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5月31日(日)

 曇り、高値。


 誰も居ない、何も無い家で起きる。

 アレから特に連絡も無く、今の時間は10時過ぎ。


 急いで支度をすれば朝メニューがイケるが、先ずはトイレに身支度。

 服はいつもの、化粧も無しで外へ出る。

 この時間なら補導も何も無いだろうし。


 ハンバーガー店を回り、コンビニで炭酸ジュースと氷を買って浮島へ。


 中央分離帯で音楽を掛けながら一服、後はもう飲んだり食べたり。

 ポテト、ナゲット、パイ、バーガー2つで満腹感。


 そこまでお腹もポッコリして無いし、久し振りのジャンクで満腹は幸せ。


 ゴミをまとめ、建った家を探索。


 トイレは流石に無かったが、囲炉裏のあるお家。

 床は板の間、囲炉裏は横長で大きい、炭か薪が有ればエリクサー作り放題だが。


 ただ、炭も薪も無い。

 改めて扱うとなると、どっちが良いのだろうか。


 ホームセンターか。


 地上に降りて一服しながら検索、炭の方が安定するなんて、良いじゃない炭。

 しかも近くで売ってるが、高い気がする。


 薪の値段を気にして無かったけど、タダ同然に使ってたし。


 ココはカラス天狗さんに相談か?

 いや、渋爺の所に行こうか。


 でも、鈴藤に変身しないとだし、灯台だし。


『楠さん?』

『ハナ、おはよう』

「あ、おはよう」


『道端で立ち尽くして、どうしたんですか?』

「燃料の事でちょっと。ジム?」


『もう行って来ました、お昼ご飯の買い出しです。にしても燃料って』

「家のね、中見た?」


『あぁ、はい、それでなんですね』

「炭高い、薪買うの?って感じ、向こうで買った事無かったから、かと言って渋爺に頼むのもなと。それより、何買ったの?」


『ハンバーガーです、昨日の影響を受けました』

「食ったよ、うまかったー」


『大丈夫でした?』

「うん。じゃ、ちょっと相談に行ってくる」


『はい、いってらっしゃい』

『後でねー』


 人が多いので家に戻り、家から警視庁の特別室へ。

 月読さんの所に向かうと、カラス天狗2号さんも居た。


『おはよう』

「おはようございます、囲炉裏の炭か薪の事を相談に来ました」

「おはようございます。今、その話しをしてました」


『そうなのよ、両方仕入れようかと思って、呼ぼうと思ってたの』

「ほう」


『彼に付いて行けば良いから、宜しく』

「うい」

「じゃ、失礼します」


 部屋を出て、エレベーターを降り特別室へ。


「あの、着替えます?」

「いや、大丈夫です」


「へい」




 特別室に着くと羽衣を装備する用にと言われた、そうして行く先は和歌山県の山奥。


 軽トラの置かれた倉庫の様な場所へと降り立った。


『本当に飛んで来るとは、流石、天狗さんだ。その手に握ってる子は攫って来たんか』

「そうです」

「冗談ですよ。成り立てで上手く飛べないんで、こうして来ました」


『本当に鴉の濡れ羽色の髪だね、さぁさぁ、品物だ、持ってっておくれ』

「お金はあるの?」

「はい、現金です。数えて下さい」


『良いんですかね、数えてたら葉っぱに化けませんかねぇ?』

「心配なら金にしときます?ほら」


『いや、大人しく数えときましょ、少し待ってて下さいね』


「やめて下さいよ、今の大きさじゃ渡し過ぎになる」

「大体で切ればいいかと」


「はぁ、もう少し頓着を持った方が良いのでは」

「使い道無いもの」


『お待たせしました、確かに頂戴しました』

「あの、常連さんとかの分は良いんですか?」


『規格外も有りますし、もう引退するんで、在庫処分みたいなもんですから、ご心配無く』

「なり手が居ないんですか?」


『いいやね、持ち回りで窯を手伝ってたんですがね、重労働なんで引退するんですわ、なもんで窯は譲りますがね、自分の作った炭は置いておけんので。今後はね、植樹でもして孫に繋げようかと思ってまして、はい、そう言う事なんですよ』

「植樹用は、もう用意してあるんですか?」


『あぁ、ありますよ、そろそろ植えようかとね、アッチです』


 お爺さんに付いて行くと、小さくブロック分けされた鉢に、艶々とした葉が生い茂っている。


 見た感じ発芽率良さそう。


「1つ良いですか?」

『あぁ、えぇ、どうぞ』


「もしここら辺に植えるなら、何処に植えます?」

『あぁ、道の反対側のね、脆くなってるから植えるか整地するかって、ほら、そこだ』


「なるほど、あ、お菓子どうぞ、お邪魔しました」


 炭、木灰と書かれた袋をストレージにしまい、道の端へと渡った。


「確かに少し脆そうですけど」

「良いお爺さんには勤労感謝、退職祝いです」


 少し地面を掘り、苗木を軽く差し込む。

 後は泉の水と共に苗に魔力を注ぐ。


 出来るだけ良く根付く様に、根元へ集中。


 伸びが遅い、成長に時間の掛かる木だ。

 コレを植樹とは、偉いぞお爺さん。


 すっかり根付いたので、木の実を少し貰い浮き島へと戻った。




「霊元が勿体無くないんですかね」

「今、満タンなんで大丈夫です」


 目の前で計測。

 高値、あの程度じゃ揺らぎもしない。


「それ、何してるんですか」

「霊元の容量測定器」


「便利だなぁ、俺にも使えません?」

「自分専用なんで、どうだろう。試作機は1つあるんで、使ってみます?」


「はい、お願いします」


 清浄魔法で綺麗にし、更に白蛇池で水洗いしてから付けて貰う。

 測定を開始すると、タブレットから爆音で警告音が鳴り出した。


「すまん、知らんかったもんで」

「いや、俺も迂闊でした」


「でも、どうやって分かったんだろ、持ち主違うって」

「霊元の波長かと、特にアナタのは大きいから、特徴が出易いんだと思います」


「ほう」

「コレは黙っといた方が、鈴藤だってバレますよ」


「双子だから似てるんですよ、きっと」

「そういう事にしときます、じゃ、木灰を出して下さい」


「うい」


 囲炉裏にゆっくり注がれる中、板の間の下に設置されていた木炭容れに炭を入れる。


 大きさ順に入れ終わった頃、灰も入れ終わっていた。

 それっぽい。


「じゃあ、次は薪ですね」


 何とフィンランドへ。

 どうやら渋爺と交渉したらしい、指定された森の中へ向かうと凄い量の薪が置いてあった。


 薪と言うか、原木。


『おぉ、シオンか、女の格好でどうした』

「事情が有りまして、楠花子と名乗って居ます」


『ハンナ?』

「ハナ」


『ハ、ナ、か。で、原木で良いと言われたんだが、斧は有るのか?剣じゃダメだぞ、断面にムラが無いと火が着き難いからな』


【御座います、手頃なサイズを何個かお出しします】


 助かる、ありがとう。

 幾つか斧を振ってみて、渋爺の助言通り少し重めに感じる斧で薪割り。


 スッと下ろすと、メキメキ裂ける。

 くそ気持ち良い。

 自分専用では無いので、カラス天狗さんにも斧を選ばせ割らせてみる。


 ふふ、と鼻で笑って何度か薪割りを楽しんでいた。


「助かります、ありがとうございます。はい、ローマのお土産です」

『ふっ、生ハムの原木か。コレは、切れ味が良い刃物で薄く切るんだぞ』


「うい」

「楠さん、コレを、現金です」


「どうぞ、お金だそうです」

『あぁ、じゃあ、お前への資金援助だ、ほれ』


「えー」

『なんだ』


「プレッシャー」

『はっ、今更。聞いたぞ、ウガリットの王と交渉したんだろ?コレ位は受け取らないでどうする』


「渋爺は違うもの、そう言うのじゃ無い」

『気にするな、余ったら次のに回せば良い、プールしとけ』


「置いてけ無いかも知れんのに」

「どうしました?」


「預かりたく無いんだが」

「あの家に置いておいたらどうでしょう」


「あぁ、そうね。保管場所有りました、預かります」

『おう』


 割った薪、薪割りの土台、原木を貰って浮島へ戻った。

 エリクサーより薪割りたい。


「楠さん、さっきの良いですか?」

「えー、薪割りたいのに」


「物が揃えば、アナタは仙薬を作ると聞いてたんですけど」

「ぐぅ、作りますけど、火興し出来ます?」

『どれ、乾かしてやろう』


 問答無用で割り込んで来たドリアードが生木に【ドライ】と唱えた。

 いけるんかい。


「マジか」

『着けてみい』

「はい」


 カラス天狗2号さんと中に入り、囲炉裏で火が着くのを待つ間、薪を指定された場所へ置く。

 火は安定し跳ねる事も無く、順調に燃えている。


「ありがとう」

『うむ』

「良いですね、このまま熾火になるまで置いておきますよ」


「薪割りたい」

「夜勤有るんですよね、少し寝て下さい」


「へーい」


 お布団を出し、お昼寝。






「あの、熾火になりましたよ」

「あ、どうも」


「斧も返します、モノに取り付かれる人間の気持ちが分かった、コワい」

「どんだけ割ったんすか」


「見えてるだけ、そうでも無いかと」

「いや、もう暫く割らないで良いのでは」


「有る程度は割っとかないと乾燥しないんで」

「あぁ、なるほど」


「それより、寝入りも寝付きも尋常じゃなく良いですけど、大丈夫ですか?薪割りでも起きないし」

「大丈夫です、ちょっとトイレ」


「どうぞ」


 家に戻り、ついでに少し身支度をしてから戻る。

 眠ったのは1時間程か、再び浮島へ戻りエリクサー作り開始。


 蒸留器と鍋、樽をセット。

 囲炉裏に置かれたゴトクの高さが有るので、混ぜる時は立ったまま。


 拡張された鍋はアホ程入る。

 泉の水も尽きちゃうんじゃ無いか、追加するならナイアスの水か温泉か。

 慣れたのに作り方が変わるのは困るのだが、先ずはコレを作って様子見か。


 蒸留器の方では薪を追加し、熾火になったらそっと鍋の方へ移動させる。

 いかにゆっくり移動させるか、崩れない様に動かすのが面白い。


 失敗しても差し支えないからこそ、楽しい。


 かき混ぜては氷を追加したり、火を調節したりと。

 囲炉裏は初めてなので今日はこんな塩梅か、丸薬も作るとミスしそう。


 そうしてオヤツの時間に1回目が出来上がった。


 休憩。


「オヤツ食べます?」

「あぁ、頂きます。にしても魔法の鍋ですか」


「北欧のエイル神から頂きました」

「なぜ」


「秘密です」

「ですよね。斧もそうだし、でも、何も言えないのは大変じゃ無いんですか?」


「なんもでは無いですよ、別に、名前だって言えますし」

「俺は井縫、侑翔」


「ぬい、難し」

「糸に逢う、針仕事の家系に付く字だそうです」


「あぁ、ほう。学校でそう習いますか」

「苗字か名前の由来を調べる機会が有ったので」


「へー、名前良いんですか、黒子でカラス天狗なのに」

「数が多いし、他のも来るだろうから、何処のカラス天狗か位は別に良いかと」


「多いんですね、既に交代に誰か他に来てるんでしょうか」

「向こうに」


「ですよね、踏み込まないでおきます」

「そう言わず、もう半分の薪と炭を頼みます」


 かなり似た作りだが、変わりに有るのは火鉢。

 コントロールが楽なのと、暖を取るには充分なんだと。


「にしても、携帯が使えないのは不便では」

「いや、衛星電話が有るんで」


「おぉ、見せて貰っても?」

「はい」


 何代も前の携帯にも見える、アンテナの自己主張が凄い。

 周回衛星からの電波なので、遅延もほぼ無いとか。


 そうか、最悪はロケットで宇宙まで行けば良いのか。


 ただ、戻れるんかしら。

 コートが有っても無酸素はどうなるのか、試して無いし。


「どうも」

「まだ作るなら薪でも割っときますけど」


「斧、貸します?」

「いや、それはもうやめときます」


 2回目のエリクサーをセットしながら、夢想する。




 盾の射出を連続させて宇宙へ行く?

 勢い余って宇宙に行ったら死なないか?


 寧ろ、宇宙を漂う事になるとか?

 と言うか、コートだけで大気圏内外は生存可能なのか。


 帰るにしても、大気圏突入出来るのか?


 そも、大気圏の何処に行けば良い?


 誰に、どの神様に聞けば良いんだ。


 宇宙?大気?大気圏?

 オーロラ?


 オーロラの神様て、居るのかしら。

 まぁ、居るか。


 にしても、お腹減った。


 オヤツで物足りなさを感じたので計測、高値。


 普通の空腹か。

 そりゃそうか、バーガー食べてから5時間は経ってるし。


「ちょっと飯を買い物に行ってきます」

「買って来ますよ」


「いや、直ぐなんで大丈夫です」

「また何かに巻き込まれて、鍋がダメになられても困るんですけど」


「う、お願いします」


 色々とバレているらしいので、大人しくエリクサーを作りながら待つ。

 今回はチキンの美味しいお店のハンバーガー、レギュラーメニューと新作とポテト。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


「食うのに身にならないんですね」

「なる方です。あ、胸はね、邪魔なので」


「あんな良いモノを邪魔と」

「胸派ですか」


「いや、足首」

「ヒール?」


「スニーカーから生える、生の足首」

「まさかのスポーツ系」


「職務上、色々見ると、健康的な感じが良くなるんですよ。明るいとか、元気とか。それでもまぁ、憑かれたりするから意味は無いんですけどね」

「言える範囲で、職務内容をお聞きしても?」


「対象の監視観察、内部調査、内偵系、人間の。アナタは違いますよ、今日は補佐しろと言われてるだけです、神々から」


「ご苦労様です」

「いや、気楽、好きに休憩出来るし」


「そらもう存分に、ご自由に過ごして下さい、マジで」


 人の闇ばかり見てたら病みそうだが、だから息抜きが上手なのか。

 上手に成らざるおえんのか、闇が深い。


 食べながら話しながら、エリクサー作りは進む。


 薪をくべては氷を足し、鍋をかき混ぜては火の調節をする。


 薪の割れる音、火のパチパチとした音、たまに吹く風の音。

 焚き火の匂いと新築の家の良い匂い、コレで雨の音が有れば完璧なのに。




 薄暗くなってきた。

 試しに青い蝶々の蝋燭を取り出すと、火を避け良い塩梅の場所を飛んでくれる。


「それは、式神ですか?それか精霊や妖精や」

「さぁ?」


「さぁって」


「原材料は蝋燭です」

「火は危ないんじゃ」


「寧ろ火には強いはず」

「うーん?」


「深く考えたら負けかと」

「いや、一応報告義務が有るんで、何と言うか」


「魔力を吸った蝋燭」

「憑き物では無い?」


「多分?意思の疎通を試みるまでも無いと言うか」

「多分、まぁ、良いか」


「うい、宜しくどうぞ」


 蝶々が気に入ったらしく、ちょっかいを出して遊んでいる。

 息を吹きかけたり、優しく指で追い回したり。


 蝶も個性が有るのか、無反応だったり構われたりと様々。

 反応が有ると非常に幼い顔で笑う、一体幾つなんだ井縫さん。


「コレ良いなぁ、欲しい」

「あぁ、こんな感じの蝋燭くれれば代わりは出来るかと」


「蝋燭ね、ちょっと下で調べてきます」

「うい」


 そうして2回目のエリクサーが出来上がって休憩していると、井縫さんが椅子と共に戻って来た。


「コレ貰って来たんで、座ったまま作業出来る筈です」

「ありがとうございます」


「それと、こんなんで良い?」


 差し出されたタブレットを見ると、これまた良い細工の蝋燭作品が出ているが。

 高い。


「高い。安いセミプロので大丈夫ですよ」

「そう、ならコッチ?」


「全然、普通に良い感じなのに」

「さっきのは有名な作家らしい」


「無名にこそ光を、買いに行きましょう」


 出店しているのは、地方のハンドメイド作品が集まるお店。

 通販でも買えるのだが、他の品物、共に実物チェックへ。


 店内は老若男女入り乱れ、ガラスケースに飾られた品物を眺めたり、実物を手に取り購入している。

 本当に色々ある、目移りがヤバい。

 なんとか誘惑を断ち切り、目的のショーケースへ。


 実物の後ろでは実際に火が灯された作品の映像が流れ、実物はゆっくりとクルクル回転させられている。


 リアル過ぎる、ちょっとキモい。


「虫、苦手ですね」

「かなり」


 だが蝶々のクオリティは良い、蝶々だけ買い漁り他を見て回る。


 デフォルメされ過ぎてたり、リアル過ぎたり。


 そんな中でドンピシャの作品を見つけた。

 作者も虫は苦手だそうで、蛍の様な淡い緑色のテントウ虫や、蜻蛉羽の蝶々が置かれている。

 排されたキモポイントが同じっぽい、好き。


「買いますか」

「もち」


 箱に目一杯入っていても、キモく無い。

 実にファンシーな見た目、最高。


 ただ問題はドリームランドでの戦闘、久し振りだし補佐も居ないし。

 何か他の方法は無いものか。


 思案しながら浮島へ、さて。


「それで?」

「寝ます」


「ドリームランドですか、なら俺も行ってみたいんだけど」

「今回は危ないかもですよ、戦闘有るんで」


「え、戦闘するとは聞いて無いんだけど」

「ドリームランドの敵を吸収したのが、あの蝶々なのですよ」


「悪かった、今回の話しは無しにしましょう。危ない事はさせられないんで」

「そこまでは危なく無いかと、マーリンも居るだろうし」


「なら、そのマーリン導師に相談を」

「します、ドリームランドで」


「戦闘は無しで、マジで」

「相談します」


「なら、行きます」


 床下に設置されていた火鉢に火種を移し、布団を敷いてドリームランドへと向かう。


 先ずは井縫さん、透明な鍵に驚きつつも触れ、そのまま眠りについた。

 そして自分も。






 いつもの家で起き上がると、2人の背中が見えた。

 縁側でボーッとするマーリンと、動物に怯える井縫さん。


「どうも」

「あ、どうも」

《先ずは蝶を見せて欲しいんだが》


「どうぞ」

《ほう…それで、どれをこうしたい》


「コレ」

《ふむ、蛍色のテントウ虫か、面白いのを見つけたな》


「戦闘は、ちょっとは回避出来ませんかね」

《そうだな、弱くて良いならエリクサーにでも漬けたら良いんじゃ無いか》


「ほう」


 エリクサーの入ったピッチャーに投入。

 沈んだかと思うと、ゆっくりと浮上し、縁へ止まったりふよふよと飛んだりし始めた。


 次に平らな皿へ濃縮蜂蜜酒をドロリと出すと、そこに集まり吸い始めた。

 多いと、ちょっとキモカワ。


「楠さん、もうコレで充分なんだが」

「遠慮すんなって、ちょっと行ってみようよ」

《少しだぞ》


 染め物の里の先、未開の地へ向かう。

 乾燥地帯の様に薄い緑の森は、今までとは少し様相が違う。


『ほう、踏み入るんじゃな』

「おう、ドリアードも来てくれると嬉しいんじゃが」


『ふふ、我も丁度同行を申し出ようとしておったんじゃ、行こうぞ』

「宜しく」

「さっきと違って行く気満々じゃん」

《まぁ、君を気遣ってだ。今は行けると確信できたんだろう、な?》


「おう、イケる」

『じゃの』


 ドリアードによって口を開けた森は、ハバスの滝がある地の様に土が徐々に赤味を帯びていく。

 焦げ茶色から薄茶色に、そして黄土色や赤茶色が混ざり出す。


 木々も色褪せ、疎らになっていく。

 だが森を抜けた辺りで、滝の匂いと音がし始めた。


《滝か》


 整地されていると言うよりは、人や馬の出入りによって出来た道を見付けた。

 コレが滝への道、少し寄り道。


 道が案内したのは滝から少し離れた穏やかな水辺、穏やかな川のせせらぎと水の匂い。

 滝が見える絶景ポイント、勿論、滝へ向かう事も可能。


「水色の水」

「あぁ、ですね」

《向こうのが、手招きしているが》


 滝とは反対方向の道の先には、ハバスの滝の近くで見たお婆さんとお兄さん、どうやらココは合流地点らしい。

 焚火の近くへ行くと、変わらずお茶を勧めてくれた。


「この前はお世話になりました」

『すっかり良くなったね、うん、良い状態だ』

『お前も渡りだったのか』


「お、喋ってくれた」

『ふふ、お前さんと違って修行の身でな、渡りの訓練なんだよ』

『言葉を発しない事で、想いの強さの訓練だ』


「怪我や病気でもすれば一発だと思うんだが」

『あっはっはっは、そうだな、生憎とこやつは健康でな』


「そうか、それはそれで良い事だ、羨ましや」

『俺は、自由に動けるお前が羨ましい』


「ちょっと試しに、逆流させてやろうか」

『おぉ、試すと良い。心して受けろ、弾き飛ばされてしまうぞ』

『はい』


「がんば」


 バルドルにされた様に、手から手へ記憶を逆流させる。

 病の記憶と感情と、痛みを乗せて。


 途中までは耐えていたのだが、子宮の痛みで気を失って倒れてしまった。

 そんな激しいか、怪我だって痕が有るのに。


『ふ、怪我とは違うで耐えられなんだな。まぁ、コレで訓練も次の段階へ進めるだろうさ』

「すんません」


『良い良い、大した事は無い。寧ろ良い人生経験に成ったろうさ。まぁ、お茶でも飲んで、その子達を遊ばせてやると良い』

「はい、ありがとうございます」


 蝶やテントウ虫が滝へと惹き付けられ、ふよゆよと遊び始めた。

 滝へ近付いたり、人に纏わり付いたり、馬や狼にちょっかいを出し逃げ回ったり、実に個性的。


『島へ住まわせるなら、あの水辺の子達が良いだろう、住処を大事にする子は、聖域の良い守りにもなる』

「人は戦闘用として、ちょっかい出す子は?」


『好きにさせたら良い』

「うい」


 遠くから響く滝の音と、ゆったりと流れる水の音。

 たまに吹く風と、焚火の音。


「本当に、穏やかな場所ですね」

「まだ戦闘地帯は先みたい」

『あぁ、お前さんも訓練に来たんだったね、この子を案内に付けてやろう、行っておいで』


《墓穴を掘ったな》

「あぁ、ですね」

「嫌か?帰るか?」


「俺は戦闘が不得手で、だから内偵系なんです」

「主に何が苦手ぞ」


「手応え」


「あぁ、魔剣なら手応え無いよ」

「それはやめとく」


「じゃあ、遠距離武器はどうよ」


 弓に銃、吹き矢にスリングショットまで様々。

 一気に倉庫の中身を貰ったので知らなかったが、結構あるな。


「この吹き矢は、中身は?」

「さぁ」

『貸しとくれ…ふむ、ほう。内径が合えば何でも良いとさ、確実に当てられると言ってるよ』


「おぉ、流石神器、お婆さんも凄いな、物の声が聞こえるんだ」

『ふふ、少しだけだ』


「この、吹き矢を借りたいです」

「良いよ、いっぱいあるし上げる」


「借りたいと言ったんですけど」

「大丈夫だってば、等価交換は成立してるから。良い蝋燭まで導いてくれたんだし、協力してくれてる」


「貰い過ぎと感じる」

「君を通して国家へ貢献したと思ってくれ給えよ」


「それなら受け取りますけど、後の事は上に任せますからね」

「おう、宜しくどうぞ。ワシも使ってみようかな」


『なら少し調合したのをやろう、ほれ。道が拓けたお祝いだ』

「ありがとうございます」


 良く鞣された柔らかい革製の袋を受け取り、狼を連れ荒野へと向かう。

 ドリアードはエアプランツとなり、頭の上に鎮座しておられる。


 何も無い、つまらん。

 歩くの面倒、飛んでしまおうか。


 そう思っていると、狼に鼻先で背中へと乗せられ、走られた。

 どう捕まって良いのか、ただただ首に手を回ししがみついていると、砂漠地帯へと入った。


 朝も昼も夜も駆け抜け、漸く止まったのはオアシス。

 見覚えのあるオアシスに良く似ている。


『ふぅ、休憩じゃ休憩』

「そうして下さい、頼みます」

《本当に、そうだな》

「すまん、休憩にしましょう」


 コチラもコチラで大変だったのだが、自力組も大変だったらしい。

 狼は水をがぶ飲み、皆にも湯呑を渡すとオアシスに湧く水を飲んでいる。


 オアシス以外全て砂漠、砂ばかり。

 後は夜空と三日月。


 皆が人心地ついた頃、狼が1箇所を見つめ低く唸る。

 良く見ると先程は無かった明かりが、蜃気楼の様に煌めき揺れている。


 そこから来たのか、黒い靄を背負った白いグールが見えた。

 手には血塗れの斧を持って、フラフラとコチラに来ている様子。


 蝶達を出すと好奇心組が先行部隊となり、グールを取り囲む。

 そして人懐っこいのが背後を取ると、靄を吸収し始めた。


 振り回す斧を避けながらも注意を引き、その合間に靄が完全に吸収された。

 白いグールは我に返ったのか、泣きながら斧を手放すと、話し始めた。


《オデ、危なイ斧拾っタ、棄てようトして、持っタ、怖くなっテ、逃げテ来タ》

「何処で?」


《砂漠、奥、蜃気楼ノ奥》

「お家は?」


《蜃気楼、モッと奥。前、蜃気楼、無かっタ、蜃気楼危なイとコ》

「そっか、ココで休んでな」


《うン》


「行くんですか」

「そらね」

《少しだぞ、あんまり危なくなったら引き返すからな》

『じゃな、我の力も微妙じゃし』


「うい、行きましょ」


 狼に白いグールを任せ、蜃気楼へ進む。

 砂に足を取られながらも迂回ルートを探してみたが、どうしても宮殿の入り口に辿り着いてしまう。


 目がバグったのかと思う程、焦点の定まらない宮殿のホログラム。

 触れると水面の様に映像が揺れ、移ろう扉が開いた。


 そこには今まで出会った人間や神々の像が砂で作られ、完成しては逆再生し崩れ去る街。

 目の端に悪いグールが見えるのだが、虚像に隠され上手く視認出来ない。


 目を閉じても、何かに邪魔され見えない。

 コレはイラつく。


「大丈夫ですか」

「上手く見えない」


「吹き矢、試しますよ」


 井縫さんが上空へ飛び上がり、先ずは1発。

 だが威力が弱いのか、砂に邪魔され当たるも大したダメージが無い。


「ホーミングミサイルでもぶち込んじゃえ」

「有るんですか?」


「神器のどれかなら」

「どれかって」


 ひとまず引き返し、銃を再確認。

 実弾要らずの魔法の銃、触って確かめると吸われる感覚が有るのと、無いモノがある。


 眼鏡で確認すると、外気吸収タイプと魔素吸収タイプらしい流れが見えた。

 井縫さんは少ないだろうし、外気吸収タイプから選ばせる。


 井縫さんもマーリンも、中長距離系。

 スナイパー2人って。


「スナイパーって」

「近接は苦手で」

《俺もだ、借りるぞ》


「女子に斥候やらせますか」

「援護はしますんで、危なくなったら逃げて下さいよ」

《な、頼むぞ》


「分かった、ドリアードはマーリンと待っててね」

『おう、気を付けるんじゃぞ』


 眼鏡を付け、再び扉を開く。

 砂の像はより一層リアルさを増し、生きて居る様に見え、崩れる様が痛々しい。


「近接用の銃剣とかある?」

《お出しします。後方支援に移行します》


「宜しくどうぞ」


 両ききでは無いが右手に銃剣、左手に両刃刀を持ち。

 蝶達を出し、先ずは悪いグールを1匹だけ追う。


 迷路じみた街の中を蝶と共に駆け抜ける、ホログラムの虚像と砂の壁に阻まれながらも、それを打ち崩しながら1匹を追い詰める事が出来た。

 時間が掛かった、コレは普通にイラつく。


 ジリジリと躙り寄ると、角持ちの蛇が壁から溢れ出し、跡形も無くグールを食い散らかした。

 赤いヒゲからして竜種にも見えたが、凶悪な面持ちだった。


 呆気にとられていると、井縫さんとマーリンの声が聞こえた。

 上から、何か降って来るらしい。


 落ちるまでに駆け付け様と向かうと、先程とは違うグールなのだが、何処かで見た顔に似ている。

 牛頭事件の旦那だ、そっくり。


 何だココは、どうして俺が。

 と、向こうと同じ事を口走って、走って逃げて行く。


 再び追い詰め壁に触れると、またしても蛇が食い漁り、砂壁に消えた。

 どうしたもんか。


「どうしましょうねぇ、井縫さん」

「ココが畜生道なら救ってやっても良いですけど、どう救いますか」


「死は救い」

「向こうで死なれても困りますよ、せめて刑期は全うして貰わないと」


「えー、じゃあ、壁を壊す?」

「良いんですか?竜かも知れないのに」


「凄い怖い顔やねんもん、飛ばなそうだし」

「悪しきモノですかね?」


「分からん、保留。出口に行ってみよう」


 出口まで飛ぼうとすると砂壁に阻まれてしまうので、蝶の案内で出口まで向かう。

 グール達は襲っては来ないので放置、そうして外へ出ると石造りの街が悪い怪物達によって破壊されている最中だった。


「援護します」

「宜しくどうぞ」


 狭い街中を出来るだけ破壊しない様に制圧して行く。

 すっかりナビ役になったマーリンと、援護射撃をする井縫さんに指示されながら進む。


 サイレンサー無しでガンガン撃って、敵を引き付け倒して行く。

 外気吸収タイプはリロードが有るのが不便だが、コチラは打ち放題。


 蝶達も勿論頑張っている、吸う量も増えたのか1匹1撃で仕留められる様になってきた。

 そして打ち漏らしは背中のソラちゃん、両手に持った外気吸収タイプの銃で仕留める。


 制圧完了した頃には、蝶達の個性が開花。

 テントウ虫は蛍の様に発光し、蝶は鱗粉を纏っている。


「この鱗粉は」

「麻痺毒か眠らせるんじゃね」


「おぉ、アブね」

「身内には大丈夫でしょ、ね」


 ヒラヒラと舞い、井縫さんの肩に止まった。

 危ない時だけ鱗粉が出るらしい、頭の良い子。


「じゃ、帰りましょう、かなり居たし」

「そう?まぁ帰りますけど」

『あ、蜃気楼が消えておるの』

《じゃあ、オアシスまで引き返すか》


 振り向くと、雲一つ無い青空と煌々と輝く太陽。

 オアシスまでひとっ飛び、そうしてドリアードに寄りかかり、目を閉じた。






 井縫さんと同時に目を覚まし、お互いに顔を見てから時計を確認。


「は、まだ2時間も経ってないって、マジっすか」

「ね」


「ね、って、いつもこうですか」

「いや、井縫さん順応性有ったからスムーズだった」


「何日も経った感覚だったけど」

「そう?あ、テントウ虫出そうね」


 淡く緑色に輝くテントウ虫、蝶も井縫さんに懐いている。

 カワヨ。


「ありがとうございます」

「いえいえ、銃要る?」


「それは相談してきます、コイツらも」

「どうぞ、行ってらっさい」


「遠慮しないで良いんですからね、いつでもコッチ来て下さいよ」

「ういー」


 家へ戻りトイレへ、再び島へ戻り火を戻し、エリクサー作り再開。

 その間に計測、高値、ちょっと困る。


【主、空の魔石が有りますが】


 あぁ、有ったか。

 充填と計測を繰り返し、中域にまで落とした。


 魔石3つ、コレで何をどれだけ出来るかで実数が計測出来ないものか。

 寧ろ、出来ないからこうなのか。


「戻りましたよー」

「ういー」


「使用は、鈴藤が戻ってからだと」

「いつになるのかねぇ」


「今日、ローマの神々からお呼び出しが掛かってるらしいですよ」

「あ、あらー」


「で、鈴藤に伝えて来いと。詳細は直ぐに連絡が行くそうです」

「うい、行ってきます」


「はい、気を付けて」




 浮島からローマへ、コッチはまだお昼前。

 急いで着替え変身し、ベランダの淡雪に水をやっていると、置きっぱなしの携帯では無くドアがノックされた。


『おはよう、引き籠ってた割りに元気そうね』

「おはようございます。まぁ」

「早速なんですが、神々がお会いになりたいそうです」


「怒ってます?」

「いえいえ、とんでもない。寧ろご挨拶が遅れたと、私達に拗ねてらっしゃいます」

『そうそう、さ、直ぐそこだから』


 本当に直ぐそこ。

 ホテルから川沿いを車で走り、街の真ん中に居られた。


 礼拝客と言うか、参拝客なのか観光客なのか、大勢が神様を模った像に会いに来て居る。

 そんな中を潜り抜け、裏口から神殿へと入る。


『すまない、挨拶が遅くなったな』

「いや、コチラから言い出すべきでした、お世話になっております」


『良い良い』

《そうよ、情勢の様子見をし過ぎなのよー?》


 落ち着いた対応の方が戦と門番、門の神様ヤヌス神。

 後頭部にも顔があるらしいんだが、ココからは見えない、戦の時だけ老人の険しい顔が見えるらしい。

 そのお隣で転生者を苛めて居るのが、風のニンフであり蝶番の神様であり、ヤヌス神の奥様カルデア。


『すみませーん、言い出されたらと思ってたんですよー』

「にしても驚きました、街のど真ん中に居られるとは」

《あら、そっちもそうなんじゃ無くって?》


「そうですが、幾つか前ですと天空に居られました」

《浮島ね、でも何か寂しいと思うのよねー?》

『そうだな』

『ねー』


「あの、タブレットはどうしましょうか」

『我々が持つには些か情勢に不安を与えてしまう、ココは地母神のマグナ・マーテルに頼もうと思っている』

《そうね、戦の神が持ってたんじゃ心配されちゃうわ》

『じゃ、次は向こうに行きましょうか』


《そうしてあげて、じゃあまたね》

『あぁ、また』

『さ、次、次ー』


 転生者に押し出され、お菓子を渡すタイミングを完全に逃した。


 そうして次に向かったのは、少し行った先の。

 これまた街のど真ん中。


 噴水が目の前にある神殿、そこも裏口から入る。


『あぁ、良く来てくれたわ』

『コチラ、マグナ・マーテル様です』

「おはようございます、マグナ・マーテル様」


「おはようございます、鈴藤紫苑と申します。挨拶がお」

『おはよう。シオンね、さ、コッチにいらっしゃい、アナタを良く見せて頂戴』


 灰色の髪にタレ目、人懐っこいのに気品が有る、近所で1番美人の若いお母さん的雰囲気。

 髪と同じ灰色の目を見つめると、鳥の影が通る度に色が変わった。


『マグナ・マーテル様、あまり調子に乗って覗いたら』

『あ、ごめんなさい、つい面白くって。ノクスとも会ったのね』


「ノクス?ニュクス?」

『あ、ギリシャ経由なのね、そうよ、西の地下の館で眠っている女神様』


「コチラにいらっしゃる?」

『いいえ、殆どはギリシャの聖域か、その先に居るわね。偶に遊びに来てくれるわ』

「現在居られるのは、他にはアンナ・ペレンナ様とニンフ、精霊様だけです」


「あら、大丈夫ですか」

『ふふ、大丈夫。フリギュアのキュベレーも直ぐに来てくれるから』

『地母神連盟なんですって』


「ほう」

『ごめんなさいね、アナタの求めるモノを与えられなくて』


「あ、いや、大丈夫です。タブレットの話しって」

「本当に、宜しいんでしょうか」


「先ずは初級編、自己紹介辺りをと」

『まぁ、良かったわね』

『やったー!ありがとうシオンは良い転移者ね』

「ありがとうございます、ではコチラでお願いします」


 海外製品のタブレットを受け取りストレージにしまい、ソラちゃんにお任せ。


 暫くしてコピーが完了、個人名や写真は無し。


『ありがとう』

『ふふ、早く見ましょうよ』


「その、アンナ・ペレンナさんは」

「今ココがコンコルディア神殿なのですが、コチラのアスクレピオス神殿に居られます」

『行ってあげて、きっと喜ぶわ』


 挨拶が遅れたお詫びにと和菓子を渡し、転生者とはココでお別れ。


 次は車でと乗ったものの、直ぐに着いた。

 公園の中にある門の前で車を止め、少し歩くと池に立つ小さな神殿へと着いた。


「医神、アスクレピオス様の神殿に居られます、アンナ・ペレンナ様です」

《宜しく、お菓子と飢饉の神様なのだけど、やっぱりココに居たら変かしら》

「いや、神仏習合は日本にも有るので、特には。ただ、どうしてなのかなーとは」


「管理と交流の為に、マグナ・マーテル様と神殿を回っておいでなのです」

「ほう、大変ですね、2神で回られるなんて」


《古い神々は忘れ去られてしまったから、仕方無いのよ》

「習合出来た神々もいらっしゃるんですが、流入でかなり減ってしまったんだそうです」

「お話とインパクトが強いっすもんね」


《ね、でもそちらの国はちゃんと、いらっしゃるのよねぇ》

「神から精霊になられた方もいらっしゃるそうですし、大丈夫ですって、復興チームが頑張ってますから」

「おぉ、復興頑張って下さい」


 お菓子の神様に和菓子はどうなのか聞いてみたが、有りらしいのでお渡しした。


 これで終わり、ぶっちゃけ寂しい。

 歴史的に仕方無いんだろうけど、ギリシャの神々にも会えると思ってたので少し残念。


「あの、浮島でお会いになられたのは?」

「あぁ、川の女神様と妖精、ブルーフェアリーさんです。ドリアードの案内で行きました」


「では、ローマ自体には」

「初めてです。前は天使さんに、ちょっと癖のある会い方だったんですけど、会う事は出来たんですけどねぇ」


「拗れてますよねぇ」

「そうなんですかね、最初も結構向こうからグイグイ来て失敗してたんで、こんなモノかと」


「距離感て難しいですよねぇ」

「えぇ、とっても」


「すみません、お役に立てず」

「いえいえ」


「戻ります?」

「ですね」


 1度ホテルへ戻り、鉢を引き上げ休憩にカフェへと出た。


 勧められるがままに一服、まったりしていると大使館員の方に連絡が入った。

 問題無く挙動しているので、このまま日本へ帰国しても大丈夫との事。


 そのまま車で空港へ送られ、ヘルシンキ経由で約15時間。

 ヘルシンキまで映画を1本見て、空港では喫煙所で程々に過ごし、シャワールームを借りてから飛行機に乗った。


 プレミアムエコノミー、そこから食事を取って爆睡。

『せいちゃん』『スクナさん』『月読さん』『渋爺』《マーリン》『ドリアード』『ローマの転生者』「ローマ大使館員」

「カラス天狗2号」→「井縫侑翔」

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