《あらそうなのね、ありがとう。でももう行くと良いわ、ココは今、魔素が少ないの、アナタの体には良くないわ》
「ありがとうございます。失礼します」
《あぁ、甘いモノのお礼と、お土産よ。近くの木に飾って頂戴ね》
「すみません、ありがとうございます」
《良いのよ、じゃあ》
小さい木製の小鳥の像、少し青味がかった白黒ボディ、普通に可愛い。
続いては、イルマリネンの居る湖畔の家へ。
お孫さんか本人か、若い男性が迎え入れてくれた。
「お邪魔します」
『ようこそ、私がイルマリネンです』
「お、お若い」
『ふふ、向こうの私は老人だそうですね』
「はい、あの、お菓子はどうですか」
『甘いのをお願いしましょうかね』
「はい、どうぞ」
凄い違和感。
渋さ0、寧ろ瑞々しさ100%。
『ありがとう。それで、今回は?』
「ご挨拶をと、それと、ソラちゃん」
《前の世界で作って頂きました》
『あぁ、不思議な感覚だね。自分が作った事も無いのに、何故、どう作ったのかが手に取る様に分かる。ふふ、面白い、初めての感覚だよ』
「それと、コレを。その更に前のモノです、お会い出来ませんでしたが。お世話になりました」
『そうか、うん、本当に面白い。来てくれてありがとう』
「いえ、ただ、それだけです」
『何も、要らないんだろうか』
「何を望めば良いのか分からない状態なので、はい、すみません」
『こう、通信機の様なモノを作ったのだが』
「あ、それ凄い気になる」
『良かった、持っては居なかったんだね』
「必要ですはい、すみまんせん、どうも締りが無くて」
『落ち着いて居るなら良いんだ、戦いは冷静でないといけない』
「はい、そう思います」
『もっとこう、親しい感じで来てくれると思っていたのだけれど』
「すみません、若い方が苦手でして。前のはかなり、渋い、お祖父ちゃんみたいな方だったので」
『ならまた夏に来ると良いよ、冬はロウヒの力が衰え、私の力が漲る。そして夏は私の力は衰え老人となり、ロウヒが若返る。ココではそう決まっているんだ』
「そこを、詳しくお伺いしても?」
『そうだね、無線機を試しながらにしようか』
「はい、ありがとうございます。その、お酒とかは?」
『もうお菓子を貰ったから、今日はコレで充分だよ』
「あぁ、はい、どうも」
『どれも性能は同じだから、好きなのを選んでくれて構わないよ』
「はい」
小さく細いリングのピアス、部位指定が有り、耳の穴を隠す様な三角の隆起した軟骨へと穴を開けて貰った。
開口する口は柔らかく、小さな花の飾り付き。
普通に可愛い。
『じゃあ、残りは君へ。ココから離れながら試そうか』
「はい、了解です」
家を出て雪原を跳躍。
真っ白、懐かしい。
【聞こえてるだろうか】
「はい」
【うん、君の声も聞こえた。じゃあ、少し話をしようか】
「宜しくお願い致します」
【まぁ、大した話では無いんだ。ロウヒとは普通に戦争してね、そして人々の願いで、休戦状態となった】
「理由をお伺いしても」
【彼女と知り合い惹かれて、そしてより若い娘に行った。ただ、それだけだよ】
「はあ」
【まぁクソ野郎だよね、分かるよ】
「すみません」
【冬に老いる彼女が痛ましくてね、目を逸らしたんだ。そうして彼女の娘を娶り、作った魔道具を奪い返して逃げた。そこから大きな戦いになってしまった】
「でしょうね」
【そうして最後には彼女に首輪を付け、同時に呪いを受けた。私も同じ様になる呪い】
「あの、お嫁様は」
【図に乗らせてしまってね、苛めの仕返しに死んだ。もう1人は鳥に変えた、ね、クソ野郎だろう】
「はい」
【ふふ、本当にそうだよね。そうして互いに距離を取り、私はココ、ロウヒは向こう】
「和解は無いですか」
【罰だから、彼女に許されるまでは、このままで良いんだ】
「贖罪に?鍛冶の国で腕を振るわれては」
【そんな楽しい事、出来ないね】
「そうですか」
鍛冶の国に空間を開き、移動し、空間を閉じる。
【少し雑音が入ったけれど】
「コチラもです、今、鍛冶の国です」
『ぉお、良く戻ったな』
『見知らぬ物も結構有るぞ』
『少し、見せてくれんかね』
「見せても良いですか、イルマリネンさん」
【少し恥ずかしいが、もう君のモノだ、任せるよ】
「どうぞ、コレは今しがたイルマリネンさんから頂きました」
『そうかそうか、作っているなら何よりだ』
『来れば良いのに、律儀な男だ』
『な、地に縛られる呪いは無いと言うのにな』
『良く来たねハナ、無事で何よりよ』
「なんとか」
《淡雪と申します》
『あら良い子ね、私はベリサマ』
「この見た目で強いのよ、マジでヤバい」
『ふふ、良い子良い子、沢山貰ったわね、沢山成して来たのね』
「良いか悪いかは別ですが、色々しました」
『細かい事を気にする所は変わらないか』
『良い悪いは後の、しかも人間が決める事だ』
『そんな小さい事は気にするな、その時の、人間が良いと言うならそれで良い』
『ま、そゆことよ』
『それで、それを少し改良したいんだが、良いだろうかイルマリネン』
【どうぞ】
「良いみたい、どうぞ」
ピアスに小さな魔石が付けられ、更に電波が、電波?が安定した。
何の原理かは、もう考えないでおこう。
【どうだろう、何か問題は?】
「大丈夫そうです」
『元が良いからそう変わらないだろうが、空間魔法でのラグを解消した』
『周囲の声もクリアだろう』
『遠慮せず来れば良いものを』
【お気持ちだけで充分です、では、これで失礼致しますね】
「ありがとうございました」
『気にしいめ、色恋の問題は誰にでも有るだろうに』
『ココのはそう、誰も気にせんだろうに』
『まぁ、義理を通したいんだろう』
『まだまだ若いんだもの、仕方無いわ。で、他にも有るのよね?』
「うい」
衣服から魔道具、お菓子にお酒、おつまみを配る。
そして神々は、よもぎちゃんの様に道具に向かって何かを話したり、何やら返事をしたり。
神様同士で話し合ったりと、もう、宴会なのか会議なのか分からない状態になった。
《ふふ、コッチへいらっしゃい》
《相変わらずツルツルの髪の毛》
《良く伸ばしたわね、偉いわ》
服に合う様にと、髪型を作っては着せ替え、作っては見せられ。
そうして新たなセットが出来上がったのだが、何か増えてる。
「増えてる気が」
《だって、折角のお洒落だもの》
《そうよ、ちょっと補っただけよ、ね?》
《そうそう、ちょっとだけ》
『気にしたら負けよ』
《そうよ、細かい事は気にしないの》
《ちゃんとご飯を食べて休んで》
《また自由に過ごせば良いわ》
『そうそう。私も加わってくるから、ちょっと待っててね』
武具との対話、改造、改良。
デザインを邪魔しない様に必要最低限の手が加えられたり、そもそも特に変わらないままに帰ってきたり。
そしてあっと言う間に、全ての品物が帰って来た。
『第3世界の魔石はこう加工したが、どうだ』
「大きい球体のスノードームぅ、かわよ」
『非常時用だ、自然に割れる』
『割れないで飾っとけるのが1番なんだがな』
「ね、本当そう。他のも」
『ほれ、お前の好きな色を集めた』
『コレは、アレだ、お前の言う見守り君』
『2の世界のモノを使って、コチラ用に改良した』
《あら、ウチと被っちゃうわね》
《でも向こうは広範囲だもの、干渉しないわよ》
《そうね、主に使用する場所は違うのだろうし》
「ありがとうございます、コッチの、何か掛かってます?」
《ベールと同じモノよ》
《それにちょっと改良したり》
《ふふ、大丈夫、お守りと思ってくれれば良いわ》
「ありがとうございます、ベリサマも、いつもありがとう」
『良いの良いの。さ、全部しまったかしらね。あ、お礼は良いわよ、お土産も貰ったし。そっちはもう、お夕飯の時間でしょう?』
《じゃの、里で支度しておるわ》
『おうおう、相変わらず良い木だ』
『何か彫らせてくれよ』
『女神像でも作るか』
《ハナぁ、早う帰ろぅ》
「ありがとうございます、お邪魔しました」
浮島へ戻り、今度は神社へ。
タマノオヤさんと白蛇さんの居る神社、ベールを外し、鳥居をくぐって手水。
そしてお参り。
《誰かと思ったよ、良く来たね》
「お邪魔します」
先ずはお酒を出し、続いて向こうで貰ったモノの数々を出す。
話したり頷いたり、眼鏡と特にお話ししている。
今気付いたが、よもぎちゃんはコッチのタマノオヤさんに少し似てる気がする。
《皆、食事が終わった様だ、行ってあげた方が良いよ》
「お言葉に甘えさせて頂きます、失礼します」
そして鳥居を抜け、里へ空間を開く。
小屋にはお爺さんと蜜仍君だけ、孫とお祖父ちゃんやん。
「お帰りなさい」
「ただいま」
そして2人で藪の中へ。
「今日の献立、聞きます?」
「おう」
イカと里芋の煮っころがし、焼き魚、お浸し、キンピラ、茶碗蒸し。
「お夜食は、炊き込みご飯です」
「はぁー、急にお腹減ってきたかも、やべぇな」
土蜘蛛さんのお社で、クーロンを小脇にご飯。
ご飯がガンガン減っていく、美味い、美味すぎる。
『美味しい?』
「美味い、ヤバい」
満腹では無いけど、お腹の皮はパンパン。
この前は満腹になれたのに、何故まだ拡張するか。
『もう良いの?』
「パンパン、御馳走様でした」
蜜仍君に片付けを任せ、お腹がこなれるまでクーロンとお散歩。
絶対寒いよな、冬だし。
試しにコートを脱ぐと、寒い。
慣れないと。
『向こうは暖かかった?』
「うん、何なら暑かった、雨もだし」
『雨?』
「そうだね、梅雨だった。こんなお菓子も有った」
『可愛い』
「でしょう、あーん」
『勿体無ぃ』
「食べ物、お菓子なんだもの、ほら」
『甘ぃ』
「ちょっと止まるか、お茶も有るでよ」
『あったかぃ』
「何か、大きくなってる?」
『重い?』
「いや、こんなんだったっけなって」
『変わって無いよ、一緒だよ』
「そっか、ごめんね、飛ばされちゃって」
『ううん、ご主人は悪くない』
「な、本当、なんでワシやねんな」
『ご主人は凄いから』
「容量がね。よし、行こうか」
『うん』
里を1周し、入浴前にストレッチ。
脱衣場で下着姿のまま柔軟
「どや」
『柔らかくなってるぅ』
「ズルっこした」
『でも凄い、前はこんなんだったのに』
「今もう気持ち良いもの、入るか」
『うん』
内湯で全身を流し、先ずは露天風呂へ。
曇りなのが残念。
「あ゛ー」
『あちぃ』
「しゃがんで、掛け湯するから」
『はぁい』
「いつもどうやって入ってたの」
『大人で入ってたの』
「あぁ、大人になっても良いが」
『大丈夫、もう入れる』
「おう、無理すんな」
デッカイ湯船でストレッチ、しながらエリクサー。
クーロンに手伝って貰いながら、全身を良く洗い。
再び湯船へ。
そしてのぼせない様に湯船から出てはクールダウン。
そしてクーロンがギブアップしたが、もう1回。
湯冷ましに計測。
高値、危ない、出ないと。
『のぼせちゃったかと思った』
「大丈夫、高値。一応浮島で寝るわ」
『うん、一緒に帰る』
土蜘蛛さんにご挨拶すると、送り届けてくれる事に。
「ありがとうございます、蜜仍君は?」
《蜜仍はお勉強だ、ショナ坊が見ている、アレクのも》
「あぁ、お世話になります」
《全然構わないよ、寧ろ有り難い位だ》
「宜しくお願いします、じゃあ、また」
《うん、また明日》
浮島へ着くと、コンちゃんとミーシャがお出迎え。
ミーシャは夜勤だからとこのまま起きてるそうで、コンちゃんとも一緒に、3人で寝室へ。
「おやすみ」
『おやすみ』
《おやすみなさい》
「おやすみなさい、桜木様」
久し振りのココのベッド。
たった1周間ちょっとって、まだ信じられん。
2回目の2月20日。