6月17日(水)
意識が浮かび上がると同時に痛覚を切ったのは覚えてる、痛かった気はするんだが、良く覚えて無い。
目を開けられない。
手近なモノの感触はお布団、やっぱりアレはドリームランドだったらしい。
「鈴藤さん」
「もう死ぬかも知れん、本名は桜木じゃて、宜しゅう」
「痛がってた割に元気ですね」
「多分まだアカンかと、まだ痛いって言われたし」
「そうですか、変化出来ますか、戻った方が治りが早いだろうと」
「おう、ちょっと待ってな、包帯外してくれ」
「はい」
「うい」
変化は出来た。
そして包帯が巻き直されたが、トイレ行きたい。
「出来ました、お手洗いはどうですか」
「行きたいが、離れててくれよ」
「はい」
手を洗うのはソラちゃんにストレージから水を出して貰った、そして布団へ。
耳が先に治ったせいか、少し動いただけでドクドクと内耳が脈打つ感覚が有る。
皆の気配は有るのに、誰も声を出さない。
目を閉じてるのに、意識を向けると分かる、見えるのは何故。
「何となく見えるんだが、大丈夫かコレ。なぁ、スクナさん」
『良くない、また循環しかけたみたい』
「は、周りに被害は」
『無いから大丈夫』
「でもだからって耳と目が吹っ飛ぶかね」
『循環で、最初に感覚が消える場所だから』
「あら、とっても不味いわね」
『うん、凄く。せいちゃんの身代わりになろうなんて、もう考えないで欲しい』
「表層では考えても無かったんだが」
『本当?』
「深層でも思った覚えが無いし、それこそせいちゃんが喜ばんだろう」
《言い難いんじゃが、忘れ去られるんじゃよ、身柱の存在は》
「は、なんで先に言わんの、アホかクエビコさんや」
《それこそ、ココまで深く関わらんだろうと思うたから言わんかったんじゃ。こう引き摺られるまで関わるとは、コレは、清一の運命、それに触れとる》
「そんな気は無いんだが、マジで」
《大きい流れじゃし、相性も悪く無い。清一の運命がお主を巻き込もうとしとるんじゃろうな》
「あら、なんの得が」
《子孫を得る為じゃろう、ただお主は機能が無いしのう、ソレが謎なんじゃよ》
「脅迫かね、子宮を戻さなきゃ、子を作らなきゃ道連れってか。クソが、誰が言う事を聞くかバカが」
『ね、ごめんね、もうせいちゃんと離れよう』
「でも、ワシに移行して、ワシに来るなら、子孫は残さんけど。ココを守れるのは確実よな」
「そこまで身を削ら無いで欲しいんですが」
「だって、この一代で終わるなら、世界が循環するなら。少しだけな、まぁ、戻るけど」
《そう思うのが不味いんじゃが、思いは自由じゃしな、でも、余り思わんでくれよ。他所の星まで背負えん》
「ですよねぇ、よし、計測」
【低値です】
『どう?』
「は、さっき中域って」
【浮上に使いました】
《どうしたんじゃ?》
「低値らしい」
《うまくいかんのぅ》
意識の浮上に使うだけの価値は有ったんだろうか。
気配には白蛇さんにドリアード、咲ちゃんにウーちゃん、風神姉弟に、恵比寿さんまで居る。
「恵比寿さん、服、有り難う、心配お掛けしました、もう大丈夫」
「頷いてらっしゃいますけど、俺は許しませんよ、安静にして頂きます」
「はいよ、すまんね」
『冷えてる、お風呂に行こう』
目を治そうにも霊元は少ないし、集中出来ないし、実にポンコツ。
トイレにすら1人で行けない。
風呂もそう。
服は脱げるが醜くもドタバタするわ、井縫さんに心配されるわ、そして咲ちゃんに手を引かれ風呂へ。
温かい、やっと手足も体も冷えてたと自覚出来る程に不調、温かい。
「キツい仙薬いきましょうかね、スクナさんや」
『ダメ、先ずは葛湯』
「うい」
五臓六腑に染み渡る温かさ、内臓まで冷えるか。
死にかけたかコレ、何回怒られれば良いんだワシ。
ワシ可哀想。
「何考えてるんですか」
「従者に何度怒られるかと、絶対凄い怒られそう、つか、呆れられるかも」
「でしょうね、こう何度も死にかけられたら、呆れもしますよ」
「やっぱか、ヒエヒエは自覚しとるよ」
「そんなに、好きですか」
「情に厚いだけじゃろう」
「それで死にかけますか」
「霊元はドリームランドからの浮上に使った、深部に居たっぽい」
「ぽいって」
「だって心配してるかなって起きただけだし、知らんわ。大事に思ってるからとか言われても、身柱だからってのも有るんだし、井縫さんが身柱でも似た事になったと思うぞ」
「でももう禁止で」
「だが断る。またやるぞ、成功したなら、じゃんじゃんやったるわいな」
《死にかけても、まだしますか》
「おう。成功したんかな、ベスクさんや」
《でしょうね、アレだけしたんですから》
「ん?見えた?」
《はい、血塗れでしたね。心の棘に触れて、ドM確定ですね》
「いやアレはあくまでもイメージでして」
「それで手から出血ですか、詳しくお伺いします」
「痛くなかった、コレもチクるんかいなワンコ」
「はい、仕事ですから」
「辛いなら変わって貰え、そこの融通は利かすから」
「そこで優しくしますかね」
「報告は別に、仕方ないでしょう、魔王候補なんだし」
「殆ど、何も言って無いのは知ってますか」
「おう、だからって罪悪感や恩を感じられても困るぞ。アレはアーニァ達の為にしただけ、君に無断でしたんだし」
「それでも、俺は俺なりに、頑張らせて下さい」
「仕事馬鹿野郎だなぁ、なんで皆こうかな」
「アナタのせいかと」
「あぁ、ぐうの音も出ん」
『はい、仙薬』
低値行ったり高値行ったり、ワシが不安定だからか?
でもだって、不安定にもなろうよ。
今回は虚しくなったけど、次は、せいちゃんでも耐える。
「また不穏な事を考えてますね」
「見抜くな仕事人間。なんだ、どう出た」
「ほんの少し、下唇を動かしたので」
「マジ微細表情読むのやめろし」
「なら、不穏な事を考え無いで下さい」
「善処しま」
「す?」
「はいー」
『はい、仙薬』
ほんのり甘くて飲み易い仙薬、なんだろうか。
扱いも甘い、完全にヤバい奴扱いかしら、気を付けないと、もっとマトモにならないと。
魔力容量がある程度貯まったので、すっかり目を治し、時計を確認すると朝の5時半過ぎ。
だから包帯取っても眩しいワケだ。
「眩いわ、太陽さん」
「何か要りますか」
「人の温もり」
「どうぞ」
「それはちょっと止めときます」
里芋を阿呆みたいに食べて、一息つく。
そうしてからまた仙薬、からのケバブ。
肉、最高。
ウマいなココ。
「買いに行ってきましょうか」
「先読みせんでよ、つか良いよ、本当にもう、貰い過ぎだし」
「自己評価が低過ぎなんで、修正して下さい」
「そんな怒らんでも、マジで暴発に近いんだし怒らんでよ」
「そこじゃ無いです、被害者のアナタが苦しんでどうするんですか」
「そう苦しくも無いぞ、痛覚も切って」
「実質の問題なら、もう被害出てますよ、出血してるんですから」
「自分のケツを」
「その認識も修正して下さい、他人のを始末するなんてどうかしてる」
「ワシに当たるなよ、被害者ぞ」
「従者の代わりに叱ってるんです」
「成程」
「もう、どうしてこう、容易いんですかね」
「柔軟に行こうぜ☆」
「はぁ」
「なんだよ、成功してないのかね」
「あの後、供述を始めました。まだ記憶の辻褄が合わないので休憩で誤魔化してますが、時期に楠の事を思い出すかと」
「やったな、で、巫女には戻れんの」
『無理なんだって、残念だけど』
「そっか。あ、今回運んでくれたのは」
《今回はベスクちゃんだ、今回も譲ってあげた》
「咲ちゃん、ありがとう」
《譲ったと言うか、試したのでは》
《譲った》
「偉いねぇ、ありがとう咲ちゃん」
《ウーちゃんは拗ねてる、あんな害虫にまで優しくするから》
「誤解、優しくはしてない、何なら多少手荒くした」
『拗ねて無い、怒ってる。手、見た?』
「あら、治ったと思ったのに、こら怒るわ」
「はい」
『うん、はい仙薬』
「おう治します」
ボロボロの手を治し、仙薬を飲み、今度は布団でしっかり眠る。
「楠さん、そろそろ準備を」
時刻はもう16時近く。
待ち合わせの時間も有るので、さっさと準備し井縫さんと店へ。
「おい、顔色が悪いぞ」
『大丈夫?』
「オヤツ足らんかったかも」
『何か買って行きますか?』
「大丈夫」
美容室なんて嘘、完全に騙された。
美容系が何でも出来る場所だコレ、高いぞコレ。
皆は染め直したりトリートメントしたり、エステしたりなんだり、自分は軽くカットからのトリートメント。
肩から上のシェービング、ネイルで完了。
先に終わったので待合室の井縫さんとオヤツを食べるが、眠そう、貫徹か、馬鹿か。
「もう良いんですか」
「ネイルが最大の妥協点ぞ、ほれ、可愛いべ」
「そうですね」
「愛想笑いもしてくれんのか」
「して欲しいですか」
「いや、止めときます。つかもう帰りたいんだけど」
「お夕飯も御一緒にとの事です」
「断れんかねぇ」
「嫌なら俺から断っておきますけど」
「今更気を遣う?」
「ずっと、気遣ってますけど伝わってませんでしたか」
「いや、早めに切り上げたいかも」
「はい、そうさせます」
皆が一通り終わると夕飯のお時間。
飲茶、コレは助かる。
一気に5個入を全種類頼み、皆には食べたいのだけを食べて貰う。
井縫さんと競う様に食べる中、話しはネイルへ。
蘭ちゃんはネイルにそんなに興味が無いらしいが、方や河瀬と葵ちゃんは興味有り。
井縫さんもそれに合わせて相槌を打つ、シンプルだったり可愛らしいのが良いってか、あの毒々しさを表現しときゃ良かった。
それから花文字へ、河瀬居ると助かるな。
結構しっかり話すのね。
「で、昨日も練習したんだよな」
『後で見て欲しい、葵さんのも書いた、描きました?どっちだろう』
『描く、なんですかね?』
「もう平仮名で表記しちゃうとか」
「皆さん、お酒は良いんですか」
「あー、良いよな君らは」
「良いだろぅ」
『どうぞ葵さん、合うそうです』
『紹興酒苦手なんですよ』
「じゃあ白酒にしときますか」
「それはアカン」
「アレ好きって相当の酒豪だろう」
『うん、強い』
「楠さん、どうしますか」
「杏露酒」
『じゃあ、私も』
「飲めないとなると飲みたくなるなぁ」
『なんででしょう?』
「反骨精神、反逆児ですかね」
「あー、反逆児ねぇ」
「逆らって無い、筈」
「そうですかね」
『あ、3人は、お知り合いなんですよね?』
「コレ、河瀬の元彼」
「サラッと嘘を言うな、知り合いの知り合いだ」
「ですね、元彼です」
『どっち?』
『ふふふ、どっちなんだろうね』
「本当の事なのになぁ?」
「ですね、そんなに忘れたい過去でしたか」
「マジなら君がヤバいだろ、未成年との交際なんて」
『未成年との交際はヤバい』
『だね、節度ある大人は大きくなるまで我慢するか、手は出さないと思う』
『なんで?』
「そうだな、男女だと特に将来が大幅に変わる、例えば妊娠とかだ」
「妊娠したら体調も大きく左右されて、学業に集中出来ないとか」
「最悪は卒業も危ういかと」
『だね、妊娠は悪い事じゃ無いだろうけど、時期によるから難しい事だよね』
「色々体に負担も有るし、ね、河瀬」
「やめろ、思い出させるな」
「あぁ、どの事でしょうかね」
『ハサミでチョッキン』
『どっちにも堪える事を、誰ですか教えたの』
「コイツ」
「妊娠の話題から、出産の時ので」
「あぁ、それは痛そうな話を」
『普通は痛いの嫌い?』
『そうだね、大多数は嫌いだけど、好きな人も居るかな』
「楠さんがそうですよ」
「誤解だ」
「しょっちゅう怪我しやがるって聞いたがなぁ」
『事件ですか?事故ですか?』
『救急対応みたい。で、どうなんですか?』
「両方ですよね」
「おっちょこちょいみたいな言い方すな。痛いの嫌いだわ、罵られるのも」
「おっちょこちょいでドMはヤバい」
『痛いの好きじゃ無いのに、怪我は事故、事件で事故?』
『じゃあ、お仕事ですかね』
「主に、そうですね」
「にしてもなぁ、もう完全に血が入れ替わってんじゃ無いか?」
「あー、否定は出来ん」
『弱い?』
『そうなんですかね?』
「メンタルが」
「バカヨワ」
「勝手に答えんなよ、ダイアモンドは傷付かないぞ」
『それ、普通に弱点有るじゃ無いですか、一定方向からに弱いって』
『じゃあ、弱い?』
「強い、ワンコより」
「まぁ。そう言えばメンター制度どうですか、機能してますか」
「まぁ、俺で良いのかとは思うが」
『優しくて良く教えてくれる』
『鈴藤さんはどうですか?』
『チャラ男も優しい、良く教えてくれる』
『チャラ男っ、ふふ』
「もうアレは実名をチャラ男に変更だな」
「何処で切りますかね」
「俺的には、チャ・ラ男」
「ラテン的やな」
『チャラ・男。おとこ?』
『チャラ・おとこ、ふふふ』
「チャラ男はチャ・ラ男、選びそうやわ」
『本当に、そんなチャラいんですか?この前は普通でしたけど』
「真面目系クズ男ですね」
「新しいの出ちゃったぞ楠、チャラ男真面目系クズ説」
「凄い言うなおい、冗談やろ」
『クズ?ゴミ?』
『プッ、確かに、ゴミクズ、クズ=ゴミと思っちゃいますよね』
「この場合のクズは埃、塵、ですかね」
「機嫌悪いなワンコや」
「いや、あの人ムカつくんで」
「どこにムカつくねんな」
「八方美人で誰とでもイチャイチャしてるじゃないですか」
『嫉妬?』
『そうかもね、ふふ』
「腐ってんな」
『ダメかな?』
「いや、俺はそう言うの苦手なだけ」
「雄々しいの苦手なんよな、河瀬は」
「おう、マジ無理」
『じゃあ、もしかして美琴さんもライバル?』
「いや、寧ろ、嫌われてたし、そう考えられない感じ」
「凄い失礼な態度だったんですよね、年上と思わないでって感じで」
「クッソ生意気なビビり」
「すまんかった」
「もう許した」
『美琴はクズ?』
「その時は、そうだった」
『ハナは、クズじゃ無い?』
「誰にも素養は有る。このお酒に1滴でも水を入れたら、水割りになるのか、どの位酒を入れたら水割りになるかの問題、かな」
「ただ楠もチャラ男もビビりでは無いだろう、見てないだけかも知れんが」
「俺の上司にはビビったそうですよ」
『割合の問題?』
『だね、ビビりな面、ビビりになる時って必ず有るだろうって事。でも、八方美人って良いと思うんだけどな、字だけ見たら何処から見ても美人って事じゃない?』
「あー、ポジティブぅ」
「見習って下さい」
「じゃあ俺もそう思うわ」
『良い意味も、勝手に加えて良い?』
『仲間内で使う、ドメスティックな環境限定かな』
「はい河瀬、ネイティブでドメスティック」
「は、俺無理」
「何事も練習ですよ」
『ドメスティック』
『わぁ、上手。英語も出来るの?』
『最低限』
「最低限てどこまでよ」
「確かに、日常会話か?」
「そう考えると幅広いかと」
『確かに、最低限ってなんだろうね?』
『なんだろう?』
「可愛いなおい」
『私は?』
「お、修羅場だぞワンコ」
「ですね」
「可愛いの種類が、コッチはどちらかと言えばキュートに近い小さきもの系で、葵ちゃんは美醜の表現でして」
『で、可愛いですか?』
『可愛いは種類がいっぱい』
「はー、楽しいなおい」
「人の不幸は蜜の味ですか」
「今日も可愛いですよ」
「なんかチャラ男い」
『チャラ男い?』
「チャラ男っぽい言動、またはそれらしい雰囲気、ですかね」
『気に入りませんでした?好みとか有ります?』
「楠さん自体、拘り無さそうで不安になりますよね」
『そうなんですよ、最初以外、そんなに反応も無いし』
『可愛いから?』
「ある意味では正解だろうな」
「いや、傍から見る系でして、近くに居ると、不純物が混ざる感じがして」
「自己評価低子かよ」
「自己評価超低子ですよ」
「正当な評価ですが」
『ハナの顔はどの位置?』
『それは』
「ダメ、聞かんよ、あー」
「とう」
「あ、くすぐりは不味いかと」
『ハナの弱点だ』
『顔の評価って個人差が凄いですけど、私には可愛く見えますよ』
「俺からしたら普通だな、君ら見てるし。そして俺も普通、そこはマジ親に感謝」
「レベル高過ぎんねんこの人達」
『私は努力の賜物だって自負してますよ』
「俺はノーコメントで」
『僕は可愛いって言われるの多かった、それと少しの綺麗』
「素直」
「うん、良い事だ、俺も見習うわ」
「是非、お2方には見習って欲しいですね」
『美琴さん素直そうなのに』
『鈴藤苦手なのは好きだから?』
「それは無い、無いが、イケなくは無い」
「お、どうした河瀬」
「凄い心変わりですね」
『何処が良いんですか?』
『顔?』
「そんな知らんけど、中身?」
「酷評しといてツンデレか」
「そんなフェミニンですかね」
『河瀬さん女性が良いって言ってましたもんね』
『どこなんだろう、良い中身』
「気遣い」
「あぁ、洗濯と掃除で落とされるとかどんだけチョロいんだよ君は」
「ちょっと不安になるレベルのチョロさですね」
『あぁ、でも自分の為に何かしてくれたと思うと、気にはなっちゃいますよね』
『ハナもチャラ男も優しいのは、好きだから?』
「好きにも色んな意味が有るからなぁ、掃除だのは好きじゃ無くても手伝うし」
「そこだ、変っつーか、普通は手伝うかね」
「あんまりなら俺も手伝いますけど、そんなにですか?床、見えてました?」
『床は見えてた、床に物は有った』
『うーん、少しなら僕もしちゃうかな、お手伝い』
「あれ、俺もウブ認定されちゃうんだろうか」
「ギリ入るかも、直近のウブは凄いヤバいから」
「もう、どウブですからね」
『イケメンなのに不思議ですよね』
『ウブは悪い?』
「んー、人によるんじゃ無いかね?なぁ、ワンコ」
「ですね、普通のチャラ男は、重い、重責だと言って逃げ出すでしょうし」
『じゃあチャラ男さんは?』
「ヤリチン」
「嘘言うなよワンコ。純朴系チャラ男、一応言うが、童貞だって言ってたぞ」
『見えない』
「グフッ」
「またツボったなワンコ」
『危ない、素直な分、攻撃力が凄いですね』
「井縫さんは変なツボ有るな」
『攻撃力、ツボ』
「失礼しました、まぁ、素直な表現は面白いって事ですかね」
『そうそう、忌避の無い言葉って伝わるなって』
「ふっ、童貞、アレで」
「君もか」
『ハナも?』
「ヤル相手にだけ教えるわ」
『そこは繊細な話しだから、ね?』
『聞いたら不味い?』
「それも人によるな」
「それと距離ですかね」
『童貞は良いの?』
「鈴藤のはね、言って廻ってくれと言われた」
「コレこそ個人差、俺も乙女に恥は無い、今は」
『え、言う感じですか?』
「流されない事も大切ですよ」
『難しい』
「なー、日本語難しいねー、特に北と南」
『北ですよ、津軽弁、もうフランス語ですって』
「南だろ、北は簡略化してるだけだし」
「ですね、南は言語体系違うレベルですし」
『えー、そう?簡略化してるだけ?』
「アナタ、の、ナ。ワタシ、の、ワ。何処で取ってるんだって感じですけどね」
「寒いから短くなったってのウケる」
「ドコへ行くんですか、で。どさ」
『どさ』
「どこさ、いくんずな、を更に略して、どさ」
『余裕が有る時には略さないんですかね?』
「いえ、もう丁寧語の範囲らしいですよ」
「こう聞くと、丁寧語は壁が有るんだよなぁ」
『どさ』
「可愛いねぇ、デザート頼もうねぇ」
「もう孫可愛いがりだよな」
「猫可愛がりかと」
『悔しいけど気持ちは分かります』
『悔しい、分かんない』
「あー、くだらない事なら分かるが、マジなのは分からん、頼んだ河瀬」
「花文字を俺と蘭ちゃんが同じ様に練習するだろ、それで蘭ちゃんの方が上手いと、悔しいとか」
「それは環境含め先天的な問題だろうし、悔しがるかね?」
「じゃあ、俺より蘭ちゃんの方が算数覚えるのが早いとか」
「それも遺伝子ぽいって聞いたが、主に母親の」
『そうなんですか?』
「らしいが」
「X染色体ですかね」
『お母さんは頭悪かったって』
「勉強に限った話しだろ、回転の速さは別だ」
「生きるのが上手かどうか、ですかね」
「ワンコ上手そうよな」
『ですね、ココに馴染んでますし』
『頭良いも色々?』
「そうそう、でもやっぱり学歴社会でしょうよ」
『そうなんですよね』
「それと顔だろ、良いに越した事は無いだろ」
「そうでも無いかと、同僚が苦労したそうですし」
『顔も頭も大事』
「そうそう、中位なら中位の幸福。凄く頭が良いか顔が良いと、幸せになるか不幸か両極端にいきやすそう、ただし幸福多め。低いとその割合が逆転するイメージかな」
「まぁ、そうかもな」
「どうでしょうね、総量説も有りますし」
『不幸の総量が決まってたら良いのにね』
『ポイントカードならお得』
「あぁ、ワシはスタンプカード式が良いな」
「どっちにしてもお前は凄い貯まってそうだな」
「会員制ならトップでは」
『そんなに不運?』
『ね、心配になっちゃう』
「本人はそう思って無いんだが」
「他所から見ると違うかと」
「なんかお前さ、悔しいの話でもそうだけど、不意に頭でっかちだったりズレてたり、なんかそこが掴み所が無いと言うか。なのに分かり易いと言うか」
『そこが良い?』
『笑顔ですかね、全然見せてくれませんけど』
「ワンコ居るからなぁ、男に愛想売るのやめたの」
「男として少しは見てくれてるんですね」
「まぁ、最低限?マナー?」
「ほらコレだもの」
「ですね」
『マナーかー』
『ふふ、そう言えば、ハナさんはどっちでも良いんですか?』
「まぁ、別に、ただ子供は無理だな」
「俺も、怖いもん」
「俺には分からない領域ですね」
『どっちでも産めたらいいのに』
『ね、そしたらもっと幸せになる人が増えそうなのにね』
「成程ね」
「デカい夢だよな」
「叶ったら凄い事ですよね」
『良い夢?』
『私はそう思うけど、本当に叶ったらどうなるんだろうね?』
確かに。
せいちゃん産めたらどうなるんやろ、男でも危ないんか?
つか、男がどう受精を、両性具有?
「楠さん、マジで考えてますか」
「あぁ、構造どうなるのって。皆、両性具有?」
「それこそ蛭子の世界だろうな、皆同じ顔で、両性具有で」
「もしかして、読んだのかアレ、完全版持ってたよ」
「マジか、同士よ、マジか、マジで嬉しいんだけど」
『本の話しですか?』
「あ、おう」
「薄い本、個人が出した本だよな、楠」
「おう、書き込みが細かいんだわ」
「エロ本と間違われて捨てられた」
「表現の範囲内な筈なのに」
「過敏な人間にしたら、それこそ1滴でもダメなんだろ」
「潔癖を良しとする風潮も有りますからね」
『流石に、公にヤりまくってる宣言は普通しないしね』
『ダメ?』
「んー、ご職業の方限定でも、ダメかなぁ」
「良い効果はそう無いだろうな」
「勘違いする人間は、襲って良いと思うらしいですよ」
『凄いよね、他所で聞いただけでもそう勘違いするんだって』
『危ないからハナは言わない』
「おー、良いね、そうです、それです」
「間違ってはいないな」
「童貞同様に処女を恥ずかしがる文化も有りますから」
『過度に拘るのも違うと思うけど、それこそありのままを伝えてダメなら、諦める事も有ると思うし』
『人と、距離感で言うかを見極める』
「そうそう、良い子やね、デザートおかわりしよか?もう良いか?」
「孫か、お婆ちゃんか」
「どうしますかね」
『お腹いっぱい、ご馳走様でした』
『うん、ご馳走様でした』
井縫さんの車で最初に葵ちゃんを部屋まで送り、河瀬の部屋に蘭ちゃんと河瀬を届け。
自分は、車へ戻った。
「ふい、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした、車返すんでお先に上がって下さい」
「ならズルしようや」
そのまま裏道に向かい、ベスクちゃんにコウモリとなってカメラの視界を隠して貰いながら、警察庁の駐車場へと入れた。
便利なベスクちゃん。
「ありがとうございました」
「いえいえ、コレから家?」
「出来たら浮島で見張りたいんですが、アナタを」
「そんな心配。ワシ、そんな倒れる時にヤバかったか」
「目も耳も爛れ始めて、凄い魘されてましたから」
「記憶に無いんよなぁ、まぁ、じゃあ、戻るか」
「はい」
マジで記憶に無いが、そんなん見たら過保護にもなるか。
車から浮島へ、さっさとお風呂に入りお布団へ。
井縫さんもお布団へ。
「すまんね、マジで、だから寝れ」
「もう少ししたら寝ます」
「寝れ」
「鍵持ちは干渉するんじゃ」
「マスターキーは例外だ」
透明な鍵で威嚇後、触れさせた。
チョロい、舐めるからやで。
《可哀想な事をする》
《全くじゃな》
『ね、あんなに心配してくれてたのに』
『じゃな、あー、可哀想じゃのー』
「総出で、だって寝なさそうなんだもの、寝ないと良くないもの」
《はぁ、人の気も知らんで、もう、阿呆じゃのぅ》
「なんだよ、ごめんて、心配掛けてすみませんでした」
『まぁまぁ、知らんで良い事も有るじゃろう』
「ワシには無い」
『大丈夫、通常の病棟に移れそうだから安心して』
「マジで、コレで良かったんか」
『うん、はい、仙薬』
《スクナ彦でも良かったんじゃが、お主の成長の為にとな》
《だが、どうも失敗が多いな、やはり異世界の人間だからだろうか》
《先読みしきれないんですか、成程》
『じゃな、何処もそうじゃろう』
「え?ウガリットは帰れるって」
『断片的らしいぞ』
《ウチもじゃな、だからじゃろ、すまん》
「いや、別に良いけど」
『そこは怒ろうよ、怒ってくれないと困る』
「今回の賛成派か、スクナさんは」
『うん、井縫だけが反対した、予測が付かな過ぎるって』
《じゃが安牌を行けば成長も無かろうと、な》
『こう出るとはな、欠神は予想したんじゃが』
《循環の状態に変化するとはな、誰も予測は出来んだろうよ》
《思い寄り添うと変質してしまうんでしょうか》
《事例は、有ったかのぅ》
『お子なら有るよ、親に合わせて変質する事は』
『お子じゃろう?成人しておるぞ?』
《お子と似た膜なのだろう、分からんよ》
「お子しゃまか」
『かも』
《じゃの》
『うむ、解決じゃな』
《成程》
「それ体質やろ、すんませんでした」
にしても、循環は目も耳もとなると。
全ての穴が塞がれるんかしら、それとも筒状に、肛門と口だけ開くとか?
ホラーやん。
しかもそこまで行ったら治すのヤバそうだし。
そう言えば、勝手に治ったり治らなかったり、何の基準が有るんだろうか。
自罰的に行ったんじゃ無いのに、何で治らんかった。
外傷だから?
つか爛れるって、魔素焼け?
『はい、まだ飲んで』
「何で勝手に治らんかったと思う?」
『んー、自罰的な意識は、絶対、無かった?』
「絶対と言われると自信無いが」
『だからじゃ無い?少しでも揺らぐと難しいとか、最初はどうだった?』
「そんな事すら思わんで、何なら良い事だと思って気分良くやってたわ」
『なら、やっぱりソコじゃないかな?諸刃の剣を素手で持ってるから、少しでも変に力が入ると自分も傷を付けちゃう』
「棘は、自らの花や葉を傷付けるかね」
『外圧が有れば、ね?』
《コケて自分の歯で口をケガするじゃろ、それじゃ》
「あぁ」
《ソコで納得するのは、やっぱりお子だな》
《ですね》
『はぁ、世話の焼ける子じゃ』
余計な罪悪感は周りも傷付ける、と具現化されてしまったワケだが。
そこは具現化して欲しく無かった、まともな神経的には1ナノミクロンでも罪悪感は出るだろうよ。
本来の状態から手を加えるんだし。
ねぇ?
「ね?ベスクちゃん」
《ノーコメントです》
「なんで」
『はい、飲んで』
《本来、敵は殲滅するモノ、そこに罪悪感が有るワケも無く。忌むべき害虫には、同情すら禁物ですから》
「凄い君主」
《転生者が、お主も名を知っているのではと言っとったがな》
「あー、ヴラドさんかしら、それかエリザベートさんか」
《ノーコメントです》
《ふふ、魔法で聞き出さんのかぇ》
「せんよ、名乗りたい時に名乗って頂く、待てる子ですから」
《よしよし、良い子じゃ》
「良い子だけど一服したぁい」
《ちょっとじゃよ、それと今後はスクナ彦に良く診せい》
「はぁい、そのまま血液検査行くわ」
《おうおう、良い心がけじゃ》
先ずは一服。
目の前にはウーちゃん、すまん。
「すまんね、心配掛けて」
『うん。君には害虫なのに、優し過ぎるのは嫌いなんだけれど』
「つかワシ人間よ?人の心ってそんなもんじゃ無いの?」
『過剰に人間らしく振る舞わなくても良くない?』
「そこ?まぁ、でも、魔王候補だからこそ、人間らしく振る舞わなくてはイカンのでは?」
『魔王候補に成りたくて、そう振る舞ったの?』
「いや。でもな、違う側面は見て無かった、違う方向から見たら、そう捉えられるとまでは考えて無かった、筈、多分」
『なら、人間らしく振る舞っても意味が無いんじゃないの?』
「泣いた赤鬼と言う話が有ります、人間らしく振る舞える鬼だから人間とも仲良くなれた。でもらしくすら出来ないと、人間は難なく生きられないのよ」
『人間の世界で生きる意味って?召し上げって有るんでしょう?なら無理する必要は無いんじゃ?』
「それは向こうでね。今ココで召し上げられたら向こうに戻れないかもでしょう、駄々を捏ねてどうした」
『力が有るんだし、もっと自由に生きても良い筈なのに』
「力の有るモノには責任が付き纏うんでしょうよ」
《そうだぞ、良い事を言う。良い子良い子》
「咲ちゃん、嗅ぐな」
《お子よ、ウーには責務が無かったが今は有る、その過渡期だ仕方無い》
「あぁ、役割りや責任か、帰っても良いんだよ」
『イヤだ』
《お子、その言い方は良くない、見放したみたいだ》
「見放すもなにも」
《あのワンコもだ、逆の立場ならどうだろう。少なくとも、無責任だと思われたくは無いんだよ》
「あぁ、はい」
『責任だけじゃ無い』
「おうおう、愛してる愛してる」
《ふふ私もだよ》
『もう、すぐ邪魔する』
《なんでだろうね、咲だからだろうか》
「うまい、じゃ行ってくるわ」
『うん』
脇道からお城へ。
そして侍医さんへ。
《一騒動有ったとか》
「ですな、ちょっと失敗しちゃったっぽい」
《失敗の理由に納得いきませんか》
「大事に思うなとか、罪悪感持つなとか、ちょっとマジで魔王過ぎない?」
《ですね、人間ならほんの1ナノミクロン位は罪悪感を持つでしょう》
「ね、でしょう。別に人間らしく振る舞ってるつもりは無かったけど、かくあるべきとは思ってたから、その話には納得してる」
《けど?》
「ワシ我儘よ、自由とか無理、バカだし、少し枠が無いと逆に動けんもの」
《魔王候補として生きるなら、逆に開き直る道も有りなのでは?》
「極端」
《そうですかね?魔王候補然とするなら罪悪感も要りませんし、らしさも不要かと》
「あぁ、ワシ、汚れ役か」
《すっ飛びましたね》
「魔王候補の理由を考えると、そうなるかと。それが出来るし、する気も有る、周りにさせる気は無いし。悪者が居た方が一致団結出来るし、そうなのかも」
《悲しむ方が居るかと》
「ちゃんと言い聞かせる、腹を割って話しまくる」
《その真面目さで魔王候補って、どんな価値観なんでしょうね、やはり謎です》
「真面目過ぎ、勤勉過ぎで休まないと、怠惰として大罪認定されるらしい」
《あら、では怠惰候補ですか》
「意外と色欲かも知れんよ」
《じゃあ記念にお手合わせ願いましょうかね》
「優しいよな皆、いきなり断らないどころかお誘いあそばせられるんだもの。その優しさは何処から?」
《心根ですかね、元の》
「あぁ、出来んわ。もっとこう、そう優しく受け流すのは、どうすれば?」
《即座に否定しない、真に受けない》
「真に受けないが特に難しい」
《でしょうね、やはり怠惰ですかね》
「それか、空きが有るのは悲嘆」
《時代によっては怠惰と1つになっているとか》
「あら、ピッタリ」
《やめて下さいよ、ココでも悲しむ方がいらっしゃるでしょうに》
「知らなきゃ良い、知る術が無い筈なんだから」
《そうですね。あ、紫苑の血も良いでしょうか》
「あぁ、はいはい。はい、どうぞ」
ネイルはやはり剥がれ落ちた、勿体無いが想定内。
今度は磨くだけにして貰おう。
《ふふ、検査をしなければ狐に化かされているんじゃと心配になりますね》
「人間なのよなぁ」
《どう見てもそうですものね》
「でしょう、魔王候補に見えない」
《はい、終わりました。また戻って頂けますかね》
「良いが、なぜ」
《夜の外宮へお散歩にと思いまして》
「あぁ、着て行くべか」
そうして再び楠に戻り、着付けて貰い侍医さんと外宮へ。
現れないと思ったが、普通に出て来た。
福禄寿3、寿老人1、恵比寿さん1、鹿2、どれも小人なのは何故なのだろう。
《小さき福の神様とは、どうも、侍医をしております。羅 心悦と申します》
「楠花子、または鈴藤紫苑です、服をありがとうございました」
寿老人が鹿に乗り侍医さんの肩を駆け登る、そうして何かを話すと。
また駆け降りた。
なんだこれ。
なんだこれ。
《ふふ、良く似合っていると喜んでおられましたよ。そして小さいのは、お酒の為だと、酒池肉林がお好きだそうです》
「そんなに、どうぞ、お選び下さい」
もう迷わず泡盛へ群がる。
デカいボールに注ぐと、歓喜の悲鳴が聴こえそうになる程の万歳をし、酒池へと飛び込んだ。
なんだこれ。
《あ、お肉もお好きだそうで》
「あぁ、縁に乗せましょうかね」
スライスされた生ハム、サラミをボールの縁へ掛ける。
一口食べては潜り、浮かんではまた一口。
奇妙と言うか可愛いと言うか、僅かに奇妙勝ちだが。
なんだろう、これは。
《ふふ、ココは日本の方が建てた福神社なんだそうです、反対側には吉祥天女様や女神の方々が祀られてるんですが、そうですね、ココな不人気なんだそうです》
「お参り少ないのか、地理的に」
《真面目な殿方には福を、不真面目な方には天罰が下りますからね》
「あぁ、鈴藤の方が良かったかしら」
全員がコチラを見て×を描いた、それは違うらしい。
《ふふふ、やはり、本来の性が分かる方には分かるんですね》
「アナタも賭けをしますか」
《そうですね、ですがそうせずとも、致して頂ければ分かるんですけれど》
「あー、それは不味いな、練習でもしようかしら」
コレも×。
《愛のある営み以外は認めない方達だと伺っておりますよ、神々も、精霊も霊獣も》
「そうじゃないと清らかでは無いと」
《そうみたいですね、ほら》
「激しく頷いて、頭もげそうで怖いわ、もう、溺れないかね」
《ふふ、大丈夫そうですよ》
「どうしても、小さきものは心配になりますよ」
《ちゃんと浮かんでますよ、ほら》
「近いな先生。ワシは感情転移しないよ、今の依存は無機物のみだから」
《そうじゃないんですが、気分を害されましたか》
「いや、アナタ男みたいだから警戒しただけ」
《そう見えますか》
「見えなかった、最初は、でも骨格とかよく見たらそうかと、それか両性具有ですか」
《はい、男性性が特に未発達で、妊娠も不可能です》
「どうにかしましょうか」
《いえ、コレが良いんです、どうかお気になさらず》
「複雑な先生だ」
《お好きでしょう、弱くて複雑な方》
「先生は弱く無いでしょう」
《良く言われますが、アナタもそうでは》
「あー、強そう言われた、そう見せてたし」
「隙きあらばイチャイチャと、人を寝かし付けて何してるんでしょうか」
「おぉ、仮眠出来たかね井縫さん」
《“もしかして、私も怒られてます?”》
「“いや?でもまぁ、解散しましょうか”」
《“はい、送って頂けますか”》
「井縫さん、送りますよお医者先生を」
侍医さんがお城へ入るのを見届け、脇道へ。
そんな怒らんでも良いのに。
「本当に医者なんですか」
「精神科医、感情転移の請負人、試されたんやろなワシ」
「そんな事をされているなら報告を」
「カッカすんな、個人的興味かも知れんのだし、構うな構うな」
「御自分に興味が有る人間に対して、無頓着過ぎかと」
「何が悪い?それには罪悪感も無いが悪いか?それこそ居なくなる前提で存在してるのに、それに興味を抱く人間に心を砕いてどうする。こんなファニー面を相手にするなんて所詮は興味本位だろうよ、違うと言うならどう証明するか教えてくれ。あ、神様達は別ね、悠久の時の、束の間の星屑と思ってくれてるとは期待してる」
「すみません、踏み込み過ぎました」
「そうそう、大丈夫だって、普通みたいに気にしなくても大丈夫、そも流される程ウブじゃねぇですよ」
「はい」
「落ち込むなよ、また男の子の日か、周期早いな診てやろうか?」
「実は先日、アナタの霊元に中てられました」
「なん、早く言いなさいよ、良く堪えた。風俗行くか?泣くか?どうする?」
「安心して眠りたいです」
「すまんて、検査と神様にお礼言ってただけだから、ほれ、帰るよ」
そうして漸くお布団へ。
寝顔を見たら寝るそうなので、そのまま眠った。