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5月9日(土)

 曇り。

 あれ以降、事件は無かった様で、せいちゃんの声で起きた。


 食卓の横には、プリントアウトされた物件資料が置いてある。

 朝食は納豆ご飯と甘い卵焼き、お味噌汁はナメコ。


『こっちの部屋はどうです?』

「広過ぎない?」」


『じゃあ、コッチですか?』

「だなぁ、今のココってどうなるん?」


『半年は仮押さえのままで置いてくれるそうです、他にも部屋は空いてますから』

「何で空いてるん?」


『流行り病で人が地方に分散したんです、地方への流出が止まらなくて。今年ようやっと盛り返してきたんですよ』

「流行り病か、マジか」


『そう言えば、顔赤いですけど』

『うん、それだ。鈴藤は免疫が無いから』

「は、隔離しないと、せいちゃんは大丈夫か?」


『予防接種で抗体も有りますから大丈夫ですけど』

『発熱するね、せいちゃん買い物』


『あ、はい』


 こればかりは魔法で何とも出来ない。


 前は気を付けてたのに、今回はそれ所じゃ無かったからか、コレも運か。


「うぅ、久し振りやぁ、震える」

『がんばれ』


『買って来ましたよ。私、休みましょうか?』

『せいちゃんはお仕事行ってて大丈夫、僕もう大きくなれるし』


『そうですか?じゃあ鈴藤さん、スクナさんにも携帯を使える様に出しておいて下さいね』

「おぅ」


 電気毛布に氷枕、冷凍庫には氷嚢も有るらしい。


 霊障かしら。




 せいちゃんが仕事に向かうと、スクナさんが小声で話し掛けて来た。


『前の体に戻ったのはいつ?』


「わからん、結構前だ」

『関係してるか分らないけど、確認はした方が良いと思う』


「マジか、困る」

『うん、確認しとこ』


 寒気で集中出来ない。


 手鏡を持つ手も震えるし、上手く考えられない。


「ダメだ、できん」

『戻りたく無いの?』


「だね、あんまり、そう」


『桜木花子、少しだけ戻ろう』


 名前は本当に大事らしい。


 なんとか桜木花子には戻れたが、かなり胸が戻っている。

 邪魔だ。


「マジか」

『今、体が回復してるから、それに合わせて変化すると思う、そう見える』


「そうか、見えてるか、ごめんな」

『ううん、理由があるんでしょ、大丈夫、ゆっくり治そうね』






 水分を取っては寝て、汗をかいては着替えさせられ。

 そうして数時間が経った頃、せいちゃんが戻って来てしまった。


『お昼、買って来ましたけど、食べれそうですかね?』

『もう少し先だと思う。大丈夫だよ、消化のエネルギーを使わない方が良い時もあるから』


『はい、じゃあ、宜しくお願いします』

『うん』


 布団をすっぽり被ってやり過ごしたが、ドキドキした。

 危ねぇ、やっぱ1部屋欲しいわ。


「ビビったあ」

『だね、ドキドキしちゃった』


「なー。食べた方が良い?くえるよ」

『仙薬で回復した方が良いかも』


「マジか」


 何杯か飲むが放出は行われない。


 こうなりゃ一気、溢れるまで飲む。


『がんばれー!』




 体の苦痛を誤魔化す様に何杯も飲んでいると、溢れ出たが、頭が痒い。

 体も痒い、かなり代謝したのか全部痒いし、眠いし。


「おふろぉ」

『パパッとね』


 熱を発し、朦朧とする中でシャワーを浴びる。


 すっかり髪は長くなり、爪もかなり伸びた。

 切る気力無し、立ってるだけで手一杯。


「ソラちゃん」

《ドライ》


 今度は寒気。

 急いで下着と寝間着を着て布団に入る。


『あっためてあげる』


 電気毛布を掛け、更にスクナさんを抱き締める。

 震えはするが暖かい、薪ストーブの前みたい。


「季節はずれやろぅ」

『だね、でも大丈夫、もう少し』




 寒気が収まると今度は発熱、そして鼻水、かんでもかんでも出るし、咳でゼイゼイする。

 しんどい。


「短期で治る対価かな」

『うん、後ちょっと』






 鼻水と咳が止まり、水分をたっぷり補給してからの記憶が無いが、眠っていたようだ。

 長い戦いが終わった、時間は17時。


 もう少ししたらせいちゃんが帰って来る、また頭痒い、爪伸び過ぎ。


「ソラちゃん、小刀と爪切り」


 お風呂場で手の爪を小刀で短くしてから、爪切りで整える。

 足はスクナさんがやっていてくれた、小刀でどんだけ綺麗に切れるのよ。


『どう?』

「流石プロ、爪切りも医療行為だったっけか」


『治療ならね』

「ありがとう」


 胸は少し縮んだが、まだまだ元通りには遠い。


 そのまま男に戻ると、髪が短くなっていた。


『変身って初めて見たけど、不思議』

「髪な、前は同じ長さだったんだけど」


『筋肉も、きっとそれぞれの個性が育ったんだね』

「そう言う事にしとこう」


 シャワーを浴び、着替えまくった衣類とシーツを洗濯。


 掃除機をかけようとして挫折した、ダルい。


『無理したらまた熱出るよ』

「こまる」


『ご飯食べて』


 コンビニのお蕎麦とお稲荷さん。


 味がしない、またか。


「味また消えた」

『良くあるの?』


「最近ね」

『この病気の後遺症で味覚障害が出る事も有るけど、ストレス?』


「だって、幽霊怖かったんだもの」

『花ちゃんは、怖がりなんだね』


「はい、そうです」

『でも食べないと、味が無くても』


「おう」


 昨日の焼き肉を思い出しながら、お蕎麦、お稲荷さん。

 そうしてスクナさんに仙薬を飲ませて貰っている途中、突然、味覚が戻り始めた。


 途中て。


『ふふ、戻ったんだ。後遺症だったのかもね、沢山鼻もかんでたし』

「あー、びっくりした。途中はズルいわ、マジで」




 窓を開け、掃除機を掛けてからグッタリしていると、せいちゃんが帰って来た。

 掃除機しまえなくてごめんな。


『只今帰りました、大丈夫ですか?』

「おう、治ったけど、すまん」


『早い、長い人は1~2週間掛かるんですよ』

『ねー。あ、おでんの屋台!』

「マジか、どこどこ」


 大通りに偶に来るんだそうで、せいちゃんがお鍋に熱々おでんを買って来てくれた。

 ちくわぶに大根、玉子とはんぺん、汁うまし、柚子胡椒も良い感じ。


『本当に良くなったみたいですね、良かった』

「ご心配お掛けしました」


『ねぇ、うどん入れないの?』

「天才か」

『冷凍のがありますよ』


 溶き卵と刻みネギ、七味を入れたら完全食。

 ホッカホカや。


「御馳走様でした」

『御馳走様でした、シャワー浴びてから洗い物しますから、ゆっくりしてて下さいね』


「うい」


 スクナさんを抱えながら、ソファーに寄りかかる。


 ニュースをただ、だらだら見る。


『この前まで春だったのに、もう少しで梅雨だね』

「花見したかったな、残念」


『月見酒、玉子酒』

「甘酒が良いな、酒粕じゃ無い方の」


『台所に有ったよ、温めて飲もうよ』

「せいちゃんのだからなぁ、出たら聞いてみよ」


 お風呂上がりに早速洗い物を始めたせいちゃんに甘酒の事を聞くと、賞味期限が切れてるので出せないと。

 だがスクナさんが大丈夫と言って押し切り、3人で飲んだ。


 美味い。


『ふぅ、きんつばって合うんですね』

『この甘さの組み合わせだから良いんだと思う』

「ポッカポカや」


 今日は過保護にも真ん中に寝かされた、そしてあんなに寝たのに。

 寝れる。

『せいちゃん』『スクナさん』

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