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6月11日(木)

 晴れ、時間は12時。

 12時て。


 測定、中域。


 鈴藤へ。

 測定、中域。


 12時て。

 せいちゃんは居ない、取り敢えずお布団を干し、浮島へ。


 焼き鳥弁当うまい。


「おはようご、男だからってTシャツ1枚は」

「おはよう、下着は履いてるが」


「らしさ以前の問題ですか」

「履くよ煩いな」


 ズボンを履いて一服。


「観上さんは出勤中です、聴風軒さんも」

「おう」


「大丈夫ですか」

「なにが、あぁ、昨日ちょっと足りなかったっぽい」


「すいません」

「ワシも悪かった。一定無い事を言えば良かった、前もこんなん1回有ったんだけどな、つい言い忘れたまんまになる」


「死なないから言わないのは、どうかと」

「すんましぇん」


「観上さんには今はスクナ彦様が付いてます、勤務中は基本的に一緒に居る事になりました」

「さよか、溢れそう?」


「いえ、ちょっと休憩と、アナタの様子見です。じゃ」

「すまんね、じゃあね」


 さぁ、どうしましょうか。

 一旦家に戻り歯磨きしながら考える。


 ロシアに様子見?

 直ぐ行けるし要請無いし、保留。


 中つ国へ?

 多分、正式に招待される可能性が有るし。


 ルーマニアはダメだし。




【主、沖縄の貝殻の件は】


 あ。


 急いで沖縄の真珠貝屋に向い、受け取る。

 可愛いなおい。


 そのまま近くのタコス屋で持ち帰りをゲットし、浮島へ。


 で、次はどうするか。


 フィンランド?

 いつでも行けるし、行くなら準備したい。


 と言うか何処かに行く準備をしとくか。


 つか、花子こと猫山さんはどうしてるんだろうか。


 出来たら花子名義のスマホで電子書籍を買うかしたいんだが、ココは猫山さんに相談すべきか。


 試しに鈴藤の仕事用携帯から、花子の仕事用携帯に掛けてみる。


【はい】


 花子の声だ。

 寝起きっぽい、向こうはあのままお仕事だったんだろうか。


「おそよう、コレからちょっと空いてませんか、まだ寝るなら」

【家でお昼寝してただけなので問題無いです】


「じゃあちょっと迎えに行きます」

【うい】


 空間を開けると、見た事無いパジャマを着ている。

 後で聞かないと。


「温泉入ります?」

「わーい!」


 浮島の温泉へ。

 お誘いも有ったので、楠に変化し一緒に入る。


「睡眠時間、あの後、何時間取れましたか」

「あのまま警視庁から家に帰って、直ぐ寝て8時間、8時に起きてお布団干したりしてまた寝てましたよぅ、いっぱい寝ちゃいました」


「良かった、その寝間着は?」

「あぁ、ちょっと前に買いました、量販店で」


「すんません、気付かんで」

「いえいえ、肌触り良いですよぅ、別の人間にお揃い買っといて貰いました、部屋に有ります」


「ほう」

「押し入れの」


「あぁ、コレですか」

「良いなぁそれ、便利」


「猫山さんにも上げたいけど、危ない目に会うかと」

「ですよねぇ、狙われちゃいますもんねぇ。羨ましいけど要らないです、井縫使うんで大丈夫です」


「そも、呼び出しても大丈夫でした?」

「大丈夫です、白子としてのお仕事中は切ってますし、だから昨日の電子書籍の事も、大丈夫ですよ」


「気になるの有ります?」

「興味無いんですよねぇ、アニメなら良いんですけど、流しっぱなしにも出来るし」


「あぁ、アニメで気になるのは?」

「そうですねぇ……」


 猫山チョイスは楠名義でアニメを購入。

 晶君のスマホでは、それのマンガを、鈴藤ではそれ以外を購入予定となった。


 そしてお風呂を出て、猫山は楠へ、自分は鈴藤としてお着替え。


 今日は可愛い服の楠、そして自分は買ったばかりのアノ服へ。


「一体、どんな仲に見えるんでしょうねぇ」

「ですねぇ、ちょっと怪しい関係ですよねぇ」


「兄妹には?」

「んー、パッと見は無理かと、まぁ、慣れてる人は見抜ける位ですねぇ」


「このまま楠と行くと、楠はビッチでは?」

「せいちゃん呼びます?」


「いやぁ、まぁ、良いや、大丈夫」

「せいちゃんへのプレゼント選びってのは、どうでしょ」


「天才か」

「えへへ」


 猫山さんを一旦家に帰し、お互いの家から駅へ集合。


 向かう先は、昨日井縫さんと調べたアクセサリー屋が有る駅。




 井縫さんへの耳飾りと、せいちゃんへの何か。

 せいちゃんに、どうしようか。


「どうしよう」

「どうしましょうねぇ」


「指輪とかにしときます?ペアの」


「それは、マジでその方向ですか」

「はい、せいちゃんも良いって」


「いつの間に意思確認が」

「昨夜再確認おば、改めて女除けに如何ですかと」


「はぁ」

「大丈夫ですよ、ワシの影が有るのに今でもモテてるんですし、きっと良い人見つかりますって」


「だと良いんですが」

「それかネクタイピン」


「それにしましょう」

「えー、つまらん、却下」


「は」

「面白く無いと」


「アナタねぇ」

「ふふ、コレ付けてみて下さいよ」


「あーあ、自分用に欲しいわ」

「あぁ、それも良いですね、三角関係」


「もう好きにして下さい」

「諦めが早いぃ、井縫さんならもっと粘るのに」


「アレはちょっと可笑しい、変態だし」

「尊敬出来る人間が身近に居なかったんでしょうねぇ」


「猫さん居るのに」

「それはまた別かと、身内みたいなもんらしいですし」


「尊敬ねぇ、出来る人間、居なかったかも」

「もし現れたら、あんな感じに崇拝しちゃうんじゃ無いですかねぇ」


「もう神様尊敬してるからなぁ」

「せいちゃんはどうです?」


「あぁ、確かに、尊敬するわ。病弱だったのにあんな真っ直ぐに育ってさ、真逆だもの」

「ですねぇ、ちょっと甘過ぎかとも思いますけどね」


「な、ちょっと甘め」


 何だかんだネクタイピンに収まった、多分誂われただけだコレ。


 それぞれにアクセサリーを現金で散財、まだ大丈夫なのかと聞いたが、相当引っ張れたので都心の豪邸もイケるとか。

 すげぇ。


 それからコンビニへ寄り喫茶店へ。

 少し早めのオヤツを食べながら、スマホで電子書籍やなんかを購入していく。


「今から寝ても15時に起きるんでしょうか?」

「あー、試した事無いかも、どうなんだろうなぁ、原理も分からんし」


「朝型って居るじゃ無いですか、夜型とかも。なら昼型も有るかなって」

「あぁ、人間の集中力、持って8時間とからしいし、そうなのかも」


「小数だから認知され無いんでしょうねぇ」

「なー」


 休憩後、途中まで一緒に帰り、其々の自宅へ。


 お布団を取り込み浮島で集合、何とプレゼントをせいちゃんへ渡せと。


「宜しくどうぞ」

「こっ恥ずかしいんだが」


「良いじゃないですかぁ」

「いや、変に意識されても全てにおいて困るのでは」


「ちょっとは耐性付けて貰わないと、だからですよ」

「あぁ、最悪は抑え込めば良いのか」


「です」

「眼鏡、ちょっと改良して貰おうかな」


「いっそ鈴藤用として新調しては?」

「あぁ、ですな。行ってきます」


「うい、行ってらっしゃいませ」




 池の水を通ってタマノオヤ様の所へ。

 良い天気。


《やぁ、こんにちは》

「こんにちは、お邪魔します。手土産です」


《うん、この前は大変だったろうに、お疲れ様》

「いえ、まさか風呂で発露するとは」


《ふふ、男女で分かれて無い事に気付いて、恥ずかしくなっちゃったみたいだよ、ふふふ》

「もー、どんだけウブなんよぉ」


《ね、ちょっとビックリしてたみたい、他の神々も》

「意思も思考も、読むのは難しいですか」


《それも全部予測出来たらね、もっと楽だろうけれど。ソレをしてしまうのはね、余りに踏み入り過ぎだから》

「もう危ないし踏み入っちゃいましょうよ」


《それが可能な神や精霊が操られては、危うくなるから》

「あぁ」


《少し分からない位が丁度良いんだよ》

「お疲れ様です。申し訳無いんですが、せいちゃん用に、自分の眼鏡が欲しいんですが」


《あぁ、見えないんだったね。じゃあ、はい》

「有難う御座います、それと、あの耳飾り」


《ね、このままで良いと思うよ。他の国に分けるには危ないもの》

「ですよね、難しくさせてしまって申し訳無い」


《この位は大丈夫だと思う、難しい方が燃える質だから、月読は》

「あぁ、ぽい」


《ね、ふふ》


 泡盛を渡し、今度は金山彦夫婦の神社へ。

 コレも池を通って神社の中へ。




「お邪魔します」

『やあやあ大変だったろう、お疲れさん』

『ね、本当に有難うね』


「いえいえ、それで眼鏡の事なんですが」

『あぁ、ちょっと待っておくれ』

『頼まれモノがね、お散歩行ってらっしゃいな、直ぐにも出来上がるから』


「じゃあ、お願いします」


 近くの和菓子屋を周る。


 梅雨の和菓子可愛いな、紫陽花のデザイン。

 アチコチで買い回り神社へ、シンプルで良いデザインの眼鏡。


 だけどかなりチャラ男感が増すのは何故。


『ふふ、イキってて良い感じよ』

『肩で風切ってけよ、きっとモテるぞ』

「コレ以上は面倒なんでやめときます、有難う御座いました」


 泡盛と甘いモノを進呈し、池から浮島へ。

 隠れないで良いのが便利。




《ふふ、似合う似合う》

「どうも、白蛇さんは泡盛派?日本酒派?」


《そうだな、日本酒派だ。どぶろく何かは凄く良い》

「あぁ、分かる。オススメ有ります?」


《遠野のどぶろくだな、火入れされたのがまた良い》

「ほうほう、度数高め、辛口」


《おうおうそれだ》

「ジュースも有るし、行ってきますねー」


 販売店近くの雑木林から出て、信号を渡りお店へ入る。


 販売店と言うか田舎に良く有る農協スーパーと食堂が併設して有る感じ、つか馬刺し定食って、桜カルビ丼。


 食べよう。


 お刺身皿に真っ赤な生肉が10切れ、お味噌汁にお漬物。

 桜カルビ丼、見た目は牛丼。


 甘辛で美味い、お刺身も美味いし。


 交互に食べ完食。


 続いてやっと店内へ。


 馬刺し有るじゃん、買って帰ろう。

 生どぶろくも、全部買い占めようか。

 でもなぁ、車で来てるんでも無いし怪しまれる、運べるだけにしよう。


 お酒を2本ずつとジュースやジャムも購入、ダンボールを貰ったが、重い。


 少し心配されながらも店を出て信号を渡り、雑木林から浮島へ。


《おぉ、重かったろうに》

「ちょっとだけ、車移動って大事ですな」


 白蛇さんにお酒と馬刺しを渡し、家にはジュースとジャム、冷蔵庫には馬刺しを入れ、せいちゃんにメール。


 [冷蔵庫に馬刺し有り。]


 キツかった、筋トレするか。




 いざプールへ。

 久しぶりのプール、水着に着替えフィンを良く洗い、入水。


 県庁舎的施設なので無音なのよね。

 ヘッドホンか何か欲しいな。


 最近物欲が凄いが、何も持って無い楠や鈴藤ならコレ位は買うか、良い大人なんだし。


 普通に着飾って恋して結婚して、普通に子供産んで育てて。


 普通と言うか大多数か。

 それから外れるのだし、経済位は回さんと。




 お腹が減るまでとも思ったが、せいちゃんの仕事が終わる少し前にと、ヘッドホンを買いに電気街へ。

 コレは試してみないと、好みが分かれるのよ。


 防水、低音、ノイキャン無し。

 値段はそこそこ、コレにしましょ。


 ホクホクで少し街を回ると、ケバブ屋発見。

 しかも何よ、ケバブ丼て。


 野菜抜き、ビッグボーイ、ライス大盛り、ソースはミックス。

 サンドにラップ、全種類をお持ち帰りで。


 味見したいがもう夕飯近く、せいちゃんまだかな、迎えに行こうかしら。


 行くか。




 新しく買ったヘッドホンを試すついでに、駅へ向かう。


 駅へ着くと、ホームレスの姿を初めて見た。

 福祉に不備は無さそうだが、0の世界にも居た、敢えて社会から距離を置いてるタイプの人なんだろうか、それとも福祉から漏れた人なのか。


 どう確かめるべきか、下手したら身分証も無いかもだし。

 誰が詳しいか。


 つか月読さんか。


【はぁい?】

「さぁ、何の要件でしょうか」


【ホームレスね】

「うん、敢えてなのか、福祉から漏れてるのか気になって」


【敢えてのハズだけれど、病気や怪我でもして無いと介入出来無いわよ?】

「敢えてかぁ、何でだろ」


【子供、失くしてるのよ】

「あー」


【自分の不注意と思ってるの、だから普通に生きる資格が無いと。実際には事故ね、記録送りましょうか?】

「一応お願いします」


【それと、子供、ずっと側に居るでしょう。要警戒対象、いつまでも上がれ無いと、良く無いモノになる時も有るのよ】

「それでも介入不可ですか」


【警察関係は、ね。眼鏡新調したでしょう、使ってみたら見えるかも知れないわね】

「ほう」


【ただもし社会復帰をしたいと言われたら援助は出来るわ、その施設一覧も送るわね】

「どうも、失礼しまーす」


 眼鏡を掛けて彼を見る。


 男の子がずっと地面へ何かを書いている、絵だろうか。


 資料を確認すると自動車事故、チャイルドシートが取れたばかりの子供を助手席に乗せ、ドライブへ。


 飲酒運転で突っ込んで来たトラックを避け、息子だけが亡くなった。

 自身は軽症。


 しかも他校の児童の列を除けての事故、奥さんから捜索願いが出てる。

 離婚して無いのか。


 妹が、娘がいるに、3才、事故前に出来た子。


 お兄ちゃんは何を書いてるんだろうか。


 近くの文房具屋でチョークを購入。


 ホームレスの前に座り、子供が書く線に沿ってチョークを走らす。


 おとうさんすき

 いもうとすき

 おかあさんすき


 何度もソレをなぞっている。

 一通り書いては顔を覗き込み、また書く。


「なんのいたずらですか」

「どうぞ」


 眼鏡越しに子供を見せる。

 見えたのか見えないのか、眼鏡から目を反らした。


「なにがしたいんですか」

「いや、社会復帰は別に良いんですけど、子供が成仏出来無いのは可哀想かと」


「警察ですか」

「今はプライベートですんでご心配無く」


「私の、せいですか」

「成仏出来無いのはそうかと。珍しいかと、お子さん失くして離婚しないのは」


「申し出たんですが不受理届を出されましてね」

「娘さんはどうでも良いんですか」


「一緒に居たら、また殺してしまうかも知れない」


「自己憐憫で現実を無視して逃避して、奥さんは1人で子育てですか。悪いのは飲酒運転した方でしょうよ」


「私が連れ出さなかったら」

「そこは納得出来ます、でもですよ、アナタが逃げ出さずに子育て協力してたら、奥さんも倒れ無かったんじゃ?重体です、お子さんは無事ですけど、まぁ、施設でしょうねぇ」


「っ、本当に」

「確かめます?良いですけど本当だったら今度は自殺ですか?娘さん1人にして?」


「いや、でも」


「子供の為にも今暫くは我武者羅に働きたい、でも心配は掛けたく無いから離婚したい。もし立ち直れたら、また結婚して欲しい。もしその間に良い男が出来たら、ソッチに行って欲しい、でも、娘には会わせて欲しい、例え再婚しても養育費は払う。とか言えば少なくとも離婚と言うケジメを付けて、奥さんを自由にさせられたと思うんですけど?抜け、有ります?」


「本当に、何がしたいんですか」

「いや、気になったから聞いてるんです。奥さんを自由にしてたら、とっくに再婚して娘さんも幸せに育ったかも知れない、その可能性を潰し続けてまで自己憐憫に浸って何がしたいのかと」


「罪悪感って、分からないんですか」

「分かりますよ、向けるべき相手を間違えてるのではと聞いてるんです、で、どうなんですか?ほら、この間もずっと繰り返し書いてるんですよ、泣かないで良い子ですよね」


「私は、きっと家庭に戻ったら」

「いや、戻れと言ってませんて。離婚しろっての、立ち直ったフリして離婚して貰えって」


「アナタ一体」

「成仏させようと思ったんですけど、アナタがこんなんじゃ無理かも。お子さんこのまま成仏出来ないとヤバいかも知れません、信用出来ないなら寺の人間でも何でも連れて来ますよ」


「危ないって、どう言う」

「足元の黒い靄、悪いのです。最悪はアナタに取り付いてアナタに誰かを殺させる、そうしてアナタも殺して取り込む。もしくは、今度は僕に殺されるか」


「8課か」

「まぁ両方に、スサ隊、呼びます?それともお坊さん?禰宜にしときます?」


「税金泥棒」

「わぉ、じゃあ奥さんと会わないで下さいね、そんなんじゃ息子さんが妹さんに悪さするかも知れないんで」


「ウチの子に限って」

「悪く成長する事も有るんですよ、捻れた親の背中見て育つと。最後のチャンスです、良いお坊さんの居る浅草の寺に連れてきますから、確認するかはアナタ次第」


 好奇心なのか親心なのか、人気の無い場所へ移動すると彼も付いて来た。


 そうして電柱の隙間へ、驚いた様子だったが手招きするとすんなり通った。


 そうして境内裏手へ。

 社務所で手帳を出し、要警戒対象が来たと説明すると、お坊さんがやって来た。


 イケメンさん、出勤前にすまんね。


《彼の子供ですね》

「すんません、頑張って説得しても駄目でした」


《ココまで連れて来て頂けただけでも充分ですよ、後は私達でお話し致しますから》

「申し訳無い、出勤前でしょうに」


《いえいえ、今は少し変わってココでの待機になりましたから》

「おー、じゃあ、お願いします」


《はい、では》


 眼福でした。


 そのまま浮島へ。

 一服。




《まぁまぁじゃの》

「僕達は、何て、無力なんだ」


《そう落ち込むな、道を示せば誰もが行くとも限らん。そうじゃ、清一に話しておやり》

「何の成果も得られませんでした、って?ダセェ」


《完璧ばかりを見せたいか、この見栄っ張りめ》

「別にぃ、そんなんじゃ無いしぃ」


《ほう、で有れば余裕で言えるのぅ》

「そ、まぁねぇ」


《ならついでに楠として渡してこい、月読からの命令じゃ、じゃあの》


 浮島から、せいちゃんの家の近くへ。


 少し買い物をして馬刺し用にと米を炊いて居ると、せいちゃんが帰って来た。


「おかえり」

『ただいま帰りました、けど、何で楠さんが?』


「コレを渡すのに、どうぞ」

『ありがとうございます、コレは一体』


「日頃のお礼?楠の猫山さんと鈴藤で買いに行った」

『あぁ、どうも』


「女除けにするそうで」

『あ、すみません、本人の了承を得てるのかと』


「まぁ、もうそうなっちゃってるんで良いんですが、だからそれを上げるんです」


『あ、はい』

「すまんが慣れてくれ、また次も有ると思う。今度は指輪」


『指輪って』

「ペア」


『それは』

「嫌でも我慢してくれ、了承したならそう言う事になるんだから」


『すみません、浅慮でした』

「全くだ」


 真っ赤、仕返しするか。

 ソラちゃんスマホ。


【はい】


 連写て、やるじゃん。


『あ、消して下さいよ、画像』


「疑似クラウドに上げたら消すわ」

『もー』


 せいちゃんがお風呂に逃げ込んだので、そのまま飯の準備。

 タマネギをスライスして放置。


 後は味噌汁かお吸い物か、お吸い物だな。


 インスタントのお吸い物、お漬物は胡瓜の味噌漬け。


 小鉢にニンニクとショウガのチューブ、ウズラの卵、お醤油。

 平皿にタマネギスライスと馬刺しを盛る。


「以上だ」

『頂きます、コレは何処で?』


「遠野、白蛇さんのどぶろく買いに行ったら有った」

『岩手って馬刺しのイメージ無いですけどね』


「ね、行ったら食堂も有ってビックリしたわ。味見、一口飲む?」

『連日って体には』


「たまの方がヤバいらしいよ」

『じゃあ、一口だけ』


「キツいか」

『ですね』


「コッチは」

『さっきよりは』


「じゃあコレ」

『飲めはしますけど、昨日のシャンパンの方が』


「女子か」

『あ、差別ですよ』


「ですね」

『卵付けるとヤバいですね、お店で出たんですか?』


「いや、有ったら良いなと、酒に合うかと」

『確かに、コレならコッチ、飲めますね』


「飲んべぇの口してるのになぁ」

『ですよねぇ、良く言われます』


「あ、プール行って来たよ、無音だからヘッドホン買ったわ、ケバブも」

『わぁ、良い匂い』


「おつまみケバブ開けよう。んでホームレス見付けたんだけど、説得に失敗した」

『失敗?暴れたんですか?』


「いや、お寺さん預けて来た、浅草のイケメンに」

『あぁ、でもそれ失敗と言うより成功では?』


「そう?」

『話し聞いて貰うのも大変だって言ってましたよ、生活課の方々』


「あぁ、要警戒対象だったから眼鏡使った、鈴藤用に新しいのかざして見せた」

『もしかして、息子さん失くされた?』


「おう、すげぇ可哀想なんだもん、子供が。父親殺してやろうかと思ったわ」

『ダメですよ、余計悪霊化しそうじゃ無いですか』


「分からんよ、楽にして上げたって言ったら意外と成仏するかもだし」

『楠さんなら口の上手さでしそうですね』


「あぁ、鈴藤で行ったわ。買い物も、コレは君の為だけに変化したんだぞ観上君」

『お手数お掛けします、ありがとうございます』


「喜べ、失礼だぞ、傷付いちゃう」

『他所様が居ないんで無理ですね』


「練習だぞ練習、そんなんじゃ女除けにならんよぅ」

『猫山さんじゃあ』


「ほれ、腕」

『良かった、一瞬疑いかけましたよ』


「多分、結界有るところでは直ぐにバラすと思う、井縫さんや君とは違って優しいからぁ」

『確かに、昨日も直ぐに声を戻してましたね』


「既婚者だからダメだぞ」

『鈴藤さんみたいに誰にでもデレデレする人種じゃ無いんで大丈夫です』


「マジでどんなんなら良いの?そういや例の子って」

『おかわり頂きますね』


「あ、井縫さんに聞くから良いし、写真位有るべ」

『写真は直ぐ抜いて裁断しました』


「はー、ちょっとゴミ漁るか」

『言うと思って生ゴミと混ぜました』


「ママンに挨拶して聞く」

『それは本気で勘弁して貰えませんかね』


「なら言え、ワシの言ったべ」

『あー、もう忘れちゃいましたー、美味しいなー』


「まさかそんな凄い性癖が」

『引っ掛かりませんよ、普通です、普通』


「普通って大多数って事で良い?」

『何ですか急に真面目に』


「自分の思う普通って何だろうと思って、それが大多数だったから」

『一般的にはそうかと』


「じゃあ、そこらに居る女が好みだと、なるほどねぇ」

『もー、真面目な話しから急に』


「真面目に聞いてるんだけど、まぁ、良いか」

『そうして下さい』


 うっかり深追いしそうになったが、恋心を自覚して目覚められても困る。


 暫くはこのままで居て欲しい。


 今度は自分のお風呂の番、今日は浮島へ行き温泉へ。

 上がってからは、エリクサーを作りつつストレッチ。


 そうして今度は鈴藤になり筋トレ、そしてストレッチ。

 そしてまたお風呂。


 エリクサーが出来上がったが、神様達のご好意で眠っている間も作って貰う事になった。

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