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5月12日(火)

 曇り。


 久し振りの測定、低値。

 ミスった、回復させないで寝ちゃったから、回復に回ってしまったか。


『おはようございます』


 フラフラと不便そうに冷蔵庫を開けるせいちゃん、筋肉痛か。


「おはよう、筋肉痛?」


『少し』

「治そうか?」


『いえ、その、大丈夫です』

「なんでや、対価はいらんぞ?」


『鈴藤さんに関係無く、少し、術とか法力が怖いんですよ。理屈や何かが、抜けてるじゃ無いですか』

「それは分かるが、理屈は有るでよ。代謝を促して回復させるだけやし、テロメアには干渉しない筈。回復して加齢までしたら、単なる加速なだけだし」


『テロメアを維持して回復だけ促進て、何だか変じゃ無いですか?』

「テロメアは別問題だからじゃ無い?老衰とかの寿命は変えられんし、若返りは試した事は無いが。してみる?」


『うーん』


「まぁ、隠れたリスクを怖がるのは良いと思う、それに治す気が無いと治せないとも聞いたから。うん、がんばれー」

『もー、痛いですってばー』


 せいちゃんをガタガタと揺らしながら車に向かい、そのままバイキングへ。


 卵かけご飯屋さん、数種類の卵や醤油が置いてある。

 そして温泉卵やポーチドエッグと卵を加熱出来る機械、お好みで半熟に焼けるミニホットプレート等が常設されている。


 付け合わせや薬味には鰹節やシラス、べったら漬けに納豆やとろろ、トッピングしたり箸休めにしたり。

 お味噌汁は日替わり、今日は幸運にもアサリ。


 全部で5種類、温泉玉子で全制覇し終了、卵の種類も日替わりなので何度もリピートしたくなる。

 終日やっている事もあり、混雑はそれ程は無し、多分また来る。


「蛋白質摂りまくりですな」

『筋肉が付き易い人が羨ましいです』


「お華奢でフェミニンでらっしゃるものねー」

『もー、コレでもマシになった方なんですからね。食が細くて、今でも筋肉とか付き難いんですよ』


「そっちのタイプか、食べないと付かないものな」

『今は普通に食べれる筈なんですけど、鈴藤さんと一緒だと少なく感じますよね』


「なー、小食ぅ」

『普通ですよ』


 せいちゃんはお茶碗2杯、コチラは茶碗5杯。

 身長差があるのに肩幅が同じだし。


 あれ。

 本当は女子なのだけどなぁ。

 やっぱり、最初から男だったら良かったんだろうか。


 そのまませいちゃんに付き添って警察庁に向かう、科捜班に菓子折りを渡し、ソラクマちゃんがタブレット操作。

 その横で仮眠。






 警察庁の科捜班の目の前で測定。


 中域。

 魔素や霊力が1と同等に有るのか、それ以上か、良い感じに回復する。


 そのまま予備のタブレットを渡すが、直ぐに警視庁の科捜班に持って行って欲しいとの事なので、ソラクマちゃんとタブレットを回収し、警視庁の科捜班へ赴く。


「あ、来た来た、はい、洋服ですね」

「ども」


「それとタブレットだっけ、良いのかい?」

「どうぞ」


 コチラはうって変わって、女5人に男1人。

 きっちりカッチリした雰囲気、向こうがだらしないとかでは無く、空気感が違う感じ。

 ひっつめの女性が多いからだろうか、作業を見せて貰えない所か、またはその両方か。


 早々に引き渡して警察庁へ帰ると、またしても河瀬からメール。


【情報を送る】とURLが添付されて来た。


 バアル外交官長はソロモン国家元首の腹心で有り、その名の通り、主に外交を行っているらしい。

 国の中枢は合計72神によって支えられており、広大な土地や様々な人々を守っている。


 そして次の接触予想は中つ国。

 黄帝、女媧が居るんだそう。

 それしか分からないらしい。


 改めて世界地図を見ると、知ってる国と知らない国がゴチャっとしている。

 北欧辺りは2とほぼ同じだが、トルコは、有った、良かった。


 本当は慣れた転生者の解説が1番なのだろうが、気が乗らない。

 気が乗らない程度の事は飲むべきなんだろうが、気が乗らない。




 晶君に頼むか。

 電話すると秒で繋がった。


【はい】

「晶君、今大丈夫?」


【はい、不動産屋を回っている途中です】

「そっか。急ぎじゃ無いのだけど、連絡先を送るから、その人間に転生者へのマニュアルか何かを寄越せと、言ってくれ」


【はい、畏まりました】

「宜しく、ありがとう」


 河瀬の連絡先を転送して暫くすると、河瀬から了解とのメールが送られて来た。

 少しして、晶君からも了承頂けましたとメールが来た。


 うん、河瀬の連絡先消そう。


 再び警察庁の科捜班でソラクマちゃんを取り出し、コピータブレットから情報提供。


 大まかではあるが、かなりの情報が取れたらしく一旦休憩、せいちゃんと表の食堂に向かう。


 カレーうどんと納豆定食を食べていると、仕事用携帯に連絡が来たので食事を飲んだら、せいちゃんに怒られた。




 行方不明の届け出なのだが、そも容疑者がその届け出をした夫。

 3回の結婚歴、そのどれもが奥方が死亡しての事。

 ただ、全てにアリバイが有る。


 普通の容姿をした普通のサラリーマン、憔悴しきって心当たりも無いと悲嘆に暮れている。


『鈴藤さん』

「心当たり無いのはマジっぽい、でも何か嘘を付いて貰わないと確信は得られんよ」


 1回目の結婚は高校を出て直ぐの事、同級生との結婚は2年で終わった、買い物帰り台風で増水した川で発見された。

 2回目はそれから2年後に会社の同僚と、3年は続いたが心臓麻痺、解剖により心臓病と断定された。

 3回目は3年後、何と1回目の結婚相手の親族からの紹介で、結婚へと至ったそうだが、まだ半年。


 喧嘩もして居らず、全く想定外なのだそう。


『同い年とは聞いてましたが、随分老けてらっしゃいますよね』

「せいちゃんと同じ年齢で3回も。周りが何かしてるのかね」


 黒い靄も何も見えないし、霊も多分居ない筈。


 イタコさんの出番かしら。

 せいちゃんも同じ事を思ったのか、イタコさんを呼び出し取調室で降霊会となった。


 旦那さんが持って来たブラシに手を載せ、暫くすると若い女性の声が聞こえた。


《ごめんなさい、ごめんなさい》


 事情を聞くと既に交通事故で亡くなっているらしい、そして過労死とされた女性に嫌がらせをして追い詰めたと自白した。


 少し年が離れていたので親に反対されていた、そうしているウチに再婚され、怨みが募ったと。

 黒い靄を発するでも無く、ただただ悲しそうに話していた。


「全部そうだったりして」

『まさか』


 ブラシから採集された毛髪鑑定には時間が掛かる事、自宅に帰って来る可能性も有る事から。

 取り敢えずは、とイタコさんと共に家に送り届ける事になった。


 手入れの行き届いた普通の一軒家、黒い靄の気配も無し。

 そして仏壇には位牌と遺品が2つ。


《どれどれ、手を合わさせて下さいね》


 旦那さんがお茶を淹れる隙にイタコさんが遺品に触れると、どちらもが悲しそうにしていると教えてくれた。


『少し上でお話しを聞かせて下さい、日記か何かあるかも知れませんから』


 せいちゃんが旦那さんを連れ2階へ上がったので、イタコさんから話しを聞く。

 2人とも、ごめんなさい、ごめんなさいと謝ってから話し始めた。


 待ち伏せをして川へ落とした。

 待ち伏せをして階段から落とした。


 どうやらこの旦那さん、結婚前に相手が居たらしい。


 上に行き少し尋ねると、またしても悲しそうに話し始めた。

 中学生時代の同級生、同じ高校へ行き結婚しようと約束し合った相手が居た。

 そうして高校合格発表の日、慣れない人混みではぐれた彼女が歩道橋から転落し、亡くなったと。


「その前は、大丈夫ですか」


 初恋同士だったんだそう、そうして何かを悟ったらしく最後にポツリと呟いた。


 女運が無いんですかね。


『先ずはお体を大切に、誰かお知り合いは呼べませんか?』


 従姉妹夫婦が近くに住んでいるそうで、暫くは夫婦が交互に様子を見に来てくれるらしい。

 そして暫くして来た従姉妹さんが呟いた、交通事故かも知れないし、一応入院セットを作りましょうねと。


 せいちゃんと顔を見合わせて、それから暫く何も言えなかった。

 その従姉妹さんの指に結婚指輪は無く、とても綺麗に着飾って居たから。


 しかも職業は運転手、一体何処まで続くんだろう。


《じゃあ、そろそろ失礼しましょうかね》

『あ、はい。何か有りましたらお電話しますので、しっかりお休みになって下さい』

「お邪魔しました」


 車に乗り込むと、イタコさんがフフッと笑い出した。


《アレで最後だよ、アレが1番強いからね》


 黙ったまま、警察庁まで行きイタコさんを送り届け、公園へ。


 なんだったんだ。


『鈴藤さん、1本良いですか』

「おう、何本でもどうぞ」


 せいちゃんと公園に行き一服。

 魂でも吐き出すかの様に、せいちゃんが煙と溜息を同時に吐いている。


『モテるって、なんでしょうね』

「凄い平凡の鏡みたいな人だったよな」


『だからこそ、魅力的なんですかね』

「あー、かも知れん」


『モテるのも、結婚も、ちょっと怖いんですけど』

「な、激レアに遭遇したとは言え、ちょっと結婚の事は置いとこか」


 警視庁に再び戻り、イタコさんの報告書にそれぞれのサインをして、別々の場所へと戻った。




 目の前には忍さん、マトモそうな女性の1人。

 つい、話してしまった。


「前世の業とか、カルマとか言われるヤツじゃ無い?」

「えー、本人、何もして無いのに」


「だから周りのせいにしとこうって事よ、周りが勝手に業々してるだけ、だから少なくとも本人には直接被害が無いんだし」

「いや、精神的ダメージが有るかと」


「女運が悪いと気付けたなら、男にしたら良いと思う」

「そう上手くいきますか」


「じゃなきゃ1人で居るしか無いと思う、運命ってそんなモノじゃ無いの?」

「どうなんですかね、流転を受け入れろはしんどいですよ」


「だろうけど、良い事は無かったの?」

「実質±0ですよ、離れるのには変わりないんですから」


「でも、どっちも生きてるじゃない?もし関わらなかったら相手が死んでたかもなんだし、そうしたら少しは良い感じに思えない?」


「まぁ、はい」


 理屈で四の字固めにされた気もするが、確かに関わらなかったら、マティアスやレーヴィが死んでたとなると、嫌ではあるが。

 でも、だからって、延々と世界を移動させられる程の精神力は無い、例えソラちゃんが居ても。


【主】

「はい」


《義体の提示を要求します》

「口に出してるぅ、拒否出来ない方向じゃん」


 義体と聞いた瞬間に、作業していた科捜班全員が止まった、時間停止系魔法か。

 顔をコチラに向け凄い迫力でキラキラ、ギラギラと視線を向けている。


【拒否は可能です】


 そうだけどもぉ、この空気は無理よぉ。


「ねぇ、義体の提示って言ったよね?」


「ですね、ただ非破壊検査のみですよ、スペアも何も無いんですから」

「ちょっと、友達の友達に協力頼むから、個人的に調べたいんだけど」


「スペアになりそうな代替機くれたら、考えます」

「分かった、がんばる」


 周りからの応援もあり、忍ちゃんは早々に有給休暇を申請し、出て行ってしまった。

 RTT全力で来られたら、まぁ、良いのか、提供されるなら。


【はい】


 そゆ事なのね、ありがとう。


 そして暫くの後任は假屋崎翔子と言う女性が来るらしい、手配が早い。


 後は晶君待ちなのだが、どう接触して資料を渡すつもりだろうか。


 それとバアルさん、会った方が良いのかしら。




 悩んだ場合はご相談。

 上の階へ行くと。


《あら、バアルさんの事かしら?》


「話が早い。そうです、話しを聞くべきですか」


《もし興味が有るなら、会うべきだと思うわ》

「興味っても、バアルさんの資料に有る能力には興味無いですはい。ただ国家元首には興味あります」


《旅費は向こうが出してくれる筈よ、そしてアナタに害は成さないとの契約書も既に出されているわ》

「せいちゃんとかスクナさんを連れ出すのは」


《良いわ、世界を見せてあげて》

「マジっすか」


《マジマジよ、それにいざと成れば直ぐに帰って来れるでしょう?》

「確かに」


 よもぎちゃん復活により神器や仏具が増えた事、倉庫の人員が外に回せる様になったので、少し出ても大丈夫らしい。


 寧ろ、行って欲しいらしい。


《ゆっくり楽しんできて欲しいのだけれど、お小遣いは大丈夫かしら?》

「せいちゃんに借りときます」


《じゃあ、たっぷり楽しんでらっしゃって》

「うい」


 何だろう、何か匂うけど何の匂いなんだろう。

 良い匂いそうだが、言わないとなるとせいちゃんの事かしら。




 エレベーターから降りると、目の前にはせいちゃん、怪訝な顔。


『鈴藤さん、強制有給休暇が』

「すまんな、遊びに行こう」


 先ずは大使館、せいちゃんと車で向かう。

 バアルさんは既に帰国したらしい、向こうで待ってると言い残し、先程消えたと。

 大使慣れてる、落ち着いてる。


 そして日程は明日の14時発、チケットを今取ったと。

 全てバアルさんの指示だそうで、慌てるせいちゃん、ウキウキする自分。


 急いで帰り、荷物の準備。

 せいちゃん喜びながら慌ててる、今日の事件の事なんぞ、もう忘れてくれてると良いのにな。


『飛行機かぁ、ありがとうね鈴藤』

「勝手にすまんね」

『いえいえ、本当に有り難いですよ、何せタダですし』


「しかもビジネス。敢えてビジネスにしてくれたんだろうな、ファーストクラスだと遠慮と緊張で頭可笑しくなっちゃうもの」

『あ、確かに。緊張して眠れないんじゃ、どうしようも無いですしね』

《ウキウキしちゃって》

『淡雪も嬉しそう』


《そりゃそうよ、暖かい所なんでしょう?》


 調べてみると、暖かい所か高熱、最高気温40℃て。

 しかも最低気温10℃、寒暖の急落で失神しちゃいそう、大丈夫か。


「よし、水着を買いましょう」


 あまりはしゃぎ過ぎてもイカンので、先ずは近くの本屋で観光雑誌を全種類買う。


 そして喫茶店で深呼吸してから2人で黙読、長距離飛行機は初なのだ。


『何処までどう、動けるんでしょうね』

「40℃ならプールには入れさせて貰う」

《いざとなったらしまってよね》

『次は買い物だね』


 プラトンさんでプール用品を揃えただけで、終わった。

 ビジネスに色々と付いてるとの情報から、手荷物は最低限となった。


『預け、ませんよね』

「最低限の手荷物はカモフラで持つよ」


『私のも、お願いして良いですか?』

「もちよ」


 スーツケースごとストレージにしまい、手荷物は玄関に置いておく。


 後はお風呂に入って、夕飯には消化に良いうどんを食べ、時差調節に少し遅くに眠った。

『せいちゃん』【『晶君』】《イタコさん》「忍さん」《【ソラちゃん】》《アマテラスさん》《淡雪》

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